2011年09月18日の読書
2011年09月18日(Sun)
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本日の初読図書: 戦争で負け敵国の捕虜になった、砦の責任者カザリル。しかし何故か彼だけ身代金が払われることなく、解放されないまま奴隷として売り飛ばされてしまった。海賊船の漕ぎ手として何年も過酷な生活を送り、明日にも殺されようという危ういところで、かろうじて隣国の海軍に救われる。ボロボロに傷ついた心身を神殿病院で癒し、ようやく動けるようになった彼は、かつての主君を頼り三百マイルの遠い旅へと、浮浪者のような姿で歩みだした。 途中、死の儀式によって死んだ死者から衣服を譲り受け、なんとか体裁を整えられたものの、そのやつれ具合は覆いようもなく。背中に受けた鞭打ちの傷のせいで、罪人に間違われたりと苦労は尽きなかった。それでもどうにか十代の頃、小姓として仕えた主君の城へたどり着き、今は未亡人となった元主の妻、老藩妃へと目通りを願う。彼女は幸いにもカザリルのことを記憶していた。そして今は手元に引き取っている、自分の娘の子であり、現在の国主の異母妹にあたるイセーレ国姫の家庭教師兼家令としての仕事を与えてくれた。イセーレは明るく善良な少女だったが、いささか快活に過ぎる部分があり、女性の家庭教師が幾人も手を焼いてきたのだという。 カザリルは昔から読書好きで、小姓時代には城の蔵書をすべて読み尽くすほどだった。彼女に勉強を教えながらその内証を管理することは、戦争で砦を預かっていた経験もあるカザリルにとって、弱った体を労るのにちょうど良い仕事だった。 イセーレやおつきの女官ベトリスとも良い関係を築き、平穏に暮らしていた彼らだったが、やがて避けようのない変化は着々と近づいてくる。 世継ぎのできなかった現国主が、異母弟であるイセーレの弟テイデスと共に、彼女に宮廷へ上がるよう命じてきたのだ。 否応なく、権力を巡る陰謀の渦に巻き込まれる一同。しかも宮廷で権威をふるっている宰相ジロナルとその弟は、カザリルになにやら含むところがあるようで……
某所の「翼の帰る処」スレで、同じ傾向の話として紹介されていたので手を出してみました。 ……ううむ、確かに箇条書きマジックをすれば共通点はいろいろ出てきそうですが、話の雰囲気はだいぶ違うような? って言うか、主役の不幸度が半端ありません。ヤエトは生来の虚弱に諦観を持ちつつそれなりに付き合っていましたけれど、カザリルはここ三年ほどの過酷な生活で身体を壊しており、本人いろいろと苦心しております。なんか冒頭の方でさらっと語られたっきりそれ以上出てこないんですが、片手の指先が二本欠けてるとか。そんなの日本のライトノベルの主役ではありえんだろ……あとヤエトなら吐くところを、カザリルは下血とかかなりエグイっす。 ちなみにカザリル三十五歳。健康でも若くも美男でもない、やつれた髭のオッサンです(笑)<ヒロインは二人とも十代美形 しかしこれお話的にはおもしろいですね。読むのに三日ほどかかったのは、中身がみっちり詰まっているから。 政治や戦記がメインのお話かと思いきや、しっかり神の奇跡とか関わってきて、現実とファンタジーがほどよく混合しています。 個人的に親友のパリアルが気になるものの、登場人物リストにフルネームが載っていないあたり、下巻では活躍しないのか……上巻では登場していないその従兄弟ふたりは、ちゃんと名字まで載ってるのに。
なんでも全三部作で、現在二作目まで邦訳されているそうです。しかしこの一作目だけでも話はまとまっており、二作目には一作目のメインキャラはほとんど出てこないとのこと。 とりあえず下巻を読んで、あとこの作者さんのSF作品もけっこうおもしろそうなので、そちらもチェックを入れてみたいと思います。
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No.3377
(読書)
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2011年09月17日の読書
2011年09月17日(Sat)
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本日の初読図書: このところ、 Amazon では画像があるのに、アフィリエイトで表示されない品がちょこちょこあるのはなんでだろう……? ともあれ、2冊目です。今回は若者に広がるドラッグ被害に、外国籍の人々の教育などの問題。市長を狙った爆破テロ、ボランティア自警団と暴力団の確執とか市役所内での横領事件とか。 相変わらず、水戸黄門的御都合主義なるも、それがこのシリーズのいいところ。母も喜んで読んでます(笑) ボランティア自警団には、前巻の児童虐待問題で出てきたキャラクター達が再登場しているあたり、人と人は繋がっているんだなあと嬉しくなったり。 あと一話目からちょっとクールで反市長派? と思われていた運転手の小平さんが、だいぶ打ち解けてきたのが微笑ましかったですvv ところで小学五年の娘を持つ京香さんは、いったいお幾つなんでしょうね? 二十代半ばで結婚して二三年で子供ができたとしても、最低で三十後半ぐらい? ううむ、大人の魅力だ……
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No.3376
(読書)
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2011年09月15日の読書
2011年09月15日(Thr)
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本日の初読図書: しゃばけシリーズ第10弾。 今回はすべてのお話の前に、ちょっとしたお料理のレシピが載っていました。 んー……こういう趣向もおもしろいとは思うのですが、材料の分量に「一合(かっぷ一杯)」とか「二寸(ろくせんち)」とか書いてあると、ちょっと萎えるかも……あとで注記にしとくとか、素直に(カップ一杯)、(約 6cm )とか書いてあった方がまだ違和感が少なかったような。五分が「鳴家五人が、順番に六十数える間」なんてのは可愛かったんですが。あ、レシピ自体はどれもおいしそうでしたvv 味噌漬け豆腐食べてみたい……
お話の内容的にもどうでしょうかね。前作よりはおもしろかったし、いくぶんミステリ色が戻ってきたなあとは思いましたけど。でも的はずれだと判っている妄想推理にあんなにページ数を割かれるのも、読んでいて身が入りにくいところでしたかねえ。 まあ表題作は、素直におもしろかったです。 最初の話と最後の話が、悲しい雰囲気があって切なかったかな。どちらもいささか尻切れトンボっぽかったのが難点ですが。 ……正直シリーズを長く続けすぎて、だんだん周囲のキャラクターの強さ? 設定? がインフレ化してきてるなあと思うのです。母親のおたえとその守狐とか、一巻の時点で存在したのなら、あの騒ぎの間なにやってたんだとか考えちゃって。 最初の頃は、鳴家もしゃべりませんでしたよね、確か。人気作だからと続けるうちに、いろいろ無理が出てきてるんじゃないですかねえ……
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No.3369
(読書)
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2011年09月14日の読書
2011年09月14日(Wed)
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本日の初読図書: 華浜市の市長は遠山京香。夫の父親が前市長だった跡を継いで、日本で四人目の女性市長となった。 もともと推理作家の彼女は、市長に寄せられる手紙やメールの中から、しばしば隠れた事件を見つけだす。大切なのは華浜市の市民達。市政の隙間に潜む不正や悪に、彼女はまっこうから立ち向かう。 強く優しく美しい女性市長と、彼女を取りまく様々な社会問題をとりあげた物語 ――
華浜市のモデルは横浜市なのかな? 本を売りに行った古本屋で、せっかくだからもらったポイントを使い切って帰ろうとして、思わず手に取ってしまいました。雑誌掲載時にぽつぽつ読んでいて、その完全無欠の勧善懲悪ぶりが好きだったんですよね。 一巻目から道行く人をモデルガンで撃つ警察官僚の息子とか、病院の施設不足問題とか、介護士の人手不足を発端にした犯罪、新型焼却炉の建設に児童虐待問題と盛りだくさん。 毎度の決め台詞「市長の遠山京香です」が格好いいんですよ〜〜vv 個人的に「御都合主義でもなんでも最後はハッピーエンド」が大好きだし、このシリーズは毎度キリ良く読み切りになっているので、ストレス解消に良い感じなのです。続きも何冊か買ってあるので、少しずつ楽しみに読もうと思います。……そのうち全巻そろえちゃうかも<また置場がなくなるぞ(汗)
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No.3366
(読書)
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2011年09月12日の読書
2011年09月12日(Mon)
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本日の初読図書: 悪の魔道士ディーアックは、シンを殺すため次々と魔物を地球に送り込んできた。巻き添えを出さないためにも、そして一刻も早くディーアックを倒しソニア姫を救うためにも、シンはルーへ戻る方法を探そうとする。そんな時、彼はタレント占い師から「古き竜の護る、振り子の下」というお告げを受ける。 謎を解いて該当の場所に向かったシンと松宮一家。 眩い光に包まれ消えようとするシンと目があった瞬間 ―― 陽子は思わず彼の腕の中へと飛びこんでいた。そして次に目を覚ました時には、飼い犬モルトと共に異世界ルーへと転移していた。 そこでは勇者として崇められているシンと共に、彼女は旅に出ることとなるのだが……
続編、番外編があと三冊あるようですが、とりあえずはこの巻で一段落。 ……なんですが、なんというかちょっと消化不良の部分がちらりほらり。主にヨーコに秘められていた能力の関係なのですが、これは続編で語られているのかなあ。なにかそれなりの理由とかあるとすっきりするんですけれど。 っていうか、いろんなところがザクザク削られすぎていて、良いのかそれで? 問題は起きなかったのか?? という疑問があったりなかったり(ソニア姫の顛末とかさー、王様あたり納得したんだろうか)。 やはり二十年も前の作品ですし、当時は「異世界召喚モノ」というジャンルも始まったばかり? そこで「逆召喚」という新たな試みをしたあたりで、斬新ではあったのか。 最近のチートだったりスレ主人公の召喚モノを読みつけていると、つい大真面目に悪役やっているディーアックの台詞に、いちいちツッコミを入れたくなってなりません(苦笑) 続きはなあ、興味はあるけれど、買うほどではないと言うか……ううむ。どこかでネタバレ込みのあら筋紹介してないかなあ。
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No.3364
(読書)
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2011年09月11日の読書
2011年09月11日(Sun)
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本日の初読図書: 「英雄ラグナのやんごとなき事情(オンライン小説)」 http://www3.ocn.ne.jp/~umadura/
魔王を倒し、英雄となった青年ラグナ。 しかし彼はあまりにも ―― 非常識かつ阿呆らしいほどに強かった。魔王の配下どころか当人すらも瞬殺し、勇み立っていた仲間達からすべての出番を奪ってしまうほどに。 故に周囲の者はみな彼を白眼視し、「お前といるとつまらない」「もう一人だけで何でもやってくれ」などと言い残して去っていった。 根は善良で寂しがりなラグナは、涙にくれたのち、己の弱体化を決意する。目指すは普通に人付き合いができる一般人。 しかし彼の強さには理由があった。占い師に見てもらった結果、ラグナには強力な呪いがかかっているのだという。さっそく解呪するための模索が始まったのだが、それは魔王 10008 人育成計画などという、とんでもないものから始まって ――
本来であればラストエピソードの魔王討伐、しかも白けまくりの残念な雰囲気から始まる物語。目指すは最強 ―― ではなく、最弱。その為にしてゆく努力が、何故かことごとく裏目に出てゆくラグナが不憫です。短時間に二つの国を滅ぼして大魔王と呼ばれる身になり、最愛の両親からは見捨てられ、毎日のように暗殺者に狙われる生活。それでも 10008 の呪いを身に受けた彼は、どれほど強い相手をも瞬殺でさばいてゆきます。そしてその思考はあくまで一般人のままというギャップがまたおもしろいのです。 トリックスター・ロキことロックなど、キャラクターの名前には北欧神話のテイストが入っていると思っていたら、最後にううむと唸らされました。こうくるとは、見事。 ……しかし 9.27 までの期間限定掲載、中編、全五章と銘打たれていたので気軽に読み始めてみたら、原稿用紙 400 枚越えてました。普通に文庫一冊分あるよ……(遠い目) そんな訳で読もうと思われる方は、お急ぎかつ時間配分に注意ということで★
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No.3362
(読書)
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2011年09月10日の読書
2011年09月10日(Sat)
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本日の初読図書:
シナリオライターの父に雑種犬のモルトと、二人&一匹暮らしの女子高生 松宮陽子。 家事を一手に引き受けて日々充実している彼女の家に、ある日いきなり勇者が降ってきた。皮鎧を着て大剣を持った金髪マッチョは、庭で意識を失い倒れていたのだ。三日後ようやく目を覚ました彼ことシンは、持っていた聖水とやらの力で陽子とだけ会話ができるようになったのだが、その話す内容は驚くものだった。地球とは違うどこかにある「ルー」という世界。そこで悪の魔道士にさらわれた王女を救うため、魔神と戦っている最中に意識を失い、気がついたらここにいたのだという。ルーには魔法があり、魔物が住み、地球とは比べ物にならないぐらい危険で不思議な世界らしい。 馴染みのない世界で言葉も通じない中、シンは元の世界に戻る方法を探したいという。 特撮戦隊物のシナリオライターをつとめる父は、面白がって全面的な協力を申し出た。陽子もまた、食欲旺盛なシンの食事など作ってやりつつ、面倒を見ることにする。 そんな中、父の仕事である特撮番組の撮影中、見たこともない化け物が現れた。不鮮明ながらも撮影された映像を見たシンは、それがルーに存在する魔物だと言い出して ――
異世界『逆』召喚ファンタジー。 二十年ぐらい前に書かれたお話ですが、今でも充分おもしろいです。むしろコンビニができはじめとか、お父さんが使ってるのがデスクトップのワープロだとか、高校が土曜日半ドンだとか、地味に懐かしいです(笑) もちろん携帯とかメールなんて話題にも出てきません。 お話としては、まだ起承転結の承部分あたりなのでなんとも言えませんね。マッチョなシンですが、言葉もろくに通じない中で、冷静に異世界で過ごしているのはなかなか好感が持てます。時代劇撮影シーンを見て、「悪事は許せん」と乱入するのはお約束★ ネットで紹介を読んだところでは、後編で陽子がルーに行くのかな? ともあれ、一区切りはついているらしいので、楽しみに読みます。
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No.3360
(読書)
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2011年09月09日の読書
2011年09月09日(Fri)
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本日の初読図書: OLの河野さやかは、ある晩のこと空腹で行き倒れていた青年を拾った。 「よかったら拾ってくれませんか」「咬みません。躾のできたよい子です」 酒の勢いもあって一晩2DKに泊めた青年は、イツキと名乗り、言葉通り悪さをすることもなく翌朝おいしい朝御飯まで作ってくれた。誰かが自分のために作ってくれる食事に飢えていたさやかは、行くところがないのならいっしょに住まないかと引き止めてしまう。雨風をしのげる屋根と、当座の支度金、食費水道光熱費を提供するから家事全般をやってくれないかと。 そうして始まった同居生活は、思いのほか心地よいものだった。お互い聞かれたくないことには踏み込まず、さやかはイツキの年齢や職業はおろか、名字すら知らない。 けれど週末には妙に植物に詳しい彼と、散歩ついでに食べられる野草を取ってきては、様々に料理して食べる。そんな暮らしは、とても居心地が良かった。 やがて二人は必然のように惹かれあってゆくのだが……
有川さん三冊目。 今回は野草をメインテーマにした恋愛ものの短編集です。登場人物は当て馬役の同僚をのぞけば、ほぼふたりっきり。ひたすら散歩をしては、町中やちょっとした郊外で見られる野草を採集、料っております。 正直、恋愛ものにはこれまであまり興味がなかったのですけれど、こういううんちくが入っていてかつ、幸せほのぼのなお話は悪くないと思いました。 話の筋自体は章ごとにパターン化され、全体を通した流れもほぼ『お約束』。ついでに言うなら、拾われた青年は家事も性格も完璧超人というライトノベル的御都合主義。 ……でもそれが安心して読めるところなんですよね。最初の始まり方がちょっとアレだったので、最後がどうなるかはちょっとハラハラさせられましたが、そこもちゃんとめでたしめでたしで一安心でした。 あと装幀もなかなか素敵でしたね。中表紙の「図鑑」を意識した植物の写真とか、後書きの第一行目、「この本が図鑑のコーナーに並ぶケースが出る可能性に一票投じてみんとする」の言葉。どちらもユーモアが効いているかとvv
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No.3355
(読書)
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2011年09月08日の読書
2011年09月08日(Thr)
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本日の初読図書: 宝塚駅から西宮北口駅へ向かう阪急宝塚の今津線。わずか八駅ほどのその路線は、えんじ色の車体にレトロな内装が個性的な車輌が走っており、鉄道マニアや若い女性などから人気が高い。 そんな都会と田舎のちょうど中間にある路線のなかで、様々な人々が出会いちょっとした交流を重ねてゆく。心温まることもあれば、突き刺されるような痛みを感じることもある。それでもあとには、なにかしら残されるものがあるはずで。 袖すりあうも多生の縁。行き交う人々が織りなす、種々雑多な物語 ――
オフ友ちなつに勧められて、借りてみました。「三匹のおっさん」と同じ作者さんのお話です。以前映画にもなったとか。 ありがとう、ちなつ! めっちゃ面白かったよ。特にきみの言っていたとおり、えっちゃんの彼氏話は腹がよじれるほどに笑ったわvv あと今回は御婦人でしたが、またも格好いいご老人が登場しました。すぱっとシンプルに心に残る言葉を放つところといい、孫に甘すぎないところといい、時江さん素敵です。討ち入りを果たした翔子さんも強かった。図書館カップルや大学生カップルは微笑ましいし、ミサも頑張った! 駅ごとに構成された、ちょっとずつ重なり合う短編集。どのエピソードもおもしろくて、一気に読んじゃいました。 思考機械やソーンダイクはあんなに時間かかったのに(苦笑) 有川さんの本はもう一冊借りてきている(うえに、更に予約もしている)ので、そちらも楽しみになりました♪
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No.3349
(読書)
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2011年09月07日の読書
2011年09月07日(Wed)
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本日の初読図書: 引き続き「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」シリーズのひとつ。 法医学士で弁護士のソーンダイク博士が、クリストファ・ジャーヴィス医師などをワトソン役に、謎を解いてゆきます。その手法はあくまで科学的。遺留品の服についたホコリを顕微鏡で分析したり、血痕を同じく顕微鏡観察して「ラクダの血だ」と証明してみたり。とにかく科学調査を旨としております。 書かれ方も独特で、倒叙推理小説と呼ばれる形式を確立した作品なのだそうです。すなわち最初に犯行が行われ、読者は犯人もその手法も知ったうえで、現れた探偵が謎を追ってゆくのを眺めるのです。いわゆる「コロンボもの」のはしり。 そしてソーンダイク博士の造形は、「エキセントリックな所のないホームズさん」と言ったところ。 頭が良く身体的にも優れ、これといったアクもない、ごく紳士的なお方です。探偵ものの主役としては珍しいタイプなんじゃないかと。 ……ただ収録作が、発表順にそったものではないせいもあって、「ソーンダイク博士って何者?」、「なんで警察は博士に相談を持ちかけてくるの?」、「博士とジャーヴィス医師の関係は?」といった疑問がいろいろ発生してきます。 そのあたりは同じく創元推理文庫から出ているという、第一作目の長編「赤い拇指紋」を読むと判るのかもしれません。図書館にあるようなので、借りてきたいと思いつつ、でもこのシリーズ読むのにけっこう時間かかるから、また他に借りたいものがなくなってきてからかなあとも思ったり。
個人的に面白かったのは、「おちぶれた紳士のロマンス」。結果的に殺人は起こらなかったし、終わり方も感傷的。犯人の行動とその裁かれ方には賛否両論あるでしょうが、心に残るお話でした。
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No.3348
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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