よしなしことを、日々徒然に……



 2013年11月06日の読書
2013年11月06日(Wed) 
本日の初読図書:
4087824004猟犬探偵 1 セント・メリーのリボン (グランドジャンプ愛蔵版)
谷口 ジロー 稲見 一良
集英社 2011-12-20

by G-Tools
……えー、先日気になると言っていたマンガ版、とりあえず1巻目を買っちまいました(苦笑)
200Pちょいの割りにたっか! と思っていたら、A5大判だったよ。表紙を含めた紙も上質で、道理でこの値段のはずだと納得しました。
内容はタイトル通り中編「セント・メリーのリボン」を丸1冊かけて、ていねいに描かれています。元が中編なので、削られている部分は少なく、むしろ書き足されているように感じられました。
もちろんマンガという表現手法上仕方のないことなのでしょうが、改変はいくぶんかあります。たとえば電話での会話のみだった火打とのやりとりなどは、お互いの家や職場へ出向いて直接話をしていたりします。あと続編で明らかになってびっくりさせられた、火打の左腕についても、普通のままになっています。しかしそんなのは枝葉末節でしょう。
残念だったのは、主役がちょっと悪い意味で人間らしくなりつつ、悪い意味で達観した感じになっていること。
うん、いや判りにくいでしょうが……たとえば仕事の前の日に「獲物を見つけた。猟に行こう」と誘われて、内心で「全てを放り出して飛んでいきたくなった」と独白しているシーンとか、仕事がない時でも見栄を張って電話のコールに飛びつかず、数回鳴らしてからもったいぶって取って見せたり、通帳の残高を見て唸ったりしている場面がなくなったのが、原作よりも達観してしまっている点。
人間らしいと言うのは、単にマンガになったおかげで口数と表情が増えた(ように感じられる)というあたりです。

いやしかし、それらを加味しても、なかなか良い感じでした。
金圭花とパグの再会シーンとか、なんかほのぼのしましたしvv

時代がちゃんと昭和61年のままで、携帯電話など登場していないのも好感度大です。盲導犬の制度についてなど、現代の目から見ていくつかのフォローは入っていましたが、基本原作に準じたその描写が、どこか懐かしさを感じさせる独特の雰囲気をよく表現していました。

ちなみに竜門の住んでいる『三万五千坪の山中にある、電信柱の廃材を再利用したログハウス』が、あまりにも脳内イメージ通りで 感 動 。
派手さはない、けれど細かいところまで書き込まれた味わいのある絵柄が、確かにこの物語には相応しいと思いました。
No.5253 (読書)


 2013年11月05日の読書
2013年11月05日(Tue) 
本日の初読図書:
「百獣の王の愛玩人間(小説家になろう)」〜記憶は突然によみがえる
 http://ncode.syosetu.com/n9457bh/

とりあえずメモ。
No.5249 (読書)


 2013年11月04日の読書
2013年11月04日(Mon) 
本日の初読図書:
「異世界で本当にチートなのは知識だった。」〜チートですが何か?
 http://ncode.syosetu.com/n1020bm/

現代日本から、魔法ありの和風っぽい世界に飛ばされた主人公が、チートな身体能力と土魔法と、あと現代知識を元に成り上がっていくほのぼのストーリー。
とりあえず一章目まで読み終わり。墨俣城作戦で将軍になりました。
No.5248 (読書)


 2013年11月02日の読書
2013年11月02日(Sat) 
本日の初読図書:
「博士臨終の奇探偵(近代デジタルライブラリー)」三津木春影
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914197

大正時代のホームズ翻案、呉田博士シリーズ。今度は「瀕死の探偵」です。
冒頭からいきなり、東北新幹線で福島へ出張している中澤醫學士。「キウビヤウスグカヘレ」という電報一枚で呼び戻されております(笑)
そして今回は病状を知らせる役まわりのハドソン夫人が「小間使のお光(みつ)」に。
……いったい何人、女中やら小間使いやら雇ってるんだ、呉田博士。
しかも堀とかいう謎の「實驗室受持の助手」とかいるし、あげく勇(いさむ)なんていう「博士の令息」が!! 結婚してたのか呉田博士!? しかも高等學校生だと?? そしてお稻さんてのはまさかの奥さんか Σ(゜ロ゜ノ)ノ
ああでも他にも助手とか息子とか奥さんとかいても、事件解決に協力を願うのは中澤君なんですよねvv
ぶっちゃけ病気のふりをしている呉田博士が頑固な物言いをしつつも、「氣に觸(さは)りは……すまいね。」とか気にしているのはおおいに萌えどころだったりするんですが(苦笑)

……が、しかし原作でのあの微妙にデリケートな二人の関係が、いまひとつ表現されきっていなかったのが残念至極でした。
えーと……私はこの話を、ホームズさんが親友であるワトソンさんに対して、「たとえどんなにひどい態度を取っても、彼は自分を見捨てない」ということを確信して甘えまくっているエピソードだと思っているのです(笑)
そしてワトソンさんが、ホームズの辛辣な言葉に内心では傷つきながらも、大人の態度で友を受け入れいたわりつつ、あれこれ世話を焼こうとしている点も、楽しみどころだと思っていますvv
しかし呉田博士のシリーズでは、文章が三人称の上、両者の間に明確な上下関係があるため、中澤君が師匠からいくら無茶を言われても尽くしている様子が、あんまりこう、心へ迫ってこないのですよね……ただの偏屈な師匠と、言い返せないその弟子、みたいな感じがして……やりとり自体はそれなりに原文に忠実なのに、なんかこうコレジャナイ感が漂ってしまいます。
しかもしかも!
「自分とお前の証言能力は同じだ」と悪あがきする犯人に対し、ホームズさんが公正な証言能力のある第三者を用意するために、ワトソンさんを部屋に隠れさせておいて犯人を誘き寄せたっていう、一番大事なところがカットされてるよ……犯人が連行されて隠れ場所から飛び出してきた中澤君に向かって「君の事をすつかり忘れて居つた」ってさ……助手の存在意義って……(しくしくしく)
かろうじて、助手がそばに近寄るのを強硬に止めた理由として、「君は、私が眞實に君の醫學上の才能を尊重して居らぬと思ふとるのか」ってフォローを入れてくれていたのが、ワトソンスキーとしてはせめてもの幸いでした。

なお毎度恒例、今回の固有名詞のたぐいは、
ロザーハイスが横濱(よこはま)に、ロウワ・バーク街13番地が京橋南紺屋町卅二番地にと、完全に舞台は日本の東京になっています。
そしてエンストリ博士が宮入(みやいり)博士に、モートン警部が森原(もりはら)警部に、農場主のカルバートン・スミスが移民會社社長の榛澤鐵一(はんざは てついち)で、殺されたビクター・サビジは萬造(まんざう)といった具合。
あと半クラウン金貨が五十錢銀貨になってましたし、手錠はもちろんのこと取繩です(笑)

ああでも「スマトラから輸入された熱病」とかは意外にそのままでしたね。舞台が日本なので、内地あたりになってるかと思ったんですが。

あ、あと大事なのは、ようやく判明した呉田博士のフルネームが、呉田秀雄(くれた ひでを)で、肩書きは法醫學の博士だという点。でもって「科學的探偵の名手」なのだそうです。

今回のお話は、原作に登場しないキャラクターとか設定が(あくまで会話の中でとかですが)ずいぶんと出てきていて、ますますホームズさんという存在から独立した感じが強かったです。これが翻訳ではなく『翻案』の、味と言えば味なんでしょうが……でもワトソンさん以外に助手がいるなんて……ましてや息子と奥さん(推定)がいるなんて……ッッ

そして最後に気の効いたジョークとして使われている「今度は老人の千松の役を演じなくてはならぬ」の意味が判りませんでした。
「老人(としより)の千松」か……たぶん当時有名だった舞台の演目かなんかなんでしょうね。このあたりがジェネレーション・ギャップとでも表現するべきなんでしょうか……
No.5247 (読書)


 2013年11月01日の読書
2013年11月01日(Fri) 
本日の初読図書:
「ニュート家の軌跡(小説家になろう)」〜15
 http://ncode.syosetu.com/n1383bu/

大それた野望を持って異世界に逃げ出そうとした、傲慢な貴族の青年ユート・ベ・ニュート。現代日本に暮らすごく普通の若者『新渡戸裕人』は、彼によって承諾もなくその存在を入れ替えられ、異世界へと放り出された。
新たな領地として開拓予定だったその土地の精霊の力は、ユートの暴挙のため枯渇してしまい、間もなく飢饉が襲ってくることは目に見えていた。
精霊に無礼を働いた結果、記憶を失ったユートなのだと周囲に認識された裕人は、受肉した精霊レティクルや、ユートの二人の妻エルシーナとルフォンらと共に、辺境の寒村を富ませるべく内政に励むこととなる。

『チート、主人公最強、主人公万歳、ちょいエロ、チョロイン、勘違いなどの成分を大量に含みます』と紹介文にあるので、察して下さい。
まだ異世界について二日目なので、たいしたことは行われていません。……一人で大熊を倒したくらいかな?
やばいことをやりそうな時に、事前に予知夢のようなもので失敗を『視る』場面があり、その描写がけっこう容赦ないので要注意。
あと他人様に迷惑掛けまくりで現代地球に転移したユートには、なんらかの形で制裁が下ると良いと思います。……でもユートが『裕人』として暮らしていくなら、その場合破滅するのは、裕人の社会的生命と言うことになるのだろうか……
No.5239 (読書)


 2013年10月31日の読書
2013年10月31日(Thr) 
本日の初読図書:
4062694735妖怪アパートの幽雅な日常 ラスベガス外伝 (YA!ENTERTAINMENT)
香月 日輪
講談社 2013-08-09

by G-Tools
全10巻で完結した人気シリーズの外伝。
最終巻の終わり頃に語られていた、夕士と古本屋の世界旅行を語る100P程の中編を表題作に、「画家と詩人」「千晶直巳」「クリとシロ」「小ヒエロゾイコン」「あたし、ねこ、ネコ」の五作の短編が収録されています。どれも夕士が世界旅行に出発した19才頃〜最終巻のラストであるアラサーに至るまでのエピソードです。
ラスベガスのお話は、世界旅行に出て三ヶ月目の夕士と古本屋が、千晶の兄である恵のもとに転がり込むのですが、そこにちゃっかり会いにやってくる冬休み中の千晶と、お守りのマサムネさん。をい千晶、もう完全に一生徒としての扱いを踏み越えてるぞ(笑)<今さらか
このお話はあんまり盛り上がりもオチもなく、夕士の成長をほのぼのと眺める感じでした。
あとの短編は、最終巻で駆け足で語られたエピソードを、詳しく説明してくれている感じ。画家とシガーのその後とか、千晶の退職と再就職、クリとシロの転生や小ヒエロゾイコンの復活のいきさつ、長谷の起業などなど。
そしてそれらによって微妙に変化してゆく、妖怪アパートの空気。

「時とともに、変わらないものなど何もない。妖怪アパートだって、例外じゃない」

龍さんの言葉が心に染みいります。
けれどそれは、けして悪い方にばかりではなくて。
別れがあれば出会いがあり、人は日々成長して新たな時を刻んでいく。
いつかアパートに新しい『子供』がやってくる時、きっと夕士は前を歩く『大人』の一人として、その子に『作家』と呼ばれるようになっているのだろうなあ、と。
そんなふうに思える一冊でした。
No.5233 (読書)


 2013年10月30日の読書
2013年10月30日(Wed) 
本日の初読図書:
4101218145猟犬探偵 (新潮文庫)
稲見 一良
新潮社 1997-06

by G-Tools
以前読んだ短編集「セント・メリーのリボン」のリボンに収録されていた、表題作の続編です。今回はまるまる一冊同シリーズで、四話収録。前作セント・メリーから引き続き、全体的にお話やキャラクターが繋がっています。
なんというか、非常に渋いハードボイルドを思わせます。
荒事はそんなにたくさんはないんです。皆無とは言いませんけど。主役の趣味というか、副業が猪や鳥を撃つ猟でして、銃を取りまわしたりはしますが、それを人間に向けるようなモラルのないことはしません。むしろ淡々と語られる猪猟の描写や銃の手入れの様子が格好良い。
三万六千坪ある山の中で、狼と見まごう大型犬ジョーと共に、電柱の廃材で作られた丸木小屋で暮らす竜門。犬と同じ物を喰い、どこへ行くにも犬を連れ、そして行方の知れなくなった犬を追う。渋いです。
ちなみに電話がカーテレホンってあたり、時代を感じさせますねえ。93〜94年に書かれたお話ですから、二十年ほど前の作品でしょうか。あの頃は自動車電話が、庶民に手の届く中では最先端だったのかなあ。

……話の中に登場するいくつかの人物や事件なども、そういえばあの頃に話題になったような……という気がします。
特に第一話に登場する、『とある人気動物映画を撮影したエセナチュラリスト』は、多分『あの人』のことなんだろうなあ。子供の頃は素直に好きだったんだけど、その映画関係の本当かどうか解らない噂を聞いて、急激に熱が冷めちゃったっけ……

最終話では、依頼人がやたらにフラグを立てまくるので、どうなることかとドキドキしていたら、これまたまさかのああいう結末かとか。依頼人が無事だったのは良いけれど、なにもハードボイルドだからって、そこまでハードな展開にしなくても良いだろうとか思わなくもなく( T _ T )
1〜3話が、寂寞とした空気の中にも心温まるものを感じさせただけに、ちょっとショックが大きかったです。特に3話目「サイド・キック」は良いお話だったのになあ。 コミック版にも心惹かれるけど、流石にちょっと高すぎる(しくしくしく)
そして1話目のトナカイは、結局どうなったのだろう……?
No.5230 (読書)


 ネットで読めるホームズ翻案その2
2013年10月28日(Mon) 
今日も今日とて、現在ネットで読めるホームズ翻案を追加発掘作業。
その1はこちらから。

■近代デジタルライブラリー - 肖像の秘密
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904893

■近代デジタルライブラリー - 斑の蛇
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904817

■近代デジタルライブラリー - 外交の危機
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905691

探偵博士緒方緒太郎と青島から帰還した退役軍醫和田義雄のコンビ。
「肖像の秘密」は「六つのナポレオン(含む二人の邂逅エピソード)」、「斑の蛇」はそのまんま「まだらの紐(〜コマ51)」、「外交の危機」は「海軍条約事件」。このシリーズでは他に「不思議の膏薬」として「緋色の研究」が出版されているらしいのですが、近代デジタルライブラリーにはありませんでした(しょぼん)
なおこれらは大正初期に高等探偵協会によって編集されたもので、著作権は切れているようです♪

さらにさらに、

■近代デジタルライブラリー - シヤロック・ホルムス. 第1編
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/954226

■近代デジタルライブラリー - シヤロック・ホルムス. 第2編
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/954227

大正5年発行、加藤朝鳥 訳、保護期間満了vv
こちらは一応、固有名詞がカタカナで舞台もイギリスのようですね。
収録は「鴉片窟」「老嬢」「赤頭組」「蜜柑の種子が五つ」「幽谷の秘」「好敵子(女優アドラ)」「鵞鳥」「毒蛇」。
うーん、だいたい分かる気はするんですが、「老嬢」が謎ですね……「幽谷の秘」は長さからして「ボスコム谷の惨劇」かな?

他にも、コナン・ドイルで検索かけるとザクザク出てきますよ……(^ー^;;)
ふふふふふ、読みたい物がいっぱいだ〜〜


2014/05/24 追記:

■近代デジタルライブラリー - 英国探偵奇聞録. 続
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/896685

これも著作権保護期間満了済。
「那翁狂」は恐らく六つのナポレオン。「煙草の灰」と「紅髪組合」はそのまんまですね。
冒頭をざっと見た感じ、レストレードが戸田刑事、ホームズさんが掘夢、ワトソンさんが綿園國手(ドクトル)となってます。
「続」ということは前の巻があるはずなのに、それは収蔵されてないなんて〜〜(><)
No.5226 (読書)


 2013年10月28日の読書
2013年10月28日(Mon) 
本日の初読図書:
「壁上の血書 : 附・池底の王冠(近代デジタルライブラリー)」九皐散史
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/915076

今回からは呉田博士とか言いつつ、うっかりマンガ版「ピンク色の研究」に触発されて、こちらを読み始めちゃいました(苦笑)
ホームズとワトソンが出会う、最初のお話かつ長編「緋色の研究」と、短編「マスグレーブ家の議定書」が大正時代に翻訳されたものです。
これは著作権が切れていないので、入力 → 公開はできないのが残念無念(しょぼん)

この翻訳ではホームズさんが穂水三郎(ほみづ さぶらう)で、ワトソンは和田軍醫補、旧友のスタンフォードは谷口さんになっています。語り手は、のちに和田さんの日記を入手した『著者』とのこと。
なので文章は和田さんの語りではなく三人称になっています。しかし冒頭から和田さんの経歴が、倫敦大学で醫學士の稱號取得 → 根戸禮(ねどれー)で研修を受ける → 二回目のアフガン戰争に軍醫として從軍 → 負傷して本国へ送還、というふうに語られるなど、なかなか原作に忠実な流れ。
穂水さんが地動説を知らない&覚えてもすぐに忘れると主張したり、和田さんが穂水さんの智識表を作ってみる下りなどもしっかりとあります。
ただホームズさんが披露する推理の詳細や脈絡のない飛びまくる無駄話、語られる事件の様相などがだいぶ省略されているのが、残念な点でしたね。ワトソンさんが初めて見聞きするそれらに驚きまくるのが、「緋色の研究」の見どころなのにvv
とは言え逆に、省略されたりエピソードの順番を多少入れ替えることによって、展開がよりドラマチックになっていたことは確かです。特に最終章で、犯人の末路をラストへ持ってきたのは大正解でしょう。原作ではいきなりそこから最終章が始まってますからね。まあそれがドイルの文章の味と言えばそうなんですが、読者を驚かせるという点ではやはりラストでしょう。

……そして和田さんと言えば、書かれている経歴を見て原作も確認してみたんですが、和田(ワトソン)さんって少なくともこの話の段階では、負傷を癒すために「九個月間の休暇」が出ただけなんですね? ってことは、退役軍人じゃないんですか!? まさかの予備役??

あと穂水さんが下宿を探している理由も、家賃が高いからではなく「格安の下宿を搜し當てたが、部屋が少し廣すぎるから、誰か共同で下宿しないかなんて云つて居ましたぜ」って……人間嫌いのはずが、どうした穂水!?
そのくせどんな人物かと聞かれて答えた谷口さんには、いきなり容赦なく「キ印」呼ばわりされてるし!
……しかし「人間の屍骸を杖で殴って見て、人と云ふものは死後何の位經つたら、血が出なくなるだらう」という研究をしていると聞いて「其奴は面白いぢやないか?」と答える和田さんも、けっこうイッちゃってるような気がします(苦笑)<原作のワトソンさんは、一応「死体を叩く!( Beating the subjects! )」って驚いています

物語の舞台は倫敦なんですが、地名は日本風で、フランクフォートが佛蘭戸(ふらんど)街、ブラッドフォードが保留戸(ほるど)町、ブリクストンロードのローリストン・ガーデンは「降矢(ふるや)通の朗林(らうりん)街」、クリーブランドが栗府蘭(くりぶらんど)でケンジントン公園が劍眞頓公園(笑)
そして我等がベーカー街は星加街(ほしかまち)二百二十一番地となっています。

その他に人名は、トバイアス・グレッグソン警部が呉隅富雄(くれずみ とみを)に、レストレード警部が鳥山に、殺されたイーノック・ドレバーが奴列婆園吉(どれいば えんきち)で、ジョセフ・スタンガーソンが須田蛇二郎(すたゞ じらう)、犯人のジェファーソン・ホープが富山次郎助(とみやま じろすけ)といった具合に。

そしてモルモン教には、多妻宗という漢字が振られていました。
……えーと……そもそも私は最初に「緋色〜」を読んだときから思っていたんですが、

(以下は少々辛口につき要反転)

砂漠で飢え死にしかけていたところを、モルモン教に入信することを条件に出されてちゃんと承諾した上で助けてもらっておいて、あげくモルモン教徒達さえ生死に関わる苛酷な環境の中から水と食料と土地まで分けてもらい、資産家として十何年も暮らしてきたくせに、いざモルモン教徒と結婚しろ(義娘を結婚させろ)と言われたら、恥だ不名誉だっつって逃げ出すって……なんかひどくね?
確かに意に染まぬ結婚を強要されるのは問題ですが、戒律で他教徒との結婚は明確に禁じられてるんですよね。ならばせめて罪悪感ぐらいは抱こうよ。他に好きな人がいるからやむなく戒律を破るけども、逃げて捕まれば罰を受けるのは仕方ない、ぐらいは思うのが人の道ってものでは。 そりゃまあ確かに、僧正達はよそから女性をさらってきたりとかもしていたようだけど、それとこれとは話が違うかろう。
そもそも紀美子(ルーシー)は積極的に殺されたんじゃなく、それなりに妻として遇されていたのに自分で衰弱死したわけで。そりゃ目の前で義父を殺されたのは同情するけど、先に自分達が戒律破って逃げ出した上、追っ手に銃で抵抗したんだから、それも無理なくないか?? 義父の死体だってうっちゃらかしにはされず、一応それなりに葬ってあるし。
なのに戒律破らせた張本人が、これは正統な復讐だ、人道正義は我にありーみたいに胸張って主張しても、なぁんかモヤッとするものが感じられるとか考えてしまうのは、私のうがった見方なのでしょうか(苦笑)

(反転ここまで)

……そしてこの翻訳では次郎助、ちゃっかり自分の方は丸薬飲んでなくないか……?


ところで今回、英語原文とこの翻案を読み比べていて、私は衝撃の事実を知りました。
ホームズさんって、「私立探偵」じゃなかったんですね……(愕然)
ええ、確かに翻訳によっては「諮問探偵」とか「顧問探偵」となっていて、どう違うんだろうとは前々から思っていたんです。それに最近いくつも古い翻案を読んでいて、警察の人のことも「探偵」と呼称されていたりして不思議には思っていたんです。
どうやら、

 公共の探偵(警察官) → government detectives
 私立探偵(興信所員) → private detective
 諮問(顧問)探偵 → consulting detective

と言う事みたいですね?
でもって、ホームズさんは、警察官や私立探偵の相談役コンサルタントという訳なんですな。
シャーロキアンとかから見れば遅すぎる認識かもしれませんが、個人的にはびっくりでした。今までずーーっと「シャーロック・ホームズとは、世界で一番有名な 私立探偵 」だと思いこんでいたので。
やー……やっぱり外国語に翻訳すると、特に子供向きの解りやすい翻訳などだと、いろいろ食い違いが生まれてくるものなんですねえ……
翻訳の齟齬と言えば、ワトソンさんが最初に飼っていると言って、しかしその後一度も出てこないブルドッグ(“I keep a bull pup,” )についても、あれは実は「自分は猛犬のような癇癪持ちの部分を、心の中に持っている」という比喩表現なのではないかという説があるそうですね。
……もっともこの翻訳では、ハドソンさんが飼っていた病気のテリアの代わりに、毒丸藥飲まされて御退場と、ちゃんと落ちがついていましたが(^ー^;;)

……って、「壁上の〜」だけで感想長っ(汗)
まあ「壁上の〜」だけで193ページ。「池底の〜」は40ページほどですし、やはり二人の出会い話ってあたりでついつい興が乗ってしまうのは、我ながら無理もないとは思いますがvv


では残る「池底の王冠」ですが、こちらは前述の通り「マスグレーブ家の議定書」が翻訳されたものです。
この話は原作だと、「石炭入れに葉巻」とか「ペルシャスリッパの爪先を煙草入れに」とか「マントルピースにジャックナイフで手紙を突き刺し」たり「壁に弾痕でV.R.」といった、彼等の下宿の愉快な実態が描写されているのですが、そのあたりはバッサリと省略されています。ただ「化學の實驗に用ふ藥品や犯罪の参考品やらが取散つて、時には足踏も出來ない程」と表現された程度です。

そして今度は和田さん視点の語りになっている冒頭で、「穂水と同宿してから最う餘程になる」と述懐されていますが……ええと、それは九ヶ月以上が経過してるってことなんですかね??
さらに続いて過去の事件の内容について、穂水さんが語ってゆくわけですが……原作のように、折々に和田さん(ワトソンさん)に語りかけたりしないで、ここからはほぼずっと最後まで穂水さんの一人称状態。
ワトソンスキーには(以下略)

さて今回の各固有名詞は、まずマスグレーブが小松に、執事のブラントンは武良谷(ぶらたに)に、メイドのレイチェル・ハウエルズは下女の花になっています。
地名はモンターギュー街が門徳街(もんとくまち)に、サセックスのハールストンが「砂瀬屈(させツくす)の春須頓(はるすとん)」といった感じ。
そして武良谷が石蓋の取っ手に巻いた「チェックのマフラー」は「辨慶縞(べんけいじま)の手袋」となっていました。
確かに弁慶縞ったらチェックっぽい模様なようですが……何故に手袋?

あとは……原作「マスグレーブ〜」を読んで昔から疑問だったんですが、三百年の間に目印になる樫と楡の木は、高さが伸びなかったんでしょうか?
季節による太陽の位置の変動も問題になりますし……あの宝探しはいろいろと無理があるんじゃないかと言うのは、読者として無粋でしょうか(苦笑)

とかなんとかくさしつつ、一気に読まさせられてしまったあたり、やっぱりホームズ翻案は面白い! わけですがvv
さて次はどれに手を付けようかな〜? 呉田博士のシリーズは、助手の扱いがいまひとつだからなあ……
No.5225 (読書)


 2013年10月27日の読書
2013年10月27日(Sun) 
本日の初読図書:
「卷煙草の灰(近代デジタルライブラリー)」三津木春影
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914197

大正時代のホームズ翻案。今回からは呉田博士と中澤醫學士のシリーズです。まずは短めの、「金縁の鼻眼鏡」を元にした話から手をつけてみました。上記URLのコマ番号68〜101に収録されています。
基本的に同作者さんの別翻案、「禿頭組合」の上泉博士と中尾醫學士と同じような雰囲気で、二人の間には明確な年齢差と上下関係があるようでした。そして文体は助手視点ではなく、三人称。呉田博士は単に犯罪捜査が好きなだけで、別に探偵を職業にしているのではない模様です。

舞台ははっきり『日本』。「ケント州の南方のチャタム」が「川崎の東の吉田」になっています。そして「イギリス人を装っていた、ロシア人の虚無主義者ニヒリストな革命家」が「東北出身で支那の革命黨の志士」といった表現に変わっています。「シベリア送り」の刑も「武昌城中の穴藏の中に禁錮」と言った具合(笑)
このあたりの思い切った改変といい、また固有名詞も含めて割と直訳に近かった保村俊郎シリーズに比べると、話の流れは同じでも一度咀嚼して意味を呑み込んでから、自分の文章で書き表し、当て字表現なども多用したりと、だいぶ文章がこなれているように感じられますね。これは翻案に慣れてきた、後期の作品だということなのでしょうか? それともまだ海外作品をそのまま受け入れる土壌ができていない時代に、なんとか日本風にアレンジした苦肉の初期作品なのか??

ともあれ。
この作品では冒頭の二人のやりとりなどはかなりざっくりと省略されていて、わずか数行で警部が事件を持ち込んでしまいました。ちなみに警部さんはスタンリー・ホプキンズから山賀(やまが)警部に。
ちなみにその時に呉田博士が解読していたのは、「(消して書き直した)羊皮紙の薄れた元の字」だったのが「豐臣時代の古文書」になっています。そして山賀警部が乗ってきた馬車は、「俥(くるま)」とあるから、これはきっと人力車のことなんでしょう(笑)
他に人名は、「コラム教授」が「樹立常春(こだち つねはる)と申す著述家」、「家政婦のマーカー夫人とメイドのスーザン・タールトン」が「奧働きの梅田さいと女中のお村」、被害者ウィロビー・スミスは「波山夏雄(なみやま なつを)」となっています。
あと面白かったのは、車椅子(Bath chair)が「乳母車の樣な物」に、「シュロの敷物( cocoanut matting )」が「綺麗な花蓙(はなござ)」と書かれていたあたりでしょうか。ニスを「假漆」って書くのは、この間「Qさま!(※クイズ番組)」で問題になってたっけ(笑)

ストーリーそのものは、正直どんな話か覚えていなかったんですが、博士がやたらと煙草をふかし始めた場面で「ああ!」と思い出しました。うん、これは確かに面白い話のひとつでした。ホームズさん……もとい呉田博士が、やたらと女性をたらし込むのがうまい(笑)という点もちゃんと語られています。

ただワトソンさん改め中澤醫學士が、原作に輪を掛けて空気というか……いる必要があるのか? という存在感の薄さになっていて非常に残念です。ワトソンさんは事件の記録者という重要な役割と、ホームズを支える唯一無二の相棒というポイントがあるのですが、中澤醫學士は本当に呉田博士の後をついて歩いているだけ。助手としての役割すら果たしていないように思えて、ワトソンスキーにとってはちょっと悲しかったです。
No.5219 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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