よしなしことを、日々徒然に……
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 2011年10月09日の読書
2011年10月09日(Sun) 
本日の初読図書:
4048682210シアター! (メディアワークス文庫)
有川 浩 大矢 正和
アスキー・メディアワークス 2009-12-16

by G-Tools
敏腕ビジネスマンの春川司には、弟がいた。二十代も後半にさしかかりながら、劇団運営にうつつを抜かし、まともな定職にもついていない甘えたな青年、巧(たくみ)である。
そんな弟が、ある日泣きついてきた。
「金払わないと訴えられちゃうよ!」
なんでも運営方針の違いから半数以上の団員がごっそりと出ていき、それまで負債を立て替えてくれていた事務方も、辞めるにあたって金を返せと言っているのだという。その額、実に三百万。
司はそもそも弟の演劇を良く思っていない。それは売れない役者のまま、身体を壊して死んでいった父の姿を覚えているからだ。確かにいじめられっ子だった巧が、前を向いて立てるようになったのは演劇のおかげだったし……公演はすべて見て、びっちりアンケートを書いたりもしているが……それとこれとは話が別だ。
演劇など辞めてしまえばいい。劇団などこれを機に潰れてしまえ。夢を諦めるのに必要な条件? それなら全力でやって折れることだ。
そこで司は三百万を用立ててやる代わりに条件を出した。それは二年以内に劇団の収益のみで借金を返済すること。それができないのなら劇団を潰せ、と。
幸いにも劇団には、期待の新星、プロ声優の羽田千歳が加わっていた。そして脚本家の巧を含めて、一癖も二癖もある劇団員九名。
なんだこのどんぶり勘定の収支は。経費は節減。締められるところはとことん締めろ。ただし使うべき所で金は惜しむな。守銭奴けっこう! 金は正義だ!!
運営に鉄血宰相・春川司を加えた劇団シアターフラッグは、怒濤の二年間を新たに走り始める ――

いやあ……有川さんにこの手のノリと勢いと夢と情熱の話を書かせたら、ほんとに素晴らしいですね。
今回は「演劇さえやれていれば幸せ」、「好きなことをやる為なら赤字もしかたない」というぬるい意識の貧乏劇団員達に、「プロとして金をもらうなら商売だ。収益を上げろ」と現実を突きつけた主宰者兄が、ばっさばっさと鉈をふるってゆきます。
この兄の素晴らしいところは、なんだかんだ言いながら、結局は弟を応援しているところ。二年間猶予をやると決めたなら、その間は全力でバックアップすると宣言し、実際フェアな位置に立ってものすごい勢いであれやらこれやらこなしまくるのです。そこには隠しようのない『愛』があります。いや腐った目線ではなくて。
劇団の人間模様もなかなかおもしろいですね。いろんな意味(恋愛やら演技力やら運営方針やら)での嫉妬や葛藤も絡みつつ、それでもみんなが気持ちよく一致団結して、ひとつの舞台を作っていく爽やかさ。
ちょっと人間関係放りっぱなしかなと思ったら、続編があるそうなのでこれは予約しておかなければ……
No.3416 (読書)


 2011年10月07日の読書
2011年10月07日(Fri) 
本日の初読図書:
4103018720キケン
有川 浩
新潮社 2010-01-21

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某県某市にある成南電気工科大学は、ほどほどの都市部にあり、ほどほどの偏差値で入学できる、ごく一般的な大学である。その大学に存在するサークル「機械制御研究部」、略称【機研(キケン)】。
キケン、それは即ち危険。
これは正しく危険人物に率いられた、【機研】黄金時代の物語である。

なんというか、大学時代の一番はっちゃけた男連中が引き起こす、ノリと勢いがすべての日々を綴ったお話です。たとえて言うなら、全編通じて『学園祭前日』の雰囲気。究極超人あ〜るの『光画部』を思い出させる、ひたすら全身全霊をこめて馬鹿をやる、そんなお話。
とにかく読んでいて楽しかたです。学生時代に部活で無茶をした人間なら、多かれ少なかれ共感できる部分があるんじゃないでしょうか(笑)
部長の「ユナ・ボマー(爆弾魔)上野」と副部長の「名字を一文字隠した大神(大魔神)」もなかなか濃いキャラなんですけど、だんだんそれに感化されていく新入生達がまた良い味出しているったらvv
途中までは「機械制御研究部って割にメカニックな話が少ないなあ」と思っていたら、後半はそういうテイストもきっちり盛り込まれていましたし♪
そして各話の扉マンガも楽しかったし、最終話の見開きページのアレもまた見事な演出でした。いや素晴らしい。
やっぱり有川さんの話はノリが良くて読みやすいですね。一気に読み切ってしまいました。オススメです。
No.3410 (読書)


 2011年10月03日の読書
2011年10月03日(Mon) 
本日の初読図書:
4778010183市長遠山京香 (6) (Judy Comics)
赤石 路代
小学館クリエイティブ 2006-07-26

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……えーと一話目はなんだ、メインは男尊女卑の職員の意識改革? 陰湿な職場イジメ? 未婚の母予備軍? ちょっと焦点がぼやけてたかも。
以下、大学受験日の大雪対策、甲子園出場校が起こした傷害事件の真相、被害状況の判らない震災への救助派遣の是非(前後編)。
震災ネタは、いま読むとちょっとキツイですね……
このシリーズは基本、現代版水戸黄門。勧善懲悪と予定調和が絡み合った御都合主義話なので、気になる人は「ねーよ、こんなの」と思うかもしれません。私はスキッとするので大好きなんですが。しかしさすがに連日で読むと、多少は気になるかも(苦笑)
No.3400 (読書)


 2011年10月02日の読書
2011年10月02日(Sun) 
本日の初読図書:
4778010051市長 遠山京香 (5) (ジュディーコミックス)
赤石 路代
小学館 2005-12-20

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図書館の本に描かれた二種類の落書きに隠された背景、タレント動物事務所から逃げ出したライオンに対する市長の決断、ゴミ屋敷の真実、不登校生徒の事情、リフォーム詐欺と、今回も市長は様々な事件に出会っております。
図書館の事情とか、いまお世話になってるから身に染みるなあ。そしてゴミの分別とかよく判ってない私は耳が痛い……
学校は正直、行きたくなかったですねえ。小中はプチいじめられっ子だったし、高校時代は勉強が嫌で嫌で……部活(文芸部)と帰宅時に立ち寄る本屋だけが楽しみでした。
あの頃は「学校行かなくて良い」なんて選択肢はなかったけど、今も不登校が許される子はどれぐらいいるんだろう。
No.3398 (読書)


 2011年09月30日の読書
2011年09月30日(Fri) 
本日の初読図書:
4864231338MOON・TRICK(2) (冬水社・いち*ラキコミックス)
森本 秀
冬水社 2011-09-20

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夜ごと異なる動物に変身する不思議体質の斗哉くんと、その父で犬に変身しっぱなしの真(シン)さん、異世界人の血を引き謎な能力を多々持ち合わせる楪(ゆずりは)さんに、そんな彼らを取りまく愉快な仲間達のお話。
今回は前回のラストでシメになった「仲間を捜そう」のコンセプトを元に、どんどんキャラクターが増えてゆきます。出てくる動物も様々で、相変わらず愛らしいったらvv
今回の個人的ヒットは、ウォンバットとモモンガでしょうか。新キャラ衣咲(いさ)は、普通に考えると格好いい系のはずなのに、何故か小動物的イメージが(笑)
そして煮えたぎった油に指突っ込んで平気な楪さんは、本当に謎過ぎます……
あと、巻末書き下ろしの大雅くんは、1巻の感想でも書きましたが、本当にすごすぎますね。異世界特殊体質の斗哉と、同レベルで筋トレできる肉体能力って……(汗)
No.3396 (読書)


 2011年09月29日の読書
2011年09月29日(Thr) 
本日の初読図書:
4488587038チャリオンの影 下 (創元推理文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド 鍛治 靖子
東京創元社 2007-01-30

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国子テイデスを堕落させると共に、その姉イセーレとの政略結婚を試みる宰相一派。もはや宰相の弟ドンドとの婚姻が翌日に迫ったとき、カザリルは最終手段として自らの命を贄とする「死の儀式」をもってドンドを殺そうとした。結果ドンドは死亡したが、何故かカザリルは死ななかった。腹に腫瘍を生じ下血に苦しみながらも生きている彼の姿に、宰相一派は死の儀式を行った者は国姫一行ではないと結論する。
イセーレ達は宰相側が次の手を打ってくる前に、身の安全を図ることにした。それはより「まし」な相手との婚姻を先に結んでしまうこと。内密の協議の結果、選ばれたのは、内戦が終わったばかりの隣国イブラの国子だった。
しかし実際に手続きを始める前に、テイデスが感染症により死亡。また彼が行った暴挙により王家に伝わる呪いが活性化し、国主オルコは病に倒れた。いまや新たな国子となったイセーレの婚姻は、うかつに行えば隣国へ故国を売り渡す反逆行為となる。チャリオンの権利をなにひとつ損なわぬまま、隣国の国子をあがなってくること。その重大な任務をこなせるだけの能力と忠節を兼ね備えたのは、もはやカザリルしかいなかった。死の儀式で弱った身体に鞭打ち、イブラへと旅立つカザリル。宰相ジロナルの妨害や、狡猾な国主と伝えられるイブラの古狐との交渉など、困難は数えあげればきりがない。
それでも使命を果たすべく、イブラへとたどり着いたカザリルを出迎えたのは、何故か彼を「カズ」と呼ぶ国子ベルゴンで ――

なんかもう、全編通じて主役がよれよれです(哀)
イセーレの祈りに応えた姫神の加護によって、かろうじて死こそ免れたものの、腹中には外から見てそうと判るほどの大きな腫瘍を生じ、そこに封じられたドンドの魂と死の儀式を行使する魔によって、毎晩毎夜苛まれる始末。そんな状態で馬に乗って、八百マイルの過酷な旅へ出発し、行った先では威厳を失わぬように交渉を行う。途中には宰相からの襲撃も受けるし、倒れるわ吐くわ下血するわ。
視点がほぼカザリルに固定されているので、自己評価の低い彼の目から見たその姿は、不様で哀れなひどいものです。
でも、ひるがえって第三者の目から見た彼は、有能で高潔で忠誠心の篤い、とても立派な人物なのです。本人は最後まで自覚ありませんが。

それにしてもいざ下巻を読んでみて、上巻でさりげなく語られていたガレー船でのエピソードが、こう関わってくるとは思いもしませんでした。まったくもって見事。
イセーレの旦那に半端な人物は許せん! とか思っていたのですけれど、そのあたりを読んで唸らされました。うむ、これなら許せます。
……旦那とイセーレの二人ともカザリル好きすぎで、ちょっと笑えますがvv

まあ、なにはともあれハッピーエンドでなによりでした。面白かったです。
No.3393 (読書)


 2011年09月26日の読書
2011年09月26日(Mon) 
本日の初読図書:
4167773333ワーキング・ホリデー (文春文庫)
坂木 司
文藝春秋 2010-01-08

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元ヤンで微妙に売れないホストの沖田大和。
ある日店にやってきた小学生の男の子は、「初めまして。お父さん」と大和に告げた。
聞けば子供 ―― 神保進は、かつて別れた恋人 有希子の子供で、父親は事故で死んだと聞かされていたらしい。しかし母親が隠していた写真や住所録から大和の存在を見つけだし、夏休みを利用して会いに来たのだという。
折りしも店で問題を起こした大和は、ホストクラブから系列店の宅配便会社へと配置換えになった。慣れない仕事をこなしつつ、初めて会う息子と手探りで交流を深めてゆく大和。
ぎこちない親子の一夏の交流を描き出した物語。

客を殴って ―― と言っても、悪い男に騙されている女性客の、目を覚まさせるためという非常に男らしい理由 ―― ホストを首になり、同じオーナーが経営する宅配便会社へと再雇用された大和。元ヤンの腕を生かして華麗なドライビングテクニックを見せてやるぜ! と意気込んでいたら……任されたのはなんとリヤカー(笑)
雨の日も風の日も、重いリヤカーを引いて働く大和は、ホスト時代のスマートさはないけれど、でもとっても格好いいのです。
新米お父さんとしても試行錯誤や失敗を繰り返しますが、それでも押さえるべきところはびしっと押さえるいい男ですvv
過去の失敗をきちんと糧にできているあたりが素晴らしいんですよねえ(しみじみ)
あ、ちなみに今回は珍しくミステリ色が薄く、普通に父と子の交流話でした。割とさらっと読みおわれる感じです。
できればもうちょっと進くんと母親サイドの事情に説明が欲しかったかな……?
っていうか、進くん、家事とかできすぎ。苦手な私は劣等感覚えちゃうよ(しょぼん)

そうそう、「ひきこもり探偵」の木村栄三郎じいさんが名前だけ出てきてました。さらに名前だけ出てくる新井クリーニングは、「切れない糸」だったでしょうか?
「ホテル・ジューシー」や「先生と僕」、そして「和菓子のアン」ともリンクしているようで、こういうさりげない坂木ワールドに気付けると楽しいですねvv

4778010043市長遠山京香 (4) (Judy Comics)
赤石 路代
小学館クリエイティブ 2005-02-25

by G-Tools
今回は京香さんが収賄疑惑を受けて、辞任に追い込まれるという大事件発生。もちろん最後は再選してめでたしめでたしなんですけどね(笑)
しかし辞任から再選挙→当選までって、どれぐらいの時間がかかるんだろう……?
あと今回の「荒れる成人式問題」は、このシリーズにしては珍しく、ちょっと爽快感が少なかったかな。私が「TVやイベントに、事情がよく判っていない子供を利用する」というシチュエーションが嫌いなせいかもしれませんが。
たとえばいくら売れている子役だからといって、料理の値段当てショーとかに小学生出すのはいかがなものかと思うんですよ。人生経験、絶対的に足りてないだろう子供に、高級料理を食べさせて、判る訳ないだろう値段を言わせるって……大人になってからその番組を見た当人は、はたしてどんなふうに思うんだろう……
No.3389 (読書)


 2011年09月25日の読書
2011年09月25日(Sun) 
本日の初読図書:
4163805702陰陽師 醍醐ノ巻
夢枕 獏
文藝春秋 2011-05

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置場がないのでついに既刊を手放して、続きを含めて図書館で読むことにしました。新刊入って予約してから、順番来るまでに二ヶ月ぐらいかかりましたよ……
今回の見どころは「笛吹童子」でしょうか。なんとあの無欲で恬淡とした博雅さんが、他人様に嫉妬しております! それが「楽の才」についてなのが、いかにも彼らしいですが。しかもオチがまた楽聖たる彼らしいところで。結局は博雅さんが一番なんですねvv
そして相変わらず晴明さんとは、妖しい雰囲気がうふふと言うところ。
今作も道満に蝉丸法師に露子姫に保憲さんにと、いつものキャラクターが揃い踏み。露子姫好きだなあ。露子姫なら、晴明さんの妻として認めても良いかもしれません。
しかし気になったのは、なんだかみなさん、やたら語尾に「〜じゃ」をつけること。
これまでこのシリーズ、こんな口調でしたっけ……?
No.3387 (読書)


 2011年09月23日の読書
2011年09月23日(Fri) 
本日の初読図書:
4150116393ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)
ウェン スペンサー エナミカツミ
早川書房 2007-10-24

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男性が人口の5%未満しか産まれない世界。
クイーンズランドは当然、女王が治める女性主体の国だった。女性が働き、女性が武器を取り、そして多くの姉妹で夫を共有する。男子は家族の世話をしながら家の奥で守られて過ごし、年頃になると姉妹達の夫を得るべく交換婚に出されるか、金と引き替えに売られていく。そう、この世界では男子は家族の共有財産であり、権利などというものは存在しないのだった。
地方の地主ウィスラー家の長男、ジェリンはもうすぐ成人の16歳を迎える。彼にはなんと三人(!)もの弟が存在するが、二十八人いる姉妹達のためにもできるだけ良い条件の夫と交換されるか、売られるべき立場にある。それは誰にとっても当然のことだったが、現在婿入り先の最有力候補である隣の地主は、とても良い相手とは言えなかった。恐れ悩むジェリンに長姉エルデストは、「うちには他にも男子がいるのだから、最初の求婚を無理に受けることはない」となぐさめてくれるが、それでも不安は消えない。
そんなある日のこと、母や姉たちの留守中に近くの川で若い兵士(女)が襲われているのを、妹の一人が発見した。かろうじて賊どもを追い払った妹だったが、まだ幼く非力なため、大人の身体を運ぶことができない。その時家にいるただひとりの大人だったジェリンは、勇気を鼓して危険ななか馬を駆り、兵士を家へと運んで手当てしてやった。
やがて意識を取り戻した兵士は、なんと王女のひとりオディーリア。王家が発注していた武器を奪った賊を追っているうち、返り討ちにあい、危うく命を落としかけたのだという。彼女を迎えに来た王家の長姉エルデストレン王女は、心優しく知的でしかも美しいジェリンに心惹かれる。しかし地主とはいえ農家と王家とでは、とても結婚などできるわけがない。
だが……ウィスラー家には秘密があった。かつて祖母の代に現王家の密偵として働いていた彼女達は、王家が二つに割れた内戦の際、敗者となった側から秘密裏に王子を略奪し、夫としていたのだ。つまりジェリンにはわずかとはいえ王族の血が流れているのである。
それを知ったレンは現大母女王に、彼に求婚したい旨を乞うた。女王は夫を共有することになる妹達のうち、現在成人している五人全員が賛成するならば許そうと答える。そうして彼らの人となりを見きわめるため、ジェリンとその姉達を夏の社交シーズンの間、王女を助けた礼を名目として王宮に招待することにした。
良い条件の夫(ジェリンの売り先)を見つける素晴らしい場に巡り会えたと、姉達は喜びながらも慎重に招待を受けた。そうして迎えられた貴族の間で、やはりジェリンの美貌や優雅な立ち振る舞いは熱い注目を浴びる。
だがやがて、彼らは王宮転覆を狙う巨大な陰謀へと巻き込まれてゆき……

昨夜遅くに読了。これも三日ぐらいかかりましたが、かなり面白かったです。
それにしても、はたしてこれもハーレムものと言って良いものか(笑)
世界観は、西部劇と産業革命の頃を足して二で割ったような感じかな? 「南北戦争時代の少し前」というレビューもありました。
三十二人の姉妹兄弟に四人も男性が含まれているということで、種馬として最高の血筋だと賞賛される世界。裕福な家では複数の夫を買うことも可能だけれど、基本的には十〜三十人ぐらいの異母姉妹たちで一人の夫を共有し、産まれた子供達はすべて一家の「きょうだい」として育てられる。つまり一夫多妻が当たり前。
しかし男性の地位はけして高くなく、一般家庭では普通文字も読めません。ろくな教育も与えられぬまま、ただ「従順であれ」としつけられ、家事をするのがその役目。それどころか『ひとさらい』に逢わぬよう、つねに姉妹達に守られて、家からほとんど出ることすらできない生活を義務づけられています。
ジェリンはそんな中では異色の存在。元密偵の祖母と、元王族の祖父を持つ彼は、『男だてら』に読み書きも武器の取り扱いも教えられ、乗馬や鍵開けまでこなします。もちろん男性の勤めである家事や礼儀作法もしっかりと仕込まれており、女性達に誘いを受けると頬を染める奥ゆかしさ。男性にしてはひどく知性的で思慮深く、幼い子供たちを優しくかつしっかりと面倒見る姿に、王女たちは皆あっという間に陥落してゆきます。
ちなみに本人は己の美貌に自覚がない、ちょっと天然気味な部分も楽しいところ。なにしろ自分以外の男性を目にすることすら稀な世界ですからして。

そう、この世界構築の妙が素晴らしいのです。出てくる女性達の、なんと『男らしい』こと。ウィスラー家のエルデストは、思慮深く責任感が強くて家族を愛し、ここぞと言う場面では武器を手に凛々しく戦う格好良さ。レン王女と副官のレイヴンは、軍を指揮して賊を相手に大砲ぷっぱなすし、行方不明だった王女ハリーは大胆にも敵方に潜り込んで潜入捜査しているしvv
それに比べて男達は『たおやか』で、常に搾取される側。中には売淫宿クリブに売られ、夫を買えない女達に一夜の種馬として酷使される哀れな存在もいます。レイプという言葉が適用されるのも、男性の側。
読んでいてときどき頭がこんがらがってきます。特に一夫多妻なのに女性側に優先権がある相続・姻戚関係など、なにがなんだか訳ワカメ(苦笑)
でもそれがたまらん面白いのです。

ちなみに難点は、キャラクターの外見描写が少ないあたりでしょうか。服装の説明もいまひとつ判りにくいです。 ジェリンが着ている外出着は、はたしてズボンなのかスカートなのか??
特に表紙絵はどれが誰だか、なかなか判らなくって参りました。手前の女の子と左の緑の服の女性なんて、かなり最後の方まで「誰これ?」みたいな感じでしたよ。右側に書かれている主役(男)も、途中までその姉(コレル)だと思って読んでいたり。 っていうか、あちこちの感想読むとあの二人、髪染めたハリーと同じくエルディじゃないのか!? まさかコレルとブラッシュ!?!? だったら確かにキャラのチョイス間違ってる……

ストーリーそのものはなんというかお約束的な感じですが、文章も翻訳物にしては読みやすいし、設定やキャラ造形が魅力的なので、これはかなりオススメします。
図書館とかにあったら、是非、手に取ってみてはいかがでしょうか。
No.3384 (読書)


 2011年09月22日の読書
2011年09月22日(Thr) 
本日の初読図書:
4778010035市長 遠山京香 (3)
赤石 路代
小学館 2004-03-26

by G-Tools
相変わらず全体的なテーマは「子供を守ろう」。
今回は産廃の不法投棄に開かずの踏切や違法駐車などの渋滞問題。無認可保育園での事故がきっかけとなった誘拐事件と、高層マンション建築による日照問題、テロによる大停電。
毎度ながら、週間ドラマを見ている気分になります(笑)
とにかく途中の決め台詞と、最後の「華浜市には〜〜な市長がいる」とか「市長は今日も〜〜と戦っている」というシメが格好いいんですよね。
ついつらつらと読んでしまいますvv
No.3381 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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