よしなしことを、日々徒然に……



 2014年03月05日の読書
2014年03月05日(Wed) 
本日の初読図書:
4865290265カーマリー地方教会特務課の事件簿 (1) (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
橘早月 中嶋敦子
ポニーキャニオン 2014-03-03

by G-Tools
「東の貴婦人」との異名を持つ港町カーマリーは、レストラニクス聖教国でも屈指の繁栄を誇る、東方最大の町だ。しかし商業都市としての活気とは裏腹に、不死の魔物が跋扈する暗い一面をも持っている。カーマリー地方教会の特務課といえば、魔物を相手に激闘を余儀なくされ、教区一番の殉職率を毎年更新し続ける、誰もが配属されたがらない部署であった。
隣国との戦争が終了して早五年。人員と経費の削減が囁かれる教会聖騎士団の一員であるジークフリート=カシナーデは、上司から万年人手不足のカーマリー特務課へ異動を言い渡される。
「なんでですか! 俺、カーマリーに流刑にされるような、どデカイことしでかせる男でしたか!?」
抗議するジークへと、上司は重々しく告げる。彼が選ばれた理由……それは「アミダクジ」だと。
カーマリー特務課の主任に賭チェスではめられた上司は、若い人員を差し出せという要求に平等な選択をするため、クジで彼を選んだのだという。アミダクジによるものとはいえ、命令は命令。泣く泣くカーマリーへの左遷を受け入れたジークは、問題を起こした人間の流刑地、持て余し者の吹き溜まりと呼ばれる特務課へと、しぶしぶ配属された。
そんな彼を出迎えたのは、聖職者というよりも暗黒街のボスとでも言った方が相応しい、着崩した僧服と黒の片眼鏡を身につけた特務課主任オブザー侍祭と、個性的すぎる同僚達。
着任初日から歩く死体の集団を退治に向かわされたジークの前で、特務課の主任は高らかに『死人還し』の呪文を唱える。
「団体様ご一行、ご招待!」
待てや、アンタ。内心でつっこむジークだったが、アンデッド達の半数は見事に浄化された。残りは新人歓迎会兼研修だとうそぶくオブザーに、ジークは彼の性格の一端をかいま見る。
それでも一癖も二癖もある同僚達は、付き合ってみればそれなりに気持ちが良く、活気のある見知らぬ町での新たな生活も面白そうだ。
そうして日々を前向きに送り始めたジークフリートへと、しかし受難は次々と降りかかってきて……

オンライン小説の書籍化が多くなってきた今日この頃ですが、よもやこの作品に再会できる日が来ようとは。いつかは……と淡い淡い希望だったのが、サイト閉鎖から十年の時を経て、ついに現実化してくれました!!
今ではほとんどコレクションと化しているDLした膨大なオンラインテキストの中でも、記念すべきダウンロード第一号。私にとってはそれがこのカーマリーなのです。
残念ながらイラストの類は保存していなかったので、うっすらとした記憶と己の想像力だけを頼りに思い描いていたキャラクター達が、これまた美しい挿し絵で( T ▽ T )
表紙のオブザーがアクセサリじゃらじゃらなのにちょっと不安を覚えていましたけれど、カラー口絵や内部ではそんなこともなく。普通に聖印(ロザリオ)だけで、あとはストイックな神父服をいい感じに着崩していました。武装神官のアッシュが想像以上に二枚目かつ重装備だったり、見習いルキアが同じくかなりの美形だったりとか、あとジークはもっとごつくて素朴な五分刈りぐらいのアンちゃんを想像していたのがシュッとしたイケメン青年だったりとかしましたが、おおむね満・足★でした。
なによりブラウン神父が! カラー口絵でオブザーの後ろに佇んでるのが、もうブラウンさん以外の何者でもないっっ《o(><)o》
……それだけに、ああそれだけに。
内容は懸念していた改悪もなくほぼWEB版のままでしたが、それだけにWEB版を読んだときに忘れられなかった、第四話でのあのブラウンさんショック。それが紙書籍だとよりいっそうの衝撃が(涙)
しかもオブザーの起死回生の一手がまたすごすぎるんですよね……「友人に協力を求めただけのことだ」って……このくだりのオブザーは、イラストも相まって怖すぎる(汗)

……とまあ、判る人にしか判らない感想はさておき。
シリアスと見せかけてギャグで始まるこのお話は、1巻ラストで大変ヘヴィなシリアス展開を見せます。
もう紙面はライトノベルとは思えないほどに、みっちりとした密度で真っ黒。そもそもの文字数と行数も、この手の文庫本にしては多い方でしょう(42字×16行×352ページ)。それを地の文がびっちり埋め尽くしていました。
作者様が宗教についてお詳しいのか、作中に出てくるキーセ神教の作り込みは半端ありません。キリスト教がモデルの一神教なんですが、各宗派の対立とか、過去にあった魔女狩りとか聖者の扱いとか宗教戦争とか、すんごい中世ヨーロッパの雰囲気が出ていて、ドロドロにリアルなんですよ。その上で「不死の魔物」というファンタジックな魔物と、実際に作用する神の奇跡を絡めて、実に重厚な世界観を構築されています。

そしてメインキャラのオブザー神父は、一見すると不真面目な不良神父のようですが、実際には非常に信仰心が篤く、教育に関しても生真面目な信条を持った優秀な人物です。たとえ普段の呪文がどれほど適当であろうと、物理攻撃の方法が聖書の角で殴り倒すという方法であろうと、彼の根底は誰よりも深く、重い。
……まあそれだけに、普段のギャグパートがまた、たまらん面白いのですがvv
持て余し者の吹き溜まり、左遷された人々の流刑地と呼ばれるそんな特務課に、一ヶ月もしないうちにすっかり馴染んでいるジークもまた、常識人に見せかけておいて、順応性が高いと思います(笑)
第二部ラストまで改変なく刊行してくれるのならば、「語り手はジークで始まっても、真の主役はオブザーだよな」から「え、やっぱり本当の本当な主役はジークだったのか??」となってくれることでしょう。
あとWEB公開時に大量に書かれていた外伝。その中でも第一部終了後に、ジークが「自分にしかできないから」とチェスの駒をしまっていくあのお話は、ぜひ巻末にでも収録して欲しいなあ。今回最後のイラストを見ながら、しみじみとそう思いました。
よし、二巻も定価で買うぞ! 三巻まで行けば、第一部までは入る、よな?

ああ、サイト閉鎖に伴い未完で終わっていた前日譚「この雨が止んだら」とか、別シリーズ「華屋創兵衛」とかも、今度こそ商業化されないかなあ……
No.5653 (読書)


 2014年03月02日の読書
2014年03月02日(Sun) 
本日の初読図書:
「金属バカと異世界転生(小説家になろう)」〜魔法学院一年目 : 理事長の呼び出し
 http://ncode.syosetu.com/n9758bv/

金属や鉱物の加工にだけ異常な能力を持つ研究馬鹿の青年が、異世界で赤子へ生まれ変わっていろいろやらかすお話。……いちおうTSものなんですが、外見は美少女でも実は上下どっちもある両性具有っぽい特殊種族に生まれてしまっているので、男の娘っぽい要素もありなにやらややこしいことに。
うーん、ストーリーの説明が難しいです。大雑把に言うと、辺境の島で迷宮探索をやっている両親の元で十歳まで成長しつつ世界のことを知ってゆくパート。迷宮を攻略し終えた両親に連れられて王都へ出てきて、貴族のお嬢様の元へ侍女奉公に上がりつつ王様や宰相とも交流したり、それまで不可能だったオリハルコンの鍛錬という新技術を生み出したり、主人のお嬢様を狙う政敵を倒したりするパート。十二歳になり、お嬢様と共に魔法学校へ入学して女子寮で生活する羽目になるパート。と、今のところだいたい3つに分けられるでしょうか。
金属バカとタイトルにある割りに、もっぱら金属以外のことで才能をいろいろ発揮しています。死ぬ前は研究馬鹿っぽかったのに、なんでそんなに広範な知識があるんだ……と思っていたら、途中で予想外にヘヴィな過去が明らかになったりしてびっくりとか。
あと、主人公はいわゆる異世界転生を果たしている訳ですが、他に異世界トリップしたキャラと異世界憑依したキャラも出てきたりして、なんだかカオスなことになったりとかも。特にその辺りは異世界憑依したキャラがかなり残虐行為に手を染めていたり、主役の意外な冷淡さが発揮されていたりして、ちょっと全体からすると浮いている、かも?
なんというか、それこそ三つぐらいの話がまとめてられている感じがして、少々話が広がりすぎている感はあるような。紫雲とか今後出てくるんだろうか……?
No.5647 (読書)


 2014年03月01日の読書
2014年03月01日(Sat) 
本日の初読図書:
「トリップ・トラック(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n0915bl/

十年以上も務めてきた工務店が倒産して、泉堂史郎(31)は呆然としていた。退職金も出ない状態で代わりにと譲られたのは、型落ちの2トントラック『イスズのエ○フ』。車両後部が観音開きの貨物室になっている、パネルバンだ。おまけとして積みっぱなしの中身も持って行けとの事だったが、建築資材や工具の類など、工務店を首になってしまっては使い道もない。
だが嘆いたところで、どうしようもなかった。しばらくは実家の世話になろうとアパートを引き払い、数少ない家財道具もトラックに積み込んで、史郎は海沿いの道を走りだした。ところがそこで、道に飛び出してきた女の子を避け、トラックごと崖下へダイブしてしまう。
……そうして気が付くと、彼はトラックに乗ったまま見知らぬ草原にいた。そして現れたのは、乗用車ほどもある巨大な三つ目の恐竜と、それと戦う女剣士と女魔法使い。
逃げる恐竜はまっすぐにトラックへと突っ込んでき……そして見事に激突した。
ああああああああ! 俺の退職金がっ!! とうろたえる史郎だったが、何故かトラックはびくともせず、逆に恐竜は脳震盪を起こしたのか動かなくなった。その隙に恐竜へ止めを刺した女剣士と女魔法使い ―― イングリットとジルコニアから話を聞いて、史郎は自分がセツカという異世界にトリップしてしまったことを知る。
いま彼がいるあたりは空間が不安定で、魔法の転送による事故が多発する場所らしい。なので彼女達は史郎がどこか遠い別の大陸から、事故で飛ばされてきたのだろうとあっさり納得した。馬のついていない自走馬車 ―― 2トントラックについても、そういった魔道具は高価ながら一部の貴族などが使用しているそうで、珍しがりながらも普通に受け入れてくれる。
二人を根拠地の街ニナロウへと送りがてら、史郎はいろいろとこの世界について教えてもらった。そして、どうやらこのトラックの移動速度と乗り心地はかなり良いらしいので、運送業でも始めればなんとかやっていけるのではないかと目算を立ててみる。
ところがその道中、野営中にアンデッドに襲われたことで、意外な事実が判明した。なんと2トントラック『イスズのエ○フ』には『妖精(エルフ)のイスズ』が宿っていたのだ。
トラックが世界を渡った際にたまたま位相が重なり、さらにたまたま真名が一致したため存在が安定し、実体を持たないはずの妖精が一体化してしまったのだという。光の妖精の力を宿したトラックは、史郎を主と呼び、ヘッドライトの光だけでアンデッドをあっさりと消滅させてしまった。さらに内燃機関のピストン内で極小の炎系魔法を発生させることで、軽油を必要とせずとも動くことができるようになっていた。イスズ本人は、吸気口から空気と共に取り入れられる魔力(マナ)さえあれば、充分に存在していられるという。
え、それってなんてエコ?
驚くべきことは他にもあった。なんでもこの世界には『ルミニウム真銀』と呼ばれる希少金属が存在していて、その強度はオリハルコン以上。さらには魔力を蓄積する性質まで備えている超魔法金属なのだが、しかしその金属、地球ではごくありふれた存在で……

引き続き「偽クノイチ〜」から始まる一連の作品群のひとつ。完結済です。
これでこの作者さんの書かれている話はコンプリートしましたvv どうやら「窓の記憶〜」以外は、ファリーアスシリーズと銘打たれていないものでも、どこかしらに繋がりがあるようでした。
……とはいえ今回のお話に出てくる異世界は、紫乃さん達が行ったファリーアスとはまた違うようで、魔法の名前とか貨幣価値、ギルドの設定が微妙に異なっています。ではどこで話がリンクしているのかというと、地球側でして。
詳しくはネタバレになるので避けますが、地球に残された史郎の両親の側でも外伝扱いでエピソードがあり、そちらの方でちょこちょことですね。
まあ、それはさておき。
んー……今回は割と判りやすい、物資チートの成り上がりでハーレムエンドでしたかね。
主役の職業が『自走馬車使い(トラックドライバー)』で、魔物の倒し方が2tトラックを運転しながら片っ端から殲滅(ひきころ)すってあたり、なんとも独創的で面白いvv
なにしろトラックは車体がほぼ総アルミ製、すなわち1gで白金貨5枚=50万円もする超魔法金属ルミニウム真銀の塊なので、時速数十キロの体当たりでどんなモンスターもイチコロなのですよ。そして運転している史郎はもちろん同乗者にまで経験値が入るので、レベル上がり放題。故に史郎自身はほとんど戦闘経験を積まないまま、トラックの運転だけでレベルが英雄ランクにまで上がっていきます。
でもって。
力も金も地位も領地も得て、内政パートもあるんですが……領地が繁栄する下地となった『毎年約束された豊作』が、よくある腐葉土とか輪作導入ではなく、エルフによる祝福頼りだというのがちょっと気になりました。遠方との商取引も、1台しかないトラック(内部空間50倍に拡張済)の輸送力頼りだし。
……これってイスズの主である史郎が生きてる間は良いけれど、代替わりしたらとたんに衰退する流れと違うか? 仮にイスズが子孫に代々受け継がれるとしても、それはそれで跡目争いとか権力闘争の原因になりそうだとか、そんなことを思ってしまったり。一応貴族として一領を預かったのなら、未来のことも考えなきゃだと思うんだよ?
そして敵対相手のやってることが相当エグいので、史郎パートのへろーんとした雰囲気に油断していると、ちょっとショックを受けるかもしれません。まあ、一部だけでもナインちゃんとして救われてくれたのは良かったですが。

とかなんとか言いつつも、一気読みするぐらいおもしろかったんですけどね!
元建設会社勤務かつ元建具屋勤務の兄を持つ身としては、アルミサッシで武器防具を作ったり、防寒用の裏地にアルミ蒸着した作業着で剣の斬撃を防いだりとかするのがたまらんです(笑)
作業帽子の裏側にアルミホイル仕込んで兜の代わりとか、それどんな子どもの日やvv
No.5644 (読書)


 2014年02月28日の読書
2014年02月28日(Fri) 
本日の初読図書:
「仮面勇者の放浪譚(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n0719bs/

轟轟(とどろき ごう)は、現代日本の某県に在住の平凡な44才の男であった。元々の体格の良さに加えてプロレス観戦好きなことから身体を鍛え、198センチ98キロという肉体こそ持っていたが、しょせんは筋トレとプロテインによる見せかけだけの筋肉。内面は親から受け継いだ農地で農業を営む、ごく温和な性格にすぎない。
そんな彼にはプロレス観戦の他に、もうひとつの趣味があった。マスク集めである。もともとはこれもプロレスが切欠だったのだが、今では能面からホビーマスクまであらゆるものに手を出している。地元であった祭りの夜にも、轟はうっかり屋台のお面を全種類大人買いしてしまっていた。そして、さて買ったは良いがどこに飾ろうか……と思案していた彼の目に写ったのは、地面に落ちた綺麗な手鏡。漆塗りのそこそこ高価らしいそれに、落とし物として届けようかと手を伸ばし ―― そうして気が付いた時には彼は、グリーン・ロードと呼ばれる大陸の一都市、迷宮都市ミトラの街角に立っていた。そう、まごうことなき異世界というやつである。
幸いにも日本語は通じたので、生来の頑健な肉体とこの世界に来てから手に入れた特殊能力で、彼は日雇い労働者として生きることにした。
轟がこの世界の職業斡旋所――ギルドで得た職は、運搬者(ポーター)と仮面使い(ペルソナマスター)。
そして固有スキル……仮面一体化。
装備した仮面の能力を得るというこのスキルは、何故か轟が地球から持ち込んだお面類と非常に相性が良かった。なにしろハッ○リ君のマスクを着ければ忍法が実際に使える様になり、ドラ○もんのお面を着けると4次元ポケットを使える様になるという具合。
さらに称号:仮面の勇者(正体を隠している間、全ステータス+30%)が加わることで、彼の能力はとんでもないことになっていた。
これはとある理由から地球と非常に近しくなっている異世界ファリーアスで、地球からトリップした幾人かの人間のうちの一人が紡ぎだす、正体不明の仮面勇者の物語である……

「偽クノイチ〜」から始まる一連の物語のひとつ。今回は短編です。
轟さんが拾おうとした手鏡は、「劣化賢者〜」でチトセちゃんが使っていた『界渡りの鏡』とのこと。ただこの鏡はチトセちゃん以外が使うと時間も場所もきちんと設定できないそうなので、轟さんがファリーアスのどの時代に飛ばされたのかは謎ですね。手鏡以外についてはまったく他の話とリンクしていないので、これだけでも独立して読めると思います。短編ですから、気軽にさらっといけますし。
……ラストの戦いは、想像するとちょっとアレですが……198センチ98キロで44才の魔法●女って……勇者互助組合〜のあの人よりも気の毒かもしれん(笑)
No.5641 (読書)


 2014年02月27日の読書
2014年02月27日(Thr) 
本日の初読図書:
「劣化賢者の幻想譚(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n6058bc/

とっくに40を過ぎているはずなのに、未だ20代前半にしか見えない母を持つ大学生 神楽十蔵。
彼は母が虫干ししていた道具(ガラクタ)に触ったせいで、いきなり異世界フェリーアスへと飛ばされてしまった。
え? あれって母さんの作り話じゃなかったの!? 俺は母さんと違って凡庸なんだ。包丁ひとつで熊を倒したり、素手で立木を切り倒したりなんてできないんだよ! できることって言ったら、せいぜいスキル『加速』と、異次元無限倉庫、通称『所持品欄』を受け継いだぐらいなんだ!!
……そんな彼だったが、転移した先で出会った黒い猫耳を持つ美少女トオコ・サヴァンに事情を話して、なんとかフェリーアスについていろいろと教えてもらうことができた。トオコはレベル29の冒険者で、メイン職はサムライ。『黒の舞姫』の二つ名を持つ、将来を嘱望された若手らしい。そんな彼女の紹介で冒険者ギルドへ登録に行った十蔵だったが、現実は非情だった。十蔵に適正のある職は、ろくなものがなかったのだ。悩んだあげくに選んだのは『呪術師』。ギルドの受付員いわく「辺境の村でばあさんが薬師と祈祷師と占い師と呪師を兼ねてやっているアレ」、「攻撃魔法も回復魔法も支援系魔法も覚えるが、それぞれが最底辺クラスの初級呪文までしか使えない」、「良く言えば『ものすごく劣化した賢者』って感じ」とのこと。
それでも十蔵には、数少ないアドバンテージがあった。それは異常なまでのMPの量と、その自動回復スキル。そして通常なら冒険者レベルの数までしか倍掛けできない魔法を、MPが持つ限りいくらでも重ね掛けできるスキルであった。普通ならば、燃費の悪い初級魔法の重ね掛けなどすれば、あっという間にMPが枯渇してしまう。しかし十蔵にはそれを補えるだけのMPがあったのだ。
かくして十蔵は『劣化した賢者』として、異世界での生活を始める。その豊富なMPと現代知識を有効活用しつつ……

先日読んだ「偽クノイチ異界譚」の続編。完結済。
地球へ戻った紫乃さんの、息子が主役のお話です。
……実を言うと私は世代交代ものが割と苦手だったりするのですけれど、今回のお話はむしろこちら(息子側)のほうが好みでした。作者様がお話を書き慣れてこられたというせいもあるのかな?
所持品も能力も最初から全方向にチートにもほどがあって、やりたい放題だった偽クノイチ〜に比べると、こちらの十蔵くんはもう少し控えめでしたし。
MPが初期状態で10520(※Sランク一流魔術師でも800ぐらい)あり、あと固有スキルに魔力自動回復(1分ごとに最大MPの0.5%)と魔力使用制限解除(MPがある限り魔法の重ね掛けが何重でもできる)という魔力特化型という他は、むしろ全体的に常人よりもスペック低め。地球から持ち込めた物品も、役に立ったのはせいぜい、銀貨11枚(11万円)で売れた磁石ぐらいです。
特に素質のあった職(ジョブ)が、使い勝手が悪い不遇職かヒモやホストというあたりが、面白い感じにバランスがとれていると思うのですよ。やはりいい部分があるなら、それだけ不遇な部分もある。そしてそれを現代知識と工夫で覆していくのが、異世界トリップチートの醍醐味ではないでしょうか!

そんな訳で十蔵は、初級魔法しか使えない不遇職のために、ブロック1個を作る生活魔法を効果距離×10・体積×500の重ねがけをすることで壁を作り出し、防御魔法の代わりにしたりとかしています。ちなみにちゃんとした普通の防御魔法で同等のことを行えばMP50の消費で済むところを、このやり方だと1500以上必要とします。超上級魔法使いが二人いてもまだ足らない量。でも十蔵にとっては30分で自動回復する程度ってのが(笑)
同じように持続時間が長い代わりにMP消費が多く、効果も低いので使えないとされる初級防具強化魔法(24時間、MP30で防御力5%UP)を×100することで、3000MP使って防御力5倍とかvv さらに武器強化も×100して合計6000MP消費しても、まだ余裕が残っている上に2時間もすれば回復してるというvv
朝方宿を出る前に掛けておけば、依頼の目的地に着く頃にはMP満タンに戻っている上に効果も持続中って、やっぱりチートすぎるか(苦笑)

他にも魔道具作成やポーション作りで色々やらかしています。
あと十蔵も母親譲りで猫耳スキーですが、今回は男女カップルなのでまあ普通に読めましたね。
そうそう、途中でシオリ・アルケニー作のローブとか出てきたので、この話の時系列は「アルケニー洋裁店」と同じことが判明しました。
あとこれはネタバレになりますが、ネイルが生き返ってくれたのがけっこう嬉しかったですvv
……しかし長い年月、年老いずに生きることへの苦悩とかが、相変わらず見事にすっ飛ばされているあたりがなんというか(苦笑)
まあ、こういうテイストのコメディだと思えば、楽しく読めるかと。
No.5637 (読書)


 2014年02月26日の読書
2014年02月26日(Wed) 
本日の初読図書:
4062867656全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班 (講談社X文庫 こC- 1 ホワイトハート)
香月 日輪 わたなべ あじあ
講談社 2013-04-04

by G-Tools
自宅のマンションに帰宅してドアを開けると、見知らぬ男がくわえタバコに全裸で立っていた。
「お前、誰?」「お前が誰だーーーッ!?」
絶叫した智宏の前で、男は跡形もなく消えてしまう。
新宿署防犯安全課の刑事 石田智宏は、翌日同僚の刑事にブツブツと愚痴っていた。家主に対して誰だはないだろうとか、裸って意味分かんねえ、猥褻物陳列罪だとぼやく彼に、同僚の刑事 犬塚は突っ込みどころはそこじゃないだろうと呆れる。犬塚はいささか霊感を持っており、事件現場などで妙なものを見ることがあるらしいのだが、智宏にはその手の経験などまったくないし、霊のたぐいを信じてもいない。それなのにいきなり目の前で人が消えるという現象に遭って、思うところはないのかと。
しかし『鋼鉄の無神経』と称される智宏は、一瞬だったしとあくまで平然としていた。そしてそんなことなどすぐに忘れてしまったのだが、それも間もなく思い出させられることとなる。
ある事件の証拠品として押収された刀を手にした鑑識職員が、署内で暴れ始めたのだ。目は完全に白目をむき、明らかに正気ではない。取り押さえようと近づいた刑事達はみな強烈な吐き気に襲われ昏倒し、突き出した強化アルミ製の刺又は飴のように捻じ曲がってしまう。
このままでは誰かが斬られる! と思った智宏は、咄嗟に飛び出して刀を白刃取りにしていた。しかし他の誰も近づくことができず、事態は膠着状態になる。
そこへやってきたのが、警視庁に所属する遊撃捜査班のメンバーだった。なんでも超常現象を扱う特別部署ということで、その存在だけは所轄でも噂で語られていたが、あくまで飲み会の席の笑い話に過ぎなかった、そんな部署である。
彼らはあっさりと事態を収容してみせた。が ―― その中にいたメンバーの一人に、智宏は見覚えがあったのだ。そう、つい先日自宅に現れた、全裸のオバケ男である。
「なんで!?」と問うた智宏に、男 ―― 神瀬京介は「さぁー?」と曖昧に首を傾げる。
そして数日後、智宏の元へと異動の辞令が下りた。なんでも副総監じきじきの肝煎りで、警視庁の生活安全部へ配属されるとのことである。なぜ自分などが……と首を傾げつつ出勤した彼を迎えたのは、見覚えのある面子。智宏の配属先は警視庁生活安全部『遊撃捜査班』だったのだ。
個性的過ぎるメンバーに囲まれて、超常現象などまったく信じていない智宏は、困惑しつつも仕事を始めるのだが……

香月さんの作品ということで存在を知り、さすがにこれは図書館に入りそうにないので購入しました(笑)
一言で言い表せば、ドラマ『相棒』のオカルトバージョン?<普段は暇な、警視庁の持て余し部署
あらすじや表紙を読んで思い描いていたお話とは、若干イメージが異なりました。
テンプレとしては、とんでもない部署に放り込まれた純真な新人(表紙右)が、海千山千の曲者達に振り回されつつ右往左往という感じなんでしょうが、意外と主役の腹が座っています。なにしろ『鋼鉄の無神経』vv
智宏は霊感が全くないが故に、霊からの悪影響も受けないため、普通人がアテられて吐くわ倒れるわの悪霊憑きを相手に、ケロッとした顔で立ち回りやら取り調べを行っております。
本庁に移動が決まった時も、「栄転だ!」と早とちりして舞い上がるでなく、「そういうの(出世)にはあんまりこだわりないですが、頑張ります」と地に足ついた落ち着いた反応してるし、まさにタイトル通り「柴犬」のイメージです。一見ちっちゃくて愛らしいけれど、その実態は勇猛かつ信念に忠実な猟犬、みたいな感じ?

そしてもっと意外なキャラクターだったのが全裸男の京介さん(表紙左)。
見るからにガサツで横柄で曲者チックな見た目ですが、これが実に繊細で甘えん坊で末っ子気質。
妖アパの千晶も大概でしたけど、彼はまだ生徒たちに対してはきちんと『大人』でしたよね。まあ終わり頃とか、夕士相手だと完全に気ィ抜いてましたが(苦笑)
しかし京介さんは一巻目からかっ飛ばしてくれます。むしろ主役は京介さん。京介さん総受けという勢いです<あながち比喩表現でもない

……ううむ、ちょっと話運びが急展開すぎるというか、正直言うと作者さんのお遊びが入り過ぎかなあと思わなくもなかったかな。1巻目では智宏くんが遊撃捜査班に馴染むまでにしておいて、各キャラの掘り下げは二巻目以降からに回しても良かったんじゃないですかねえ。いきなりどんどん濃いキャラクターが登場しまくって、他の香月作品を読んでいない人は置いてけぼりになるんじゃないかと心配してしまったり。
ちなみに、長谷のおやっさん(妖アパ)と雅弥の父親(魔法の塔)が、がっつりしっかり挿絵入りで出てきます。
そっかあ、長谷のおやっさんもマチャミのお父さんも、こっちの世界に知り合いいたんだなあと、びっくりするというか納得するというか……うん、子供たち世代が叶う訳ねえやとしみじみ思ったり。
ただこの話だけ読むと、長谷パパは粋というより札びら撒いてる成金にしか見えない気がするし、マチャミ父もまだ変人の域を出ない気がするので、やはりもうちょっと順を追ってゆっくり登場させてほしかったというのが正直なところです。城島さんの恋人ネタとかもね……いささか詰め込み過ぎかと。
事件の内容も、児童書という縛りが消えたせいか、いつも以上に凄惨で救いのない展開が多く、タイトルや表紙のイメージを裏切っています。ライトなBLコメディを期待して手に取ると、いささかショックを受けるかもしれません。
……つまるところ、この話から香月作品に入るのはあんまりオススメできませんかね。少なくとも「妖怪アパートの幽雅な日常」と「僕とおじいちゃんと魔法の塔」あたりは読んでからがいいんじゃないかと。

ともあれ。
超常的なすごい力を持っていても、それで物事すべてが解決するわけではない。大切なのも基本的なのも、すべては人と人との繋がりだという、香月作品の基本スタンスは変わっていません。そこの部分は安心して読めるところです。
No.5634 (読書)


 2014年02月25日の読書
2014年02月25日(Tue) 
本日の初読図書:
B000J8D0RI一千億の針 (1979年) (創元推理文庫)
ハル・クレメント 小隅 黎
東京創元社 1979-11

by G-Tools
アメーバー状の身体を持つ異星体“捕り手”とバブ・キンネアドが共生生活を始めてから、はや七年が過ぎた。
二人は変わらぬ友情をはぐくんでいたが、しかしその関係にはじょじょに問題を生じ始めていた。バブの肉体機能がバランスを崩しつつあったのだ。免疫がほとんど失われ、血液も凝固しなくなった。さらには前触れもなく脱力感に襲われて動けなくなったり、吐き気や関節の痛みを感じることもあった。それは捕り手にとって地球人が未知の生物であったが故に、長年の共生生活の中で歪みが積み重なってきたためだと思われた。もはや捕り手の持つ知識では、バブを救うことはおぼつかない。そこで彼らは七年前に海底へ墜落した「ホシ」の宇宙船を探し出し、捕り手の同族達と連絡を取ろうと考えた。
七年前の段階では、捕り手はもはや母星と連絡することも、帰還することもできないと思っていた。しかし大学で天文学などを学んだ結果、同族達が自分の後を追ってきて、この惑星へとすでに訪れている可能性は十分にあると結論したのだ。彼らは地球人を新たな共生相手とするべく、現在は水面下で密かに調査に当たっているに違いない。ならばホシの宇宙船の残骸を見つけだせば、そこを監視しているであろう同族達とも接触でき、その中には弱り始めたバブの肉体を治療できるような生化学の専門家もいるであろうと。
折しも大学の卒業を迎えたバブと捕り手は、故郷のエル島へと戻ってきた。そこで捕り手の存在を知る医者と両親に事情を打ち明けて、海底に沈んでいるだろう宇宙船の捜索を始める。さらに協力者として、医者の娘であるジェニーが手を貸してくれた。交代でボートを出しては、金属探知器で調査を続けていた彼らだったが、しかしその途中で幾度も不可解な事故が起きる。あげくバブは心臓を焼き串で貫かれ、捕り手がいなければ死んでいただろう重傷を負った。
果たして調査の邪魔をしているのは何者なのか。その目的は?
そして本当にこの方法で、日に日に弱ってゆくバブを救うことは可能なのか?
焦りをつのらせる一同は、それでも少しずつ調査を進めてゆくのだが……

「二十億の針」の続編。やはり以前に一応読んではいますが、今回も旧版なので一応初読にカウントしました。
二巻目ということでか、けっこう詳しい島の地図がついています。
……前巻を読んだ時にうすうすそうじゃないかとは思っていたのですけれど、やっぱり地図は北が上ではありませんでした(苦笑)
普通「地図にL字型の島を描き込んだ」って書かれていたら、普通は長い辺がまっすぐ北向いてる状態を思い浮かべますよねえ?
実際には45度傾いて、むしろ左の辺が長いVというか、180度回転した「へ」の方向でした。道理で読んでいて東西南北の描写がつじつま合わないはずだよ……

ともあれ、続編です。
作中年月は一気に飛んで、中学生だったバブ少年が大学を卒業して島に帰ってくるところから話が始まりました。作中の時代設定は1940年代で、スキューバー・ダイビングの機材などはまだ開発されたばかりで、なかなか手に入らない最新技術という頃合い。
前作ラストが割とぶったぎりだったので、「この後始末はどうつけたんだろう……?」という素朴な疑問が解けるあたりは嬉しいところ。両親にも全部事情を話して、ちゃんと理解が得られてたんですね。
そんな訳で前巻では協力者がシーバー医師だけでしたけれど、今回はバブの両親に加えてさらに医師の妻と娘、そして友人の妹メイタと六人もの協力者が登場します。かたくなに自分の姿を人前に見せようとしなかった捕り手も、臨機応変にバブの身体から出てきては、水中にもぐったり他の人間の傷を治したりと活躍しています。ボウルの中から偽足を振って合図してみせるところなんて、なんだか微笑ましいったらvv

そして翻訳者さんが変わったせいか、文章はだいぶ読みやすくなったように思いました。横文字をできるだけ廃していた前作よりも融通が利いていて、捕り手など「捕り手ハンター」といったふうにフリガナが振られていることもしばしば。宿主も「宿主ホスト」と表現されていて、イメージが掴みやすい感じです。
物語がわかりやすいのは、キャラクターが少ないことも一因かもしれませんが。前作のように、見分けにくい同年代の少年達を含む多くの容疑者から、ロジカルに犯人を探そうとするタイプの話運びではなくって、互いに疑心暗鬼……とはちょっと違うか。行き違いや誤解を差し挟みながらも、ひとつの目的に向かって力を合わせて立ち向かう宝探し的な要素が強い感じです。
まあ、途中バブその他が命を狙われている疑惑や、ホシが実は生き延びているのかも疑惑とかも出てくる訳ですが。

前巻の冗長さを考えると、むしろ今作の方が私は好みかもしれません。ページ数も280P程と、長すぎず良い感じ。
最後の謎解きが急展開かつ、ラストがぶった切りなのは前作と同じでちょっと微妙ですが、まあこれはこれで。
捕り手さんが小ビンの内側に一生懸命ガラス切りで文字を刻んでいるところとか、ボートからぶら下げたパイプの中に入って海底探索するところは、前作でシャー芯使って手紙を書くシーンに並ぶ面白場面かと。
No.5630 (読書)


 2014年02月24日の読書
2014年02月24日(Mon) 
本日の初読図書:
「偽クノイチ異界譚(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n7892z/

時代劇をこよなく愛する神楽紫乃(21)は、観光用の忍者村でくノ一役のアクターとして働いている。趣味はオンラインゲーム『戦国の野望』。1アカウントで4キャラまでプレイできるので、くノ一・鍛冶師・薬師・陰陽師の4つを作成し、どれもマスターレベルと呼べる程にまで育て上げている。
その日もスマホで戦オンをプレイしていた彼女だったが、突然、画面に吸い込まれるようにして意識を失い、気が付くと見知らぬ森のなかに倒れていた。慌てて状況を確認しようとした目の前に現れたのは、半透明のウィンドウ ―― 宙に浮いているスマホの画面『だけ』。そしてメールが受信される。
『拝啓 神楽様。突然のことでさぞ驚かれているでしょうが、ここはあなたのいた地球、日本ではありません。ファリーアスと呼ばれる、あなたから見れば「異界」です。』
世界の管理者とやらから届いたそのメールによれば、現在その世界ファリーアスは、マナとやらの枯渇によって崩壊の危機に陥っているのだという。マナとは魔力や魔法の元となる、世界にあまねく存在するエネルギー。そして紫乃のいた地球世界では魔法も魔物も存在しないために、逆に過剰なほどにマナが溜まりすぎてこれまた悪影響が起きかけているらしい。
そこで世界の管理者たちは、相談の上で二つの世界を繋ぐことにした。多い方から少ない方へとマナを譲渡しようと考えたのだ。ところがそこで事故が起きた。なんでも世界を繋ぐ接触地点にピンポイントに紫乃がおり、彼女がマナの通り道としてファリーアスに固定されてしまったというのである。
1000年ほども経てば、マナの流れが安定して帰還することができるらしい。幸いというかなんというか、紫乃は流れ込んでくるマナの影響でほぼ不老となっているため、それぐらいの時間はまったく問題ないのだと。
最後に管理者は告げた。
『接触した時使っていたデータデバイス……「すまふぉ」の「戦オン」のデータもなるべく反映しておきましたから! こちらの世界でも生活するに困らないと思うんです! サービスしときました』
たしかに彼女の姿は、プレイしていたゲームキャラ「くノ一」に限りなく近い状態になっていた。どうやら任意で他の3つのキャラクターへも、切り替えることができるようだ。
既に故郷に家族もいないし、どうせ帰れないのであれば前向きに生きていくしかないだろう。そう考えて開き直った紫乃は、たまたま遭遇した魔物に襲われている商人と冒険者の一行を助けた後、彼らからこの世界について詳しい情報を収集した。重症を負って捨てられかけていた雑役奴隷 ―― 愛らしい猫耳としっぽを持つ獣人の少女ネイルを報酬として譲り受け、手持ちの自作ポーション清涼丹・万金丹・再生丹を飲ませて完全な健康体に回復させる。
そうして彼女は冒険者ギルドに新ランク「クノイチ」として登録し、奴隷から開放したネイルを「メイド」として付き従え、自由奔放に異世界ライフを満喫することにしたのである ――

異世界トリップ。チートで完結済。続編あり。
「アルケニー洋裁店」や「窓の記憶〜おっさん英雄記」と世界観が繋がっているかもしれないという噂を効いて、手を出してみました。むしろこちらのほうが先に書かれているので、はっきりとしたことはよく判りませんでしたが……
作品紹介のとおり、あんまりシリアス成分はなく、のんびりまったりしているお話です。
なにしろ異世界に行った段階で、その世界の伝説レベル(50)をはるかに超えるレベルのキャラ×4(それぞれ60〜87)を所持している上に、ゲーム内で持っていたアイテムもすべて持ち込めているんですよね。ほとんど廃人レベルだったゲーマー故に、物資にも技術にもまったく困っていません(所持品の中に『武家屋敷』があるって……汗)。
おまけにマナの通り道であるがゆえに、使えるMPは事実上無尽蔵。
魔物を倒すことに対する、精神的な抵抗とかもほとんど持っていないのは、あるいは世界の移動時になんらかの強化がされたのかも? という疑問が呈されているぐらいで、そのあたりの葛藤もあっさりとクリア。本編中では人間と戦う表現はないし、本当にゲーム感覚で本人は過ごしています。
エピローグでいきなり駆け足になるのが、ちょっと気になりどころかな?
あとは微妙に百合要素があるので、苦手な方は要注意です。まあ、本人はどっちかというと、可愛い猫耳をモフり倒している意識なんですけどね。
時おり挟まる、ネイルSIDEの微妙な病み具合が楽しい……vv
No.5629 (読書)


 2014年02月23日の読書
2014年02月23日(Sun) 
本日の初読図書:
「ファンタジー村の釣り師さん(小説家になろう)」〜イカ釣り編 エピローグ
 http://ncode.syosetu.com/n5114bs/

職業はと問われれば『釣り師』と答える、流れ者の青年イペンサ。
彼は獲物を釣り上げることを至上の楽しみとし、そしてその獲物を美味しくいただくことにあらゆる情熱を注いでいた。彼の手にかかれば、どんな魚もあるいは魔物でも、「フィーッシュ!」の声とともに一本釣りである。
数百キロの獲物を竿釣りするためには、少なくとも筋力強化魔法と自重増加魔法を同時に発動せねばならないし、当然釣具も特注品だ。鯨の魔物の骨から削り出した竿に水竜のひげを特殊加工した糸、釣り針はオリハルコン製と、それだけで軽く城が建つ代物。
それらを使いこなし、伝説級の魔物クラーケンすら釣り上げる彼に対し、人々はこう口を揃える。
「才能の無駄使い」と。
これはできるだけ仕事を他人に押し付け、ひたすら釣りと美味いものを食べることを追求する流れ者の青年が、行く先々で英雄や生き神として讃えられる物語……かもしれない。

竿一本で700Kgクラスのワニを一本釣りするのはまだまだ序の口。領主お抱えのベテラン冒険者が苦戦する巨大な魔物ガニの群れを数秒で全滅させ、太さ1.5メートル体長10メートルはあるドラゴンクラスの巨大ドジョウ型魔物をもあっさりと倒す、でも冒険者ではなくあくまで釣り師であり旅する料理人(笑)
しかも商業的な駆け引きにも長けていて、対する人間たちの何歩も先をゆくその手腕は見事としか言いようがありません。もっとも当の本人は仕事嫌いで、釣った獲物をいかに美味しく食べつつ、残った肉を無駄なく処分(人に譲る or 商業ルートに乗せる)かにしか興味はありません。
そのために全国各地に燻製工場やら魚醤工場、さらには国内随一の質を誇る塩田まで作ってしまうというスケールのデカさvv
そんな国中の拠点を一年サイクルで巡回しては、「働け」「働け」と言われつついろんなことをやっていくのです。
とは言え第二部「イカ釣り編」では、タイトルのイカ釣りに到達するまでがかなり長く、メインは塩の売買に付随する権謀術数となります。長さもライトノベル1冊くらいはあるし。
かつて放浪中に立ち寄った村が異常に困窮していたので、なりゆきで塩作りを教えて自立させた結果、8年後の現在になって無能領主のせいで塩の値段が高騰してうんたらかんたら。村の存続自体が危険になってきたので、今さら見捨てられずに力を貸すことに ―― という感じです。
要するになんだかんだでお人好しの働き者なんですよね、イペンサ(笑)
ただ懐に入れた人間にはかなり甘いけれど、「火事を消すために、水をかけるのではなく家を壊す」と称されるように、やることはかなり無茶苦茶ではた迷惑です。冷静に状況を俯瞰すると、主役のやったことでこれ、かなり深刻な状況に追い込まれた罪のない赤の他人が相当いそう……(汗)

現在は「サンショウウオ釣り編」の途中でなにやら止まっている模様。
まだまだ主役の過去などいろいろ引き出しがありそうなので、いずれ復活してほしいところ。

とりあえず最初の前後編「ドジョウ釣り編」だけでも原稿用紙100枚以上のボリュームがあるので、試しに読んでみるだけでも、けっこうお腹いっぱいになれると思います。
No.5625 (読書)


 2014年02月22日の読書
2014年02月22日(Sat) 
本日の初読図書:
4062732572天狗風 霊験お初捕物控(二) (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社 2001-09-14

by G-Tools
恐ろしいほどに鮮やかに染まる、朝焼けの空の下。突風とともに娘が消える。
下駄屋の一人娘おあきは、繁盛している料理屋 浅井屋の息子に見初められ、半月後には嫁入りが決まっていた。そんな彼女が家出するとはとうてい思えない。周囲の人々は神隠しだと騒ぎ立てたが、捜査にあたった浅井家と縁続きの定町廻り同心 倉田主水は、摩訶不可思議な現象など頑として認めようとはしなかった。事件が起これば、どういう形であれ下手人を上げる。たとえそれが真相ではなく、弱者に罪を押し付けるというやり方であったとしても、表面上は納得の行く形で片を付ける。そうすれば役人としての名も上がるし、ことを穏便に収めたい事件関係者からの付け届けも懐に入れられるからだと、そう噂されている人物だったのだ。今回も彼の取り調べを受けたおあきの父親は、その責めに耐えかねて、自分が娘を殺したのだと言い残し首をくくってしまったという。
倉田のやりように心を痛めた同心 柏木十三郎から相談を受けて、南町奉行所の御前はお初を召し出した。柏木は幼い頃に自身も神隠しにあった経験があり、この世には不可思議な出来事も存在するのだと身をもって知っていると話した。お初もまた不思議な経験は山ほどしてきているので、柏木の言い分には深くうなずけるものがある。
さっそくお初は右京ノ介とともに、おあきの件について調べ始めた。と、間もなく六蔵の元へとかどわかしがあったと訴えが持ち込まれる。八百屋の娘お律が姿を消し、返して欲しくば千両を払えという投げ文があったのだと。その話を聞いたお初は、燃えるような赤い色を幻視した。詳しく状況を聞くと、彼女はおあきの時と同じように、血のような朝焼けの下で突然のつむじ風にさらわれるようにいなくなったらしい。
お初はお律もまたおあきと同じように、魔性の存在によって神隠しにあったのだと主張した。金を要求する投げ文は、神隠しに便乗したならず者の仕業なのだと力説する。
しかし岡っ引きである以上、六蔵は投げ文を無視することはできない。ひとまず空の千両箱に石を詰めて、指定された金の受け渡し場所へと持ってゆくことになった。丑三つ刻の中之橋のたもと。千両箱はお初が持ち、周囲の暗がりに捕り手が潜む。そうして首尾よく現れた男を取り押さえた一同だったが、そこで思いもよらぬ怪異が起こった。観音さまの姿をした女の魔性が中空に現れて、風の刃で男の首を刈っていったのだ。
「わたしは、わたしの名をかたるようなものを許すわけにはいかない」と……
ますますこの一件に常ならぬ存在が関わっていると確信したお初は、聞きこみを続けるうちに、おあきが失踪前に観音さまが出てくる悪夢を見ていたことを知った。そしてお律はお律で、しばしば誰か別の女に取り憑かれたかのような、異様な振る舞いを見せていたことも突き止める。
あの観音さまを装った女の魔性は、いったい何者なのか。考え込むお初の前へと、答えの一端をもたらす存在が現れる。
「あいつの正体は、女の妄念だ」
疾風とともに若い娘をさらうそいつのことを、彼らの一族は『天狗』と呼ぶのだという。『天狗がやってきて、天狗風で娘をさらっていった』と。
そんなふうにしたり顔でお初へ説明したのは、鉄と名乗る、言葉をしゃべる一匹の猫で……

ちょっと時間かかったものの、どうにか読了。奇しくも猫の日2月22日(にゃんにゃんにゃん)だvv
書影は文庫版ですが、読んだのはハードカバーでした。
ふふふ、足に白足袋を履いたキジトラ猫って、それってどんなパオちゃんvv<パオちゃんの白靴下はカワイすぎると主張したい

……もとい。
途中「日道」という名が出てきたので、え? 日道坊や?? ってことはこのシリーズは「初ものがたり」の十年ぐらい後なの!? とびっくりしましたが、どうやら同名の別人だったようです。別人……だよね?
他にもいろいろ気になったところはあった気がしますが、超上機嫌な『赤鬼』さんこと右京ノ介さんのお父上の豹変っぷりに、全て吹き飛ばされた感が(苦笑)
なんだよ、あの「うちの馬鹿息子! ―― が」連呼vv
っていうかもう既に、お初は『うちの嫁』扱いだし(笑)
早く口説けと息子の尻を叩いていそうで、前作の深刻ぶりが嘘のようなその関係改善ぶりが微笑ましいったらありません。

そして今回はしゃべる猫というキャラクターの存在のせいもあってか、雰囲気が一気にライトノベル化した感じがありましたかね。
間にマンガ版を挟んだせいで、脳内に思い浮かぶ映像イメージがコミカルになってしまったのも原因かもしれません。……源庵先生が長髪美形な眼鏡青年で脳内再生されるのに、ちょっと困ったりとか。
ああ、あとマンガ版で右京ノ介さんと良い雰囲気? それとも直兄さんとの同族嫌悪から始まる、遠慮のない関係?? とかいろいろ妄想をかきたててくれた京さんは、なんだよ雁太郎親分としっかりデキてるんじゃないですか!
私としては原作の方が好みのキャラクターでしたねえ。ちょっと婀娜っぽくて、侮れない年上の姐さんというイメージで。

相変わらず人間心理をえぐり込むあたりは、さすがの宮部節。
娘の嫁入りを喜びつつも、裏切られたという思いが拭い切れない父親。
姉に対する嫉妬が抑えきれない妹。
美しくさえあれば、すべてがうまくいくと妄執のように信じる叔母と姪。
そして不思議は一切信じず、事件にはすべて納得の行く筋道をつけるべきだと考える同心。

特に倉田主水のキャラクターについては、奥が深かったですね。
最初は単なる頑固で因業な嫌味キャラに思わせておいて、その裏にはあのような事情が隠されていたとは……単純な善悪二元論にとどまらないあたり、見事です。

あと気になったのは……袋物師が材料にいわくつきの小袖を仕入れたせいで怪異が、という展開は以前にもあったなあと、ちょっとネタかぶりを思ったりとか。まあ、これだけ多作の方ですし、それを言ったら赤川●郎とかネタかぶりっぱなし(笑)ですし、これが宮部さんの味だということなんでしょうけど。

鉄は最後にああなりましたが、あれは(文字通り)猫かぶってるだけだと私は信じておりますvv
No.5624 (読書)


[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] [45] [46] [47][48] [49] [50] [51] [52] [53] [54] [55] [56] [57] [58] [59] [60] [61] [62] [63] [64] [65] [66] [67] [68] [69] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [76] [77] [78] [79] [80] [81] [82] [83] [84] [85] [86] [87] [88] [89] [90] [91] [92] [93] [94] [95] [96] [97] [98] [99] [100] [101] [102] [103] [104] [105] [106] [107] [108] [109] [110] [111] [112] [113] [114] [115] [116] [117] [118] [119] [120] [121] [122] [123] [124] [125] [126] [127] [128] [129] [130] [131] [132] [133] [134] [135] [136] [137] [138] [139] [140] [141] [142] [143] [144] [145] [146] [147] [148] [149] [150] [151] [152] [153] [154] [155] [156] [157] [158] [159] [160] [161] [162] [163] [164] [165] [166] [167] [168] [169] [170] [171] [172] [173] [174] [175] [176] [177] [178] [179] [180] [181] [182] [183] [184] [185] [186] [187] [188] [189] [190] [191] [192] [193] [194] [195] [196] [197] [198] [199] [200] [201] [202] [203] [204] [205] [206]

<< 2017年12月 >>
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

サーチ :



 with Ajax Amazon

 最新の記事
 2014年03月05日の読書
 2014年03月02日の読書
 2014年03月01日の読書
 2014年02月28日の読書
 2014年02月27日の読書
 2014年02月26日の読書
 2014年02月25日の読書
 2014年02月24日の読書
 2014年02月23日の読書
 2014年02月22日の読書

 最新のコメント
 こんばんは、胡蝶蘭さん..
 by 神崎真
 at 2017/12/11 23:58:30
 ロングチェ―ンの中にあ..
 by 胡蝶蘭
 at 2017/12/11 19:34:08
 今回はピコがなかなかき..
 by 神崎真
 at 2017/12/10 21:37:26
 センターのピコとリング..
 by 胡蝶蘭
 at 2017/12/10 10:55:52
 危ないからっていうのは..
 by 神崎真
 at 2017/12/09 04:09:36
 ダメと言う人は、ダメと..
 by ちなつとも
 at 2017/12/08 21:30:51
 お二方>
 by 神崎真
 at 2017/12/08 06:51:16
 私も左側の中心がすきー..
 by 猫欧州
 at 2017/12/07 23:38:58

 カテゴリー一覧
 読書(2052)
 更新(443)
 電脳(531)
 映像(232)
 バトン(23)
 創作(595)
  タティングレース(284)
  マクラメ(52)
  レジン(8)
 その他(7)
 日常(1436)

 最新のトラックバック
 今日の夕食は
 ┗しゃばけ(ドラマ)(+五月雨通信+/2007/11/28)

 リンク
 神崎へメール
 私立杜守図書館
 蔵書リスト

 

   

 ブログ内記事検索:
 
 AND OR  


 

Back to Home...

[管理用] [TOP]
shiromuku(fs6)DIARY version 2.41