2013年10月22日の読書
2013年10月22日(Tue)
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本日の初読図書: 時は十七世紀。舞台はアジアとヨーロッパとを結ぶ、オスマントルコの帝都イスタンブール。 グランドバザールの一角にある隊商宿を拠点とし、シンドバッド23世は宝とスリルを求めて様々な冒険を繰り返していた。 シンドバッドの名は、これまで代々が得てきた魔法の品々と共に受け継がれる、冒険家の称号だ。当代23世の名はセルマ。間もなく21歳になろうという、凛々しき男装の女性である。シンドバッドの名は世襲ではなかった。代々のシンドバッドが受け継いでいるエメラルドの指輪にシャムリッシュという元ランプの魔人が宿っており、三つだけ願いを叶えてもらえるのだが、その願いをすべて使い果たすと、弟子の中から優秀な者を選んで後継者とするのである。セルマは兄弟弟子であったエンヴェルと共に試験へと挑み、見事打ち勝って当代シンドバッドとなったのだった。 それから五年。彼女も今はマレクという十歳ほどの少年を弟子とし、冒険の日々を過ごしている。 そんなセルマが今回手に入れたのは、宝の地図だった。記されている宝は『エイレーネーの瞳』。それぞれ大粒のルビーとサファイアがはまった一対の指輪で、かつてはローマ帝国の王家に伝わっていた秘宝であった。二つ揃っていれば幸いを、一つだけ持つ者には災いをもたらすと言われる曰く付きの品で、ローマ帝国がオスマントルコに滅ぼされた際、時の皇帝が憎きスルタンに災禍が降りかかることを願って、ルビーの方だけを宝物庫へ残し、サファイアの方はいずこかへと持ち去ったのだという。 そしてルビーの指輪もまた、いつしかオスマン帝国から失われ、今では幻の秘宝となっていた、その『エイレーネーの瞳』。それは先代22世が生涯をかけて探し求め、ついには消息を絶つ原因ともなった、エルマとエンヴェルの二人にとっても深い意味のある宝だったのである。 さっそく『瞳』探しに着手したエルマとマレク、そして ―― 今は情報拠点『銀の角屋』を営んでいる ―― エンヴェルだったが、その行く先々には謎の男がちらりちらりと姿をかいま見せた。 どうやら滅びたローマ帝国の復活を目的とするらしいその男は、先代の行方不明についても、何らかの関わりを持っているようで……
例によってラジオドラマ青春アドベンチャーで聞いておもしろかったので、原作に手を出してみました。 「シンドバッド23世」というそのタイトルを最初に見たときは、なんか胡散臭そうだと思ったのですが、その23世が男装の麗人だという紹介文で俄然興味が出たのですよ。美青年ももちろん良いものですが、男装の麗人もまた、心くすぐられるものがありますなあvv ……ただちょっぴり残念だったのは、その男装が(苦笑) いやうん、イスラム文化圏ならしかたがないというか、考えてみれば当然なんですが……でもつけひげ標準装備に、薬を使ってしゃがれ声っていうのは乙女の夢が…… ラジオドラマではつけひげには触れられておらず、声も宝塚的な張りのあるかっこいい女性声だったので、それはもううっとりとさせられたのに。 なのでそのあたりは適当に脳内補正で(笑) セルマはあくまで颯爽とした美貌の麗人なのさ! あとエンヴェルは、ラジオドラマよりコミカル加減が押さえられていて、これまた良い男でした。ほど良く二枚目半、でもやるときはやるのが良い男の条件だと思います。マレク、よっく見習っておけよ〜〜。 そしてラジオドラマでも本文でも語られていませんでしたが、裏表紙のイラストではエイレーネーの瞳が、どちらもスターの入った楕円形のカボションカットの宝石に描かれており、ああそれで『瞳』だったのか! と納得しました。シャムリッシュの宿っているエメラルドの指輪と合わせて、赤青緑と取りそろっているのも、見た目に美しいです。 ラジオドラマでは不思議だった、どうやってエルマが黒幕のアジトの場所を知ったのかという点も、書籍ではちゃんと説明がついていたのが嬉しいところ。
逆にちょっと残念だったのは、瞳によって『皇帝』を復活させるというその魔法は、誰がどのタイミングで作り、どうやって伝えられて来たのかが謎のままだったということ。 っていうか、最終的にあの化け物はどう考えても皇帝じゃないと思うんですが……どこから持ってきたんだ、あの棺?? そしてどうしてアレを皇帝だと信じていたんだ、残党達は(−ー;) それとか魔法の絨毯はお約束のアイテムだから良いとして、弟子が使う魔法の座布団はどこから出てきたのかとか、イブリースはなんで願い事の数に制限がなかったのかとか、細かい点を気にするのは児童文学を読む上では無粋なのか……
ともあれ、全体的には非常にわくわくできるおもしろさだったので、このお話はぜひシリーズ化して欲しいものでした。
……ちなみにこの方は、演義準拠の児童向け三国志(全十巻)、ラノベ系イラスト付きの本も出しておられるらしいです。
しかも地元図書館にそろっている模様。 まだ北方版読み切ってないんだぞー、手を広げるんじゃないぞーーー(自己暗示)
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No.5199
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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