2013年06月03日の読書
2013年06月03日(Mon)
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本日の初読図書: 四十八になるベテラン刑事 萩尾秀一は、捜査三課盗犯係の所属である。新人の頃から盗犯一筋できた叩き上げだ。最近相棒になったのは、ショートカットでなかなか綺麗な顔立ちをしている女性刑事、武田秋穂。やる気があるのはけっこうだが、やはり若い女というのは、中年男の萩尾にとって扱いにくい部分がある。 ある日の午後二時十分。渋谷の高級時計店で強盗があった。犯人は白昼堂々、わずか二分でブランドものの時計を奪い逃げ去っている。明らかにプロの仕業だった。とはいえ強盗は捜査一課の担当。現場に行きたがる秋穂を、萩尾は三課には関わりないと諌めた。 翌日 ―― 同じ渋谷のすぐ近くにある宝飾店で、今度は窃盗事件が起きる。犯行時刻は深夜の二時十分。厳重な警報装置をかいくぐり、最新の指紋認証システムつき金庫を開け、誰一人傷つけることなく見事に目的の宝石だけを盗んでいる。これもやはり窃盗のプロ、それも一流の玄人の手だった。 宝石店の現場を見た萩尾は、これは窃盗犯から昨日の強盗犯への、メッセージではないかと推測する。盗人には盗人のプライドがあるだろう。荒っぽい仕事などするんじゃない。窃盗犯は強盗犯へそう告げているのではないか。だから同じ渋谷で、同じ二時十分なのだと。 二つの事件に関わりがあると聞いて、捜査一課は萩尾らに強盗捜査へ参加するよう要請してきた。しかし萩尾は窃盗事件を放り出す訳には行かないからと、あくまで情報共有にとどめることを主張する。プライドの高い一課の刑事達は、たかが窃盗ごときで強盗捜査をないがしろにしているように見える萩尾の態度に、反感を募らせた。 そしてまたも事件が起こる。今度は赤坂の宝石店で、やはり時間は午後二時十分。犯行時間も二分ほどだったが、今回は宝石と金庫の中身両方が盗まれ……そして警備員が一人殺されていた。強盗殺人である。 一課は俄然色めき立った。渋谷の強盗犯が、今度は殺人まで犯したのだと、躍起になって捜査を進めようとする。しかし萩尾は現場を見て首をかしげた。 「金庫と死体が、流れからはみ出している」と ―― 訳の判らぬ事を言うな。三課はおとなしく情報だけ提供していろと主張する一課に、萩尾は反発した。三課の情報源は、元盗人あがりの臑に傷持つ人間が多く、そのつきあいは非常にデリケートなもの。権力に物を言わせて職務質問だの任意同行だのをしては、努力を重ねて築き上げてきた信頼関係が、あっと言う間にぶち壊れてしまうからだ。 そんな萩尾の情報源の一人に、以前町工場を経営していた元盗人、迫田という男がいた。最新の警報や指紋認証システムをも無効化できる技術を持っているが、数年前『仕事』の最中に事故に遭ってしまい、今は車椅子生活をしている。しかし引退してもなおその研究欲は衰えを見せず、現在でも様々な機器を開発しては、頭の中で盗みをシュミレーションして楽しんでいる。そんな偏屈な老人だ。 迫田自身はもう盗みはできないが、彼には女の弟子がいたという。その女ならば、渋谷の窃盗事件も行えるかもしれない。そうにらんでひそかに捜査を始めた萩尾だったが、一課が勇み足で迫田を警察へ連行してしまう。 頑なに口を閉ざす迫田に、駆けつけた萩尾はなんとか信頼を取り戻そうと語りかける。 三つの事件を繋ぐのは、かつて迫田が経営していた工場の人間、六郷文也とその娘 美由紀ではないかと思われるのだが……
ドラマが(ry 主演の高橋克実さんも好きなんですが、読書記録を読み返してみると、この作品STと同じ作者さんなんですね。ハンチョウあたりもそうらしいですし、この作者さん、実はけっこう人気作家さんなんでしょうか?
さておき。 本の内容はドラマの1〜2話目のみでした。 続刊は出ていないようなので、続きはドラマオリジナル脚本なのかな? それともどこかで連載されている途中なのか。 読んでみた印象は、おおむねドラマと違和感ない感じです。小説では主役二人のプライベートにまつわる情報が、ほぼないぐらいでしょうか。萩尾さんの奥さんについては何も語られないし、秋穂ちゃんが寮に住んでいるという描写もありません。そして二人は最初から普通に、事件中でもソバ食べてます(笑) 正味二時間分をたっぷり340ページ使って描写されているので、物足りない部分はありませんでした。というかこの場合は、ドラマの方が至極ていねいに作られていたと言うべきなのか。 ……くそう、「確証」もDVDに焼いて取っておけば良かった……っ(悔)
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No.4826
(読書)
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2013年05月31日の読書
2013年05月31日(Fri)
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本日の初読図書: 江戸は深川にある出雲屋は、古道具屋兼損料屋、今で言うリサイクル・レンタルショップである。その店には様々な道具が、売られたり貸し出されるため、並べられている。 その中には、普通とはちょっと異なる道具も数多く存在していた。 古い道具の中には、大切にされて齡百年を越すと、付喪神という妖(あやかし)と化すものがある。人ならぬ存在となった付喪神は、しゃべることもできれば、影の中へ入ることもできる。手足を生やして、自由に動き回ることだってできるのだ。 出雲屋には、そんな付喪神達がたくさんいた。そして出雲屋の息子 十夜と、その幼なじみである市助、こゆりは、付喪神達としゃべったり遊んだりするのが大好きだ。最初は彼らを無視しようとしていた付喪神達も、力加減を知らぬ子供の猛攻にさらされるうち、すっかり相手をするようになっている。 今日も新しく、双六の付喪神が店へやってきたと、十夜達は親に隠れて夜中にこっそり箱を開けに来た。ところが新入り付喪神の「そう六」は、いきなり彼らへと勝負を挑んでくる。自分が勝ったなら、ひとつ言うことを聞いてもらう。さもなければ双六の中に閉じこめて、出られなくしてしまうぞ、と。 しかしいざ勝負を始める段になって、予想外の出来事が起こる。羽子板を持った見知らぬ妖が現れて、そう六の邪魔を始めたのだ。 少女の姿をした二人の妖は、なにやらそう六に敵意を抱いているらしい。子供達と出雲屋の付喪神達は、一時休戦して、そう六を助けてやろうとする。 やがてそれは、伊勢屋という大店の跡目騒動へと関わっていくことになり ―― 元気で正義感に溢れたまっすぐな子供達と、甘い物好きでいばりんぼうの付喪神達が次々と巻き込まれる、花のお江戸のハートフル・ミステリー。
タイトルが似てるなあ、でも同じようなタイトルのエッセイ集もあるし別物だろうと思っていたら、やっぱり「つくもがみ貸します」の続編でした。 ……しゃばけシリーズと言い、どれがどのシリーズのくくりで、どういう順番で刊行されたのか、もう少し判りやすくしようよ>畠中さんと出版社さん
そんなわけで「〜貸します」から、作中ではたっぷり十年が過ぎ、出雲屋の息子が十一歳になっております。 ……実は前作については、最後にくっついた主役カップルの取り合わせぐらいしか覚えていないので、「子供達が生れる前からつきあいのある」「親戚以上の間柄」な「すおう屋」と「鶴屋」との関係がいまひとつよく判らないのですが。もう一度借りてきて、読み直さないとかなあ。
ただ前作では、もう少し人間と付喪神の間に距離があったと思います。付喪神は、あえて「人とは直接話さない」というMYルールを作っており、人間側も「付喪神の会話を、横から漏れ聞くだけ」というスタンスを保っていました。お互いにお互いの存在を認識し、利用しあいながらも、直接的な交流は持たない。その微妙な距離感が、しゃばけシリーズとはまた異なった、一種独特な雰囲気を出していたと思うのです。 しかし今作では、十夜達の子供であるがゆえのストレートな言動に、そんな悠長なことなど言っておられなくなり、普通に十夜達 ―― ひいてはその親達ともコミュニケーションを取るようになっています。これはこれで面白いんですが、いささかしゃばけシリーズに引きずられているっぽくて微妙かなあ。 付喪神達がやたらお菓子を食べたがるのも、以下同文。
お話の構成としては、五つある短編の冒頭で、それぞれの付喪神が読者へ対して語りかけるところから始まっています。お話はそれぞれに独立していますが、全部通してひとつのストーリーを作り上げているのもいつもの通り。 最終話のラスト、赤子のエピソードでは、私もしっかり騙されました。くそう、やられた(笑)
空白の十年余の間には、ずいぶん辛いことも多々あった模様。それでも強く前を向いていく親を見て、子供達も成長していく。良いお話ですなあ。 主役が子供なので、ちょっと児童文学っぽい感じもします。
……それにしても、大久屋さん……あなたそんなに騙されやすくて、よくもまあお江戸で屈指という大身代を築き上げられましたねえ(苦笑)
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No.4817
(読書)
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2013年05月29日の読書
2013年05月29日(Wed)
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本日の初読図書: 平成の世に住む、ごく普通のサラリーマンだった一人の男。 彼はある朝、目が覚めると粗末な藁葺き屋根の家にいた。どうやら戦国時代の農民の少年として、生まれ変わったらしい。なんで?? と混乱し、パニックにも陥ったが、現実は受け入れるしかなかった。一年ほどのんびり家族と畑を耕して暮らし、このまま一生を終わるのも良いかもしれない……などと思っていた。 が、母親の洩らした言葉により、その人生は一変する。 「わしの弟は武士なんぞになりおってな」 戦国の世では、才覚さえあれば誰でも武士になることができる。とはいえしょせん貧しい農民上がり。せいぜい足軽が良いところだろう。 「木下藤吉郎とか名乗っとったわ」 木下藤吉郎と言えば、のちに天下統一を果たした豊臣秀吉だ。 ってことは俺、天下人の甥!? 栄華を極めた、贅沢な暮らしができること決定じゃないか!! 歓喜しつつ、記憶の中の史実を確認する。 えーと、秀吉の姉の息子っていうと……豊臣秀次か。一度は秀吉の後継者候補として関白の座に着くけれど、実の息子 秀頼が生まれたら、疎まれて切腹させられる人だな……って、え? このまま行ったら、俺、切腹?? いやだ! 切腹はイヤだ! 歴史小説を学生時代から読みあさり、ゲーム『信○の野望』は全作やり込んだ歴史オタクだった彼は、その一念で文字通り必死に足掻き始める。 持つ武器はただひとつ。これから起こるはずの『史実』を知っていること。 そうして秀次は、全力で己の切腹フラグをたたき折るべく、戦乱の世を駆け抜けてゆく ――
昨夜日付が変わってから読了。 Arcadia 時代から愛読してました。某一部で有名なオンライン小説が、ついに紙書籍になったぜ! 筋はおおむね変わらないけれど、文章はかなり書き足され……というかほとんど別物? 描写も濃くなっていて、WEB版を読んでいた人にもお得感があるんじゃないでしょうか。
ちなみに私の場合、WEB版を最初に読んだ頃には、「小田原ってどこだっけ?」「大阪の陣って何? 聞いたことないよ??」レベルの人間だったので、ただ普通につらつらと「ふ〜ん」「へ〜」と思いながら読んでいただけでした。そもそも豊臣秀次という存在自体、この作品で初めて知ったぐらいですし。 今はそれより少ーーしは知識的にマシになり、特に今回は以前「影武者徳川家康」を読むときに用意した、旧国名地図を横に置いて読み進めたので、だいぶ理解度が違ったと思います。 「のぼうの城」で忍城について知ったのも、第二ヒロイン甲斐姫や、後半の重要キャラ石田三成を楽しむにあたって、大きかったかと。
ただ文章的には……正直に言うと、紙書籍としてはどうかな、とも思いました。 特に視点が非常にとっちらかっている点とか、加筆修正したせいなのか描写や時系列が混乱気味とか、誤字脱字変換ミスなどがかなり残っているとか、いらんところに改行入ってて読みにくいとか。 いかにもオンライン小説あがりらしく、校正が行き届いていません。 2ch的表現は削られていたり、歴史的な解説もある程度は書き加えられていたりと、だいぶ一般向けに手直しされてはいましたが、それでもまだ読む人を選ぶ文体だと感じました<そもそもが掲示板投稿のネタ小説だしな……
っていうか、いきなり「小牧・長久手の戦い」とか「石垣山城」とか書かれても、歴史素人には史実がどうだったのか判らんよ!
まして転生トリップチートというジャンルに馴染みのない人間には、「目が覚めたらいきなり戦国時代でした」「現実として受け入れざるを得なかった」の一行で生まれ変わりを説明されて、過去を一度も懐かしまない。家族や友人などを全く思い出さない。かつての名前も出てこないとかいうのは、不自然極まりないかと。あと戦場で血や死体の描写がほぼないあたりも、命の軽さを感じさせて気になるところ。 それに転生者である秀次の脳内文章だけでなく、地の文でも普通に横文字が出てくると、戦国時代の雰囲気を殺いだりとかさ……
でも、まあ、全部ひっくるめても面白いからよし!(どーん)
もっとも……新刊買いした最大の理由、イラストは個人的にかなりしょぼんでした。 前半の挿し絵は完全にギャグ調だし、比較的真面目になる後半もなんというか……女性キャラだけ半端に線が奇麗というのも、普段萌え系描いてる人なんだろうなあと思われてもにょる…… なにより最大の見せ場(ドシリアスシーン)である大阪の陣で、いきなり本文と食い違ってるあたり、絵を見た瞬間、現実に引き戻されちゃって(しくしくしく)<なんで秀次が鎧着てるんだよ!!
……って、あー、文句ばかりつけちゃいましたが。 うん、ちゃんとおもしろかったんですよ? 特にすがすがしいほどにアクティブに未来歴史(彼にとっては現代)を変えていき、それが納得できる歴史IFなところとか、赤石路代さんの「 AMAKUSA1637 」と通ずる本当にたまらん面白いお話なのです。
ああ、そうだ。すごく良くできた大幅加筆修正入り自費出版同人誌を買ったと思うと、満足できるかもしれません。いろんな意味で。 300ページ超でイラストつきの同人誌なら、送料込1200円は安い。イラストがアレなのも、中身のレイアウト構成が素人臭いのも、それですべてが許せる。
ちなみに書籍化されたのは本編だけで、外伝・番外編は含まれていません。 加筆修正前のWEB版及び外伝・番外編は↓こちらで読めます。
■SS投稿掲示板 http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=original&all=4384&n=0
個人的には、こちらにある後日談的 二次創作×二本もオススメ。
■腕白関白二次創作「遠き時代の果て」 : 草葉の陰的な何処か http://noppara.exblog.jp/9879372/
■腕白関白二次創作「遠き時代の果て・蛇足」 : 草葉の陰的な何処か http://noppara.exblog.jp/9939716/
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No.4812
(読書)
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2013年05月27日の読書
2013年05月27日(Mon)
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本日の初読図書: シリーズ二冊目。 ほぼ完全に書き下ろしでした。 新キャラも大量に登場。WEB版では1行で終わったザコキャラ四柱頭も、四人全員が登場して、いろいろ画策しています。特に一人は意外な人物だった(驚) 今回はラグナ弱体化よりも、ルーチェの占いができなくなり、それをなんとかする方に主点が置かれていた感じでした。 ラグナ側は「本当にこのまま弱くなっても良いのか」という葛藤もあったりと、前回よりもシリアスっぽい部分がちらりほらり。 WEB版を読んでいる人間でも楽しめる内容だったと思います。特にメルが何故タンバリンを選んだかという理由は、一度笑わせておいて、そう持ってくるかと感動させられましたさ。
ただなあ……イラストが(以下略) だいぶ慣れたと言えば慣れたのですが、どうも本文とかみ合っていない部分とか、ロリロリしい部分が興を削いじゃって(−ー;) 特にラストのラグナのステータス表示、肝心の部分で小学生レベルの計算間違いをしているのが、いっきに気持ちを冷めさせました。本文もちょこちょこおかしなところがあったし、校正さん、もうちょっと仕事しようよ……
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No.4807
(読書)
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2013年05月25日の読書
2013年05月25日(Sat)
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本日の初読図書: ロシアの捜査当局と、科学捜査について情報交換を行うように。そう命令を受けた百合根警部は、STのリーダー赤城と共に、モスクワへ研修にゆくこととなった。同じく対テロについての研修に向かう機動隊の特殊部隊SATなどは、STのことを最初から見下し、「くれぐれも問題を起こさないように」などと言ってくる。 さすがの百合根もこれには腹を立てたが、幸いロシアについてすぐ、彼らとは別行動になった。二人を担当したのは、連邦保安局FSBの捜査官アレクという男であった。かつて日本への留学経験がある彼は、日本語も堪能で、実践的古流柔術を学んでいるという。 そんなアレクは現在、ある爆発事件を捜査しているとのことだった。かの怪僧ラスプーチンに縁があるとかポルターガイスト現象が起きているといった、あやしげな噂がつきまとう教会の地下室で爆発が起き、神秘主義者のロシアンマフィアが一人死亡したという事件。無差別テロなのか、殺人なのか、はたまた事故なのか。現場に爆発物の痕跡すらなく、犯行声明も出なければ容疑者も見つからない。事件は謎に包まれている段階だという。 実際に捜査することに勝る研修はない。そう主張したアレクにより、百合根と赤城は事件捜査に加わった。 一方でアレクは、自らが学んでいる柔術の流派の、モスクワ支部を作る活動をしていた。ゆくゆくはその有用性を上司に認めさせ、FSBの公式訓練に取り入れることができれば、指導者の一員として自分にも出世の道が開ける。そんな野心のもと日本から講師を呼び、支部立ち上げに伴った短期セミナーを行うことにしたのである。 その招きに応じてモスクワを訪れたのは、幼い頃から美作竹上流に学び若くして奥伝免許を取得した青年 芦辺正次郎と、数々の流派を渡り歩いた末わずか一年前に入門したばかりで中伝免許を得た男 ―― STの黒崎勇治で。 しかも彼らと同じ飛行機で、山吹までもが「ロシアに住む檀家から、経を上げて欲しいと言われまして」と、『私用』でモスクワへやってくる。 結局、いつもの顔ぶれに近いメンバーで捜査を始めたところで、新たな死体が発見された。見つかったのは件の教会で、死んでいたのは皆と同じホテルに泊まっている、顔見知りの日本人ジャーナリスト森田だった。 これは殺人事件に違いない。赤城が行った解剖結果からそう確信した百合根は、日本の上司へとそのむね連絡を入れる。 その返答としてもたらされたのは、菊川・青山・翠のモスクワ出張。 かくしてSTフルメンバーによる、モスクワでの活躍が始まる ――
シリーズ三作目の舞台はロシア。 タイトルに「黒の〜」とついていると思ったら、今回は黒崎さんに重点が置かれたお話でしたvv<個人的一押しキャラ とはいえ、手法的には群像劇に近いのかな? メインはいつも通り百合根さんですが、黒崎さんの才能を妬ましく思いつつも、理性でそれを押さえている良心の武道家 芦原さんとか、怪しいオカルト専門ジャーナリスト森田、そしてKGBの後身であるロシア連邦保安局の捜査員アレクといった面々の視点も入り交じり、物語は複数の流れを同時進行させます。特に芦原さんに関しては、ほぼ完全に事件とは関係ない部分で一人葛藤し、乗り越え、結末がついています(苦笑) ああでも、最後に芦原さんサイドと研修に行ったSAT達がクロスする場面は、思わずニヤリというかクスリと言うか。もうね、完全にSATが噛ませ犬状態で、笑えるやら気の毒やらvv
今回スポットが当たった黒崎さん。曲者揃いのSTメンバーの中では、極端に無口という点を除けば、あんまり欠点ってない気がするんですよね。文武両道っぽいし、冷静だし、礼儀は(たぶん)わきまえてるし、人間ガスクロだし。この巻で明らかになった先端恐怖症についても、単に地の文でさらりと一言触れられているだけで、別に尖ったものを向けられて怯えるシーンがあるとかいった、日常生活に支障がある具体的な描写はなかったですし。 うむ、やっぱり黒崎さんはかっこいい(結局言いたいのはそれか)
あとベテラン刑事 菊川さんも、じょじょに百合根さんへ歩み寄りを見せてきて良い感じ。
そしてこれはネタバレになりますが、アレクが思ったよりナイスガイで、読後感がさっぱりしていました(^ー^) ……ほとんどロシアに対する偏見ですが、タイトルのせいもあってか、なーんかこう、もっと薄暗いもやもやした終わりになるものと覚悟していたので。これは良い意味で裏切られました♪ っていうか、正直最初はアレクを疑っていたあたり、見事に作者に踊らされていたかと。
さて、そんじゃ Amazon 行って続きをポチッてくるかな。
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No.4801
(読書)
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2013年05月22日の読書
2013年05月22日(Wed)
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本日の初読図書: 官渡の後始末で、袁紹の息子達が後継争いを起こして内部分裂 → 曹操が実質的に河北四州をのっとり。 劉備は劉表の客将として、新野でこつこつと勢力を蓄えていたら、国境侵犯した漢中の五斗米道との戦の援軍にかり出された張飛が、ちゃっかり名馬と嫁さん(オリキャラ)を連れて帰ってきたり。 張飛に散々やられた五斗米道の張衛は、見聞を広めるためにあちこちと放浪。 揚州の孫家も着々と孫権が内政に力を入れつつ、周瑜が水軍を作り上げていたら、いきなり太史慈が毒矢で射殺されちゃってびっくりとか<演義だと赤壁で活躍してたはず 赤兔馬は三頭ほど子供ができたそうですが、いつ関羽の所に行くのかなー(わっくわく) ってか関平と周倉は…… あとは徐庶が登場しましたね。劉備陣営の初・軍師★ ……と思ったら、北方版では劉備に仕官していません。八門金鎖の陣を破る助言こそしましたが、あくまで『たまに遊びに来て話す人』という立場を崩さないまま。そこで正式に軍師として迎えられる前に……と謀略を巡らせた曹操の手により、母親を盾にされ許都へ向かうところでこの巻が終わっております。一応、曹操のやり口を汚いと評しつつも、母親の手紙が偽物だとまでは思っていない模様。そのあたりの展開、北方版ではどうなるのかな……? あ、ちゃんと最後に置き土産として臥竜の存在を劉備に伝えていきます。ふふふ、次でようやく孔明さんの御登場ですね! 劉表もついに病に倒れたことだし、次回は長坂坡あたりがメインかな? 張飛が橋の上で一喝する場面はあるのか? 趙雲の赤子を抱いての一騎駆けは?? 北方版は、特にそういった劉備陣営の有名エピソードをさらっと流してしまうので、どうなるのかまったく予測がつきませんです。
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No.4795
(読書)
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2013年05月21日の読書
2013年05月21日(Tue)
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本日の初読図書: 「母と日記(小説家になろう)」〜ABCD、4つの詩 http://novel18.syosetu.com/n6672w/
中世っぽい異世界(たぶん)で、全身包帯だらけで口も利けない、醜いけれど心優しく聡明な領主と、女であることを自分で認めたくない男装の令嬢とが織りなす、『美女と野獣』的恋物語。 途中いろいろとR18描写が入りつつ、かなり痛暗い展開もありますが、一応はハッピーエンド。……良いのかそれで、と多分には思いますが、本人達が幸せだって言うんだから、良いとしか(^ー^;;) 根底にひっそりとSF要素も入ってます。
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No.4794
(読書)
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2013年05月18日の読書
2013年05月18日(Sat)
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本日の初読図書: シリーズ二冊目、読了。 ……ううむ(困惑) 二巻目ならば、すでに室崎さんの背景事情が判っていること前提ですし、もうちょっとあれかなあとか思ったんですが。 すみません、やっぱり微妙でした(−ー;)
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No.4787
(読書)
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2013年05月17日の読書
2013年05月17日(Fri)
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本日の初読図書: 四巻目。 ……この辺りになってくると、もう完全にWEB版の内容を忘れていて、表紙の女性二人が「……誰だっけ??」状態です(苦笑) ちなみに右の赤毛に緑メッシュが、魔獣を研究していた闇組織『風の刃』のお飾り当主ヴォーレイエで、左のナイスバディなお姉さんが、その幹部クラスでヴォーレイエよりの立場にある、軍務官のベネフョスト。 今回の挿し絵では、他にも悪よりの幹部、総務官フョートレスに財務官アイルザッハといった、WEB版を読んでいた時にはほとんど区別できていなかった(苦笑)人達も登場人物イラストになるなど、読んでいてずいぶんイメージ&内容把握しやすくて助かりました。 そして! ついに! ちょっとギャグ調だったけど、待ちに待ってた選任護衛役兼教育係のイラストがvv ううん、まさに苦労性クレイヴォル! って感じでナイスでした。 そしてやはり待ってました、アユウカスもばっちりアップでご登場。白いはずのその瞳に、陰影というにはかなり濃い目のトーン貼ってあるのがちょっと違和感でしたが、それでもなかなか可愛らしく。ロリ婆の面目躍如♪ 絵と言えば、今回は世界地図も載ってましたが……こちらは正直びみょー(−ー;) 地形を描き込みすぎて全体的に真っ黒なところへ持ってきて、ごちゃごちゃしていて肝心の街道とか町の配置がよく判りません。ってか、町の数が足りなくないか?? はっきり言って、WEBで公開されている、作者さん直筆のマウス絵 1〜3巻分・3〜4巻分のほうがまだ判りやすいような。 特に今回はあちこち人や部隊が移動しまくって、『別働隊が西街道で敵主力を引きつけつつ、別の町から海沿いに本隊が南下して、本拠地の北門をつく』とかいったややこしい動きが多かったので、地図は本当に大切だと思います。
物語の内容的には、前巻のラストで始まった魔獣関連話、トレントリエッタ周囲をバタバタするエピソードでほぼ1冊終わりました。ラストはちょうど区切りがいい感じ。スンともちょっと関係が進展したりとかvv レイフョルドの暗躍&警戒されぶりは、さて書き足しだったのか、どうなのか。 先にも書きましたが、正直あんまり展開を覚えておらず……あとはお祭りでデコ車パレードする以外に、なんかあったっけ?? あ、馬車代わりのバス作ったりとかしてたかな。 ともあれおそらく次の巻で、このシリーズも完結するのではないかと。うむ、小説はこれぐらいの長さが、読む方としてもちょうど良いぐらいですかねえ。
……しかしユースケがいろいろ研究しているもののうち、新薬の開発(一部)や苔の栽培法などはともかく、ギミックで稼働するものについては、他の神技で再現できないですよね。ユースケの寿命自体は普通の人間と変わらないだろうから、彼の死後は作り直せない消耗品になるわけで。そんな技術で車(モーター)を生産 → 公共交通機関の設置とかしていたら、五年十年はともかく、二十年三十年というスパンになると、なにかと困ることになるのではとか思ってみたり。 っていうか、ほぼ永久機関をそんなにポコポコ生み出していたら、カルツィオ世界のエネルギーバランスが崩れるのではとか言い出すのは……チートFTを読む上で野暮というものなのか(苦笑)
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No.4783
(読書)
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2013年05月12日の読書
2013年05月12日(Sun)
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本日の初読図書: 代々木公園のホームレス村近くで、若い男の変死体が発見された。身元が分かる物はなにも持っておらず、外傷や首を絞められた痕などもない。一時はジョギング中の病死かと判断されかけた案件だったが、行政解剖の結果テトロドトキシン ―― いわゆるフグ毒が検出された。胃の内容物にフグは含まれておらず、誤って食べた結果の中毒死ではないらしい。 さらに日を置かずして、世田谷公園でも中年男の死体が見つかった。同じように身元を示す品も外傷もなく、死因はフグ毒だ。 連続変死、あるいは連続殺人事件。本庁、渋谷、世田谷署の合同捜査本部が立ち上げられ、アドバイザーとして科学特捜班STも参列した。しかし実績もなければ、捜査のセオリーからはずれたことを口にするSTの面々を、捜査員達は胡散くさげに見がちだった。特に検死官の川那部などは、邪魔になるからSTを外せと、あからさまに上層部へ直訴したという。 そもそも経費削減が叫ばれている昨今、上層部は科学特捜班そのものを解散させることも検討しているとの事だった。ここで目に見える実績を出さなければ、STの存続自体が危ぶまれる。 ST創設に尽力した科捜研所長 桜庭警視から発破をかけられた百合根警部は、どうにかして手柄を立てようと懸命に捜査へ関わろうとした。しかし個性的すぎるメンバー達は、警察官でない自分達の仕事は他にあると、なかなか思うように動いてくれない。 一方で、そこそこ名を知られた女性アナウンサー八神秋子は、マスコミの無遠慮な取材やストーカーなどに煩わされ、ストレスをため込んでいた。実業家である恋人は紳士的だが、どこか頼りない。癒しを求めていた彼女へと、恋人は自己啓発セミナーを紹介してくれた。そこの経営者は、大学時代にわずかばかり関わりがあった男、白鷺勇一郎。渡米して心理学を修めたと言う彼は、穏やかな微笑みと豊かな包容力で、彼女を安らがせてくれた。 じょじょにセミナーにのめり込んでいく秋子だったが、やがてその周囲に警察の姿が現れ始める。なんでも公園で見つかったという変死体の二人が、どちらも秋子に関わりを持っていたと言うのだ。女子アナを専門で狙うフリーカメラマンと、パソコンの中に秋子の写真を多数保存していた暴力団準構成員 ―― 警察……いや実際にはその補助であるST……の青山が口にする心理学的分析を聞いて、不安を募らせた秋子はますます白鷺へと傾倒してゆく。 やがて白鷺は秋子へと、特別なセミナーを受講するよう勧めてきた。それこそが二つの変死事件の真相へと繋がるものなのだと、秋子は知るはずもなく……
シリーズ2冊目、読了。 今回はフグ毒に自己啓発セミナー、宗教やらSMやらゾンビやらが入り乱れて、前回にも増してとっ散らかった感じです。 そのバラバラな情報が、やがてひとつにまとまって意外な真相を見せるところが、読んでいて面白いんですよねえvv もともと警察捜査&科捜研というお堅めのジャンルに、異常聴覚・嗅覚といった異能力とか変人揃いの特殊チームなどが加わって、不思議な印象を持つこのシリーズ。二作目も絶好調と言うところでしょうか。
前回はいまひとつ描写が足りないと感じた、赤城さんの『一匹狼だと自分だけが信じている、対人恐怖症の人望家』という複雑な面も、それなりに語られています。あと宗教関連と言うことで、やはり前回影が薄かった、兼業坊主の山吹さんが目立ってました。
そして今回は百合根キャップが右往左往している感じで、かえって1作目よりもSTメンバーを信頼しきれていない揺らぎが見られました。 1作目ではまだ勝手が判らないことすら判らずにいたのが、少し周囲が見えてきて、ST達を捜査陣の方針に合わせようと四苦八苦している様子が、見ていてちょっと痛々しいというか、辛いというか。 かえって前回ではSTに反感を持っていたっぽいベテラン刑事 菊川の方が、「そっちはどう思う?」とか意見を求めてきたり、ST側の見解に従って本筋から逸れた捜査に邁進してみたりと、これはこれでニヤリとさせられる展開。 そして「手柄を立てないと、STが廃止させられる」と焦りまくる百合根キャップに、事件解決後、山吹さんが告げる台詞。
「だってキャップが手柄を立てろと言うから……。普段ならやらないような一か八かの賭に出たんですよ」
この言葉で、ああこの唯我独尊なメンバー達も、警察側の立場にあるキャップのことをちゃんと認めて受け入れてるんだなあって、なんだかほっとしました。 百合根キャップもキャリア試験に合格した以上、世間一般から言えば立派な『特別』のはずなのですが。それでもやっぱりこの小説における彼の立ち位置は、『なんの取り柄もない、ごく普通の一般人の代表』であり『常識的視点の見本』です。 その彼を特別の塊であるメンバー達が認めてくれていると感じられると、何というかちょっぴり嬉しいです<とことんワトソン(役)スキー メンバーそれぞれの側から見た百合根キャップの印象、特に初対面からそれなりの信頼を置くに到った経緯あたりも、いつか読んでみたいですねえ。 それぞれのキャラクターに主眼を置いたという、色シリーズあたりで、そのあたり語られているのでしょうか?
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No.4770
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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