2012年05月03日の読書
2012年05月03日(Thr)
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本日の初読図書: 342 頁を五日ほど掛かって読了。 ずっと話題にしていた、「厳窟王/モンテ・クリスト伯」を、「雪之丞変化」の三上於菟吉が大正8年に翻訳したもののオンデマンド復刻版です。文面は当時の版面をそのまま取りこんで印刷してあります。活字が古く、印刷もかなりかすれていて読みにくいかもしれません。でもそこがまた味わい深いvv 紙や製本は新しいから、壊す心配なく安心して読めますし。 人名は原作準拠のカタカナ表記。地名は漢字だったりカタカナだったり混在してますが、基本的に改変はありません。ストーリーも涙香版より原作に近かったかと。これは翻案ではなく、はっきりと翻訳ですね。 この巻はフランツがモンテ・クリスト島で麻實精を飲んで陶酔するところまで。 いやはや、やはりおもしろかったvv 涙香版ほどの迫力はさすがに感じませんでしたが、これはストーリーを読み慣れてしまったからなのか、それとも文章が現代文に近いからなのか。 もっとも見慣れない漢字や熟語はいっぱい出てきて、電子辞書が手放せませんでしたが。 読んでいて気になったのは、フアリア法師と脱獄計画を練る際の通路の掘り方とか、宝を探す際の巌山の仕掛けについての描写とかが、微妙に判りにくかったところでしょうか。涙香版や山内義雄版と読み比べて、ようやくどうなっているのか想像できたような。 ……っていうか、いままでいろいろ勘違いしてました。そうか、洞窟の穴は崖じゃなくて地面に開いていたのか……
そしておもしろいなあと思ったのは、まだ海外作品がそんなに日本で普及していなかった頃のだからか、今だとお約束になっている言葉の翻訳が、独自のものになっているあたりですね。一番印象深かったのが、
アラビヤの樵夫の話を思ひ出して叫んだ。「さあ、セザムよ、ひらけ!」
というくだり。これってつまり、アラビアンナイトの「オープン・セサミ」すなわち「開けゴマ!」のことですよね? 注釈もないし、当時の人は読んでて意味が判ったのかなあ(ちなみに涙香版だと、この台詞はカットされてます)。
ああ、それにしても本当に、テキスト入力して公開したい〜〜《o(><)o》 著作権が切れるまであと九年……いまから入力始めたら、三冊分終わるのにちょうどそれぐらいかかるかなあ(笑)
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No.3737
(読書)
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2012年04月27日の読書
2012年04月27日(Fri)
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本日の初読図書: 南北戦争終了後のアリゾナで金鉱を探していたジョン・カーターは、ある日インデアンに襲われ洞窟に逃げ込んだ。が、そこには毒ガスが発生しており、倒れて動けなくなってしまう。だが気がついたときには、彼は火星の黄色い野原にいたのだった。 地球とはまったく異質な文化を持ちながら、資源の枯渇などから滅びに瀕している火星。そこには巨大で四本腕を生やした獰猛な緑色人や、発達した科学力を持ち地球人と良く似た姿の赤色人などが暮らしていた。 彼らは程度の差こそあれみなひどく好戦的で、それぞれに皇帝を戴き、戦争に明け暮れている。 文字通り身ひとつで火星に飛ばされたジョン・カーターは、はじめ緑色人の捕虜となるが、その強さで次第に頭角を現してゆく。火星の弱い重力と希薄な空気は、地球で生まれ育ったカーターに、驚異的な跳躍力と膂力をもたらしてくれたのだ。 そして同じく捕虜となった赤色人の王女デジャー・ソリスに心を奪われたカーターは、残忍な緑色人の間から、どうにかして彼女を救い出そうと決意する。 緑色人でありながら、例外的に優しい心を持つソラや、勇敢で公正な戦士タルス・タルカス、見た目は恐ろしいが忠実な十本脚の猛犬ウーラなどと心を通わせながら、カーターは縦横無尽に火星を駆けめぐり、やがては火星そのものの存亡へと関わってゆく……
小西宏の旧訳版、無事に読了いたしました。 ……以前に読んだのが分厚い合本版だったからなのか、もっと手間取りそうに思っていたのに、びっくりするほどさくさく読めちゃいました。 っていうか、おもしろいよ! これは翻訳の差なのか?? 違和感は全然感じなかったんですが(っていうか、新訳そこまで読み込んでない)、とにかくぐいぐいひっぱられて読み進みました。 挿し絵が武部さんの美麗絵なのも嬉しいところvv ……まあ、ファンの間では絶大な人気を誇る(らしい)武部さんの絵は、厳密に言うと本文と微妙に食い違ってたりもするんですが(苦笑) まあ、イマジネーションを刺激してくれるから良いんです、うん。 話としては、火星という名の別世界へトリップ&体力腕力のチート補正つきで、人には懐かない野蛮人や猛獣を手懐けつつ、偶然も味方につけたカーター無双かつラブロマンスもあり。しかもカーターが年とらない理由とか、火星に行っちゃった原因とかは語られないままという、完全に今どきのノリと勢い的厨二病物語なのですが。 これがまたおもしろいんだからしょうがない。っていうか、これを 1911 年に書いたバローズは時代を先取りしすぎです。 映画がこれをどれだけ再現したのかは知りませんが、この原作を読んでくれる人が一人でも増えてくれたらいいなあと思います。
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No.3728
(読書)
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2012年04月24日の読書
2012年04月24日(Tue)
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本日の初読図書: 「〜食卓」に続く、妖アパのムック本第二段。 すみません、舐めてました。いや「〜食卓」も力は入っていたと思いますけど、自分は料理に興味がないので料理の写真やレシピは適当に流し見ただけで、ぶっちゃけ書き下ろし短編にばかり目が行っていたのですよね。 ところが今回は、大人になった夕士が各キャラの過去と現在(未来)、本編では語られなかった細かい裏設定まで語り尽くしてくれてます。それこそ神谷生徒会長どころかマサムネさんとか、本編未登場の千晶の主治医まで! さらに前回はあくまで絵(平面)だった夕士の部屋とか食堂とか、あと岩風呂とかクリ&シロなんかが、紙粘土によって見事な立体表現されています。すげえ、三次元になると一気にイメージが爆発する! そして、長谷! お前いつの間にアパートの住人になってた(爆笑) ちなみに各種イラストは、マンガ版の深山和香さんの絵が使われています。 訪れた未来は、けして良いことばかりではなくて。千晶の右腕の件以外にも、いろいろとショックなことはありました。たとえばシガーの事とか。 けれどやっぱり、様々な裏話はファンとしてすごく楽しくおもしろいもので。 龍さんの意外とズボラで抜けた一面とかさ(笑) あ、そういえば一色さんはやっぱり、「〜魔法の塔」の黎明苑と関係がありましたね。社長と従兄弟ってことは……やっぱりあのサラブレッド級の高貴で美麗な血が、詩人にも流れてるんでしょうか。 書き下ろし短編も、夕士世界旅行時期の夕士と長谷が一本ずつに、千晶がクラブに戻ってからの話が一本の計三本。 ……ヤバイ、この本、借りるだけじゃなくて手元に欲しい……妖アパ本編も、図書館にあるのにどうしても前回処分できなくて、未だに本棚に並んでるんですよね。ふ、古本だといくらくらいか、な……?
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No.3720
(読書)
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2012年04月23日の読書
2012年04月23日(Mon)
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本日の初読図書: 鬼畜貴族×愛玩犬の異色シリーズ、お久しぶりの9作目。 四五冊目が出た頃にうっかり手にとって以来、『犬』という生き物の魅力にはまってしまい、つい買い続けてしまっています。 愛ある鬼畜&無条件で相手を受け入れる健気受けというのは、一次二次を問わず大好物でしてvv ……んー、でも今回はタイトルの割に、『犬』の素晴らしさについての描写が少なかったかなあという感じです。 嫌味なキャラをいたぶろうとした先の展開も、ちょっと肩透かし的な…… 個人的には本編より、巻末短編「リーダー犬としての仕事」が面白かったです。チサトも活躍してたし、贔屓キャラ雪之丞も登場してくれたし。 願わくば飼い主に先立たれた老犬が、幸せな余生を送れますように。
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No.3718
(読書)
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2012年04月17日の読書
2012年04月17日(Tue)
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本日の初読図書: 「一年たって子供ができないなら別れる」 それが夫である真柴義孝から、妻である綾音につきつけられた『約束』だった。 そして結婚後一年が過ぎたいま、二人の間に子供はおらず、義孝には『次の女』が既に用意されていた。 あなたの言葉は、私の心を殺しました。だからあなたも死んでください ―― 綾音はひっそりと心の内で呟いた。 そして義孝が自宅でひとり毒物入りのコーヒーを飲んで死んだとき、綾音は遠く離れた北海道の実家にいた。発見したのは綾音のパッチワークの弟子であり、現在は義孝の愛人でもある若山宏美。 状況から他殺であることは疑いないが、警察は毒の混入経路も動機もまったく解明できない。かなり以前から「子供の産めない女には用がない」と主張し多くの女性を渡り歩いてきたという被害者には、恨みを持つ者も多そうだったが、しかし過去の恋人達の具体的な素性さえ、知る人間はほとんどいなかったのだ。 毒を混入できるのは、発見者である宏美しか考えられない。しかし宏美が犯人であったなら、警察へ通報する前に、現場に残っていた自分に不利な証拠を隠滅しないわけがなかった。また動機の点から言えば、浮気された妻という立場の綾音にも、重大な嫌疑が掛かる。 さらに今回は、容疑者の一人である綾音に対し、草薙が刑事らしからぬ特別な感情を抱き始めているようだった。共に捜査する薫には、彼が公正に判断できていないよう感じられてならない。 そこで薫は今回も湯川へと、「離れた場所にいて、ある特定の人物が口にする飲み物に毒物を混入させることは可能か。ただし痕跡が残ってはならない」という命題を提示し、調査協力を求めたのだった。
ガリレオシリーズの長編。この前に読んだ短編集「ガリレオの苦悩」の、一話目と二話目の間あたりに位置するらしいです。道理であの短編集で、薫さんが急速に親しげになっていると思いました。間にこれが挟まるとなるとしっくりきます。 でもって。 だーまーさーれーたーーー《o(><)o》 というのが読了後の最初の感想でした。くそう、してやられた!<プロローグ 義孝と宏美の会話に違和感を覚えたとき、「ああ義孝が自分本位な適当言ってるよ」と流したのが間違いでした。おのれ、あそこに深遠なる伏線が仕込まれていたとは…… 今回のお話では、犯人も刑事達もそれぞれに人間味溢れていて、魅力的かつ深かったです。っていうか、義孝(と宏美)以外みんなに感情移入してしまって……おのれ義孝! お前がみんな悪いんじゃーーー! と(苦笑) それにしても壮大なトリックでした。詳しくはネタバレになるから控えますが、最後にタイトル「聖女の救済」がぴったりと収まって、唸らせられました。うむ、まさしく(狂信的な意味も含めて)聖女。 ドラマ化するような派手さやケレン味はほとんどありませんが、非常におもしろいお話だと思いました。
……ところでドラマ化といえば、作中で薫さんが福山雅治のアルバムを聴いているのは、やはり作者の遊び心なんでしょうか(笑)
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No.3709
(読書)
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2012年04月15日の読書
2012年04月15日(Sun)
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本日の初読図書: 「後の巌窟王(近代デジタルライブラリー)」アレクサンドル・デュマ、高桑良興訳 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871850
西暦一千八百三十九年四月五日。 仏蘭西巴里を訪れた英国貴族の青年 羽鳥卿は、友人となった新聞記者の猛田猛と砂田伯から先年一大事件を引き起こした、巖窟島伯爵の活躍を聞く。その素晴らしい話に魅せられた彼は、ぜひ伯爵本人に一目会ってみたいとヤミナーに向かうことにした。今の伯爵は、父の後を継いで即位した鞆繪姫と結婚し、ヤミナーに暮らしているのだという。 いっぽう伯爵の復讐によって没落した段倉男爵夫人張子は、現在では賭博宿の女主人へと身を落としていた。そこでは牢から釈放された辯太郎が、実の母と共に働いている。その宿へと、かつて伯爵に命だけは助けられたが、あまりの辛苦により半ば白髪化させられた段倉が転がり込んできた。三人は今の零落をひどく恨み、伯爵に対して復讐をしようと話し合う。もっとも伯爵自身にはとても手を出せる気がしない。ならば彼が深く愛している者 ―― すなわち森江眞太郎とその新妻 華子、そして元野西子爵の妻子 露子と武之助に手をかけてくれよう。ただ殺すだけではなく、じわじわと苦しめてなぶり殺してやれば、伯爵にはさぞや応えることだろう、と。 さっそく暗躍を始めた三悪。段倉は武之助を陥れるべく、金に物を言わせて彼が兵役につく亞非利加へ上官として赴任した。張子は露子を悲しませようと、親しげに接近してその耳に親切ごかしの毒を吹き込む。 そして辯太郎は密輸業者を装って眞太郎を襲撃し、蜜月先の別荘から拉し去った。そこには今も巖窟島に隠されているだろう宝物を、横取りしてくれようという目論見もあったのである。 さらに夫が消えて悲嘆にくれる華子をも、病院から脱走してきた狂人 蛭峰が誘拐してしまう。偏執的な愛にとり憑かれたこの父親は、もはや娘への異常な執着しか持っていなかった。 大切な友人達の苦難を聞いた巖窟島伯爵は、彼らを救うべくヤミナーを発つことにする。長くなるだろうその不在の間、鞆繪姫を守ってくれるよう、客人の羽鳥卿にあとを託して。 羽鳥卿は鞆繪姫に対して熱烈な恋情を抱いていた。しかしそれを知っていてなお、伯爵は彼に妻をまかせることにする。恋する人ほど神聖に、忠実にその相手を保護してくれる人はいない。英国紳士である羽鳥卿は、きっと獅子の口をも恐れぬ勇敢さで妻を守ってくれるだろう、と言って。 そうして出立していった伯爵を見送った羽鳥卿だったが、その心は苦しい恋によって千々に乱れて ――
昨夜、布団の中で読了@シグ3。白黒二階調のスキャニング画像でしかもページ焼けしまくりだったので、かなり目に厳しかったです。 現在に至るまでほぼ再翻訳されていないみたいだし、この翻訳は完全に絶版だしで、ほんとテキスト化してサイト公開したいぐらいなのに、著作権が……まだ切れていないだけなら希望が持てるところを、訳者の没年も著作権保有者である遺族の所在も不明だなんて……(しくしくしく)<頼みの著作権台帳にも載っていなかった まあそれはさておき。 派生作品ではなく、デュマ本人が書いた(だろう)巖窟王の続編です。そして翻訳というより翻案。やはり明治時代に訳されたもので、↑で書いている通りキャラクターの名前などは、黒岩涙香のものに準拠しています。前書きを涙香さんが担当しているので、そのあたりはご本人も了承済みの模様。固有名詞の一部がカタカナかつ傍線つきになっていたのがちょっと違和感でしたけど、それ以外は涙香さんの名文調に近かったかと。 で、肝心の内容ですが。 なかなか面白かったです。前回は復讐者であった伯爵が、今回は逆に復讐される側。眞太郎や武之助に次々と向けられる魔手に、読んでいる方としてはハラハラさせられました。 特に気になったのが、伯爵不在時の鞆繪姫と羽鳥卿。もうね、読んでいる途中で「こんなの鞆繪じゃない!」と思わず投げ出しそうになったぐらいです。最終的に鞆繪姫はちゃんと鞆繪姫だったので、ばっちりデュマに踊らされていた訳なんですが……でもこれちょっと羽鳥卿が可哀想かも。伯爵、貴方はいったい何がしたかったんですか…… あと夕蝉と網里女史のその後もちょっとひっかかります。あなた方、女同士で駆け落ちしたんじゃなかったんですか? 本当にそれで良いの、特に網里女史?? と思ったりも。 でもまあ、全体的にはおもしろかったです。よく「続編は本編を越えられない」、「本編のイメージを壊したくないなら、読まない方が良い」と言いますが、この作品はそこまでひどくはなかったと思います。 ……まあ、あれだけ格好良く去っていった伯爵が、早々に眞太郎の結婚式だからと戻ってきたりとかしたのは、いささか苦笑ものでしたがね……でもメルセデスと元鞘だったり、アルベールが伯爵の実子になってたり、ヴァランティーヌが生き返らなかったりする超翻訳やメディアミックスよりは、よっぽど良いと思うんだ(遠い目) そうそう、辯太郎は悪役ながらなかなか格好良かったです。悪人もあそこまで行くといっそあっぱれと言うか。ちょっとアニメ厳窟王の、キラキラしいベネデットでイメージしてみたりvv
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No.3705
(読書)
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2012年04月13日の読書
2012年04月13日(Fri)
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本日の初読図書: 宝生麗子は国立署の若き女性刑事。 直属の上司である風祭警部のもとで、日々事件の捜査にたずさわっている。 風祭警部は32歳の気障な男。自動車会社『風祭モータース』の御曹司という、成金趣味の独身貴族だ。常に自信満々で人の話を聞かず、的はずれな推理と己の自慢話ばかりしては現場を混乱させている。麗子はそんな警部の舵を適当に取りつつ、殺人事件の捜査にいそしんでいるのだった。 もっともそんな麗子も、ひとたび職場を離れ自宅に戻れば、華麗な変身を遂げる。 そう、彼女こそは正真正銘の『お嬢様』。 世界的な複合企業『宝生グループ』総帥の一人娘で、一流大学を優秀な成績で卒業した彼女は、中堅会社の馬鹿息子 風祭警部など足元にも及ばない桁外れのセレブリティなのだった。 仕事中には地味なパンツスーツに黒縁伊達眼鏡という、TPOをわきまえた格好をしているが、自宅では華やかなワンピース姿で優雅にくつろぐのを楽しみにしている。 そんな彼女には、ひとりの執事が付き従っていた。一ヶ月ほど前に代替わりしたばかりのその男は影山といい、まだ三十代の若さながら、なかなかの物腰と有能さを兼ね備えているようだ。 ……しかしひとたび事件の話を耳にすると、影山の態度は微妙に変化する。 「ひょっとして、お嬢様の目は節穴でございますか?」 毒舌執事影山は、麗子の語る調査情報をもとにして、夜ごと見事にその謎を解き明かしてゆくのである ――
ブックカバー作りに没頭していたら、うっかり三日も掛かってしまいました(苦笑) ご存知、櫻井翔主演ドラマの原作小説です。 うむ、まったくもって良くできたノベライズでした(笑顔)<違 いやあ、なんというか、そう言いたくなるんですよ。ドラマとの違和感はほとんどなく、影山は櫻井さんだしお嬢さまは北川景子だし、風祭警部は椎名桔平そのまんまでした。素直に見れば、ドラマがとても丁寧に作られていたということなのでしょう。 ……でもね、ドラマの方が小説より情報量が多いってどうなんですか(苦笑) 一本一本が短い短編集を、一話一時間でドラマ化したので、たっぷりとエピソードを追加する余裕があったのでしょう。 ドラマで為されていたアメコミ調の演出はともかくとして、毎回の決め台詞「謎解きは、ディナーのあとにいたしましょう」が原作にはなかったことと、同じくお約束だった「影山、車をまわしなさい」に引き続く証拠捜しと犯人との対決も、ドラマオリジナルだったことがびっくりでした。 お嬢さまがいつも犯人に対して(甘い正論ではあるけれど)良いことを言うのと、影山の「どうか***をお忘れなきよう」という台詞が、この二人の人間性を深めていたと思うんだけどなあ。 そういえば姿を隠して出没するストーカー執事も、原作にはいなかったな…… あと文章もかなりライトな文体でしたね。本格ミステリだと思ってこれを読んだ人は、確かに少々期待はずれかもしれません。でも最初からライトノベルとかユーモアミステリーを期待して手に取れば、かなりおもしろいと思います。 ましてドラマを見てから原作読もうかな〜と思った人は、充分に満足できるかと。 麗子も影山も風祭警部も、行動とか台詞回しとかまったくドラマそのまんま。特に風祭警部はもう(笑) あ、それでもドラマよりはちょっと有能っぽかったかな。 トリックや犯人の類もおおむね忠実……というか、改変があった部分は、ドラマの方がむしろ出来が良かったような気もしたりしなかったり。 もっともこの巻でもドラマでも最終話だった「死者からの伝言をどうぞ」については、ちょっとドラマはエピソードを盛りすぎ。この話に関しては原作をそのままやった方が良かったんじゃないかなあ。せっかくアクションシーンもあったことだし。……まあドラマでは毎回現場に乗りこんでますから、最終話でついに影山が現場に! というインパクトは薄れるかもしれませんが。 ああ、あと風祭警部→ホウ・ショウレイの片思いエピソードもなかったですね。風祭警部とお嬢さま+影山との邂逅はありません。そういう意味でも、ドラマの方がエンターテイメント性に富んでいたかもです。 安楽椅子探偵というカテゴリにおいては、探偵役がほぼ外出しないこっちの形式の方が正しいのでしょうけれどね。 ともあれ、半年待った甲斐はありました。なかなかおもしろかったです。
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No.3702
(読書)
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2012年04月10日の読書
2012年04月10日(Tue)
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本日の初読図書: 「剃刀」志賀直哉
床屋辰床の主人 芳三郎は、その剃刀の腕を見込まれて先代の娘と結婚し、店を引き継いだ。髭をあたる際は撫でてみて少しでもざらつけば、毛を一本一本押し出すようにして剃らなければ気が済まない。それで客の肌を傷つけたことは一度としてなく、客からは芳三郎に剃ってもらうと髭の延びが一日違うと評判だった。 そんな芳三郎が、珍しく風邪を引いた。高熱に身体がうまく動かないが、店にはまだ若い男と小僧が一人いるだけで、とてもではないが手が足らない。 親方じきじきにお願いすると置いていかれた剃刀の研ぎも、指先が震えて思うようにしあげることができず、芳三郎の苛立ちはいや増していった。 そんな折りにやってきた客は粋がっている田舎者で、いつものように剃れずにいる芳三郎の様子を気に留めることもなく、無神経に眠りこけてしまった。どんなに懸命になっても、柔らかい咽の部分がどうしてもうまくいかない。苛々から怒りを通り越し、泣きたいような気分になってきた芳三郎は、やがて身も気もすっかり疲れ果ててしまった。 かつて客の顔を傷つけたことのなかった芳三郎の手元が、わずかに狂う。 ほんの五厘。ごくかすかにひっかかったその刃の先が、もたらした結末は……
ハードカバーで12ページほどの短編。 父が前々から「若い頃に読んで、強烈に印象に残ってるんだ」と語るくせに、結末をちゃんと覚えていなかったので、気になって借りてきました。 うん……確かに強烈な話ではありますね。志賀直哉は初めて読みましたけど、こういう話を主に書かれているんでしょうか。正直、近代文学は守備範囲外でして。泉鏡花と宮沢賢治、芥川龍之介ぐらい(しかもみな数編)しか読んだことがないのです。この話はちょっと龍之介っぽい感じがするような。 芳三郎の心理がだんだん高じてくるあたりは、なかなか圧巻です。この短さにも関わらず思わず文章に引き込まれてしまうあたり、この短編がさまざまな全集やアンソロジーに収録されているのも納得できたのでした。
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No.3695
(読書)
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2012年04月07日の読書
2012年04月07日(Sat)
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本日の初読図書: 時は25世紀。人々はジョウントと呼ばれる瞬間移動を身に付けることによって、一瞬にして様々な土地へと転移することが可能になっていた。その副産物としてあらゆる乗り物は金持ちが持つ贅沢品となり、また強盗や略奪が横行する物騒な世の中ともなっていた。貿易バランスが崩れたことによって、火星より内側を圏内とする内惑星連合と、木星以遠の各衛星が属する外衛星同盟との間にも一触即発の緊張が存在している。 そんな活気と猥雑さに溢れた時代。 ごくありふれた宇宙船乗りの一人であるガリヴァー・フォイルは、死の危機に瀕していた。遭難した輸送船ノーマッド号にひとり閉じこめられ、狭い気密ロッカーの中で乏しい空気と食料を頼りに半年間も漂流していたのだ。宇宙空間の中では、瞬間移動をすることができない。どうしてこんなことになったのか、彼はほとんど覚えていなかった。すべての記憶は遭難の衝撃と、気が狂いそうな孤独の中に消えていた。 そしてある日、ようやく近くを宇宙船が通りがかった。必死になって救難信号を送ったフォイルだったが、しかし何故かその船は信号を無視し、フォイルをうち捨てて去ってしまう。絶望と怒りの中で、フォイルはその宇宙船〈ヴォーガ〉に復讐することだけを拠り所に、生き抜くことを決意し、壊れた船をなんとか動かそうと試み始めた。 やがて ―― 気の遠くなるような努力の果てに、ノーマッド号はようやく動き出した。そうしてたどり着いた先は、小惑星帯の中にある忘れ去られた科学人の星。彼らは独自の科学と文化のもとに暮らす、25世紀最後の野蛮人だった。 フォイルは科学人達によって、顔中に虎の如き異様な刺青を施され、仲間の一人として婚姻を強要される。それを拒みかろうじて逃げ出した彼は、ようやく地球へと戻り、〈ヴォーガ〉への復讐と己が何故見捨てられたかの調査にのりだすのだったが……
厳窟王派生作品。古典SF不朽の名作……だ、そうです。 歯切れが悪いのは、個人的にはちょっと微妙だったからです。うん……内容や翻訳が古いのもあるんでしょうが、少々話に入りにくかったです。正直文章が判りにくい部分が随所にあって。地名や固有名詞の訳も古いし。 設定やストーリーだけ追うと、それなりにおもしろいと思うんですけどね。最後の方のフォイルが時空を越えてジョウントするくだりの表現も、なかなかに迫力がありましたし。 いっそ新訳が出てくれてたら良かったかもしれません。 あとは……内容的に、厳窟王や白髪鬼、雪之丞変化などにある周到さや高潔さが、フォイルには欠けるところが感情移入のしにくかったところでしょうか。「目には目を、歯には歯を」にのっとり「悪には悪」「善には善」を返す前者に対し、フォイルはとにかくぶつかって、殺すわ犯すわ破壊するわ。相手が悪人だろうが、なんの関係もない無辜の人だろうが、いっさいお構いなしです。科学人達だって、そりゃあ固有の文化をいきなり押しつけたのは悪かったかもしれないけれど、遭難者を善意で助けて治療してくれたんだから、あそこまでされることはないと思うんだよ……ましてやロビンやジズは言うまでもなく。 最初は弱かったと思える復讐の動機が、やがて見えてくるノーマッド号の遭難の真相などから、納得できるものに変わってくるのは良いのですけれど。 あとオリヴィアはどうなったんだとか、フォイルのその後とか、いろいろひっかかりどころが残ります。 むう……私が求めているのは単純明快で爽快かつ痛快、そしてスタイリッシュな復讐物なんですけど……なかなか難しいですねえ……
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No.3689
(読書)
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2012年04月02日の読書
2012年04月02日(Mon)
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本日の初読図書: いろいろ邪魔が入って、読むのに二日かかってしまいました。 新シリーズ二巻目もライジャと金銀黒天使。今回は割とささやかめの事件でした。 キャラクターは元・暗殺者コンビに加え、「ファロットの休日」でヴァンツァーと友人になるという偉業を成し遂げた元盲目の少女、ビアンカが再登場。……すいません、名前覚えてなくて最初は誰!? と思ったり。あのヴァンツがジンジャー以外に笑いかけるなんて、と……いや、むしろジンジャーに対しては無愛想モードのまんまですね。それはそれで読んでいてほくそ笑むカップルなんですが。ビアンカとの親しげなやりとりは、リィ達ならずとも目を疑いました。これはビアンカが魅力的なキャラでかつ、ちゃんと別に本命がいるあたりがポイントなんでしょう。 あと真っ赤に雪結晶模様の靴下をはいたライジャは、想像以上にお似合いで格好良かったです<イラスト ……もっともお師匠さんは、そのさらにはるか上を行きましたが(笑) そうそう、前作の後書きを見て、お師匠さんの短編読みたい! でも私のPHSじゃ yorimoba 見られないとしょぼんとしていたのですよ。それが今巻で早々に収録してもらえて大喜びしました。口絵にもばっちりカラーで描かれてくれて嬉しさ倍率ドン。ははは、確かにこの人じゃ学生には見えません(苦笑) 怪獣夫婦(特にジャスミン)とライジャの対面もひそかに期待していたのですけれど、どうやらそれは今回も含めてしばらくない模様。その代わり次作では怪獣夫婦が、惑星トルゥークへのりこみアドレイヤお師匠とご対面とのことで。それはそれでまた楽しみですvv 短編の再録、どうせならイラスト集に載ったという怪獣夫婦の結婚式とやらも、早く収録してくれないかなあ……
ところでひとつ謎が残っている気がするのです。なんで正真正銘善意のプレゼントだったものが、学内便で差出人不明の謎荷物として届けられたんでしょう? 途中で紛れ込ませたのかとかぶっそうな予想を立ててましたけど、彼女は別に特別なことなんてしてなかったですよね??
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No.3681
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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