2013年11月23日の読書
2013年11月23日(Sat)
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本日の初読図書: お笑いタレントを目指し、落語家の元で修行を積んでいる女性。気の合わない師匠との関係にうんざりしつつ、ちょっと抜けたところのある恋人に癒されながら日々を過ごしていた彼女は、あることから恋人に振られる結果となってしまった。その原因になったのは、楽屋で起きた大金盗難事件で ―― 「失恋」 1940年代に起きた、とある強盗殺人事件。被害者の夫は政情の不安定な中国大陸を1000kmも踏破したそののち、ハノイで行われた裁判で、犯人の助命を願い出た。死刑確実であった犯人を、なぜ彼は助けたのか。そしてその半年後、せっかく生き延びたはずの犯人が獄中で自殺したのはどうしてなのか。三年前に死んだノンフィクション作家が遺した、その事件を記した原稿には、「没(ボツ)」という文字と共に「故意か? 偶然か?」と書かれていた。作家の娘は、父が何を思ってその原稿を出版しなかったのかを疑問に思い、理由が知りたいと、知人である燈馬へ相談を持ちかけてきて ―― 「巡礼」
一冊四話の C.M.B と比べると、二話収録のこちらはより話が練り込まれている感じがしますね。いやどちらも、それぞれに面白いんですが。
「失恋」の方は、前巻のお話と同時進行で謎解きをしていたそうで、一部に共通する会話が存在しています。……でもこれ、必要だったのかなあ? 師匠が語る「他人の押す幸せスイッチ」は、なんかこう胸にずーんと来ますね……私は人からどう思われるかがすごく気になるタチなので。 サイトの拍手ボタンとかアクセス解析とかコメントとかも、要するにこれなんですよね。設置してしまうと、反応のなさに不安を覚えてしまう。それならいっそ全部取っ払って、ささやかでも好きなように運営することだけで幸せを感じていればいいのかも……とか。 現実世界の方については、考え出すと本気で辛くなってくるので、考えない考えない…… しかしこの話、結局師匠が良い人で、主役の女性は一段階成長できてめでたしめでたしかもしれませんが、彼氏が気の毒すぎると思うのは私だけでしょうか(苦笑)
「巡礼」の方は……これまた深いお話でした。 物語は二転三転し、妻を殺された夫の心理が淡々と、しかし強烈な印象をもって語られてゆきます。 スパイ活動? 冤罪事件? 連絡の握り潰し? と様々な疑惑が飛び交い、最後の最後に解明された真相が、まさかああくるとは……(ため息) 夫の真意を「死んで楽にさせるより、一生を監獄で過ごさせて過酷な思いをすればいい」ぐらいかと思っていたら、どうしてどうして。さすがは加藤先生です。 ……しかし当時、外交官が海外に手紙を送る際には、検閲とかなかったんだろうか。そうでなくとも通訳の人があの手紙を出すところへ提出したら、旦那さんは大変なことになったと思うんですが……きっと本人はそれすらも覚悟の上でやったんだろうなあ。結果的に、通訳さんは口を閉ざしてしまった訳ですが。やはりそれは旦那さんに対する同情からなのか。そうすると今度は、犯人の妹とその関係者が気の毒ではあるんですが……ああでもある意味では、通訳さんのおかげで、負の連鎖がそこで止まってくれたとも言えるのか。 ところで燈馬や可奈達関係者が、短期間でベトナム←→日本をほいほいと往復してるけど、そのお金と時間はどこから捻出してるんだ……(苦笑)
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No.5302
(読書)
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2013年11月22日の読書
2013年11月22日(Fri)
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本日の初読図書: ……気がつけば、私ともあろうものが十日ぐらい本を読んでいませんでした。 Win7 ×2台の設定と、スマホのバッテリ問題がようやく一段落着いたので、久々に積読を手に取れましたよ。 今回の収録作は、「二笑亭」「ダイヤ泥棒」「レース」に、マウを主役にした番外編「箪笥の中の幽霊」の四作でした。 「二笑亭」は、元の建物が関東大震災のあとに建てられたというので、なんか災害に対応した仕掛けでもあったのかと深読みしてしまいましたが、しっかり作者のミスリードでしたね。周囲に信じてもらえなかったお兄ちゃんの心情と、それでも妹を見捨てずに頑張ったその行動が切なかったです。 「ダイヤ泥棒」は、一見コロンボ仕立てに見せかけて、どんでん返しが面白い構成だったかと。……しかしあの贋物の作りは、さすがに肉眼でもバレるんじゃないのか……(苦笑) 「レース」はお父さんの愛に涙……だけれど、弟は弟で身勝手ながらも愛情を持っていたのかなあと思うと、ちょっと複雑でしたね。でも最後のコマの、凛とした美しさはさすがでした。 外伝はまあ、こういう話もありかなと。ラップ音のトリックが、あの長さのロープで果たしてどれぐらいの時間を稼げるのかとか、依頼主の家の天井裏にあんな部屋があることを、なんで犯人が知っていたのかとか、疑問は残りましたが。
そして今回は、七瀬さんの活躍が少な目だったのが少々残念。登場はしてるんですけど、なんというか、横にいて驚いているだけという印象が。別に彼女が居なくても、学者としての森羅は成立しちゃうもんなあ……
ともあれ今回はどの話も、後味が良くて楽しかったです。 やはり本読んだ後は、明るい気持ちでいたいのですよ……
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No.5301
(読書)
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2013年11月09日の読書
2013年11月09日(Sat)
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本日の初読図書: 「名馬の犯罪(近代デジタルライブラリー)」三津木春影 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914195
呉田博士シリーズ、近代デジタルライブラリーで読める短編の最後は「銀星号事件( Silver Blaze )」の翻案です。 発表順としては、むしろこれがホームズ関係では一番最初なのかな?? もともとこの呉田博士シリーズは、海外の面白い探偵小説を、かたっぱしから原作も作者も関係なしに混在させて、呉田博士と中澤醫學士というコンビにあてはめた、著作権なにそれおいしいの? 的シリーズらしいので、そのあたり正直よく判らないのですよね(苦笑)
で、もって。 恒例日本風に変更された部分は、死んだ調教師のジョン・ストレイカーが調馬師の奧花隆次(おくはな りゆうじ)に、容疑者である賭けの元締フィッツロイ・シンプソンが、競馬雑誌の記者の比志島文助(ひしじま ぶんすけ)に、馬の持ち主のロス大佐が畑野(はたの)男爵に、バックウォーター卿が東京の豪商 厚川(あつかは)で、その部下のサイラス・ブラウンが小谷才吉(をたに さいきち)、ウィリアム・ダービシャーが新倉連三(にひくら れんざう)でグレゴリー警部が鹿島(かじま)警部と言った具合です。 そして名馬シルバー・ブレイズ号は「銀月」、デズブラ号は「野嵐」というあたりがなかなかお洒落な命名かと。
他には「キングズ・パイランドのダートムーア」が「下總(しもふさ)の松戸」になっていたり、「パディントン駅を出た電車の一等車両」が「上野を発した成田鐵道の二等室」にと、完全に舞台は日本へ改変。 服装のたぐいもゲートルが「西洋脚絆」に、「ダチョウの羽の縁飾りがついた赤っぽいグレーのドレス」が「千羽鶴を織出した厚板の丸帶を締めて、秋草の裾模樣の縮緬の衣服(きもの)」になっています。 そうかと思うと、白内障ナイフはごく簡単に「外科の方で使ふメスの大形のもの」といった具合。そして「群をなす乞食」って?? と思ったらジプシーのことでした。……ううむ、いろんな意味で時代ですねえ(^ー^;;)
時代と言えば、今回は人力車ではなく普通に自動車に乗ってました。 さらに乗り物と言えば、電車の窓から見える電柱の間隔をもとに、時速を計算する場面が省かれているのがちょっぴり残念だったりとか。ホームズさんがちゃっかり競馬で勝とうとしてる場面なんかも、細かいところですが入れて置いてほしかったなあ……
それにしても、改めて読んでみると原作の通りではあるんですが、鹿島警部の気の効きっぷりが、この手の名探偵が警察を馬鹿にするタイプのお話にしてはずいぶんと良いですねえ。現場をきっちり保存したうえで容疑者と被害者の靴と馬の蹄鉄を言われる前から用意しておいて、「さあどうぞ」だなんて、そりゃ呉田博士も喜ぶわvv レストレード警部あたりにちょっとは見習って欲しいぐらいです。
そして今回も、依頼人の態度が気に入らないからと、名馬を返却するのに一策弄する呉田博士、大人げねえvv 「不思議の鈴(海軍条約事件)」と言い「凾中の密書(二つのしみ)」と言い、やはりまず初期に翻訳されるのは、こういうラストにおちゃめな仕掛けのあるお話が選ばれるのかも?
あ、ラストと言えば、最後の最後に原作にはない余計な推理が一個付け加わっていまして……それによって容疑者の証言に矛盾が生じていたのが、いささか興醒めでした(−ー;) しかも博士……結局、馬を誰が隠していたのか、しっかりバラしちゃってないかい?? そこで融通を利かせる粋なところが、ホームズさんの魅力なのにさあ!
ううむ、改変するのなら、思いつきでやるのはやめておけという良い例ですな……
さて、呉田博士はあと一作、『河底の寶玉(四つの署名)』が残っているのですが……むう。正直このシリーズは中澤醫學士の扱いがいまひとつで、ワトソンスキーとしては楽しみが薄れてしまうのですよね。ただでさえ四つの署名は原作にもそんなに思い入れがないし、長編はちょっとしんどいなあ。 それよりも、高等探偵協会が編集した『肖像の秘密』あたりが気になるところです。 原作は六つのナポレオンをベースにいくつか混ざっているらしいのですが、表紙に書かれている絵が、乃木大将の胸像なんですよ! なんだかその絵を見るだけでワクワクしてくるのでしたvv
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No.5257
(読書)
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2013年11月07日の読書
2013年11月07日(Thr)
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本日の初読図書: ううううう、関羽〜〜〜〜っっっ( T _ T ) 判っていたことではあるのですが。それでも悲しい、切ない!! 物語後半に至るにつれて、関羽の独白、心情、行動、すべてがフラグを立てていて、もういっそ早く(読者を)楽にしてくれっ、と言いたくなるほどにページをめくるのが辛かったです(しくしくしく) この巻で、ついに三国が鼎立し、魏呉蜀と正式に名乗り始めます。 前半のメインは、曹操と劉備が漢中を取り合って戦い、劉備が曹操を退け漢中王として立つところです。これによって劉備は正式に益州を手に入れ、三国の一角を担う主となった訳ですな。 ……しかし言ってしまえば、そこが劉備=蜀の頂点。 後半は荊州を一人守る関羽と、力をつけてゆく蜀に対し警戒心を燃やす呉のパートです。
もしかして北方先生は、呉が嫌いなんだろうかと思わなくもなく。 世のユーザーレビューでは、北方先生は劉備が嫌いだったのではというものをよく見かけます。確かに北方三国志における劉備の性格付けはかなり独特で、本家三国志や演義でさんざんイライラさせられた部分が綺麗に改変され、個人的には非常に好みなキャラにされています。 しかし今回の呉のありようは……ううむ。 なんというか、孫権が非常に小物っぽく感じられてしまいました。 いやうん、地に足は着いているのだし、ある意味現実をよく見ているのでしょうけれど……それでも考えることが小狡くてちっちゃいと思えてしまうのは、私が関羽ファンだからなのか(−ー;) 周瑜を失った呉は、老将達も次々と死んでゆき、若い世代へと交代していっています。そして孫権も含めたその若い世代達の視野が、あまりにも狭い。 麋芳と士仁が関羽を裏切ったことに関しては、関羽の締め付けがきつかったからではなく、呉による策略の結果、そうしむけられた流れになっていました。そして呉に対してそういった策略を行うよう命じたのは、合肥の戦いで形式上とはいえ彼らを臣従させていた、魏の次世代トップ曹丕と司馬懿。 仮にも同盟を約していた呉に、よりによって戦時中に裏切られることなど考えもしていなかった、愚直なまでにまっすぐな武将関羽。 曹操も、そして関羽と長らく領土争いをしていた呉の老将呂蒙でさえ、関羽ほどの将軍を策略によって討つことに抵抗を覚え、そして自分達のような戦場で雌雄を決しようとする武人の時代は終わりを告げるのだと悟ります。 いわば北方謙三の愛するハードボイルドの世界、それがここで終わってしまったのではないでしょうか。 ……関羽が捕虜になったあげくに引き出されて首を打たれるのではなく、二代目赤兎や関平達と共に戦場で駆け切ってくれたのが、せめてもの救いだったか。 これから三国は、若い世代達の時代へと向かってゆく。そこにあの戦場で熱く血をたぎらせ、敵対しながらも通じ合うものを持っていた、英雄達の居場所はもうないのかもしれません。
ううう……ここから先まだ四冊もあるのですが、正直もう読みたくない( T _ T ) 劉備と張飛の最期。そこに至る成り行きと心情を、はたして北方先生がどのように解釈・表現されるのかは確かに気になりますが、それでもこの先の展開を考えるとあまりにも切なくって、ページをめくる手が進みそうにありませんです。 北方三国志では、あの孔明さんもけして超越した天才ではなく、時に弱気になり、本当に自分の立てた戦略は正しかったのかと主君へ弱音を吐く、等身大の人間です。そんな孔明さんが三義兄弟から取り残され、実直ではあるけれどやっぱりちょっと頼りない趙雲と、何考えてるのかよく判らない投げやりな馬超とやっていくのかと思うと、気の毒すぎます……
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No.5254
(読書)
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2013年11月06日の読書
2013年11月06日(Wed)
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本日の初読図書: ……えー、先日気になると言っていたマンガ版、とりあえず1巻目を買っちまいました(苦笑) 200Pちょいの割りにたっか! と思っていたら、A5大判だったよ。表紙を含めた紙も上質で、道理でこの値段のはずだと納得しました。 内容はタイトル通り中編「セント・メリーのリボン」を丸1冊かけて、ていねいに描かれています。元が中編なので、削られている部分は少なく、むしろ書き足されているように感じられました。 もちろんマンガという表現手法上仕方のないことなのでしょうが、改変はいくぶんかあります。たとえば電話での会話のみだった火打とのやりとりなどは、お互いの家や職場へ出向いて直接話をしていたりします。あと続編で明らかになってびっくりさせられた、火打の左腕についても、普通のままになっています。しかしそんなのは枝葉末節でしょう。 残念だったのは、主役がちょっと悪い意味で人間らしくなりつつ、悪い意味で達観した感じになっていること。 うん、いや判りにくいでしょうが……たとえば仕事の前の日に「獲物を見つけた。猟に行こう」と誘われて、内心で「全てを放り出して飛んでいきたくなった」と独白しているシーンとか、仕事がない時でも見栄を張って電話のコールに飛びつかず、数回鳴らしてからもったいぶって取って見せたり、通帳の残高を見て唸ったりしている場面がなくなったのが、原作よりも達観してしまっている点。 人間らしいと言うのは、単にマンガになったおかげで口数と表情が増えた(ように感じられる)というあたりです。
いやしかし、それらを加味しても、なかなか良い感じでした。 金圭花とパグの再会シーンとか、なんかほのぼのしましたしvv
時代がちゃんと昭和61年のままで、携帯電話など登場していないのも好感度大です。盲導犬の制度についてなど、現代の目から見ていくつかのフォローは入っていましたが、基本原作に準じたその描写が、どこか懐かしさを感じさせる独特の雰囲気をよく表現していました。
ちなみに竜門の住んでいる『三万五千坪の山中にある、電信柱の廃材を再利用したログハウス』が、あまりにも脳内イメージ通りで 感 動 。 派手さはない、けれど細かいところまで書き込まれた味わいのある絵柄が、確かにこの物語には相応しいと思いました。
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No.5253
(読書)
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2013年11月05日の読書
2013年11月05日(Tue)
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本日の初読図書: 「百獣の王の愛玩人間(小説家になろう)」〜記憶は突然によみがえる http://ncode.syosetu.com/n9457bh/
とりあえずメモ。
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No.5249
(読書)
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2013年11月04日の読書
2013年11月04日(Mon)
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本日の初読図書: 「異世界で本当にチートなのは知識だった。」〜チートですが何か? http://ncode.syosetu.com/n1020bm/
現代日本から、魔法ありの和風っぽい世界に飛ばされた主人公が、チートな身体能力と土魔法と、あと現代知識を元に成り上がっていくほのぼのストーリー。 とりあえず一章目まで読み終わり。墨俣城作戦で将軍になりました。
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No.5248
(読書)
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2013年11月02日の読書
2013年11月02日(Sat)
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本日の初読図書: 「博士臨終の奇探偵(近代デジタルライブラリー)」三津木春影 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914197
大正時代のホームズ翻案、呉田博士シリーズ。今度は「瀕死の探偵」です。 冒頭からいきなり、東北新幹線で福島へ出張している中澤醫學士。「キウビヤウスグカヘレ」という電報一枚で呼び戻されております(笑) そして今回は病状を知らせる役まわりのハドソン夫人が「小間使のお光(みつ)」に。 ……いったい何人、女中やら小間使いやら雇ってるんだ、呉田博士。 しかも堀とかいう謎の「實驗室受持の助手」とかいるし、あげく勇(いさむ)なんていう「博士の令息」が!! 結婚してたのか呉田博士!? しかも高等學校生だと?? そしてお稻さんてのはまさかの奥さんか Σ(゜ロ゜ノ)ノ ああでも他にも助手とか息子とか奥さんとかいても、事件解決に協力を願うのは中澤君なんですよねvv ぶっちゃけ病気のふりをしている呉田博士が頑固な物言いをしつつも、「氣に觸(さは)りは……すまいね。」とか気にしているのはおおいに萌えどころだったりするんですが(苦笑)
……が、しかし原作でのあの微妙にデリケートな二人の関係が、いまひとつ表現されきっていなかったのが残念至極でした。 えーと……私はこの話を、ホームズさんが親友であるワトソンさんに対して、「たとえどんなにひどい態度を取っても、彼は自分を見捨てない」ということを確信して甘えまくっているエピソードだと思っているのです(笑) そしてワトソンさんが、ホームズの辛辣な言葉に内心では傷つきながらも、大人の態度で友を受け入れいたわりつつ、あれこれ世話を焼こうとしている点も、楽しみどころだと思っていますvv しかし呉田博士のシリーズでは、文章が三人称の上、両者の間に明確な上下関係があるため、中澤君が師匠からいくら無茶を言われても尽くしている様子が、あんまりこう、心へ迫ってこないのですよね……ただの偏屈な師匠と、言い返せないその弟子、みたいな感じがして……やりとり自体はそれなりに原文に忠実なのに、なんかこうコレジャナイ感が漂ってしまいます。 しかもしかも! 「自分とお前の証言能力は同じだ」と悪あがきする犯人に対し、ホームズさんが公正な証言能力のある第三者を用意するために、ワトソンさんを部屋に隠れさせておいて犯人を誘き寄せたっていう、一番大事なところがカットされてるよ……犯人が連行されて隠れ場所から飛び出してきた中澤君に向かって「君の事をすつかり忘れて居つた」ってさ……助手の存在意義って……(しくしくしく) かろうじて、助手がそばに近寄るのを強硬に止めた理由として、「君は、私が眞實に君の醫學上の才能を尊重して居らぬと思ふとるのか」ってフォローを入れてくれていたのが、ワトソンスキーとしてはせめてもの幸いでした。
なお毎度恒例、今回の固有名詞のたぐいは、 ロザーハイスが横濱(よこはま)に、ロウワ・バーク街13番地が京橋南紺屋町卅二番地にと、完全に舞台は日本の東京になっています。 そしてエンストリ博士が宮入(みやいり)博士に、モートン警部が森原(もりはら)警部に、農場主のカルバートン・スミスが移民會社社長の榛澤鐵一(はんざは てついち)で、殺されたビクター・サビジは萬造(まんざう)といった具合。 あと半クラウン金貨が五十錢銀貨になってましたし、手錠はもちろんのこと取繩です(笑)
ああでも「スマトラから輸入された熱病」とかは意外にそのままでしたね。舞台が日本なので、内地あたりになってるかと思ったんですが。
あ、あと大事なのは、ようやく判明した呉田博士のフルネームが、呉田秀雄(くれた ひでを)で、肩書きは法醫學の博士だという点。でもって「科學的探偵の名手」なのだそうです。
今回のお話は、原作に登場しないキャラクターとか設定が(あくまで会話の中でとかですが)ずいぶんと出てきていて、ますますホームズさんという存在から独立した感じが強かったです。これが翻訳ではなく『翻案』の、味と言えば味なんでしょうが……でもワトソンさん以外に助手がいるなんて……ましてや息子と奥さん(推定)がいるなんて……ッッ
そして最後に気の効いたジョークとして使われている「今度は老人の千松の役を演じなくてはならぬ」の意味が判りませんでした。 「老人(としより)の千松」か……たぶん当時有名だった舞台の演目かなんかなんでしょうね。このあたりがジェネレーション・ギャップとでも表現するべきなんでしょうか……
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No.5247
(読書)
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2013年11月01日の読書
2013年11月01日(Fri)
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本日の初読図書: 「ニュート家の軌跡(小説家になろう)」〜15 http://ncode.syosetu.com/n1383bu/
大それた野望を持って異世界に逃げ出そうとした、傲慢な貴族の青年ユート・ベ・ニュート。現代日本に暮らすごく普通の若者『新渡戸裕人』は、彼によって承諾もなくその存在を入れ替えられ、異世界へと放り出された。 新たな領地として開拓予定だったその土地の精霊の力は、ユートの暴挙のため枯渇してしまい、間もなく飢饉が襲ってくることは目に見えていた。 精霊に無礼を働いた結果、記憶を失ったユートなのだと周囲に認識された裕人は、受肉した精霊レティクルや、ユートの二人の妻エルシーナとルフォンらと共に、辺境の寒村を富ませるべく内政に励むこととなる。
『チート、主人公最強、主人公万歳、ちょいエロ、チョロイン、勘違いなどの成分を大量に含みます』と紹介文にあるので、察して下さい。 まだ異世界について二日目なので、たいしたことは行われていません。……一人で大熊を倒したくらいかな? やばいことをやりそうな時に、事前に予知夢のようなもので失敗を『視る』場面があり、その描写がけっこう容赦ないので要注意。 あと他人様に迷惑掛けまくりで現代地球に転移したユートには、なんらかの形で制裁が下ると良いと思います。……でもユートが『裕人』として暮らしていくなら、その場合破滅するのは、裕人の社会的生命と言うことになるのだろうか……
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No.5239
(読書)
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2013年10月31日の読書
2013年10月31日(Thr)
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本日の初読図書: 全10巻で完結した人気シリーズの外伝。 最終巻の終わり頃に語られていた、夕士と古本屋の世界旅行を語る100P程の中編を表題作に、「画家と詩人」「千晶直巳」「クリとシロ」「小ヒエロゾイコン」「あたし、ねこ、ネコ」の五作の短編が収録されています。どれも夕士が世界旅行に出発した19才頃〜最終巻のラストであるアラサーに至るまでのエピソードです。 ラスベガスのお話は、世界旅行に出て三ヶ月目の夕士と古本屋が、千晶の兄である恵のもとに転がり込むのですが、そこにちゃっかり会いにやってくる冬休み中の千晶と、お守りのマサムネさん。をい千晶、もう完全に一生徒としての扱いを踏み越えてるぞ(笑)<今さらか このお話はあんまり盛り上がりもオチもなく、夕士の成長をほのぼのと眺める感じでした。 あとの短編は、最終巻で駆け足で語られたエピソードを、詳しく説明してくれている感じ。画家とシガーのその後とか、千晶の退職と再就職、クリとシロの転生や小ヒエロゾイコンの復活のいきさつ、長谷の起業などなど。 そしてそれらによって微妙に変化してゆく、妖怪アパートの空気。
「時とともに、変わらないものなど何もない。妖怪アパートだって、例外じゃない」
龍さんの言葉が心に染みいります。 けれどそれは、けして悪い方にばかりではなくて。 別れがあれば出会いがあり、人は日々成長して新たな時を刻んでいく。 いつかアパートに新しい『子供』がやってくる時、きっと夕士は前を歩く『大人』の一人として、その子に『作家』と呼ばれるようになっているのだろうなあ、と。 そんなふうに思える一冊でした。
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No.5233
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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