よしなしことを、日々徒然に……



 2012年10月24日の読書
2012年10月24日(Wed) 
本日の初読図書:
4488413129もろこし紅游録 (創元推理文庫)
秋梨 惟喬
東京創元社 2010-12-11

by G-Tools
後に儒家が春秋戦国と呼ぶ時代、斉国の王都には当時の中華最強の頭脳とも呼ぶべき顔ぶれがつどっていた。様々な知略軍略を持ち、我こそは大国をおさめるまつりごとの才を備えていると自負する者達が、王の名のもとに庇護されていたのだ。彼らは上大夫として遇され、時に政治顧問となり、時に軍師となり、また弟子をとって学問を伝授した。二十歳になったばかりの青年、霄(しょう)もまた、それらの上大夫に教えを請うべく斉国にやってきていた。故郷での師は「飽きるまで、吐き気がするまで学んでこい」と彼を送り出したのだが、しかしいざ斉国を訪れてみるとどの学者達の言葉も素晴らしく、誰の門戸を叩くべきか目移りして決められない。そうこうして半年も過ぎたある日のこと、彼は慎到という上大夫と昼食を共にした。彼が編み出した「システム」という説は、とても斬新で興味深い。そうして有意義な時を過ごしていた二人のもとへ、建物の番人の老婆が転がり込んできた。なんと庭で夫が殺されているというのだ。駆けつけてみるとそこには、胸を宝剣で一突きにされ即死した老人と、上半身裸でなぶり殺されている若い男の死体があった。男の全身は傷だらけで、彼を殺した凶器はどこにもない。おそらく犯人が持ち去ったと思われた。どうやらその若い方の死体は、最近王都で連続して見つかっている、身元不明の他殺死体と根を同じくしているようで……「子不語」
明代の初め、文官の家の生まれでありながら腕に覚えのあった許静は、武者修行という名の物見遊山の旅に出ていた。供もない一人旅だが、特に不自由はない。各地の有力者の門を叩いて武技を披露すれば、食客として一ヶ月ぐらいは滞在させてくれるし、それなりの額の金銭ももらえる。そんなふうに放浪していた許静は、ある日雨宿りに訪れた道観で奇妙な事件に巻き込まれてしまった。そこには顔半房と呼ばれる中年の男とおつきの蔡老人に導かれて行ったのだが、折しも三人もの著名な武林屈指の使い手が滞在していたのである。その一人破剣老人は、先頃から連続している暗殺事件に使われた「殷帝之宝剣」という謎の武器を運ぶ途中だったところを、彼自身が従者二人と共にその剣で殺されてしまったのだった。建物の構造上、犯人は現在滞在している人間でしかあり得ず、いまだ逃げてもいないはず。そして「殷帝之宝剣」らしきものはどこにも見つからない。果たして犯人は誰なのか。そして「殷帝之宝剣」とは、はたしてどういった武器なのか……「殷帝之宝剣」
劉小八は十歳。清の乾隆帝の時代に蘇州で饅頭の担ぎ売りをしている。父の作る饅頭は評判が良く、一家はそこそこ裕福な暮らしができていた。ある日のこと、売り上げを不良少年達に奪われそうになった小八は、鉄鞭を持ち弁髪をなびかせた巨漢に危ういところを救われる。幻陽と名乗ったその男に礼をしようと家まで案内した小八だったが、しかし帰宅したそこには、父の死体が待っていた。何故か首を切り落として奪い去られた、父の死体。取り乱す母を前に、しかし小八は奇妙に冷静でいた。これからは自分が主として、一家を支えていかなければならない。そう思う小八に、幻陽は弔いの手配などさりげなく力を貸してくれた。同じ頃、町では有力者で電速剣の使い手でもある、馬崇年が殺されるという事件が起きていた。手練れである崇年が正面から一刺しで殺されていることに不審を抱いた番頭が、幻陽に調査を依頼してくる。どうやら彼はそれなりに名の知れた人物らしく、崇年の事件を調べると共に、小八の父の首も探してやろうと言ってくれるのだが……「鉄鞭一閃」
辛亥革命を経て中華民国が建国され、そして袁世凱の死により中国は「皇帝」という存在を失った。英国を始めとする列強各国が多数その手を伸ばしてきており、時代は大きく乱れている。江仙は長江沿いにある中堅の都市で、太平天国の乱で壊滅的な打撃を受けたが、復興も早かった。鉄道の駅があり自動車が爆音を上げ電灯が明るい一方で、昔ながらの町並みの奥に秘密結社のうごめく闇が残る、そんな都市である。英国人との混血である関維(かんい)は、その町で売れない風水事務所を開いていた。行き倒れていたところを拾った十歳前後の少女 甜甜(てんてん)と共に、あまり裕福とはいえない暮らしを送っている。人付き合いが嫌いなうえに古い風水の手法を守る彼には、めったに仕事がなかった。そんな彼のもとを訪れたのは、品の良い商家の隠居婦人。数少ない友人 鄭警部からの紹介だという彼女を追い返すわけにも行かず話を聞くと、怪しげな風水師によって庭の神木を爆破されたので、風水上の悪影響がないか見てほしいとのことだった。情報を集めると、最近そういった謎の行動をとる正体不明の風水師集団が、あちこちに出没しているらしい。そしてさらに続けて依頼が舞い込んだ。そちらは町の元締め宋繍からで、近く町を訪れる英国商人の暗殺を防ぐために、狙撃や襲撃が可能な場所を地形から推察してほしいというものである。そして二つの件で町を歩き回る関維の前に、かつて袂を分かった弟弟子が姿を現し、今回の件には関わるなと告げてくる。二つの事件には弟弟子が関わっていて、しかもどうやらどこかでつながっているらしい。謎の風水師集団の目的はいったいなんなのか。頭を悩ませる関維だったが、そこへ弟弟子の死体が見つかったとの知らせが届いて……「風水一閃」

中国武侠ミステリ第二弾。
いやあ、今回もいろいろ意表をつかれておもしろかったです!
短編三作に中編一作という前回と同じ構成でしたが、これがまたそれぞれに特色がありましてね。
特に「鉄鞭〜」は何故か原哲夫(「花の慶次」の作画の人)の絵柄で、「風刃〜」は永久保貴一さん(「カルラ舞う」とか)の絵柄で脳内展開されました。
今回は一作目で、シリーズ全体を貫く根底の思想「システム」の成立が語られ、四作目では近代化に向かう時代の流れの中、天子を頂点に置いた支配体系の構造が失われるその先に、システムの具現者である銀牌侠と銀牌の存在が果たしてどうなってゆくのかという、ちょっと切ない雰囲気で締めくくられています。そう言う意味では最終巻っぽくもあるのですが、作者様曰く銀牌侠の活躍はこれからも続くそうですし、実際に三巻も刊行済みですから、今後も楽しませてもらえるようで一安心vv
それにしても四作目は、いろんな意味ですごかった……叙述トリックが使われているのはこれまでの作品でも何度かありましたけど、偽風水師達の奇想天外な目的に、銀牌の持ち主がいったい誰なのかという謎、重要脇役 甜甜の正体などなど、興味を引かれる事柄が目白押しで、最初から最後まで作者さんの手のひらで踊らされていた感じです。
それにしても使われた最終兵器は燃えました! あれって某カリオストロの城で次元が乱射してたタイプですよね? 普通の人間なら、手で持って撃つのはまず不可能なアレ。一定世代以上のアニメ好きなら、あれを思い出してたぎらないはずがない!
あと構成的にイレギュラーだという「殷帝〜」では、銀牌の持ち主が登場しない代わりに、一巻で右往左往していたあの人が、すっかり立派になって場を仕切っていて微笑ましかったです。ふふふふふ、好きなんですよー、あの主従vv
……ただ巻末の年表を見ると、「えーとこの人、普通の人間のはずなのに最低でも八十才超で、四十代に見える容姿を保ってるの? っていうか爺やはいくつよ??」って計算になるんですが。あれ?
……まあ、細かいところをつついてはいけません。
このシリーズの楽しさは、かつてのホームズや金田一(爺)さんのように、「いやそれ無理だから」という無粋なツッコミはせず、独特の世界観と、探偵やその脇を固めるキャラクター達の魅力を堪能することにあるのでしょう。

そして「鉄鞭〜」の幻陽と小八の十五年後は、また別の話でと書かれていますが、これは既に発表されているのでしょうか。是非是非読んでみたいところなので、すっごく楽しみです。

追記:
「銀牌女侠蒲公英」は、やっぱり架空の作中作だったそうな<後書き参照
めっちゃ……めっちゃ面白そうだったのに_| ̄|○ いっそそちらの話も書いてくれませんかね、秋梨先生……
No.4262 (読書)


 2012年10月21日の読書
2012年10月21日(Sun) 
本日の初読図書:
4253241719犬神家の一族―金田一耕助の事件簿 (秋田トップコミックスW)
横溝 正史 長尾 文子
秋田書店 2006-12

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名探偵金田一耕助のコミックアンソロジー、第二弾。
長尾文子さんのマンガ版に味を占めて、うっかりポチってしまいました。ページ数と値段を考慮した結果、今回はコンビニの廉価版ペーパーバックです。
総ページ数は広告を含めて 416 ページ。
……六作中三作が前回購入した本と被ってましたけど、まあそれでも300円以下でかなり厚めの単行本1冊分未読作品が読めたので、良しとしましょう。
収録作は以下の通りでした。

長尾 文子 犬神家の一族 200P
影丸 穣也 霧の別荘の惨劇 40P
児嶋  都 蝙蝠と蛞蝓 30P
秋乃 茉莉 傘の中の女 44P
宗 美智子 夢の中の女 52P
高森 夜魚 人面瘡 43P

高森さんの「人面瘡」は、少女マンガとレディスコミックの中間っぽい絵柄で、金田一さんがちと美形すぎましたが、ストーリー的には悪くなかったです。児島さんの「蝙蝠〜」もかなり独特の絵柄と表現でした(ちょっと梅図かずおっぽいかな?)。でもまあ、原作もこんなんっちゃあこんなんだったような(苦笑)
ともあれ、どちらも内容的な改変はほとんどなく、実に楽しく読めました。
で、もって。
本命の長尾「犬神家〜」ですが、こちらも期待に違わずというところだったでしょうか。
唯一気になったのは、佐智のダイヤのボタンエピソードが省かれていたぐらい。いやなくてもちゃんと成立する部分ではあるんですが、その存在によって佐智が一回帰宅していたと金田一さんが気付くという、重要なポイントでもあるのになあ、と。それから猿蔵=静馬?という仮説を立てて、周りから引かれるシーンも、金田一さんの思考回路がかいま見えるので削って欲しくなかった部分ではありますか。
……とはいえ、そんな細かいところぐらいしかいちゃもんをつけられないぐらい、この作品も良い出来でした。
特に松子さんの最期。あの落ち着いた態度ですべてをぬかりなく手配した上で、あくまで毅然と死を選ぶ、あれこそが松子さんなんですよ!
間違っても竹子さん梅子さんに「許してぇぇえ」と土下座したり、父親の幽霊を幻視して錯乱してはいけません<あのドラマとかこのドラマとか
「犬神家〜」最大の見せ場、湖に逆立ちしてる例の死体の意味を、ちゃんと解説されたのも嬉しかったですね。作品によっては、斧で頭をぶち割ったのち、特に理由もなく湖に放り込んだら、たまたまああなったというような、映像的インパクトだけ重視したメディアミックスも存在しますから……
そして珠世さんが銀時計に指紋を取るとか、金田一さんの尻っぱしょりスキー姿、佐兵衛と大弐さんの関係とか、細かいところが押さえられているのも、原作ファンとしては嬉しいところ。
「八つ墓村」より以前にマンガ化された作品らしく、コミカルな表現手法(主に金田一さんの崩れ顔)が多めだったのが、好みの別れるところかもしれません。
ともあれ、今回も良い作品群でございました(合掌)
No.4253 (読書)


 2012年10月20日の読書
2012年10月20日(Sat) 
本日の初読図書:
4120038173完訳 ロビンソン・クルーソー
ダニエル デフォー Daniel Defoe
中央公論新社 2007-06

by G-Tools
先日映画を見て、「なんかもうちょっと違ったよなあ……」と思い、改めて原作を読んでみました。せっかくだから児童向けジュヴナイルではなく、完訳版を選択。
……とはいえ、これは今回初めて知ったのですが、ロビンソン・クルーソーには続編が存在するらしいですね。全三部作の内、三部目は未翻訳ですが、二部目、島から救出された主人公が、その後62〜72歳の十年をかけてアジア方面を旅行するという話があるのだとか。……しかしそちらはあらすじなどの紹介を読んだ限り、どうも好みに合いそうもないので、世間的に良く知られた一部目のみ収録されたこの本を選びました。
で、改めて読んでみたわけですが。
……ううむ、当時の敬虔なキリスト教徒ってこういう感じだったんでしょうか。宗教に無頓着な一般的現代日本人としては、ちょっと引くぐらいにずーーーっと神の試練が、神の恵みが、神の赦しがって言い続けていて、いささか食傷気味です。しかも思考が似たような展開をループし続けてるし。
人喰い人種を恐れるのは判るんですが、その見下しっぷりもいかにもキリスト教徒。しまいには「彼らには彼らの神が」とか考えつつも、その思考展開がえらく大上段。あーあー、そんなにキリスト教徒は偉いんですか、そうですか、と、ついそう言って投げだしたくなっちゃいました(苦笑)
フライデーとか、最初から当たり前のように奴隷扱いですしね。自分だって奴隷にされて辛酸を舐めた経験があるくせに、なんだかなあ。
と、まあ、そこはそれとして。

今回完訳を読んで得た一番の収穫は、以前子供向け翻訳を読んで「都合よすぎだろう」と思っていた、稲と麦の穂を入手するくだりに、ちゃんとした裏付けのある経緯が存在したと知れたことでした。なるほど、あれなら無人島でいきなり食用穀物を手に入れられたのにも、納得がいきます。あと、フライデーが記憶していたより年とってました<二十代半ば
そして思いこんでいた以上に、無人島生活が長かったですね。
映画では六年になっていて、「えー、確か十何年だったろ」と文句を付けていたら、実際には二十七年でした。27歳で遭難して、54歳まで無人島生活してたんですね……よくその後、社会生活に適応できたものですな。
島内での生活スパンがとにかく長く、板一枚作るのに数週間とか、見張りを始めて数ヶ月動きなしとかがずっと続くので、正直ダレます。会話する相手がいないから、ずーーーーっと地の文ばかりだし。
ううむ……やっぱり私は、家族ロビンソンの方が好みですかねえ。会話文も多いし、宗教的なお説教もほどほど(皆無とは言わない)ですしね。惜しむらくは、現在入手できる翻訳が少ないことでしょうか。
なんでかなあ、絶対あっちのがおもしろいと思うのに……
No.4252 (読書)


 2012年10月18日の読書
2012年10月18日(Thr) 
本日の初読図書:
4253171486コミック横溝正史金田一耕助の事件簿 (秋田文庫 66-1)
横溝 正史 影丸 穣也
秋田書店 2010-07-09

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御存知、名探偵金田一耕助のコミックアンソロジー。
Amazon をウロウロしていたら、なかなか好評価のレビューがついているうえに、「非常によい」の1円出品があったので、うっかりポチってしまいました。そしたら思っていた以上に状態の良い物が届いて、内容もおもしろかったので、ただいま御機嫌ですvv
コミック文庫で、総ページ数はなんと 546 ページ。普通のマンガ単行本の倍以上あります。それだけでもお得感vv
収録作はそれぞれ、

影丸 穣也 霧の別荘の惨劇 40P
長尾 文子 八つ墓村 368P
秋乃 茉莉 傘の中の女 44P
永久保貴一 棺の中の女 34P
宗 美智子 夢の中の女 52P

となっております。全体のほとんどを「八つ墓村」が占めていますね。さもありなん。それぞれがどんな話かは「金田一耕助覚書」の方で紹介していますので割愛しますが、「八つ墓村」以外はみな短編なので、ページ配分としては妥当なところだと思います。

で、もって。肝心の内容についてですが。
これについてはもう、パーフェクトぉぉおお(喜) です。
金田一(爺)スキーを自称する私からしても、コミカライズ作品としては文句のつけようがありませんでした。
もうね、どの作品もプロットが原作にとても忠実。省略はあっても、余計な改変はほとんどなし! これですよ、ファンが求めているのはこれなんです!!
金田一耕助ものといえば、これまでにも映画やドラマ、コミカライズなど様々なメディアミックスをされてきております。しかしその中には、より猟奇的扇情的に味付けされていたり、ものによっては動機やトリック人間関係、挙げ句の果てには犯人まで違っているという作品がままあります。
これまで私の中での個人的ベストメディアミックスは、JETさんによるマンガ(初期作品)がナンバー1で、それに続くのが石坂版ドラマの「女王蜂」と、稲垣版ドラマの「女王蜂」及び「八つ墓村」でした。しかしいま、それが入れ替わろうとしています。
長尾文子さん……かつてこれほどまでに原作に忠実な「八つ墓村」があっただろうか!!(感涙)
もともとMYベスト原作のトップ3が「獄門島」「女王蜂」「八つ墓村」な訳ですが、「獄門島」はJETさんの素晴らしいコミックがあります。「女王蜂」は、先に触れたようにドラマでそれなりの物が存在します。しかし! 「八つ墓村」! かつて幾度も映像化されながら、どれも残念だったあの作品が! 稲垣版ドラマもそこそこではあったけれど、それでもやっぱり不満感は残ったのが、それが、それが……(感涙)

……もとい、少し落ち着こう(すーはー)。
個人的「八つ墓村」のポイントはいくつかあるのですが、まあメディアミックスの際に取り上げられるかどうかと言う点においては、ざっと上げて

 ・そもそも主役が辰弥か
 ・鍾乳洞探険をするか
 ・殺人の動機が改変されていないか
 ・財宝を発見するか
 ・典子とのロマンスがあるか

です。
特に典子! なにをおいても典子!!
何故いつもその存在すら削られるのだ典子!? です。
そもそも「八つ墓村」は、その半ばに至るまで金田一耕助が登場せず、全編を辰弥の一人称で語られる物語です。そしてその内容は推理物と言うよりも、お宝探しの冒険活劇。
連続殺人の謎よりもむしろ、鍾乳洞を探険しながらドキドキワクワクしつつ、従姉妹の女の子と極限状態の恋を育んでいく物語なのですYO!
それなのに、たいていのメディアミックスでは、いきなり冒頭から金田一さんが辰弥くんを迎えに現れ、鍾乳洞で見つけた屍蝋の謎をとくとくと演説し、屏風から手紙を発見しちゃうのですよ……そして典子は存在そのものが削られます(しょぼん) そして場合によっては、辰弥は真犯人と一線越えちゃいます(−ー;)
あげく殺人の動機が26年前の惨劇の復讐になったあげく、真犯人は自白の最中に突然死とか、違うだろ!? あくまで恋のために入念な計画殺人をおかし、毅然として金田一耕助と一騎打ちしながら、最期は同じ恋の故に敗北しもがき苦しんで死んでいった、恐ろしくも美しき女殺人鬼はどこへ行った!?

……しかし今回の長尾さんのコミックは、本気でパーフェクトです。
すべてが見事に押さえられています。それどころか典子は初登場だと本気で醜かったり、自分は田治見家の狂った血を引いていないと知った辰弥が、ほっとしつつも財産を継ぐ資格もないんだと落ち込むような利己的な部分まで、きっちりしっかり盛り込まれています。
一部説明を削ってしまったが故に齟齬が見られる部分(姉が出戻りだという描写がないのに、あとで未亡人って書かれてるとか)もありましたが、おおむねにおいて「よくぞここまで」と言うほど細かいところまでエピソードが拾われていました。
クセのある絵柄に最初はちょっと……と思っていましたけれど、それも読んでいるうちに慣れました。

って言うか、私はメディアミックスのポイントは、

1に脚本(プロット)
2に演出・小物(コマ割りや背景などの書き込み)
3に演技(表情などの表現手法)
4にキャスティング(絵柄)

だと思っています。
ぶっちゃけ、ストーリーが良ければ、絵柄や配役などは二の次なのです。
……まあ、あんまりハンサムすぎる金田一さんや、時代考証まる無視な戦後の光景があるとさすがに冷めますが。
その点で今回のこの本は、「八つ墓村」も他の作品も非常に良い出来だったと思います。
最後の宗さんの作品の、ラストのページがまた良いんですよ。うんうん、原作もこうだったという感じで、非常に気の効いたやりとりで〆られております。
「カルラ舞う」の永久保さんや「霊感商法株式会社」の秋乃さんの作品も、さすがベテランという感じで、要所要所が決まってて◎。
影丸さんとやらは初めて見ましたけど、これもなかなか面白かったです。……ビッグコミックとかに載ってそうな雰囲気でしたが(苦笑)
いやあ、良い作品を読めました。お腹いっぱい。満足ですvv
No.4247 (読書)


 2012年10月17日の読書
2012年10月17日(Wed) 
本日の初読図書:
「Jolly Rogerに杯を掲げよ」〜ごじゅう ぷらす きゅう。
 http://ncode.syosetu.com/n6449t/

いつもの通り、学校から帰る途中だったはずなのに。気がつけば真白(ましろ)は、見知らぬ異世界の路地裏にいた。しかも何故かその身体はふわふわもふもふな、愛らしいウサギのぬいぐるみになっている。訳も判らずウロウロしていたら、あっという間に捕まって、珍しい生き物として競売にかけられてしまっていた。
そこで彼女を競り落としたのは、深い青色の髪に黄金色の鋭い瞳を持つ青年、ヴェルノ=ウルフガング。一億もの金をポンと出し、屈強な男どもを多数引き連れた彼は、なんと海賊船の船長だった。
珍しいから気に入った。お前は俺のペットだと言うヴェルノに、真白は己の職務を理解する。すなわち船長であるヴェルノの傍にいることと、その抱き枕もしくはクッション代わりになることだ。
若いハンサムな男に抱きしめられれば、普通は少なからず心ときめかせもしようが、いかんせん今の彼女はぬいぐるみ。ドキドキどころか心音すらしないので、少女漫画的展開は望めない。
少なくとも今の状態で放り出されたら、生きていけないことには自信があった。
そんなこんなで彼女は、海賊船の中でペットとして過ごすこととなる。ヴェルノはちょっと意地は悪いがそれでも優しいし、副船長のアイヴィーはオネエ属性で素敵な服を縫ってくれたりと、全力で可愛がってくれる。その他の船員達も、みないい人達ばかりだ。
そうして穏やかに日々を過ごしていた真白だったが、海軍の襲撃によって皆から引き離されてしまい ――

「見た目はぬいぐるみ、中身は天然少女」な総愛され系第二弾。
男所帯の海賊どもが、これまたよってたかって甘やかしまくっておりますvv
いやまあ、真白ちゃんも嵐を知らせたり、さらわれた先から海軍の重要書類を持って帰ってきたりと、それなりに活躍はしてるんですが。もっとも本人に役立っている自覚は皆無。
そしてこれでもかと言うほど鈍いです。やはり元の世界での情報がほとんど出てこない……というか、なんか記憶が曖昧になってきているっぽい描写があるのですが、彼女いったい何歳だったんだろう? 下手をすると中学生とかかもしれんぞ。わぁ、そしたらヴェルノっってば犯罪者ーーー(笑)<いや海賊はもともと犯罪者だけど
なんだか「神の眠り姫」とやらの神殿を目指し始めてから、船長&副船長の過去に訳ありげな雰囲気が出て来つつ、真白ちゃんがトリップしちゃった理由も絡んでくるのかな?? という気配が。
でも基本は「有能だけど孤高で短気で凶暴な海賊船長が、限定一人の天然ヒロインに対してのみでろ甘らぶらぶ振りまわされ」という私好みの展開っぽくて、非常に先が楽しみです。
そしてレゲエでサングラスなオネエ属性の副船長さんも、ひそかに大好きだったり。
……ただ、個人的に登場人物紹介がほしいです。幹部さん達の外見と性格と名前がすでにかなり一致しない……(^ー^;;)
No.4246 (読書)


 2012年10月16日の読書
2012年10月16日(Tue) 
本日の初読図書:
「かわいいコックさん(小説家になろう)」〜別視点17 部隊長会議 淵妊ルナン視点)
 http://ncode.syosetu.com/n7657bb/
「かわいいコックさん小話部屋」〜「あいちてるー」の情報源(カイン視点)
 http://ncode.syosetu.com/n0390bd/
「かわいいコックさん企画部屋」〜8月20日星企画(おまけ)
 http://ncode.syosetu.com/n0173bi/

アラサー女の佐藤有里は、職業調理師。十年働いて、ようやく一人前と認められるようになったところである。モットーは男よりも食べ物&酒。色気よりも食い気だ。
そんな彼女はある冬の朝、通勤途中に凍った路面で足をすべらせ電柱に激突してしまった。それからの記憶はない。気がつけば見知らぬ森の中に空腹で放り出されていた。しかもよくよく確認してみれば、見事な幼児体型になっている。
混乱しつつも木の実などで飢えをしのいでいたところ、恐竜のような生き物が現れた。明らかに獲物として認識されている。
あわや生命の危機を救ってくれたのは、短く刈った金髪に切れ長の瞳を持つ……コック服を着用した青年だった。
彼の名はディルナン。北の魔王城の調理部隊の隊長で、歳は 325 歳だという。
え、魔王がいるんですか。そしてあなたは魔族ですか。じゃあ、此処はRPGで言う魔界??
どうやら彼女は頭を打って死亡したうえ、異世界に生まれ変わりまでしたらしかった。彼女がいる森はとても子供が一人で放置されているような場所ではないそうで、しかもその身体の痩せ細り具合を考えるだに、よほど過酷な目にあった子供の精神が耐えきれず前世の人格が復活したか、あるいは死にたての身体に精神だけが憑依してしまったか……どちらにしてもろくでもない事態に変わりはなかった。
腕環に刻まれていた文字から、子供の名前は彼女と同じ『ユーリ』というらしい。
状況を把握し途方に暮れた彼女……ユーリへと、食材を狩りにきたというディルナンは、城へ連れて行こうと言ってくれる。
「しっかり生きて食ってける様に仕込んでやる。ダメでも近くの集落で信頼する保護者を付けるぐらいはしてやれる」と。
ユーリにとって、他に選べる道はない。
そうして彼女は、記憶喪失の子供として魔王城で働くこととなった。
そこには個性的な隊員達が数多く存在したが、ユーリは幼児の愛らしさと成人女性の聡明さ、そして持ち前の勤勉さと素直さで、彼らの心を次々と鷲掴みにしてゆく。
しかしその一方で、彼女が身に着けていたものなどを手がかりに調べてゆくにつれ、子供の過去にはなにやらきな臭いものが存在していることが浮かびあがってきて……

なんだこれ、なんだこれ、なんだこれぇぇぇええ!?
かーわーいーいーーーっっっ(バンバンバンッ)

……と、思わず悶えまくってしまう別視点モードがたまりませんvv
ええと、基本的には「身体は子供、頭脳は大人」な某少年探偵的お話です。しかし主役がE戸川少年ほどドSな性格ではないため、幼児モードでもそこまで猫を被っているという感じはありません。年齢が人間換算して四歳児程度とさらに幼いせいか、舌が上手く回ってないのが、もっぱら可愛さを助長している原因でしょう。あと身体能力が普通に幼児並なので、トイレで落ちかけたりとかしてます。
本人はひたすら食い気命かつ、常識的な社会人として行動しているだけですが、見た目いたいけな幼児なことや元の肉体の持ち主が何やら裏事情を持っているらしいところから、周囲を盛大に勘違いさせつつ総愛されモードに入っております。
……っていうか魔族は成人が100才で、見た目四歳児=30才ぐらいだろうと目されているので、ある意味では年齢相応に扱われていると言えなくもないのか。
そして魔族は寿命が長い代わりに子供が産まれにくく、子供は宝! と言い切っちゃう子煩悩集団なため、まあもうよってたかって可愛がられることvv
さて、元の世界では料理人として一人前のスキルを持っていた彼女が、これからどんなことをやらかしてくれるのか。
まだ三日ぐらいしか経っていないのに、既に城内の有力者の半数近くをオトしているあたり、今後が非常に楽しみです。
ふふふ、早く書類部隊でのあれこれも読みたいな〜〜♪
No.4244 (読書)


 2012年10月15日の読書
2012年10月15日(Mon) 
本日の初読図書:
4104507164ひなこまち
畠中 恵
新潮社 2012-06-29

by G-Tools
一太郎が賽の河原で知り合いになった少年 冬吉とその兄 七之助。彼らが祖父から遺産として受け継いだのは、古い船箪笥だった。しかしごうつくばりの親戚達は、箪笥に何か値打ち物を隠しているのではないかと疑い、中を確認しなければ渡せないと言い張る。だがからくり細工が施されたそれは、誰にも開けることができなかった。そのうちに、箪笥を預かっている店で怪異が起こり始めたことから、いっそ箪笥を壊してしまえと言う意見が飛び出して、遺品を受け取りたいだけの兄弟は困り果ててしまい……「ろくでなしの船箪笥」
最近江戸では怪談が流行っていた。その中でも名の売れた噺家 場久の寄席へと話を聞きに言った一太郎らだったが、途中で顔を隠した武家が場久へ斬りかかり、寄席は混乱のうちに中止となってしまう。そしてその頃から町では不思議な怪異が頻発するようになっていた。寛永寺の僧侶寛朝によると、どうやら悪夢除けの札から貘が逃げ出したことにより、悪夢が現実へとあふれ出しているらしい。相談を受けた一太郎達が探すと、貘は意外な人物に化けていた。そしてみなに助けを求めてきて……「ばくのふだ」
人形問屋平賀屋が、美しい小町娘を一人選び、その娘の姿を写して雛人形を作ることとなった。その人形はさる大名へと献上されることになっているのだが、なんでもその裏には、美しい娘を捜し出し側室へ迎えようと言う話が存在しているらしい。容姿に自信のある娘やその親たちは、これこそ出世への道だと色めき立った。さらに美人を一人選ぶにあたって、まずは美しい娘達の番付を作ろうという話まで持ち上がる。そしてその選者へと、長崎屋の主人 藤兵衛が選ばれてしまった。古着屋の娘 於しなは、美しく着飾る娘達に商品を買ってもらおうと、藤兵衛の好みを探りに長崎屋を訪れる。そこで不審者と勘違いされ仁吉と屏風のぞきに追いかけられた彼女だったが、逃げる途中に誤って水に落ちた屏風覗きを助けたことで、誤解は解けた。そして彼女の古着屋から大量の着物が盗まれたことを知った仁吉と屏風覗きは、勘違いしたことと命を救われた詫びとして、力を貸すことにした……「ひなこまち」
お花見にと寛永寺を訪れた一太郎と妖達。楽しく浮かれ騒いでいたところに、河童の女親分 禰々子が訪れた。彼女は以前に一太郎が河童を助けた礼にと、様々な妙薬を持ってきたのだ。と、そこを通りがかった武士の安居が、たまたまそれを耳に止め、どうか薬を譲って欲しいと懇願してくる。なんでも彼には最愛の奥方がいるのだが、彼女とうまく行っていないのだという。河童の妙薬の中には惚れ薬も混じっており、それを使いたいと言うのだった。一太郎はひとまず彼をなだめ思いとどまらせたのだが、一同が酔って昼寝をしている間に何者かが薬を持ち出したことで、寺中を巻き込んだ大騒ぎとなってしまい……「さくらがり」
たった一人選ばれる雛小町。その選者を一太郎が引き受けてしまった。一太郎は全力を尽くそうとするが、周囲は良い顔をしない。そんなある日のこと、安居の奥方だという雪柳が、小さな子供を連れて長崎屋を訪れた。一太郎は安居に河童の妙薬で「飲むと幸せになれるかもしれないが、人生を賭ける必要がある」という一粒を譲っていたのである。雪柳はその一粒を飲んだのだが、何も起こらない。どういうことかと相談しに来たのだった。しかし話を聞いている途中で、雪柳が連れているのが彼女の子ではなく迷子だと判明する。ひとまず自身番へ預けに向かう一同だったが、そこでは若い娘がなにやら騒ぎを起こしていた。しかたなく名主のところへ行くが、そこでも娘が騒いでいる。どうやらことは雛小町に関わっているらしい。町で噂を集めてみると、娘番付に選ばれた娘達はみな大名家に嫁ぎたいなど思っておらず、迷惑がっているのだという。そんなところへ、貘が通りがかった。何故こんな所にいるのかと驚いている。なんとここは現実の江戸ではなく、何者かの夢の中なのだという。一体誰の夢で、どうしてそんなところへ入り込んでしまったのか。驚く一同が気がついた時には、子供がどこかへ消えていた。そして残されていた紙切れには「子を返して欲しく場、雛小町選びを止めよ」と書かれており ―― 「河童の秘薬」

しゃばけシリーズ11弾。短編集と見せかけて、実は全体でひとつのお話です。
今回は久しぶりにおもしろく、一気に読み通せました。初心に返った……とまではいかずとも、割とシリーズ初期に近い感じだったんじゃないでしょうか。
このところ暗かったり説教臭い話が続いていましたが、この巻は明るく楽しくあっさりと読めた感じです。
個人的に表題作で屏風覗きと仁吉がコンビ組んでたのがおもしろく。……なんだかんだ言っても、やっぱり色男二人が並んでるのって良いですよねvv あと仁吉と佐助が本気で争ってるところも個人的にツボ。あそこはもっと詳しくやって欲しかったな〜〜。
ところどころに「ゆんでめて」で語られた平行世界のエピソードを挟むのは、いい加減勘弁して欲しいところではあるんですけどね。あの巻は全体的に辛いお話が多かったので、ざっと流し読みしただけで、ほとんど内容覚えてないんです(−ー;)<禰々子さんって、あの巻で登場してましたっけ??
あ、そう言えば今回は、松之助兄さんも栄吉も出てこなかったな……
No.4242 (読書)


 2012年10月09日の読書
2012年10月09日(Tue) 
本日の初読図書:
「勇者互助組合 交流型掲示板」〜お約束と様式美とテンプレート
 http://ncode.syosetu.com/n8344u/

あまた存在するパラレルワールド、多重世界。そこには無数の勇者がいる。異なる世界へ呼び出された召喚勇者、生まれながらにそうあるべく定められた生誕勇者、結果的に英雄となる偉業を成し遂げてしまった成果勇者などなど、その数は枚挙にいとまがない。
勇者互助組合とは、それら現役勇者や既に使命を終えた退役勇者らによって構成された、互いに情報交換しつつサポートをしあう組織である。
そのシステムはもっぱら勇チャこと「勇者間チャット」と勇者板こと「勇者互助組合 交流型掲示板」で構成されている。勇者組合に勇者として認定されると、頭の中に組合メニューのアイコンが表示されるようになり、それぞれにアクセスすることが可能となるのだ。
現在進行形で魔王退治を目指している現役勇者や、昔はこんなこともあったと若気の至りを追憶する退役勇者、召喚されたばかりで右も左も判らないなりたて勇者などが、掲示板で互いの状況を語り合い愚痴をこぼし合う。
そこはさまざまな世界のさまざまな勇者達が、世界をこえてのんべんだらりとやりとりする、巨大掲示板の過去ログ倉庫である。

やはり書籍化されたので、前半はダイジェストになってますが、基本的に各スレが独立しているので、まあだいたい判ります。一部のレギュラーキャラが、初登場した時のことが不明なのが残念かなあ。特に学生さんの過去が気になる。

……っていうか、読んじゃったじゃないですか(苦笑)>雪華さん
おっしゃるとおり、みんなのアイドル☆スレを引っぱりつつ情報を整理してくれる学生さんの存在はありがたいですね。あとチートな賢者さんは快刀乱麻を断ってくれて非常に便利。
そして個人的に小学生から小説を書いていた身としては、黒歴史さんにスゲエ共感を覚えます(笑) 書いたなー、オリジナル呪文……マンガや小説で読んだ格好いい呪文とかも暗記したよなーーー(遠い目)
あとは夫婦喧嘩の末に勇者となった、粋でいなせな渡り鳥さんもなんか好きvv
保育士さんは……頑張れ★ 年の差国(?)際婚確定だけど、せめて相手がハンサムで優しい人になってることを祈ろうvv
No.4226 (読書)


 2012年10月08日の読書
2012年10月08日(Mon) 
本日の初読図書:
4582287468ぼおるぺん 古事記 一
こうの 史代
平凡社 2012-05-27

by G-Tools
古事記です。マンガです。ボールペンで描かれてます。
ざっくりと説明すればそれだけなのですが、これがかなりおもしろいのですよ。
あと忘れてはいけない最大の特徴が、ナレーションおよび台詞の全てが、古文のままなことです。さすがに漢文でこそありませんが、書き下し文です。「天地あめつちの初めてひらくる時 高天原たかあまのはられる神 名は天之御中主神あめのみなかぬしのかみ」で始まり、イザナギとイザナミの婚礼シーンは「あなにやし えをとこを」「あなにやし えをとめを」ですよ! 古事記スキーとしてはたまりませんvv
これまで現代語訳や漫画化されてきた各種作品ではおおむね省略されがちかつ、実際冗長に感じられる大量の神々を生んでゆくシーンも、秀逸なキャラデザインと画面構成でちっとも飽きさせません。ちゃんと適度な注釈も入っているので、「ああ、この神様は霧の神格化されたものなんだ」とか「この神々は火を使った産業の象徴なんだ」というふうに判りやすいです。
冒頭には四ページにわたってびっちりと、やはりボールペン手書き文字による漢文も収録されており、また現代文による簡単なあらすじも入っているので、古事記になじみのある人も初心者も、どちらも楽しめる構成ではないかと。
ちなみに収録されているのは、天つ神の誕生〜イザナギ・イザナミの婚礼に国生み、黄泉下りに三貴神の誕生、天の岩戸にスサノオの高天原追放ときて、ヤマタノオロチを退治しクシナダヒメと婚礼、「八雲立つ〜」の和歌を詠むところまでです。そして子孫にオオクニヌシが生まれたところで、以下次巻へ。
ナレーションと地の文は原文そのままで、たぶんどこも省略されていないと思われます。それだけに古文の独特のリズムと雰囲気を楽しみながら、絵と注釈による追加表現で状況が非常に判りやすく、また遊び心もたっぷり入っていて実におもしろかったです。
特にイザナギとイザナミの婚礼は、ほんの数単語のシーンを余韻たっぷりに初々しく表現されていて、実に微笑ましく。そして千引の岩での決別では、今までいろんな現代語訳や書き下し文を読んで受けた印象では、イザナギの手のひら返したような態度が少々腹立たしかったんですけど、今回は切なくも雰囲気のあるやりとりになっていて胸に沁みました。
ううむ、見事。

この作品、もともとはWEBで公開され始めたものでして。その存在を知ったときには既に最初の方が削除されており、残念無念だったのですよね。買おうかどうしようか迷いつつ、安くなったら古本で……とか思っていたら、兄が買ってきたのでラッキー★
二巻目も買おうとしたらしいのですが、本屋で見つからないとのこと。せっかく地元なんだから、置いとこうよリアル書店…… _| ̄|○

なお、どんな内容か雰囲気を知りたい方は、こちらからどうぞ。

■こうの史代【ぼおるぺん古事記】
 http://webheibon.jp/kojiki/

今日現在でニニギノミコトが天孫光臨し、猿田彦とアメノウズメがくっつくあたりが掲載されています。
No.4222 (読書)


 2012年10月07日の読書
2012年10月07日(Sun) 
本日の初読図書:
「天使の堕ちる夜(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n2207j/

魔獣を追う狩人イトは、夜の森の中、一人の娘に出会った。
魔獣に喰われ人の原形を留めぬ死体と、イトが切り捨てた魔獣の骸、血の海に彩られた地獄絵図の中で、彼女はただ静かに座っていた。
煌めく金の髪に陶磁器のような肌、端麗で優美な目鼻立ち。
『それ』は人外の者であるように。
『それ』こそが、この惨状の主であるかのように。
優雅に艶やかに微笑んで、そこにある娘。
アオイ・オードルと名乗った彼女は、イトが忠誠を誓うキリングシークの第二皇子、軍神カイが寵愛する正妃の妹であった。
そうと知っては捨ておく訳にもいかない。魔獣や野性の生き物が跋扈する夜の森、しかもこんな死体だらけの場所に放置していけば、若い娘などひとたまりもなく死んでしまうだろう。
厄介事を背負い込んでしまったとため息をつきつつ、イトはアオイをキリングシークまで送り届けることにした。
言葉を交わしてみれば、彼女はやはり人間らしさを備えていて。『天使』とうたわれる美貌や、どこか人らしからぬ浮世離れした部分はあったものの、それでもやはり、恐怖に震える一人の娘であった。
イトはひとまず彼女を、森の中にある同胞の屋敷へと連れていった。しかしそこで彼女が、水鏡と呼ばれる神具を操ってみせたことから、滅びに向かっていたイトの一族の者達は目の色を変え始めて……

「軍神の花嫁」の続編。サクラの妹アオイの物語。中編・完結済。
サクラのコンプレックスの根源のひとつ、輝く美貌を持つアオイが、何故か夜の森で魔獣に襲われていたところを、無頼の狩人が救うところから物語が始まります。
『天使』と呼ばれる無垢で清らかな少女と、『悪魔』と称される血にまみれた人生を歩むワイルドな男の邂逅。
ふふふふふ、お約束ですねvv
前作の皇子カイもたいがい格好良すぎなお人でしたが、今回のイトもなかなかです。がっちりとした筋肉質の体格に、銀髪紫瞳、浅黒い肌。左目は額から頬にかけて刻まれた傷により、失われております。そんな彼と金髪翠目に白磁の肌のアオイが寄り添って立ったりしたら、まさに一幅の絵画のようvv
周囲から『そうあれ』と望まれてきたことにより、何も感じず何も考えず、ただ流されるまま穏やかな微笑みを浮かべるだけだったアオイが、恋を知り執着を知り、一人の女として目覚めていく過程と、血に汚れた自身が『天使』を穢してはならないと身を引こうとするイトの、焦れ焦れすれ違いラブロマンス。
イトの過去がまたヘヴィで……(−ー;)
なにやら魔獣の進化やらなんやら、微妙に気になる未解決の謎が残っています。そのあたり続編(シキとホタルの話らしい)で語られるのでしょうか?
No.4220 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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