よしなしことを、日々徒然に……
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 2016年10月16日の読書
2016年10月16日(Sun) 
本日の初読図書:
■悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される
 http://ncode.syosetu.com/n7864de/

物語エンディングの前日に前世の記憶を取り戻し、ここは乙ゲーの世界で自分は明日婚約破棄からの国外追放を言い渡されると気がついた、悪役令嬢のティアラローズ。
しかし彼女が婚約者である王太子やヒロインに対してやったのは、あくまで人の上に立つ者としてごく常識的な注意ばかりだった。
王家の次に権力を持つ“ラピス”の称号を賜った家の令嬢である彼女を、いったいどう断罪するつもりなのだろう。
不安は残るが、少なくとも死刑にされることはない。それにヒロインの言うことを鵜呑みにして、調査すらまともにしないような王子と結婚したら、将来は苦労の連続に違いない。おとなしく婚約破棄を受け入れて、そっと会場から退出しよう。ティアラはそう決意した。
そうして迎えた、断罪の卒業パーティー。王子は彼女を告発し、明らかに日本人としか思えない名と容姿を持つヒロインが、その傍らで頭の悪いことを言い出す。じょじょに広がる呆れを含んだ空気の中で、ひとりの男性の声が会場に響いた。
「そこまでですよ、ハルトナイツ王子。ティアラローズ嬢よりも、貴方の言葉の方がよほど酷いではありませんか。――ねぇ、ティアラローズ嬢?」
それは、ゲームの展開にはなかった言葉。
隣国の王太子であり、この国へは一年間だけ留学に来ていた同級生、アクアスティード・マリンフォレスト王子が割って入ってきたのだ。
彼はこのゲームの攻略対象でこそないが――続編である第2部のメインキャラクターであると、告知されていた。ただ発売より先に生涯を終えたティアラローズには、彼の立ち位置を正確に把握することができない。
驚く彼女の前で、アクアスティードが跪き、ティアラローズの手を取る。
「婚約を破棄されたのですよね。……それならば、私の妃になっていただけませんか?」
幼い頃から王太子の婚約者であった彼女は、異性に対する免疫がまったくなかった。そして婚約者である王太子は、彼女にこのような態度をとってくれたことなど一度もない。
真っ赤になったティアラの前で、ヒロインが取った行動は……


悪役令嬢もの。書籍化・完結済・ダイジェストなし。
全三章に分かれていて、第一章は転生ヒロインザマア。第二章は嫁いでいった先で、続編ヒロイン(現地人)に怯えつつ、別の攻略対象に愛を囁かれたりなんだり。第三章は乙ゲー要素が薄れて、隣国の妖精王達の両片思いに巻き込まれてドタバタな感じ。
主人公は自分が悪役令嬢になっているからと、いつゲーム補正で恋人(隣国王子)を奪われるかと不安だらけですが、隣国王子はブレることなく主人公溺愛しまくりです。主人公も、引け目は感じていても、別にそれで他の攻略対象に揺れたりはいっさいしないので、全編砂糖吐きそうです(笑)
ただ第一章のヒロインとか、第三章で出てくる女性妖精王が、人の話聞きゃしねえで勝手しまくるのが非常にうざいです。第二章ヒロインは、まあまあ良い子なんですけどね。むしろ第一章のヒロインが絡んでこなけりゃ、彼女はごく普通に友達になっていたんじゃ疑惑もあったりとか。
No.7855 (読書)


 2016年10月15日の読書
2016年10月15日(Sat) 
本日の初読図書:
■竜の子を産んだら離縁されたので森で隠居することにしました 〜66 入城
 http://ncode.syosetu.com/n4895df/

貧乏男爵家に生まれた世間知らずの少女が、デビュタントもできないまま商家の息子に嫁ぐも、夫は浮気三昧、義母は使用人扱いでこき使いまくり。
あげく身籠った彼女が産み落としたのは、体中が鱗に覆われ、人にはない筈の尻尾と四枚の羽根を持ち、人非ざる声で鳴く化物だった。
悲鳴を上げ逃げ出す手伝いの女達をよそに、難産で息も絶え絶えになっていた彼女は深い溜め息をこぼした。
「あぁ……なんて可愛い赤ちゃんかしら……」
息子が異形でも変わらず愛した彼女だったが、まったくの世間知らずだった彼女は、結婚式の誓いのキスだけで子供ができたのだと信じていた。そして浮気ばかりでろくに家にも帰らなかった夫は、出産が終わるまで己の妻が妊娠していることすら知らなかった。
不貞の証に化物を産んだのだと義理の両親は怒り狂い、彼女に離婚を迫った。そして夫の愛人もまた身籠ったと知って、彼女を家から追い出し、愛人の方を正式な妻として迎え入れてしまった。しかも爵位はきっちり手に入るよう、その愛人を彼女なのだと偽装して。
自分が実家へ戻れば、家族は怒り悲しむだろうし、結婚支度金という名目の援助も打ち切られるだろう。
行き場をなくした彼女は、このまま家族には知らせず、一人と一匹で暮らそうと決意する。町中では目立ってしまうので、人里離れた森の中で。
人を食う魔物が住んでいるという伝説があるその森には、猟師すら近付かない。手付かずで豊富な山菜や薬草、息子が獲ってくる動物たちを糧に生活し始めた彼女は、いつしか森の魔女と呼ばれつつもそれなりに平穏に暮らしていた。
しかし三年が過ぎた頃、森を訪れた存在によって、彼女と息子の生活は大きく変化することとなって……

タイトルそのまま。連載中。書籍化決定済ですが、宝島社ということはおそらくダイジェスト化なし。
主役が天然なのであまり悲壮感なく進んでましたが、だんだんいろんな陰謀も絡んできてシリアス展開も。
14歳で結婚、15歳で出産して三年ほどなので、まだまだ十分ヒロイン枠。女手一つで子供を育てる母として、三年でしっかり成長したあたり、年に似合わぬ包容力があります。
ハイスペックイケメンだけど、親に愛されないまま権力争いやらなんやらでいろいろ不遇だった鉄面皮の騎士団長(王弟殿下)も、そりゃあ落ちるわww
兄王や王妃様も、為政者の厳しさは保ちつつそれでも味方についてくれたし、商家のろくでなし共はザマアしたし、あとは二人がくっついてくれればめでたしめでたしなんですが……隣国の女王様との縁談(政治的な裏あり)とか関わってきて、まだまだハッピーエンドには遠そうです。

個人的には、出産時に逃げ出した女達の中で、ただひとり動揺しながらも産湯を使わせ「お前を愛してくれるママでよかったね」と撫でてくれた助産婦さんが好きです。何かしらの報いがあってくれないかな、あの助産婦さん……
No.7854 (読書)


 2016年10月14日の読書
2016年10月14日(Fri) 
本日の初読図書:
■老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます
 http://ncode.syosetu.com/n5529cy/

悪意や偶然や気まぐれの積み重ねによって、ごく気軽に、それこそ隣の部屋に移動する程度の労力で異世界と地球とを行き来できる能力と、言語チートを手に入れた18歳の少女。
半年前に交通事故で家族すべてを失い、遺産狙いの親戚達には嫌な思いをさせられ、精神状態最悪での大学受験に失敗。あげくのはてにはチンピラに絡まれ崖から突き落とされた彼女は、どこまでも現実主義になっていた。
異世界とこちらを行き来できるのは良い。互いの産物などを相互輸入することで、金を稼ぐのも良い。だが転移能力がいつ使えなくなるかも不明だし、あまり派手にやらかして、経済基盤を破壊してしまったり、文明の発展方向を捻じ曲げるのは本意でない。何より面倒くさい。
目指すは引きこもって悠々自適の老後生活。そのためには、いつどちらの世界を選ばねばならなくなっても大丈夫なように、両方の世界で貯金をしよう。それぞれ10億円もあれば足りるだろうから、金の含有量を地球レートで計算し、20億円すなわち金貨8万枚を目標に。
異世界の正しい進歩を歪めないよう、おかしな物は流通させない。でも、自分の楽な生活と身の安全のためには自重しない! 失敗すれば転移で逃げるから無問題!!
かくして表に現れる言動はまともだが頭の中は少々アレな雑学少女が、西洋人には子供に見られる小柄な身体で金儲けに邁進することとなる。
そうして気がつけば、何故かいろいろと当初想定からずれてきていて……?

「ポーション頼みで生き延びます!」や「私、能力は平均値でって言ったよね!」の FUNA さんの作品。
未完結表示になっていますが、一応本編は完結してました。
主人公の光波(ミツハ)は、遺産関係とかでいろいろ経験してきたせいか、かなりドライな考え方をしています。恩には恩で返すけれど、敵対した相手にはいっさいの容赦なし。それが食い詰めた挙句に盗賊になるしかなかった元虐げられた農民でも、人を襲うことを選んだ時点で盗賊という名の殺人者。見逃せばこの先もっと人を殺すだろうし、それが自分の大事な存在かもしれないと判断、はっきりさっぱりその手でぶち殺してます。さらに実際に大事な人達が危機に陥ったら、自重? ふざけんなとほっぽりだして、オーバーキルをぶちかます。
下手に偽善めいたことを言い出さないところはスッキリしますね。
ツッコミどころやご都合主義、あと視点というか文体というかに気になる点はありますが、おおむね面白かったです。
……ってか、うっかり明け方三時までかかって最後まで読んでしまいましたよ……
あと主役の好みがイケメンよりもハイスペックな渋いおじさまなおかげで、主要キャラにおっさんがたくさんいるのも嬉しいですね(笑)
地球でお世話になってる傭兵団の隊長(という通称の団長)も、異世界で雇う傭兵のおじさんも渋格好いいし、伯爵様やら王様やら宰相やらその執事達やら、よりどりみどりさ!
最後がちょっといろいろ放り出し気味ですが、後日談? 番外編? 的なものを書かれる気持ちはある模様。
No.7853 (読書)


 2016年10月08日の読書
2016年10月08日(Sat) 
本日の初読図書:



3月末にうっかり1〜5上の9冊をまとめ買いした、新装版「翼の帰る処」。
4下の半ばまで読んだところで長らく止まっていたのですが、ようやく最終巻の5下が出たので、新刊購入。
そしてンヶ月ぶりに紙書籍読みたい熱が再燃してくれたので、今日は一日読みふけって、なんとか最後までたどり着くことができました。
はあ……何と言うか、感無量です。

これだけ権謀術策渦巻き、帝位争いやら世界を救うために神の助けを借りて云々という壮大なお話を書かれながら、しかし主役が一切戦闘に関わっていないのがむしろ逆にすごいなあとしみじみと(笑)

このお話の特徴として、「情報の統制加減」とでも言えば良いのでしょうか。知らされないことは知らないとか、主役のいない場所で起きていることは、それがどんなに大事だったり主役の大切な人に関わることでも結局は他人事の域を出ないという、そこらへんが一風変わったポイントだと思うのですよ。
ヤエトさんは事前にさんざん手配りしまくっている代わりに、実際の戦闘場面などではたいてい人事不省で倒れていたり、あるいはこの世ならぬ世界に行ってたりするので、事が収まった後に話を聞いて「はあ、そうでしたか」と言うだけなのがたまらん面白いというか。
そのぶんヤエトさんはヤエトさんで、他の人にはとても言葉では説明できないたぐいの経験を、ひとりでくぐり抜けまくっているのですが。

……ああしかし……ううむ。
今回の5上下は、ちょっといろいろ複雑でしたねえ。
最初の方は「うぉぉおお、ついに雛達が兄を乗せて空に!」「もふもふ、もふもふ天国vv」「尚書卿、すっかりあなたも鳥馬鹿ですww」とか「二の君、その笑顔は死亡フラグです!?」とかテンション高く読んでいたのですが……北嶺の人達が「嵐」に巻き込まれたり、あげくに「彼」が最初から「ああ」だったのかと思うとなあ……(−ー;)
なんか、これまで必死になって積み上げてきたあれこれが、こう思い切りちゃぶ台ひっくり返された感じがしてですね。北嶺と皇女の関係とか、預言者のあたりとか特に。
ターンとオルムストの対の神を、ここでそう持ってきたか! というのは唸らせられたんですが。
あと今まではっきりと顔の出てこなかった皇帝の挿絵を、あの場面で出したりとかの演出もすごい。
表紙絵の中で、最終巻だけ二人がはっきり鎖のこちら側にいるという構図も、なんだかいろいろ深読みできそうで。このシリーズはイラストも本当に素敵だったなあと思います。

他にも三の君は結局? とかいきなりキャラ立ちした六の君のその後とかとか。
まあそこらへんは、文字通り浮世に戻った尚書卿が、またいろいろ立ち回るのだと期待して妄想するのが楽しみ方のひとつってことなんでしょうね。
物語は終わっても、彼らの生はこれからも続いていく。ただ我々が知ることができないだけで。
そう強く思える終わりでした。
皇女さまにもいっぱい味方はできたんですし、1巻の頃に比べれば状況はめっちゃ好転してるんですから、きっといろいろあるんだろうなあ……ふふふ。

……このお話は結局のところ、それまで自分にも他人にも執着せずどこかふわふわと浮世離れしていたヤエトが、大切なものを得て、前向きに生きていくことを覚えるお話だったのかなあと思います。
死にたくないと思うことは、けして間違いではない。
そう教えてくれる主君に出会い、そんな彼女を支えるために、病弱な体を引きずって立ち上がる。もういつ死んでもかまわないとは思わずに、未来に希望を抱いて。
そう考えられるようになるお話だったんだと。いわば仙人が還俗しちゃったというか。
でもそれでも、ヤエトさんはいつまでも変わらずヤエトさんなんだろうなあとも思うんですが。

ただ気になるのはジェイ爺なんですが……あの人、ヤエトさん死んじゃったらどうなるんだろう(汗)
アストラみたいに人を超越して彷徨うことになるんじゃないかと思うと、恐ろしくてならんのですが。ヤエトの子孫を守る契約とかしても、いつかどこかで絶対に捻れるだろうし、それ以前に血族を巻き込む契約に振り回されまくったヤエトが、そんなもの受け入れるはずがないしなあ……
No.7849 (読書)


 2016年10月07日の読書
2016年10月07日(Fri) 
本日の初読図書:

アンチ勇者系の短〜中編をまとめ読み。

■勇者のお守りなんざもう御免
 http://ncode.syosetu.com/n6274dh/

幼馴染がハーレム勇者になり、一緒じゃなきゃ嫌だと言われて無理矢理パーティー入りさせられた、器用貧乏な男主人公。いわゆるザマア系。
現地勇者は色ボケの上にいろいろ救いようがない馬鹿。

■勇者な幼馴染にお久しぶり。
 http://ncode.syosetu.com/n2454x/

幼馴染のハーレム勇者と一緒に召喚された、巻き込まれ型女子高生主人公。
勇者は悪気だけはない、空気読めない馬鹿。

■一瞬前まで、勇者のハーレム要員でした
 http://ncode.syosetu.com/n4782dc/

ハーレム勇者のパーティーで二軍落ちして自殺を図った結果、前世を思い出して我に返る女性主人公。
召喚勇者は怠惰で無知な馬鹿。

■勇者様、おひまをいただきます。
 http://ncode.syosetu.com/n0430cv/

魔王討伐後、ハーレム勇者パーティーから離脱して故郷復興に尽力する元村娘主人公。
召喚勇者で一応は善人。「たくさんの女性に好意を寄せられて困る」「好意をもたれてるのは分かったけど、誰を選んでも角が立つしどうしよう」と、優柔不断にズルズル行くタイプ。

■勇者になれなかった英雄
 http://ncode.syosetu.com/n8509de/

儀式で勇者に選ばれるはずが、イレギュラーで異世界から召喚された少年に勇者加護が付いてしまった状態の青年騎士主人公。寝取られ・手柄横取り要素注意。
召喚勇者は常時魅了スキル全開発動のクズ。
No.7848 (読書)


 2016年10月04日の読書
2016年10月03日(Mon) 
えー……このところ発熱やらなんやらで、いろいろとありましたが。
とりあえずある程度は復活できたかと。

■マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合〜237
 http://ncode.syosetu.com/n4076cm/

書籍化・コミカライズ済。連載中・ダイジェスト化なし。
VRシューティングゲームの主人公が剣と魔法の異世界へ落ち、銃火器を駆使しまくっていろいろやらかすお話。
正直銃器の解説はかなり読み飛ばしまくってます(^ー^;;)
一人何役も兼ねて多重生活とか好きな方におすすめ。
ただ主役が平気な顔してガンガン人殺しまくるので(まあそれにもちゃんと理由はあるんですが)、苦手な方はあれかもしれません。
ハーレム方面に行かず、最初に助けたヒロイン一途なのは好感度高いです。


■即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。〜46話 どんなクソゲーなんでござるか、この異世界!
 http://ncode.syosetu.com/n5691dd/

書籍化済・連載中・ダイジェスト化なし。
死ねと思っただけで万物を殺せるマイペースな少年と、なんかよく判らない古武術(?)の流派を受け継いでいる少女とが、バス事故でクラス丸ごと異世界転移。しかし転移させた賢者から与えられた能力に適合しなかったため、足手まといだと置いて行かれるも、少年の即死チートで悠々と世界を渡っていくお話。
トリップさせられた日本人は彼らの他にも数多くいますが、賢者にインストールされたスキル能力の影響で、どいつもこいつも性格破綻のバトルジャンキー化しているのでろくでもなく。
そしてかなり厳しい世界観で、人がゴミのように死んでいくため、やはり苦手な方は要注意です。
No.7845 (読書)


 2016年09月25日の読書
2016年09月25日(Sun) 
本日の初読図書:

……本日というより、ここしばらくでちまちま読んでたのをまとめてメモ。

■となりの魔王
 http://ncode.syosetu.com/n4868bt/

警察が暇を持てあまし、隣家とは田んぼ三つ離れていることも珍しくない。そんなごくごく普通の、ちょっと辺鄙な田舎町。
そこに住まうやはりごくごく平凡な女子高生 瀬野夏織は、チャイムに応じて玄関を開けた途端、硬直していた。
全身に黒く禍々しいベールをまとい、肩にはカラスを乗せ、こめかみあたりから細い角らしきものを生やした長い黒髪の男が、見上げる程の高い位置から地響きを感じるような重低音で名乗ったのだ。
己は魔王だ、と。
「本日より隣人となるが故、挨拶に参じた。つまらぬものだがお近づきのしるしぞ」
「はあ、これはどうも、ご丁寧に……」
手渡されたのは、今時そうそうは見かけないであろう引越しそば。
生まれて初めての引っ越しそばと生まれて初めての魔王。初めて尽くし、と感想を抱くには後者の存在感が尋常ではなかった。
混乱する彼女に、しかし母や町の住人達は別に珍しいことではないと笑い、当たり前のように受け入れている。なんでもこの町には、昔から時々魔王が現れるらしい。なにをするでもなく、たただだ普通に暮らしてゆくだけ。何日間か、あるいは何十年か。そして用が済んだらまた地元(どこだ)にお帰りになるのだと言う。
でも魔王だよね!? という困惑と恐怖を理解してもらえぬまま、無情にも回覧板の配達を言い渡された夏織は、恐る恐る隣家へと足を運ぶ。そうしてゴゴゴゴゴと穏やかでない音を立てて扉(普通の合板)を開けた魔王へと回覧板を渡し、逃げるように踵を返そうとする。
「待て娘」
魔王はそんな彼女を、冷たい魔性の声で制した。
「芥のはからいについて造詣は深いか」「は?」「屑物の扱いを熟知しているかと質している」「…………ごみの捨て方知ってるかって話……?」「そう述べている」
それならそうとストレートに言って欲しい。なんだよ芥のはからいって。
「町内会入る時に、ゴミ収集の手引きはもらいました?」「打ち捨てられた残骸の末路を記した書か」「壮大だな!?」
一事が万事すれ違いまくる会話ではあったが、しかし魔王はなかなか律儀なようで。町内会費もきちんと収め、近所付き合いもこなしているらしい。
「案ずるな。余は盟約を違えぬ」
その顔と声で物々しく語られると、さながら血の掟のごとくに響く。が、実際にはゴミ分別のルールを守るかどうかといった内容の話である。
そんな魔王の面倒を見ているうちに、気づけば夏織もすっかり慣れてしまっていて……

それなりの田舎町に住み着いた魔王と隣家の女の子の、普通なんだか普通じゃないんだかよくわからないご近所ゆるゆる物語。短編連作で書籍化済、ダイジェスト化なし。
書籍化後もちょこちょこ更新されているようですし、書籍は書籍で書き下ろしが入っているらしく。
おのれ、これが戦略というやつか! 小癪な手段を取りおって!!<ポチろうかどうしようか迷い中
……ともあれ、久々に腹筋の鍛え具合を試されました(笑)
公共の場で読んではならないと感想欄に並んでいましたが、遅えよ。ってか自室で一人で悶えるのも十分怪しいわ!<褒め言葉
魔王さまのどこまでもブレない魔王っぷりと、その佇まいにそぐわぬ素直で善人な天然っぷり。
そしていつの間にかすっかりそれに適応し、任命された参謀職を見事にこなしている夏織ちゃん。
二人の阿吽の呼吸(違)がたまりません。


■REVENGER 〜やり直しが許されるなら、今度こそ 〜
 http://ncode.syosetu.com/n3733ck/

婚約者に裏切られ殺された挙句に逆行転生した公爵令嬢と、乙女ゲームの世界をバッドエンド経由して異世界トリップ(若返り作用つき)してきた少女と、異世界トリップしてきたのち失意のうち自殺してまだ同じ世界で生まれ変わった少年の三人が、協力して公爵令嬢の死亡フラグを叩き折りつつ平穏な人生を目指すお話。
…………ところで『平穏』って何でしたっけ?
中編完結済。


■僕達は我に返る(1)〜(番外編)
 http://ncode.syosetu.com/n7029cn/

うちの生徒会役員達ってもろテンプレ乙ゲーキャラだけど、逆ハーって、リアルで見ると痛いよねえと昼休みに話している少女達の話を立ち聞きして、ヒロインに入れあげて生徒会の仕事を放り出していた攻略キャラクター(っぽい面子)が我に返って更生してゆくお話。
1話1キャラで語られてますが、ほぼ展開は同じです。
……ただ最後の最後にどんでん返しが。
ヒロインにも実は思惑があって、逆ハーエンドなんてまったく望んでませんでした。「あたしはそこいらの転生バカとは違って、逆ハーレムなんて危ない橋を渡るつもりはないんです」めでたしめでたし……と思わせておいて、結局は自分の本命のためになら他の人達へどんだけ迷惑かけても気にしない(たとえば生徒会業務が滞ることで、補佐達がどれだけ大変だったかとか、学園内が引っ掻き回されたかとか)あたり、やっぱりこのヒロインは好きになれないというか、読後感がじわじわと怖い。
どれだけ自分の意志を取り戻してまっとうな道に立ち返ったように思えても、結局のところは全てシナリオ通りとか、怖すぎます……
No.7837 (読書)


 2016年09月13日の読書
2016年09月13日(Tue) 
本日の初読図書:
4773900016生田光子のシャトルレース―タッチングレースとビーズタッチング
生田 光子
源流社 2000-04

by G-Tools
タティングレースの書籍、生田先生の三冊目です。どうやらこれでこの方の本は網羅できた模様。
クラシカルな印象は相変わらず。
襟や袖飾り、ベストなどの写真は古き昭和の香りを思い起こさせます。
シャトルを3つ使うようなオリジナルだという編み方も載っていて、さすが長くやっておられる方は違うなあとしみじみと。

とりあえずガールスカウト出身者としては、フクロウモチーフにはぜひ一度挑戦してみたいものです。
あと前述のオリジナルの飾り編みも。ピコが斜めに重なっていて、これが優雅なんだvv

そして相変わらずネックストラップに使えないかと左右対称のブレードを探していて、これなんかどうかと試し結いしてみたり。



「ウィスタリア」とタイトルが付いた、藤の花をイメージされたというモチーフです。
ダイソーのラベンダー(薄紫と白の段染め)で結ったら、よく映えるんじゃないかなあ★
そしてけっこう丈夫で、#40の糸で作成しても、ネックストラップとしてちゃんと使えそうかも?
左右のリングの目数に差をつければ、ゆっくりカーブしていくので、円形ドイリーの縁飾りにもできるとのこと。
いやはや、タッチングというただ一種類の結び方の組み合わせなのに、まだまだまだまだ奥が深いですなあ……
No.7824 (読書)


 2016年09月12日の読書
2016年09月12日(Mon) 
本日の初読図書:
■悪役令嬢ってこんなのだったっけ?私、魔物と結婚しました。
 http://ncode.syosetu.com/n3637cw/

自分が悪役令嬢に転生していることに気がついた公爵令嬢ロイズは、前世の記憶を取り戻した5歳のその日からずっと、人生がストーリー通りに進まないよう抵抗してきた。
しかし世界の強制力というものなのか、どんなフラグも回避不可能。間抜けを演じても王子様の婚約者になり、魔力が無いふりをしても王子様の婚約者だからと学園に入れられ、王子様をゴミを見るかの様に見つめても【照れている】という解釈に。
それでも諦めず、常に友達数人との行動を心がけ、ヒロインには近づかないようにしていた。
しかし結果は惨敗。綺麗な涙を流すヒロインに問いかけられた友人たちは、次々と嘘の証言をし、自分がヒロインへ嫌がらせをしていたという事実がでっち上げられてゆく。
そうしてロイズは公爵家と絶縁されたうえで、長かった美しい髪を切られ、周囲の人間から石を投げられ、罵られ、故国から永久追放された。そんな彼女をヒロインは、周りから気づかれないよう嫌らしい嘲笑を浮かべて眺めている。
投げられた石でボロボロになったロイズへと、王子や国の重鎮の息子といった攻略キャラ達は、さらに殴る蹴るの暴行を加えた。そうして魔の森へと捨ててゆく。
魔物だらけの森の中、歩くことも出来ないほどの傷を負わされた彼女は、たったひとつの希望を胸にひたすら待ち続けていた。
前世でプレイした乙女ゲームには、続編が存在していたのだ。あいにく彼女は購入していなかったが、一部のユーザーの間にある噂が流れていたのだ。
いわく、【魔の森に捨てられた筈のロイズが、実は隣国の王子様に助けられていた】と。
なので必死に気配を殺し、最大限魔力消費を押さえながらの結界を張りつつ、彼女は待ち続けた。
そうして、もう日が暮れる頃。
ようやく彼女の前に現れてくれたのは、芋虫の魔物と、戦斧を持ち虎皮をまとった、真っ赤な巨体のオーガで……


……なんか最近、悪役令嬢ものばっかり読んでる気がしますが(苦笑)
もともと復讐、見返しザマア系が好きかつ、短くまとまっているものが多いからでしょうか。
全六話ほどの中編、完結済。
ヒロインも転生者で、悪役令嬢がストーリー通りに動かないことにムカついていろいろ画策しまくる、すげえうざい女です。ヒロイン視点の話で語尾に「!!」っとか「♪」とかつきまくってるあたりがもう。
そしてロイズは魔の森で、イケメン尽くす系オーガとラブラブ新婚カップルに(笑)
オーガの母親や、森の魔物達にも受け入れられて、もう砂糖吐きそうなぐらいです。爆発しろww
なおオーガの外見は「角、尖った耳、三白眼、2本の牙、人間の倍はありそうな大きな身体」まではうわーー、なんですが、「男性特有の低く掠れた鋭い声」「甘い低音」ときて、「キリッとした目元にスッと通った鼻筋。下の牙が唇から上に出ているけど、シャープな顎。さらさらで長い髪」と徐々に描写が上方修正されてゆきます。
私の脳内では、コミカライズ版 Re:Monster のゴブ朗改めオガ朗のビジュアルでイメージ定着しました。うん、あれならイケメンかつオーガって言うのも納得できる。

最終的にはヒロインもこれでもかってほど生き恥をさらしつつ、でもそこまでえげつないというか、グロかったり気色の悪い展開にはならず。主人公サイドはほのぼのした雰囲気を保ったまま終わるので、気軽に楽しめました。
王子たち? ……まあ屈辱まみれの人生になるだろうけど、国の上層部にある者があれだけやらかしまくっておいて、殺されなかっただけマシだよねって感じでした。それもこれも因果応報。これぞ見返しザマアの醍醐味ってことで★
No.7823 (読書)


 2016年09月09日の読書
2016年09月09日(Fri) 
本日の初読図書:
4063925072Q.E.D.iff -証明終了-(3) (講談社コミックス月刊マガジン)
加藤 元浩
講談社 2016-02-17

by G-Tools
客達達から金を騙し取っていた、欲深き投資会社の社長。彼に恨みを抱いた三人の女性たちは、それぞれに殺害計画を練り、とあるパーティーの晩に実行する。ひとりは彼の自宅へ毒蛇を仕込み、ひとりは寝室で毛布をかぶっているところへ包丁を突き立て、ひとりは廊下を歩いている後ろから壺で殴り倒した。それぞれのアリバイ工作は完璧で、疑いを受ける心配はない……はずだった。しかし社長の死体は、何故か庭のプールに浮かんでいる状態で発見される。死体を移動させたのは誰なのか。そもそも実際に彼を殺したのは誰なのか。知り合いが騙し取られた柿右衛門の皿のためパーティーへ潜り込んでいた可奈は、皿が銀行に差し押さえられる前になんとかしてくれと、燈馬を引っ張り出してきて……「三人の刺客」
六年前。両親の仕事の関係で、燈馬とその妹は三週間だけ日本の小学校に通っていた。同年代の友達もでき、その兄のもとでアルバイトをするなど、それなりに楽しい時間を過ごした。しかし嫌なこともあった。アルバイトで向かった先で落ちていた自転車を見つけた結果、自転車泥棒の汚名を着せられたのだ。幸いにもすぐ濡れ衣だと証明はしたが、それでも良い思い出ではない。結局、真犯人は見つからないまま燈馬は再びアメリカに戻った。そして六年後の現在。燈馬の元へと裁判所から電話がかかってくる。かつて友人の兄が住んでいた家の取壊しに、立会人の代理として指名されたのだと。私物処分の許可証にサインをするため訪れたその廃屋には、どこか違和感があった。同行した可奈達が首を傾げる前へ現れたのは、六年前の友人。そうして彼が語り始めた、自転車泥棒事件の真相は……「自転車泥棒」

うーん……なんかこう、新シリーズになってから、ちょっと雰囲気が変わった気がするような。
ぶっちゃけ可奈ちゃんの見せ場が少ないです。すっかり普通の女の子になっちゃってるというか。そして後味が悪い話が多いような。
……面白いは面白いんですけどね。今回は数学要素や薀蓄がほぼ皆無な上に、微妙に詰めの甘い部分がチラホラと。女性陣が殺人に至る動機に納得がいかないとか(なんであの男を殺したら学資やみかん畑がどうにかなるのさ)、殺人事件かもしれない状況で警察がプールのあれを見逃してるとかはまだしも、台所のゴミ箱のあれを見つけてないとかどうなんだと。
ああでも、後半のお話で燈馬の両親がばっちり出てきたのには驚きました。もうこの二人は、『うちのカミさん』レベルで本編には登場しないキャラクターだと信じてましたもん。
さっさと自分の無実を証明してしまうと捜査情報が聞き出せないから、あえて交番で尋問を受け続けていた燈馬くんはやっぱり燈馬くんですが、それでも駆けつけてきてくれた両親に「ありがとう」を言えるあたり、ちゃんと家族の絆は育んでいたんだなあとしみじみと。

ところで加藤さん、こんど小説も出版されるそうで。

4062990849捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書 (講談社ノベルス)
加藤 元浩
講談社 2016-10-06

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もともとマンガで描かれているのが驚きなぐらい密度の濃いお話を書かれる方ですから、果たしてどんな薀蓄が繰り広げられることやら。
No.7819 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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