よしなしことを、日々徒然に……
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 2011年11月29日の読書
2011年11月29日(Tue) 
本日の初読図書:
「【習作】喫茶店?いいえ茶屋です(Arcdia)」〜06
 http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=29510

異世界に落ちて何故か若返りまでしてしまった少年が、喫茶店ならぬ和食を提供する茶店を経営するお話。日常ほのぼの系。
習作と言うだけあって、細かい設定はすっ飛ばしなのか、あえてそのへんはシンプルにしているのか。主役のトリップ前が青年だったのか老人なのか。何故、和食作成の知識がそんなにあるのか……それどころか名前さえ不明です。
ただのんびりまったり、創作和食(和菓子)を造って常連友人に提供しているだけ。
読んでいるとそれなりに和むかと。
No.3505 (読書)


 2011年11月28日の読書
2011年11月28日(Mon) 
本日の初読図書:
4125011761祝もものき事務所2 (C・NOVELSファンタジア)
茅田 砂胡 睦月 ムンク
中央公論新社 2011-11-24

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やる気も推理力もない、ただありえない確率で手がかりを「偶然」引き寄せる。そんな才能を持つ調査事務所所長のお話、2冊目。
1巻がゲストキャラと状況説明ばかり目立つ話だったので、続編に期待していたのですけれど……今回もやっぱりそんな感じでした。むしろ輪をかけてメインキャラが空気。
さらに言うなら、ゲストキャラの人間関係がややこしすぎて、もうなにがなんだか。
離婚再婚養子縁組が入り乱れ、資産家の遺産相続問題ががっぷり三つ巴。名前だけ出てきた登場人物含めるなら、三十人ぐらいいたんじゃなかろうか(汗)
そしてゲストキャラ達は相変わらず、気っ風の良い男前な味方と下劣で低能な悪役という感じ。味方はどこまでも魅力的で、悪役はどこまでもお粗末です。
んー……せっかく設定を個性的にしてあるのだから、もうちょっとメインキャラ達を活躍させてほしいなあと思いました。話の展開も、視野の狭い思い上がりの資産家をこき下ろすという、前作と同じパターンでしたし。
しかも今回は、せっかくの太朗ちゃんの特異体質もそんなにクローズアップされてなかった感じだったりとか、思うところはいろいろと。
まあ気軽に楽しく読めたことは確かなんですけどね。
まさにコピーの如く「事件はあっても推理はない」という感じでした。
No.3503 (読書)


 2011年11月26日の読書
2011年11月26日(Sat) 
4864231389G・DEFEND(39) (冬水社・いち*ラキコミックス)
森本 秀
冬水社 2011-11-20

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もうすぐ40巻の大台。既に出ることは決定してるらしいですね。私が持ってるマンガの中では、一番巻数あるかも? あ、QEDが既に40到達してるか。
とまれ今回は、石川にプロポーズする同性婚OKの国の美形王子様来日話、ガードドッグ導入計画に伴う尾美の犬トラウマ克服話の二本立て。
王子様が国会内でテロに襲われて大変なことになりましたが、今回も篠井副隊長は御不在でした_| ̄|○
あの人、心身ともに強すぎるせいで、いらっしゃると危機的状況が成り立たないからじゃないかとか、邪推してしまいますよ森本先生……(しくしくしく)<かなり好き
美形王子は引き際が良かったこともあり好印象。尾美もダグだけは大丈夫になったようで、良かったです。がんばれ、次はキャロルだ(ぐっ)
……ちなみにキャロルがどういう犬だったのか、しばらく思い出せなかったりとか。やっぱりここまでシリーズが長くなってくると、細かいエピソード忘れてきますね(汗)
キャラもずいぶん増えてきて、読んでいて「??」なことも多いです。30巻まではスキャニングしちゃったから、なかなかパラパラッとめくり返せないしなあ。
No.3500 (読書)


 2011年11月25日の読書
2011年11月25日(Fri) 
本日の初読図書:
448841611X雲上都市の大冒険 (創元推理文庫)
山口 芳宏
東京創元社 2011-01-08

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戦争後の復興も落ち着きを見せてきた、昭和二十七年。
東北の海抜千メートルに位置する四場浦連峰には、『雲上の楽園』と称される大規模な鉱山都市が存在していた。労働従事者は五千人、家族などを含めると一万三千人以上が住むその都市には、学校や病院、郵便局などの各種施設が完備され、電気、ガス、水道といった光熱費も無料なのだという。
そんな『楽園』で、恐ろしい殺人事件が起こった。撲殺後に死体を鉱山内の線路に放置、首と足を切断されたのは、鉱山の持ち主である三河正造社長。事前に予告したうえで彼を殺したのは、正造らによって二十年以上も鉱山内に監禁されていたという謎の男、岸本座吾朗らしい。しかし座吾朗は事件の前日まで鉄扉を溶接した密室の中に閉じこめられており、正造が死んだときもその扉は閉ざされたまま、忽然と姿だけが消え去っていたのである。
そしてさらに凄惨な、第二第三の殺人が続く ――
座吾朗はどうやって地下牢から脱出したのか。何故、正造達を殺してゆくのか。そもそもどうして彼は、二十年も閉じこめられていなければならなかったのか。
横浜で開業している弁護士の殿島は、正造の息子である正一郎から呼び出しを受ける。それは警察への対応と、そして事件解決を依頼した探偵の助手を務めよとの理由からだった。
気が進まないながらも訪れた東北で彼を迎えたのは、非常に奇矯で個性的な二人の探偵。
かたや白いスーツを着こなす行動派、眉目秀麗で気障な荒城咲之助。
こなた黒い学生服をまとい近未来的な義手を使いこなす、おしゃべりな頭脳派 真野原玄志郎。
二人の探偵と助手に任じられた弁護士は、果たして事件の謎を解き、連続殺人を食い止められるのか ――

タイトルと表紙に惹かれて読み始めたのですが、最初は少々しんどかったです。語り手の殿島さんは周囲に振り回されすぎだし、探偵達はエキセントリックすぎて、なんだかついていけないし。
ぶっちゃけ最初の五十ページを読むだけで、二日ぐらいかかりました。しかし真野原がいったん諸事情で姿を消し、荒城と殿島が皆の前でお約束の推理ミスをかますという一幕を越えてからが、面白くなってきて。
っていうか、推理ミスしてちょっとテンションの下がった荒城が、なんだか可愛く見えてきたというか(笑)
殿島を使える助手と認めて、一緒に行動し始めるとなんだか微笑ましいvv
その後、真野原にバトンタッチしてからも、なんだかんだで殿島さん、しっかり認められてる感じだし。やはりワトソン役は探偵の良き相棒でなければなりませんよね、ふふふふふ。
この話はタイプの異なる二人の探偵が登場しますが、どちらもしっかりキャラが立っていて、ちゃんとそれぞれに見せ場があったので嬉しかったですね。もちろん助手の殿島さんも。さて、あなたはどなたがお好みですか? みたいな。
しかし人の命がなんだか軽く扱われているのは、ちょっと気になりました。……まあ、ミステリ物でそこを気にするのが間違いかもしれませんが。しかし何人も人が死んでおいて、本当に悼まれているのは半分もいるのかどうか。とばっちりで殺された警官や鉱夫なんて、存在すら忘れられてないか……?
まあそれはさておき。
トリックの是非とか、探偵としての有りようとしてそれはどうなのとか、つっこみどころはいろいろありましたけれど、総じて面白かったです。いきなり二十一世紀に飛ぶエピローグの雰囲気とか、こういうのけっこう好きです。
とりあえず続きが二冊ほど出ているようなので、そちらもまたチェックしてみようかと。
……真野原が片腕を無くした経緯とか、探偵二人が知り合った状況とか、そのあたりも気になるなあ。
No.3499 (読書)


 2011年11月22日の読書
2011年11月22日(Tue) 
本日の初読図書:
「スイスのロビンソン」ヨハン=ダビット=ウィース、小川超訳

嵐で船が座礁し、マレー近辺の名もなき無人島に放り出されてしまったスイスの牧師夫婦と四人の息子達。ボートで脱出した他の船員は誰一人助からなかったけれど、幸い船には開拓移民用の資材や家畜が豊富に残されていた。
島に上陸した一家は船から少しずつ資材を運び、野獣を避けるためのツリーハウスや洞窟に手を入れた岩屋などを作ってゆく。家畜を増やし、野菜や果樹を植え、危険な猛獣と戦ったり、野生動物を飼い慣らしたり。
そうして無人の島を開墾し、彼らは「新スイス国」を作り上げてゆく。
家族六人と家畜達だけが住まうその土地で、いつしか十年の月日が過ぎていったが ――

この日記で何度も話題にしている「スイスのロビンソン」。
これまで読んでいたのは宇多五郎訳の旧字新仮名版でしたが、こちらは小川超訳の新字新仮名、つまり現代語です。出版されたのがたった二十年がとこ違うだけで、こんなに読みやすい文章に変わるんですね……ちょうど過渡期でもあったのでしょうが、ちょっとびっくりしました。残念ながらこちらも現在は絶版。 Amazon でも見つからなかったので、書影はなしです。
でもって、内容は宇多版とほぼ変わりませんでした。どちらも完訳と言っていいんでしょうね。岩波文庫上下巻と比べて、ハードカバー 360 ページでも、削られていると感じた所はほぼありません。場所によっては多少記述が簡略になってるかな、という程度で。むしろ挿し絵が多く、地図も拡大されて(そのかわり一部になってましたけど)いたので、ずいぶん判りやすくなっていました。
そうか、岩波版の地図は東が上になってたのか、とか……道理で読んでいて混乱したはずです。もっともこの本の地図も南が上になっているので、ときどき悩ませられましたけど。
あとちょっと残念だったのは、各地の名称が一部横文字のままだったところですね。
宇多版では「テントの家」だったのが「ツェルトハイム」、「たかの巣城」は「ファルケンホルスト」、「岩屋」が「フェルゼンハイム」などなど、馴染みのないドイツ語のままだと、どれがどこだか混乱してしまいました。このあたりはかの「指輪物語」が映画化された際の翻訳でも、ファンの間でいささか問題になりましたっけ。

ちなみに小川さんの著作権が切れるのは、宇多さんと同じ年。どうせテキスト化するなら、むしろこっちの方がむいてそうですね(笑)
No.3495 (読書)


 2011年11月19日の読書
2011年11月19日(Sat) 
本日の初読図書:
4796402454恋する暴君 7 (GUSH COMICS)
高永 ひなこ
海王社 2011-11-10

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最終章前編に当たるらしい今回は、先輩がなんだかぐるぐるしています。
これまでは「ホモ全否定・限定森永のみたまに嫌々ながら体だけ」だったのが、あれこれ一人で思い出して思わず赤くなったり、森永の就職問題や昔の恋人登場に混乱してみたり。
まわりから見るとどう見ても意識してたり嫉妬したりと、独占欲を見せつつあるのですけれど、本人は頑として認めようとしていません。
んー、男らしいまでに男らしい人ですから、ホモに嫌悪感があるのも経済的にも支えたいと言われて「養われる気はない」と反発してしまうのも判るんですけどね。でもざっくり突き放される森永くんが、さすがに気の毒です。
次の巻で一段落はつくそうなので、早く心安らかになれることを祈りつつ、続きを待ちたいと思います。
No.3489 (読書)


 2011年11月17日の読書
2011年11月17日(Thr) 
本日の初読図書:
モルグの番人 (白泉社花丸文庫)モルグの番人 (白泉社花丸文庫)
今城 けい 陸裕 千景子

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雑誌記者の須賀傭一には、いっぷう変わった友人がいる。
IQ200 の天才的頭脳に、完璧とも言える美貌を兼ね備えた青年、連城柳だ。彼はその素晴らしい才能や見た目とは裏腹に、傭一以外の人間にまったく興味を持たず、その傭一に対してさえ出会うたび認識するのに数秒を要するという、奇矯な人物である。彼は新聞社の中でも死者のデータばかりを扱う特殊な部署『モルグ』にただ一人で務めており、毎日毎日同じ時刻に同じ行動をとることで心の平安を保っていた。
ある日のこと、傭一は手違いから非合法のアダルトビデオを入手する。そしてその中で暴行を受けていた少年モデルが、既に変死体で見つかっていることを柳が指摘した。
陰惨なその手口に、さらなる犠牲者が存在することを予測した傭一は、無理矢理売春させられている少年達を救うため、事件を解明し記事にするため活動を始める。
だがモデル事務所の社長やヤクザが絡んだその事件を追う内に、傭一は長年心の内に秘めてきた、柳への恋情を思い知らされることとなり ――

以前ネットで読んだのを、ふと読み返したくなってサイトに行ったらば、見当たりません。あれ? と思って作品名で検索してみると、いつの間にやら商業出版されてました。関連番外編まで削除されているのがもったいない……かなりの長編もあったのに_| ̄|○
ブログから行ける閲覧室にいくつかは残ってるみたいですが、ほんとに残念です。 ああでも読んで気に入られた方は、下記URLに行ってみたり、「柳 傭一 Kの伝説」で検索かけてみると、ちょっと幸せになれるかもしれません(ぼそ)

でもって、内容はというと……共依存万歳vv というか。
受けの柳は「国語の長文読解以外は満点」という超天才ながら、対人コミュ能力というか、どうも精神的にどっか瑕疵があるとしか思えない無感情無機質な人間。一方攻めの傭一はそれなりに有能、誠実で人も良いのに、見た目の凶悪さから周囲に一歩引かれてしまうタイプ。
ぶっちゃけ「限定対象にのみヘタレな肉食大型犬×精神的に欠けたところのあるクールビューティー」という、個人的めっさ好みな取り合わせなのです。
傭一は高校時代からの十年ごし片思いを持て余し、柳は「好きという感情がわからない」とか言いながら、傭一と一時でも離れていたくないためだけに、ネットで犯罪まがいの大規模情報操作を行うかっ飛びぶり。
お互いだけが判っていない、ラブラブ両思いに乾杯です。脇キャラの寺本がまた、二人の良き理解者で良い味を出してるんですよ。

事件の内容的に暴力表現とかはあるものの、いわゆるやおい的シーンは少ないように感じました。表紙はアレなのに(勇気がなくて画像小さめに/汗)、攻めさんがへたれてるから、最後の最後まで手を出せないんですよ。出しても夢オチとかで(苦笑) それでこの表紙はいかがなものか……<外で読めない(−ー;)
でも欠陥アンドロイドのような柳と、それを包み込む傭一の絆で、充分お腹一杯になれるのでしたvv

「A boy meets a...(オンライン小説)」
「Don't cry for me(オンライン小説)」
 http://lilith.websozai.jp/devil/

上記「モルグの番人」の出会い編と続編。
本作を読まれた方は、こちらも目を通されることをオススメします。
No.3485 (読書)


 2011年11月15日の読書
2011年11月15日(Tue) 
本日の初読図書:
4101276315レインツリーの国 (新潮文庫)
有川 浩
新潮社 2009-06-27

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社会人三年生のサラリーマン向坂伸行は、結末が衝撃的だったため半ばトラウマ化しているある小説について、ネットで検索してみた。そうして見つけたのは「レインツリーの国」というサイト。そこでは「ひとみ」という名の女性管理人が、理知的で興味深い、伸行とはまた違った目線での感想を掲載していた。
思わず感動してメールを送った伸行に、返事は即座に返ってきた。やはり熱い情熱の感じられるそのメールに、伸行もさらに返信する。読む本の傾向が似通っており、微妙に違った観点からそれらを見つめる二人は、濃密なメールのやりとりから、あっという間に親しくなっていった。
お互い都内に住むことが判っていたので、伸行は直接会って話がしたいと持ちかけた。ところがひとみは乗り気になってくれない。
何度も誘いをかけて、ようやく会うことにこぎ着けたものの、彼女の行動はどうも違和感を覚えるものだった。メールではあれほど聡明だったひとみなのに、会話のテンポがずれたり、映画は字幕しか見たくないとわがままを言ったり、エレベーターで重量オーバーのブザーが鳴っても下りようとさえしない。
やがてその理由が明らかになる。
ひとみは両耳の聴力が著しく低い、補聴器を必要とする難聴者だったのだ。
それでも彼女が好きだと思った伸行は、これからも付き合いを続けていきたいと望むが、健常者と障碍者の壁はなかなかに厚くて ――

正直に言います。
読んでいて、途中うっかり泣きかけました。
っていうか、出先じゃなかったら、本当に一粒ぐらいは涙がこぼれていたかもしれません。

……ここでも何度か書いていますし、サイトにもちょっとテキストなど載せていますが、私も難聴持ちです。左耳はほぼ普通で、右耳はほとんど聞こえないという中途半端な状態ですが。
とりあえず日常生活する分には、まあ不自由ありません。家族もほとんど意識していないでしょう。
でも、厳然として、私は難聴なのです。

この作品の文中に、こうありました。

> 中途失聴や難聴者は聞こえないくせにしゃべれるからずるい。

と。
これは生まれつき耳が聞こえず言葉を話せない聾唖者が、高校生になってから聴覚を失ったため、しゃべることはできるひとみを責めた言葉です。
同じハンディを持つ仲間なのに、どうしてそのレベルが違うだけで一方的になじられなければならないのか。自分だって大変なのにと、ひとみはひどく傷つきます。
……ここを読んで、直接私に言われたわけではありませんが、以前片耳だけが聞こえない人達の交流掲示板に出入りしていた頃、両耳が聞こえないという人に書き込まれた内容を思い出しました。

曰く、「片方聞こえるくせに贅沢言うな(要約)」と。

……彼らからしてみれば、たかが片方聞こえないぐらいでグダグダ言うな、俺達は全然聞こえなくて大変なんだと、そういう思いだったのでしょう。でもその時に掲示板を見ていた私達は、作中のひとみ同様とても傷ついたものです。
それこそ「障害者という免罪符を持っているお前達(両耳難聴/聾者)に、障害者に与えられる援助や周囲の理解ももらえず、さりとて健常者にも届けない我々の気持ちが判るか!?」と、言い返したかったぐらいに。

そんな思い出を持つ私に、上記場面で伸行がくれた言葉は身に染みました。ちょっと長いので引用は避けますが、「ああそうか、そう言う見方もあるんだなあ」とささくれた心が和らぐ思いでした。
他にもひとみに共感させられる場面、そして伸行に救われる場面は随所にありました。
うんうん、そうそう。
ページをめくりながら、ひたすらに頷いていました。
ひとみは補聴器の助けと唇を読むことで、一対一ならある程度の会話をする事ができます。これがまた身につまされて……
私はそこまでひどくはないのですけれど、雑音の多い場所、たとえば呑み屋などでは基本一対一(せめて二)じゃないと会話ができません。相手の『声』は聞こえても、それを『言葉』として解析することができないんです。これは日常生活にもあてはまって、ちょっとした周囲の物音とか、時には自分が食べ物を咀嚼している音さえ邪魔になり、相手の言っている内容が聞き取れないことがしばしば。
なので私が会話するときは、基本的に手を止めて相手の口元を凝視し、唇の動きと前後の発言内容を元に脳味噌をフル回転させて、補完作業を行います。そうしてどうにか言葉を組み立てられたと思っても、やっぱり間違いはあるもので。たとえば「正)馬がいる」→「誤)あまがえる」、「正)お釣りいる?」→「誤)映り良い?」など、それはもういちいち覚えていられないほど、頻繁にかつ脈絡なく聞き間違えます。もう疲れるやら、いたたまれないやら……

……昼休みにお弁当食べながら、一対多でおしゃべりする女子組の付き合いが苦手な理由は、ここにあるのですよね。いやもちろん、会話の内容が合わないことも大きいんですけど(苦笑)<お洒落とか流行のドラマとか興味なし
同様に電話・来客応対も苦手だし(口元が見えなかったり、脳内補完するための事前情報がなかったりするから)、お店で店員さんと会話するのも×です(まわりがうるさくて聞こえない。特にファーストフード店とか最悪)。ここまでくると、ぶっちゃけ日常生活に支障ありといえなくもないような。
だいたい家族である次兄ですら、しょっちゅう「そんな目ェ見開いてこっち睨むな」とか言って、ひそかに凹ましてくれますし_| ̄|○<唇読んでるんだよ!

つい話が逸れましたが、とにかくこの本はそれぐらい、聴覚障害者の経験や心理についてよく調べて書かれていると思います。端っこにいる私ごときでは、気づきもしなかったことを逆に教えてくれるぐらいに。
ああ、この話、もっとたくさんの人に読んで欲しい。
ハンディを個性として、あるものはあるものとして、そのうえで普通に恋をしていこうとする伸行さんがとても眩しく、そしてそんな包容力を持つにいたった彼の過去がまた切ないです。うー、こうして書いてるだけで鼻がツンとしてくる。

あとこの話に共感できる理由のもうひとつに、二人の出会いのきっかけとなる、「フェアリーゲーム」という小説の存在があるかもしれません。
いや本文読んでいるとき、「この作中小説って、アレに似てる。もうアレにしか思えない」という作品があったのですよ。小学生の頃に読んでその衝撃の結末に、それこそひとみと伸行のように半ばトラウマ化してしまった小説が。
で、脳内でそれを当てはめて読んでいたら、巻末の参考文献リストにまさしくそのものズバリのタイトルが(驚)
道理でぴったりと感情移入できたはずです。っていうかこれは、それを悟らせた有川さんがすごいのか、それだけ見事な小説を過去に書いた笹●先生がすごいのか……(汗)
この作中小説についての考察も、長年のモヤモヤに一石を投じてくれました。

とにかく、いろんな意味で心揺さぶられたお話だったと思います。
機会があったら、是非是非手にとって欲しい一作でした。




なおこれは蛇足ですが。
聴覚障害者にも健常者にも、どちらにも入ることができない片耳難聴者の抱えるあれこれについて、このあたりをご覧になっていただけると、ちょっと嬉しかったりします。

■【中途半端】片耳難聴【健常者or障害者】
 http://yomi.mobi/read.cgi/human5/human5_handicap_1124425438
■片耳難聴を理解するために
 http://yomi.mobi/read.cgi/human5/human5_handicap_1144207735

2chログなので、慣れない方にはちょっと判りにくかったり、極端な意見や荒らしも混じっていたりしますが。
こういう悩みや不自由を持つ人間も、世の中には存在するのだと知っていただけたらなあと、そう思ってURLを貼っておきます。
No.3483 (読書)


 2011年11月14日の読書
2011年11月14日(Mon) 
本日の初読図書:
4840228248空の中
有川 浩
メディアワークス 2004-10-30

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高度二万メートルの深淵に、それは存在した。
誰の目に触れることもなくひっそりと、悠久の昔からそれはあり続けた。
これまでも、そしてこれからも、厳然として存在し続ける。そのはずであった。
だが……
航空機開発プロジェクトの試作機と自衛隊機が、高度二万メートルで相次いで爆散した。原因は判らない。
しかし二度目の事故で共に飛んでいた自衛隊機のパイロットは、『そこ』に『なにか』が存在していたのだと、そう主張した。
一方 ―― 死亡したパイロットの遺児である高校生の斉木瞬は、ある日のこと川縁で謎の生き物を拾った。最初は巨大なクラゲ状の軟体動物だったそれは、日が経つにつれて水分を飛ばし、やがて直径1mほどの浮遊する円盤と化した。しかもそれは拙いながらも日本語を操り、携帯電話を通じて瞬と会話するのである。
父を亡くした喪失感を埋めるように、フェイクと名付けた『それ』に愛情を注ぐ瞬。だがやがて判明したその思いもかけない正体に、すでにいびつだった精神の均衡を崩した彼は、取り返しのつかないことを命じてしまい ――

有川浩さんのデビュー二作目。自衛隊三部作の真ん中です。
デビュー作「塩の街」よりは落ち着いて読めたかな。途中やっぱり「人がゴミのようだ」的展開はありましたが、前作よりはましだったかと。それに途中ほのぼのしい所もいろいろあったし、最後はそれなりにハッピーエンドでしたし。
っていうか、春名さんの使える男ぶりに私はメロメロですよ。こういう一見へらへらと軽いのに、実は誠実で有能なタイプってすげえ好みなんで。
あと地味に宮じいが格好いい。ビバ、有意義に年をとった爺さん。
キャラ萌えを置いておくと、【白鯨】の設定が面白かったです。「全き一つ」にこだわるそのメンタリティとか、すごい練り込まれてる感じ。同じ言語を操りながら、その実はまったく異なる思考形態を持つ生き物と交渉を重ねていくその描写には、思わず引き込まれてしまいました。こういうものを思いつける発想って、本当にすごいなあと思います。
……さあて、三作目はどうしようかなあ。

「2億光年の先で・・・・・・(小説家になろう)」〜治癒士への対応
 http://ncode.syosetu.com/n3087q/

宇宙暦 15756 年。
ひとりの人間とアンドロイドからなる惑星改造艦隊。その唯一の人間にして艦隊司令だった如月タスクは、正体不明の空間異常により艦隊ごと遠方へ跳ばされてしまった。その距離2億光年。タキオン通信により地球との交信はできたが、帰還するにはワープ航法を駆使しても数千年の時を必要とする。有り体に言って島流しだ。
艦隊を自由に使って構わないから、自力でなんとか生き延びろと指令を受けたタスクは、幸運にも居住可能惑星を発見できた。しかもそこでは人間に酷似した生き物が、地球でいうなら十五世紀頃の文明を発展させていたのだ。
しばらく調査し、言語や習慣などを身に付けてから、タスクはアンドロイド達と共に地上へと降りて人々の間で暮らし始めた。この星には一定の割合で特殊能力を持つ者が存在しており、魔導士などと呼ばれて様々な魔法を扱っている。おかげでタスクが持っていた機材や薬なども、魔法の道具だと解釈されて受け入れられていった。
ところが宇宙では、タスクの艦隊がこの星にやってきたことで、とんでもない事態を招いており ――

他惑星という名の異世界トリップチート。
もともとが惑星改造を行う艦隊だったので、機材も豊富に持ち合わせており、資材に至ってはそこらの衛星や小惑星から採掘・調達して、月に工場を建設してしまうレベルです。
地球とも通信だけは繋がっているので、互いに情報をやりとりしあったり、雑誌(電子書籍)を送ってもらったりとけっこうお気楽です(笑)
今のところもっぱら、薬と治療カプセルを使用して凄腕治癒士として活動中。それと孤児達を教育して、福祉面の充実をはかったりとか。
途中、数百年後の時系列で番外編が挿入されており、なんとなく今後の展開は見えつつも、話はのんびりゆっくり続いています。先は長そう。
No.3482 (読書)


 2011年11月11日の読書
2011年11月11日(Fri) 
本日の初読図書:
4488698034親愛なるクローン (創元SF文庫)
ロイス・マクマスター ビジョルド Lois McMaster Bujold
東京創元社 1993-12

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なりゆきから傭兵団を立ち上げて七年。
二十四才になったマイルズは、ある時は一介の新人中尉ヴォルコシガン卿、ある時は皇帝直属の極秘部隊であるデンダリィ傭兵団を率いるネイスミス提督として二重生活を送っていた。
今回も星間抗争史に残るだろう大きな作戦を成功させ、地球へやってきた彼だったが、何故かバラヤー本星から報酬が届かず、しかもマイルズはロンドンの地球大使館に中尉として勤務するよう命じられる。
破損した艦の修理や負傷した人員の治療に団員達へ支払う給料など、団の資金繰りは破産寸前。しかも酒に酔った団員達が警察沙汰を引き起こし、ジャーナリストにヴォルコシガン卿=ネイスミス提督の図式を見破られそうになる。
マイルズはとっさに「ネイスミス提督はわたしのクローンなんです!」と言い放って急場をしのいだ。
ところが一難去ってまた一難。今度はバラヤーに恨みを持つ、コマール星人のテロリストに誘拐されてしまう。しかもその先で待っていたのは、帝位にも手が届く名門貴族の跡取りヴォルコシガン卿との入れ替わりを目的に作成された、正真正銘の非合法クローンで……

「ヴォルコシガン・サガ」二作目。
いきなり作中時間が七年もとんでいるし、発行されている中にはもっと前の時系列の作品や同世界観の別話などもあるようですが、とりあえずシリーズ作として書かれたものでは、二番目で間違いないようです。
……例によって本筋に入るまでが長く、クローン登場まで半分近くが費やされましたが、そこからの展開がおもしろかった!
正直いろいろなところであらすじを読んで想像していたのとは、かなり内容が違っていました。もっと善悪二元論のような、悪のクローンと善のオリジナルの手に汗握る入れ替わりとその告発、みたいな感じかと思いきや、どうしてどうして。
クローンを「年の離れた双児の弟」と表現し、(成長促進されているので、クローンの実年齢はかなり年下)名前のなかった彼にマークと名付けて呼びかけるマイルズの、その情の深さに感動です。
後顧の憂いを断つためにも、クローンに対しては断固とした態度を取るべきなのに、それを思いきれない彼は、救うものの中に自らの命と国への忠誠と、人質に取られた従兄弟、そしてもちろんデンダリィ傭兵団の仲間達と共に、マークまでも加えようとします。まさに「親愛なる」クローン。
最終的にマーク(クローン)の運命がどうなるのか……は、ネタバレなので伏せます。
ともあれ予想外のお話を読めて、今回も楽しかったです。
No.3478 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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 こんにちは、はじめまし..
 by 神崎真
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 早々、ご回答ありがとう..
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 こんばんは〜、いつもお..
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 ページ開けば回さなくて..
 by 既に解決してるでしょうが
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 黒糸、そうなんですよ。..
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 黒糸は繊細さと細糸感が..
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 重ね重ね、ありがとうご..
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 あわわ、入れたと思った..
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