よしなしことを、日々徒然に……



 2014年05月14日の読書
2014年05月14日(Wed) 
本日の初読図書:
490720308X霊感動物探偵社 5 (LGAコミックス)
山内 規子
青泉社 2013-10-19

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シリーズついに五巻目、この方の作品の中では一番長く続いているお話ですな。そして後書きによれば、まだ先があるようで、嬉しいったらvv
……しかし立夏と高倉のじれじれカップルには、相変わらず進展がなく。むしろ新キャラUFOオタクの城野くん(大学の同級生)が立夏に告白してきたりと、むしろ二人の間に暗雲が……?
ええい、しっかりしろ高倉! それでもいい大人か!? 互いの家にお泊りまでクリアしてるくせに、何もないとか、どこの熟年夫婦だ!!

そんなこんなな今回の収録作品は、「選択の行方(フェレット)」「桃色の告発(モモイロインコ)」「カメレオンの瞳(カメレオン)」「音のないコトバ(雑種犬)」「幸福の残像(ワニ?)」の五作。「幸福の〜」が全三話でページを取っており、あとの四作は40Pぐらいずつの短編で、全て合わせると320P。かなりのボリュームでした。
「幸福の〜」は、久々にこの方の本領発揮というか、可愛い絵柄でかなり猟奇的でした(−ー;)
動物霊も関わっていなくて、立夏が残留思念的なワニを見た他は、バリバリの人霊と人の心の闇からくるあんなこんなが本筋でした。猟奇的かつサイコホラーというか。笑顔の下に、言葉が通じない、奇形的な精神を隠した人物が登場するようなお話。
こういうの描かせるとうまいですよねえ、山内さんって。
あと「選択の行方」は、珍しく結果を見届けない終わり方でした。情報は渡したから、そこからどう行動するのかはもうその人次第。最後まで世話を焼く義理はない、みたいな。たまにはこういうのも、趣向が変わって面白いかと。
いつもと違うといえば、「カメレオン〜」の方も高倉が霊障で倒れてしまい、立夏が一人で頑張るというのが珍しかったです。そしてわざわざ立夏んちで寝込んじゃったんだから、もう少し二人の仲に進展があっても……と望むのは、この二人には無理なのか(苦笑)
No.5829 (読書)


 2014年05月13日の読書
2014年05月13日(Tue) 
本日の初読図書:
4062172526おまえさん(上)
宮部 みゆき
講談社 2011-09-22

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お徳がお菜屋を始めた幸兵衛長屋で、やっかいな出来事が起きていた。町内の南辻橋のたもとで、辻斬りがあったのだ。死人の流した血脂が地面に染み込んで、何度洗っても人型の影が消えないため、長屋の人々は恐れおののいている。一方で、生薬屋の瓶屋で人殺しがあった。殺されたのは、一代で店を興した主人の新兵衛。彼は戸締まりのされた家の寝間で、一刀のもとに斬り殺されていた。一見すると両者は何の関わりもない事件に思われたが、八丁堀同心の兄や甥達の補佐を長らく務めてきた老人 本宮源右衛門は、二つの死体に残る傷を、同じ人間が同じ凶器で斬ったものだと見立てた。すなわちこれらの事件は単なる通りすがりの辻斬りや金目当ての賊による犯行ではなく、怨恨が動機となった互いに関わりがあるものなのだと。
父の跡を継いで最近同心になったばかりの間島信之輔は、大叔父(の従兄弟)のこの言葉に懐疑的であった。信之輔自身は顔立ちがいささかまずい他は、腕も立てば頭の回転も良く人柄も申し分ない、実に前途有望な若者なのだが、厄介者として盥回しになったあげく遠縁の間島家に居候として押し付けられたこの大叔父とは、あまり折り合いが良くないらしい。
しかし政五郎や平四郎らが調べを進めてゆくにつれ、辻斬りの被害者だった久助と新兵衛の間には確かに繋がりがあることが判ってきた。二人は二十年も前に、共に老舗の生薬問屋大黒屋で調剤人 ―― 薬草を刻む“ざく”として働いていたのだと言う。
さらに現在大黒屋の主人を務めている藤兵衛が、驚くべき事を告白した。彼もまた、当時は一介のざく仲間であったのだが、新兵衛と久助の三人で人を殺してしまったのだと言うのだ。相手はやはりざくの一人で吉松。人柄のあまり良くなかった彼とのいざこざに加え、吉松が開発した新薬の調合方法を巡る欲が絡んだ上での犯行だった。
幸いにもことは事故で片付き、三人はなんらお咎めを受けることはなかった。そうして藤兵衛は跡取りのいなかった大黒屋を継ぎ、新兵衛は新薬を看板商品として独立した。久助は罪の意識に苦しんだあげく、大黒屋を出て方々を転々としていたらしい。
それらの事情を知った平四郎達は、下手人に目星がついたように思った。なんでも吉松には言い交わした女おせつがおり、彼女は当時身ごもっていた。そしてそのおせつだけは、吉松が三人に殺されたのだと確信し、恨んでやると言い残して姿を消したのだという。
産まれた子供は男児だったらしい。無事に育っていれば、ちょうど二十歳。ならばおせつかその子供か、あるいは両者が力を合わせて、殺された吉松の恨みを晴らそうとしているのではないかと考えたのだ。
ところが、だいたいの筋書きが見えてきたと思ったところで、新たな死体が出てきた。大川に投げ込まれていた夜鷹の死体についていた傷を、源右衛門がまたも同じ下手人の手になるものだと言いだしたのである。
しかしいくら調べても、貧しい夜鷹の女と瓶屋や大黒屋、あるいは久助との関わりは出てこない。信之輔などは大叔父の見立て違いではないかと疑い始めるが、そこを疑ってしまっては、そもそも最初の辻斬りと瓶屋の主人殺しの下手人が同じだろうという、その前提からして成り立たなくなってしまう。
困惑する一同をよそに、弓之助にはなにやら推理の筋道が見えてきたようで、自分を瓶屋に連れていってほしいと言い出す。なんでも瓶屋の後妻で、事件後はすっかり寝ついてしまっている佐多枝に聞きたいことがあるそうで ――

「ぼんくら」、「日暮らし」に続く、平四郎・弓之助のシリーズ第三段。
今回は湊屋からはすっかり離れた、新しい事件です。佐吉とお恵の夫婦も、子供が産まれたという噂話でしか、今のところ出てきていません。
二十年前に端を発する辻斬りと生薬屋殺しを軸に、他にも富くじで人生を狂わせてしまったストーカーとか、子供を捨てて裕福な家に後妻に入ったはずが急に離縁されそうになって政五郎親分に泣きつく“おでこ”の実の母親とか、あるいは弓之助の家で起きた長男の嫁取り騒動といった、様々な事件が同時進行しています。これらは下巻で一本に集約されていくのか、それとも「世の中には常に様々な事件が起きているのだ」という形になるのか、どちらなんでしょうね?
間島信之輔と瓶屋の娘 史乃の関係も気になりますし、間島家で厄介者扱いされている源右衛門お爺ちゃんがどうなるかも、きっちり片が付いて欲しいところです。
そして弓之助もそろそろ14歳、いい加減に平四郎も養子に取るのかどうか、はっきりさせてくれないと……(苦笑)
ああ、瓶屋の「かめ様」の異変が、果たして本当に事件に関係あるのかどうかも気にかかるし……とにかく今回は、様々な事情や情報が雑多に散らばっている感じで、早く整理がついて欲しいところです。
どうやら下巻は1/3ぐらいでこの「おまえさん」が終わり、あとは後日談的な中短編が四本ほど入っているみたいですね。ということは、すぐに謎解きに入ってくれるのでしょうか。
この複雑さを忘れないうちに、早く続きを読みたいです(><)

「【習作】一見スタイリッシュにファンタジー( Arcadia )」〜三話
 http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=25264

異世界転生した凡愚な青年が、神に気に入られると加護がもらえるというダンジョンに挑むお話。
美の女神のダンジョンを選んだ彼は、執事服に食事用のナイフを装備し、極限まで無駄を省いたスタイリッシュな動きでモンスターを倒す!
……その発想と馬鹿馬鹿しさがナイスに面白いですが、三話でエタっているっぽいのが残念です。
No.5826 (読書)


 2014年05月12日の読書
2014年05月12日(Mon) 
本日の初読図書:
「針子の乙女(小説家になろう)」〜レース編み
 http://ncode.syosetu.com/n0020by/

前世で手芸部だった女性(高校は卒業済みらしい)が、異世界に転生。縫い物を家業とする貴族の家に生まれたので、これは天職! と思ったものの、実はその家、魔力によって衣服に加護を縫い込める力を誇りとしており、プライドが異常に高かった。そんなこととは知らない彼女は、普通の服は普通に縫えば良いのだと思い込み、誰よりも綺麗に早く丁寧に縫いあげていたのだが、その家ではそんな技術は無価値だと分かった時には既に遅く。
十歳で仕事を手伝い始めて間もなく、加護縫いのできないみそっかすな子供と嘲笑され、家族からは邪魔者扱い。ろくな食事も服も与えられずに酷使され、十五歳になる頃には貴族の子供でありながら、どこの難民かと見まごう餓死寸前のボロボロ状態に。
もちろん彼女も、やろうと思えば加護を縫い込めることはできて。精霊たちの姿を目にすることもできれば、魔力を糸として彼らの破れた服を繕ってやることも可能。しかしもう今さら、この家のために価値あるものを産み出す意欲など、すっかり削られており。
かくして出来損ないとみなされた彼女は、普通のお針子として別の貴族の家へ引き取られることに。もちろん支度金のたぐいはすべて実家が懐に入れてしまい、持ち物は特殊な糸を紡いでくれる蜘蛛と、針一本のみ。事実上は売り飛ばされたと同じこと。
しかし行った先では、明らかに虐待を受けていたその姿に同情され、皆が優しくしてくれて。十分な食事と優しさを与えられた彼女は、お礼として加護縫いを施した匂い袋を使用人を含めた皆に送った所、それが騒動の元となって……というお話。
まだ始まったばかりでこの先が気になります。
主役の転生前の年齢とか、転生した事情など、語られていない部分が多いです。
文章もちょっと、まだ書き慣れておられないかなあという部分もあったりして。そのあたりは今後に期待というところでしょうか。
No.5808 (読書)


 2014年05月11日の読書
2014年05月11日(Sun) 
本日の初読図書:
4403541984仮面教師SJ (6) (ウィングス文庫)
麻城 ゆう 道原 かつみ
新書館 2013-12-07

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……カラー口絵が表紙カバーに挟まっていて、読み終わるまでその存在に気づけませんでした。
あれ、と思って調べてみたら、一週間前に読んだ5巻も同じようになってたし _| ̄|○ 読み始めた段階で口絵の存在に気づいていたら、わざわざ読んでる途中で「曜変天目茶碗」のネット検索なんてしなくてすんだのに……
ともあれ。
今回もまた、前回に引き続き表紙詐欺? というか、口絵も含めてイラストが内容にほとんど関係ありませんでしたね。あえて言うなら背景が和紙っぽいテクスチャなのが、かろうじて折り紙という部分にかすっている程度でしょうか。
今回のクラクラ先生は、ペーパークラフト学校の折り紙担当教師です。学年が上がるにつれて、和紙漉きや、最近ちょっと話題になっている建築素材としての紙の利用も学ぶ学校という設定。

偶然の人違いから、違法ドラッグを染み込ませた折り鶴を入手してしまった十蔵。
その折り鶴に使われていた紙が、教育監査機構で内偵を視野に入れていたペーパークラフト学校の教材だったことから、乗りかかった船だとその学校に潜入することに。
もともと疑惑があった、教材の減りが異常に早い = 横流し? という点と、違法ドラッグの密売の二つの件を調査することになった十蔵のもとには、例によってショータとスナがついてきている訳で。

前回はちょっと事件要素が薄かったかなあと思っていたら、今回は埋め合わせるかのように、二つの事件が同時進行していて、なかなか密度が高かったです。
でも表紙でご登場の立花先生はあんまり出番がなくって、立場も1巻で名乗っていた「古文書の修復を教える臨時講師」でした。クラクラ先生と違って、一般人ではさすがにこの辺りでネタ切れだったんでしょうか(苦笑)
まあこの巻全体のテーマが『紙』でしたから、無理に新しい技能を登場させることもなかったんでしょうけど。

でもって。
ほぼ特捜司法官候補生に間違いないやろと思われていた彼の、正体がついに確定しました。
ほほう、そうきたか! という感じで、さすがは麻城先生。一筋縄では行きませんでしたね。ふふふふふー、十蔵じゃありませんが、なんだかちょっとホッとしてしまいましたよ。彼はこれからもずっと『彼』として生きていけるんじゃないかという希望がですね、出てきたというか。十二〜七年後の「JOKERシリーズ」や「特捜司法官S−A」の時代でも、世界のどこかで熟年のベテランになった十蔵といっしょに、和気藹々と大人げない会話を繰り広げてくれているんじゃないかなあ、なんて。
あ、よく考えたら彼って、S−Aの主役だった秋津さんと一〜二歳しか違わないんですよね。この段階でドラマS−Aが始まって一年ほどなんだから、ドラマ開始時に17歳だった秋津さんが新・S−Aの時には確か35歳。なら彼はその時代には33〜4歳。良い感じの年齢じゃないですかvv 仮に解体処分の対象のままだったとしても、特捜司法官の耐用年数は35歳。新・S−Aの終了数年前にその制度も廃止されてるんだから、うん、充分間に合ってるし!
十蔵だって、40歳かな? 全然許容範囲です。むしろ童顔の彼なら、その段階でも全然二十代に見えるかもとか考えると、ついニヤついてしまいますvv

さて、そんなこのシリーズも、どうやら次回で最終巻だそうです。
あんまりダラダラ続くのも辛いので、程良い所できちんと話を終わらせてくれる麻城さんは本当にありがたいのですが……それでも、彼らともうお別れかと思うと、それはそれで寂しいです。またこの世界観のお話を、書いてくださらないかな……?

そして巻末短編で意味ありげに書かれていた、JOKERについてが気になります。最終話への伏線? すべての特捜司法官シリーズの謎が明らかに?? わ〜〜ん、気になる〜〜〜《o(><)o》
No.5806 (読書)


 2014年05月10日の読書
2014年05月10日(Sat) 
本日の初読図書:
4048741756ばんば憑き
宮部 みゆき
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-01

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安政年間に起こった、コロリの大流行。材木問屋田屋の主人重蔵は、毎年お救い小屋を建て、多くの人々を救済していた。十四になる少女おつぎもまた、昨年のコロリで家族を失い助けられた一人である。気働きの良さを認められ、田屋の使用人として雇われた彼女は、今年も建てられたお救い小屋の手伝いをしていた。重蔵の指示はいつも的確で、彼の言葉に従っている使用人達は、お救い小屋で働いていても一人としてコロリにかかることはない。ある日のこと、そんな重蔵が取り出してきたのは、おつぎにしか見えない、壷に入った坊主が描かれた不思議な掛け軸で ―― 「坊主の壷」
岡っ引きの政五郎に奇妙な相談が持ち込まれた。内職でほそぼそと紙人形を作っている老人 左次郎は、長屋の子供達と仲がいいのだが、その子供の一人があることで怯えているのだという。それは影踏み遊びをしていると、遊んでいる子供よりも、影がひとつ多いことに気付いたかららしい。主のない影は左次郎も眼にしたことがあった。なのでなんとか当たり障りのないそれらしい理屈をつけて、子供の恐怖を取り除いてやりたいのだと左次郎は言う。だが政五郎が調べるにつれて、気味の悪い因縁話ばかりが浮かび上がってきて ―― 「お文の影」
繁盛している醤油問屋近江屋では、いつも奉公人達と家族が一同にそろって朝食を取る。その日も戦場のように騒がしい食事の席であったが、不意に主の善一が顔色を変えて呟いた。「政吉兄さんが死んだ。あれが、うちに来る」と。地震いと生臭い風を引き連れてやってきた『それ』は、男達の手で蔵へと閉じこめられた。七つになる近江屋の娘お美代は、幼いからと何も見せられず話も聞けなかったが、何かただならぬ事が起きているのは感じていた。近所に住む幼なじみの太七などは、その朝へんてこなものが空を飛んできて、近江屋の蔵へ飛び込むのを見たという。それは大きな黒い蒲団のようで、たくさんの目玉が生えていたらしい。近江屋では親戚一同が集まって、蔵を囲んで寝ずの番をするなど大騒ぎしていた。と、不安に思うお美代に、近所にあるみすぼらしい八幡さまの狛犬が話しかけてくる。訛りがひどくきつく、何を言っているのかさっぱり判らなかったが、その訛りには聞き覚えがあった。それは町内の便利屋になっている、飛脚屋の居候 竹次郎のお国言葉だ。お美代が竹次郎に通訳を頼むと、どうやら狛犬は手助けしてやろうと言っており ―― 「博打眼」
手習い所を営む浪人 青山利一郎の元に、習子の親である大之字屋宗吾郎から頼み事があった。なんと自身の子供である、習子の信太郎を斬って欲しいというのだ。通りすがりの僧侶が、大之字屋を見て「この家には討債鬼が憑いている」と告げたらしい。討債鬼とは恨みを抱いて死んだ亡者がその相手の子供に生まれ変わり、貸していたものと同じだけのものを費やさせて恨みを晴らす存在である。宗吾郎は恨まれている心当たりがあるようで、いっぺんに震え上がってしまった。息子を殺さなければ、自分の命と大之字屋の身上が危ういと、完全に信じ込んでいる。利一郎はひとまず引き受けたように見せかけて、まずは怪しいその坊主の周囲を調べ始めるのだが ―― 「討債鬼」
小物商伊勢屋本家に分家から婿養子に入った佐一郎は、妻のお志津と共に箱根へ湯治に出た帰りだった。妻は何かとわがままを言うが、それも幼なじみの気安さからだと思えば、甘えん坊の可愛い女だと思える。今回の湯治は舅姑の目もなく羽を伸ばすことができて、佐一郎はもう少し長く続けたかったのだが、志津が田舎での生活を厭ったため、早々に帰ることになったのが残念であった。江戸までもう少しというところで雨に降られ足止めを食うことになった佐一郎は、むしろもう少し雨が降って欲しいとまで思っていた。そんな二人の元へ、宿の女将が相部屋を頼んでくる。相手は品の良い老女で、江戸の建具屋の御隠居だと言う。志津は嫌がったが、結局は受け入れることになり、佐一郎は老女と当たり障りのない会話を交わした。そしてふてくされた志津が酔い潰れてしまった深夜、目を覚ました佐一郎は、老女が風の鳴る音を聞きながらすすり泣いていることに気がついた。これもご縁、年寄りの昔話を聞いてはもらえないか。そう言って語り始められたのは、五十年も昔に、田舎の村で行われた奇怪な儀式と、それに翻弄された女達の物語だった ―― 「ばんば憑き」
妻を早くに亡くし、七つになる娘と二人で長屋に暮らす浪人 柳井源五郎右衛門は、何でも屋として周囲に認識されていた。傘張りから代書に用心棒など、困ったことがあれば柳井さんに頼むと良いとの評判である。とはいえ己の凡々たることは自分でも重々に承知しており、たいしたことができる訳ではなかったのだが。そんな彼に、ある日娘の加奈が問いかけてくる。「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」と。なんでも長屋に出入りしている三毛猫のタマは化け猫で、源五郎右衛門に頼みたいことがあるのだが、化け物だからといきなり斬りつけられてはたまらない。そこでまずは加奈からそのあたりを聞いて欲しいと、そう言ったのだという。いったい何を頼まれるのかと首を傾げた源五郎右衛門だったが、娘の手前、化け猫が嫌いだとは言えなかった。そして数日後の夜、加奈が眠った後に美しい女が訪ねてくる。暗がりの中でもはっきり見える姿といい、時おり細くなる瞳といい、明らかに人間ではない。お玉と名乗った彼女は、源五郎右衛門に物の怪を退治してほしいと言った。人に仇を為すようになってしまった、木槌の化け物、野槌を斬ることによって、どうか成仏させてくれと ―― 「野槌の墓」

宮部さんの江戸もの、今回はノンシリーズの短編集です。
収録作品は、どれも『不思議』が関わる怪異譚。……とか言いつつも、「お文の影」には「ぼんくら」シリーズの岡っ引き政五郎と、人間データベースの“おでこ”が登場していたりしますが。ミステリものの登場人物である政五郎達が関わってくるのは、世界観的にちょっと微妙なところではありますね。推理ものに『不思議』が絡まると、アリバイとかの根本的な前提条件が狂ってくるから、なにかと難しいですし。
まあそれはさておき。
今回収録されているお話は、幸いというか宮部さん独特の人間心理をえぐり込むほど後味の悪いものは少なかったと思います。でもよくよく考えると、救われていない部分も多いあたり、やっぱり宮部さんだなあとも言えなくもなく。
特に子供が理不尽な目に遭っている話が目に付きましたね。虐待で殺されるまで行く子が二人、理由は判らないけれど殺された子が一人、主役によって助けられはしたけれどそれでも母子ともに父親から捨てられた子供が一人。フィクションとは言っても、やっぱり読んでいて胸が痛みます……
子供が関わらない方は関わらない方で、なんというか、ううむ。
表題作「ばんば憑き」は、タイトルになるだけあって、突き抜けてゾッとさせられる感が強かったと思います。儀式の様子のおぞましさ。五十年を経てよみがえる過去。人の心が持つ身勝手さと不安定さ。この世に確かなものなど何もないのではという、足元からぐらついてくるような恐怖。そしてわがままな妻を優しく受け止めていた婿養子が、最後に見いだす、狂気と紙一重の慰め ―― それがただの慰めで終わるのか、それともいつの日にか実行されてしまう、恐ろしい計画に変わるのか。はっきりしないあたりが、いっそう空想をかき立てられてゾクゾクしてしまいます。
一方で読んでいて心温まったのは、「博打眼」でした。これも過去に犠牲になった人々を考えると充分に残酷ではあるんですが、それでもおしゃまで素直なお美代ちゃんや、訛りまくったお国言葉で会話する狛犬と竹兄あたりが雰囲気を和らげてくれました。最後にみんなが救われているのも良いことです。
「野槌の墓」も、まあまあそれなりに。自他共に認める凡人と言いながら、それでも理不尽な人生を着実に生きて、娘をまっすぐに育て、もののけにも「この人なら」と見込まれる源五郎右衛門が、個人的にとっても好みです(笑)
最後にお玉がくれた手間賃は、彼の今後を考えると良かったのかどうなのか、微妙な気もしますけどね……人は忘れるからこそ生きていけるのだから。あれじゃあ源五郎右衛門さん、一生後添いは迎えられないんじゃ(苦笑)

しかしどの話も思い返すと、ストーリーとはあまり関わりのないところで、それぞれのキャラクターがこれまで経てきた人生がしっかりと書き込まれていますね。そんなあたりが物語に深みを与えているのだろうなあとか、知ったふうな口をきいてみたり。
妖怪やひとつ多い影といった不思議な現象の部分よりも、人間のする行いの方がずっとずっと怖さを感じさせるあたりも、宮部さんらしいなあと思ったのでした。
No.5803 (読書)


 2014年05月07日の読書
2014年05月07日(Wed) 
本日の初読図書:
4865290362カーマリー地方教会特務課の事件簿 (2) (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
橘 早月 中嶋 敦子
ポニーキャニオン 2014-05-03

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危険すぎて万年人手不足のカーマリー地方協会特務課。主任のオブザーは、間もなく研修期間を終える訓練生アーシェイに、このまま特務課に残らないかと持ちかける。現実主義で、そこそこの出世と堅実な人生を望むアーシェイはもちろん断ろうとするのだが、他の部署に回されるよりも金だけは貯まるぞ、という言葉に心が揺らぐ。父を早くに亡くし、病弱な母親と幼い弟妹を抱えたアーシェイは、金という言葉に弱かった。そんなアーシェイと、剣の腕は立つが単純で不器用なルキアという訓練生コンビに経験を積ませるため、ジークとアッシュの二人が彼らを連れて遺跡のある洞窟へ向かうこととなった。幽霊が出たという目撃証言こそあったものの、危険はさほどないと思われたのだが、しかしルキアが誤って作動させた魔法陣により、アーシェイは一人、洞窟の深部へと飛ばされてしまう。そこには不死の魔物が潜んでおり……「苦学生アーシェイの根性節」
カーマリーの領主から、特務課へと依頼が持ち込まれた。親戚である男爵の一人娘が大切にしているぬいぐるみに、何か良からぬものが取り憑いているというのだ。夜になると少女の部屋で物が宙を飛び回り、その中央でクマのぬいぐるみが踊っているのだと。しかし少女はぬいぐるみことスミス氏を気に入って手放したがらないそうで、なんとか憑いているものだけを祓って欲しいと言う。ブラウンが突然抜けた混乱によって、ただでさえ人手不足の特務課は、現在目が回るほど忙しくなっている。大嫌いな書類仕事に忙殺され機嫌の悪いオブザーは、アッシュとジークにクマの始末を押し付けた。怪しい気配は特にないし、一晩見張って何事も起きなければ突っ返せばいいと。かくしてクソ暑い夏の夜に、念のため武装した状態でぬいぐるみを囲む男二人という図式ができ上がった。ところが夜食の差し入れにやってきたシスター・リリィによって、そのぬいぐるみが大変高価なものだと判明する。そして案の定、異変は起きて……「アッシュと真夏の夜の夢」
近く行われる教会本部の枢密院長選挙では、波乱が予想されていた。これまで枢密院長は正教会派が独占してきたのだが、今回ばかりはそれが怪しいらしい。正教会派の立候補者チャスチル枢機卿は、出世欲が強く大きな勢力も持っているが、同時に各方面の敵もまた多く、劣勢の立場にあるという。彼は正教会派の中でも一部の強行派が掲げる教派統一運動に関わっている節があるのだが、その証拠は見つかっていない。しかしその教派統一運動こそが、先日のイザベラ館の惨劇の原因なのではないかと、オブザーや盗賊上がりの情報収集担当ライツ神父は考えていた。カーマリーは国内でも有数の大都市だが、教会権力が強い土地柄で、中でも知識派がその多くを占めている。教派統一を求める者達が、他派の弱体化を図って狙いを定めるには、うってつけの場所なのだった。死んでいった仲間達の復讐に燃えるオブザーらは、あらゆる手段を駆使し、水面下で懸命に情報を集めてゆく。が、敵はさらなる強行手段を取った。それは対立候補の暗殺。その犯人に同じ聖騎士が含まれていたと知ったジークは衝撃を受けた。だが裏切り者は、思いもよらぬ場所にも潜んでいて……「聖騎士と剣と盾」

今回の表紙はアーシェイとルキア。相変わらず不憫な主役だ、ジークフリート(苦笑)
前巻に引き続きライトなお話2本のあとに、恐ろしいほどシリアスで〆られています。
最初の二話も、コメディタッチなやりとりの中に、情報を集めて話し合うライツとオブザーの深刻な場面が散りばめられてはいるのですが。しかし三話目の重さときたら、もう(−ー;)
1巻目のブラウンさんショックとはまた別の意味で、まさかあの人やあの人が……という衝撃が半端ないです。
そして引き続き、オブザーが怖いです。本当に聖職者かお前と思いつつ、でもこの人は紛れもなく心の底から『聖職者』なんだと納得させられる部分でもあり。

「聖と正は違う。信仰のため、正義のためと信じて疑わない者こそ、もっとも残虐な殺戮者になる」

オブザーの言葉が重いです。そして彼はそれを自覚していてなお、自ら境界線上に立つ。冷たい目で狂信者と紙一重とも思える『己の信仰』を語り、前に立ち塞がるものを容赦なく排除する。
そんな彼が「主任がそれを実行しようとしたら、俺は止めるつもりでした」と言ったジークに対し、「当たり前だ」と答えてくれて、心からほっとしました。
本気で罪なき人をも手にかけることを考えながら、同時に「そうして(止めて)くれなくてどうする。俺を罪人にする気か」とも口にする、その矛盾。しかしそれだけの信頼を、部下に対して持っているという点に、オブザーの有りようへの救いがあると思います。

さて、次回三巻は7月に発売予定。第一部完結! ……ということは、第二部もあるってことですよね(ドキドキ)
あと、第一部とほとんど変わらない量があった外伝群は、果たして書籍化されるのかしら……?
No.5795 (読書)


 2014年05月04日の読書
2014年05月04日(Sun) 
本日の初読図書:
4403541933仮面教師SJ (5) (ウィングス文庫)
麻城 ゆう 道原 かつみ
新書館 2013-08-09

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和時計技師 → バーテンダー → ショコラティエ → 刺繍職人と、一流派遣教師の仮面をかぶってきたクラクラ先生。今回は陶工教室です。
……表紙イラスト、まったく中身に関係ないやん(苦笑)
これはあれでしょうか、キツネとタヌキの化かし合い的なものを狙っているのかな?
前回でついに正体がほぼ確定した特捜司法官候補生。しかし何故か姿を消すでもなく、これまでと同じように十蔵の前に現れてはいつも通りに過ごしております。十蔵もほぼ確信を持ちながらも、直接問いただす訳にもいかず、気付かないふりを続けながら、内心であれこれと思いを巡らしています。
……そして意外なことに、相方もまた、うすうすはそれと察しているのでは? という描写のあったあたりが、今回の表紙の意味するところなのかもしれませんね。

三人が三人とも心のうちで秘密を判っていながら、何も言わずに変わらぬ生活を続けている。
―― 否、あるいは特捜司法官候補生ただ一人だけは、気付かれていることに気付いていないのかもしれない。
未だ研修途中の未熟な彼は、犯罪者の心理こそよく知っているが、相手への好意ゆえにあえて黙して語らない、そんな心の機微にはまだ疎いのではないか。人間ではなく、合成人間であるがために ―― と。
そんな感じでぐるぐるしていた十蔵くん。
おかげで今回は、肝心の事件に入るまでに時間がかかったような気がしました。
死体が登場するのは全体の半分近くが過ぎてから。そして十蔵がどうしてその学校に潜入する羽目になったのかが判明してから、本編が終了するまでは40Pぐらいしかありません。ちなみに264Pある全体のうち50Pぐらいは番外編なので、本編は200Pぐらいしかないです。おかげで「まさかこの人が犯人ってのは引っ掛けでしょう?」という人がまんま犯人でした(苦笑)
まあ、犯行動機とかはひと捻りあったし、孤島の全寮制学校という閉鎖空間における情報伝達の妙とか、なかなか楽しめる部分はありましたけどね。 学園七不思議の成立における、口伝の変異とか噂が誤報に変わってゆく過程の心理とかは、「かくれおに」を書いた時に調べたっけなあ(懐)

なお今回、一番「おお」と思ったのは、やはり「曜変天目茶碗(稲葉天目)」についての薀蓄でした。
文章を読んで、綺麗そうだなあとはなんとなくイメージできたのですが、ネットで画像検索したらまあ! 目を奪われるとはこのことか。ネットの粗い写真でここまで美しいんだから、実物を色んな角度から見たら、キラキラしてもっと素敵なんでしょうねえ(うっとり)

■世界の謎と不思議: 国宝 曜変天目 茶碗の中の宇宙
 http://pub.ne.jp/sakura2011/?entry_id=3870613

もともと自然釉で、虹色がかった銀になっている風合いが大好きなのです。それが黒い地肌に舞い散って、ほんのり青味を帯びて、それでいて茶碗の外側は黒無地。もしもこれでお茶を点てたなら、地味な黒い茶碗を傾けて呑んでいくごとに、目の前に宇宙が現れてくるのではないでしょうかvv ※国宝でお茶は飲めません
そりゃあ織田信長も気に入るだろうよと、なんだか深く納得しました。

……そのうち日月堂で晴明くんが天目茶碗について語り出したりしたら、ああ、と暖かい目で見守ってやって下さい(笑)

あと、今回は「自分は模倣が出来るだけの偽物にすぎない」と思い込んでいる十蔵くんに、ゲストキャラのイエティ先生が、意図せずして救いとなる言葉を放ってくれたように思います。
見たものを模倣しているだけとはいえ、本当にそれだけであれば、手の大きさなどが違う十蔵が、まったく同じものを作成できるはずがない。十蔵は目で見たものをちゃんと自分なりに吸収して、自分の手や体格に合わせた絶妙な動きを行っている、と。
十蔵はそれでもまだ納得できていないようでしたが、読者としてはいろいろ腑に落ちた気がします。だってねえ、やっぱり映像をまったくそのまま模倣しただけじゃあ、周囲の環境を参考映像と完全に同じにできない以上、一流の職人の仮面を完璧に被ることは不可能だと思いますもん。
そこには確かに、十蔵自身の持つ「プラスアルファ」があるのだ、と。
そう思いたいのが読者の心情なのでした。

あと巻末恒例の後日談的番外編、今回は複数人が集まってのコンゲームっぽくて、これまた面白かったです。
お前は詐欺師にしかなれない ―― という父親の言葉に縛られていた十蔵くんの世界が、良い意味で広がっていくようだと思いました。
No.5789 (読書)


 2014年05月03日の読書
2014年05月03日(Sat) 
本日の初読図書:
「『Innocent World Online』 極振りさんのVR日記」〜第百二十六話 感知のお話
 http://ncode.syosetu.com/n8335bk/

多種多様なスキルを選択でき、自由度の高いプレイができることで話題を集めているVRMMO『Innocent World Online』。
ちょっとした事件で知り合いになったクラスメート御崎玲花(みさきれいか)から、助けてくれたお礼にとそのVRソフトをもらった藤寺九乃(ふじでらここの)(※男)は、せっかくだから人とは違うプレイを楽しんでみようと考えた。いわゆるステータスの極振りというやつである。
たとえステータスが0であろうとも、そこはバーチャルリアリティ。現実と同じだけの動きはできるはずだ。プレイヤースキルには自信があるし、狩りゲーなんだから、攻撃力さえあればなんとかなるだろうと、彼は全てのステータスをStr(攻撃力)につぎ込んだ。そして初期で取れるスキルも、とにかく火力重視で選択してゆく。
かくしてここに、群がり来る格上モンスターを一撃でオーバーキルし、そして小さな兎の一撃でHPバーが吹っ飛ぶという、極大火力・紙装甲のプレイヤー「クノ」が誕生した。
敵の足止めや皆と同じ速度での移動ができず、また一撃もらえば死に戻るがゆえに回復してもらう意味もないため、パーティープレイは事実上不可能。否応なくソロプレイを余儀なくされた彼だったが、玲花 ―― キャラクター名フレイの所属する、美少女ばかりのギルド「花鳥風月」に誘われて、素材を提供する代わりに専属鍛冶師に装備を作ってもらえるという条件で加入することとなる。もちろん普段の狩りは別行動だったが、ギルドホームでまったりと駄弁るのも、これはこれでなかなかに楽しい。
自分より格上のフィールドに出ては、モンスターを蹂躙し、得られたアイテムやスキルはことごとくStr強化へと回す。
そうこうするうちに、クノの名は「魔王」としてプレイヤーの間に広まってゆくこととなった。
これはそんな「魔王」がVRを通して、人との付き合いの大切さを学び、現実でもまた成長してゆく物語……かもしれない?

クククククク、ハハハハハッ、最新話まで読ーみーきーったぜーーー!?>雪華さん
……と、なんだかテンションがおかしくなりそうな、非デスゲーム系VRMMOもの、連載中。
初期設定のポイントから、途中で取得するスキル、装備、称号など、あらゆるものをStr(攻撃力)に極振りしてゆくクノさんのステータスは、清々しいまでにおかしいです(笑)
なにしろVit(頑強)が0のため革の鎧すら装備できずに「服」を着用、Agi(移動速度・回避力)が0のため戦闘フィールドまでリアルと同じ速度でテクテク歩くしかないうえ、敵の攻撃を避けるのもその場で身体をひねるのが精一杯。状態異常に対する抵抗力もないから、仮にモンスターの吐く炎を避けられても、腕に飛んだ火の粉ひとつで火傷 → 3秒後には死に戻りという紙装甲(笑)
そもそもHPはレベル相応に持っているはずなのに、攻撃力を上げるスキルを使用する代償として、戦闘開始と同時に残り1まで下げるのが通常運転って……(汗)<本来はHPが下がるごとに攻撃力が上がるというスキルだが、攻撃力強化を求めて自分でいきなり1まで下げる<攻撃力が高い一撃を放つ代わりにHPが1になるスキルを併用
一応、「HPが0になる攻撃を受けると、1度だけHP1で耐え切る」というスキルも持っているので、1度の戦闘で1回だけは攻撃を受け止められます。が、それ以上はそれこそ最初の町の最弱モンスターの、その爪先がかすっただけでもうアウト。ある程度以上の高さから落ちた場合も、ちゃんと受け身を取っていてすら死に戻る。
しかしそれだけの犠牲を払った結果、彼が得た攻撃力は物語中盤(第七十三話時点)で既にトッププレイヤー達のおよそ100倍。
それからもさらに進化を続けているので、最新話の段階ではもはやどれぐらいになっているのか見当もつきません(苦笑)
最強ギルドのパーティーが1対6で苦戦するモンスターを、ザコ扱いでバッサバッサと斬り倒しまくり。特殊フィールドのボスさえも、機械作業で処刑 ―― いや私刑レベル。26本の漆黒の偽腕を自在に操り、自らの腕と合わせて28本の剣を正確無比にふるう ―― それってどんな人外?

……実際、途中に挟まってるリアルでのお話を見る感じ、祖父母レベルでなんか怪しい血が混じってるっぽくはあるんですがね(苦笑)

それにしても、クノとギルド専属鍛冶師のエリザの趣味がそろって暗黒方面に向いているので、クノの見た目が見事に魔王さまになっています。初期の黒ずくめ執事ルックも素敵だったけど、刺繍入りドレスシャツにファー付きコート、手袋にブーツにネックレス。身体の要所に巻き付いた、拘束具を彷彿とさせるベルトまですべて黒一色という魔王ルックも素晴らしい。そこにスキルのエフェクト(映像効果)で、黒と赤の瘴気をまとい、26本の宙に浮く漆黒の腕と、黒光りする擬似機巧系黒鳥竜種の騎獣を従えてるとか、もうvv

そんなクノのイメージは、「かずはしとも」さんの絵柄で脳内展開していたり。「オズの魔法使い」のトトとか、初期の執事ルックにピッタリなんじゃないかと。目が死んでるところとかもイメージ合うと思うんだvv

ところどころで挟まる別視点や、掲示板回も楽しいです。
もはやすべての理不尽が「クノだから」で済まされてしまうあたり、主役の非常識なまでの無双ぶり(でもチートではない)をおもしろいと思える方にオススメいたします。

あ、NTRに耐性のない方は要注意かもしれません。いえ別に女の子が脇からかっさらわれるって訳じゃないんですが、最初に想像するだろうキャラとは別の子がメインヒロインになるっぽいので。
っていうか、これは一応ハーレム系でもあるんだろうか? クノが ―― 裏事情はあるっぽいんですが ―― 極端に恋愛方面に対して鈍感なため、あらゆる女性キャラが振り回される展開になっています。
たとえば「竜殺し〜」がダメだった人は、これもダメかもと一言警告しておく次第です。
No.5788 (読書)


 2014年05月02日の読書
2014年05月02日(Fri) 
本日の初読図書:
4022130024シャーロック・ホームズの冒険 2 まだらの紐 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
コナン・ドイル JET
朝日新聞出版 2008-02

by G-Tools
今回の収録作は「まだらの紐」「黄色い顔」「入院患者」「瀕死の探偵」です。
またマニアックなvv 作画も「入院患者」あたりから自重が薄れている感じ(苦笑) それとも ―― 私はよく判りませんが ―― 作中年代に合わせて、ホームズさんの老け方を変えてあるのでしょうか??
ワトソンさんはあんまり変わらないんですけど、ホームズさんの顔の老けっぷりが、1巻での後書きの「油断すると皺を描き込みすぎて、担当さんがミスノン持って追っかけてくる」というのがさもありなんというところ。本当に少女マンガかこれ(笑)

「入院患者」を除けば、どれもそれなりに曰くつきのラインナップ。今回もしっかり面白かったです♪
「まだらの紐」は、後書きによるとやっぱり「皿のミルク」部分が苦しかったそうで。そこをごまかすためにか、ロイロット博士の私室を調べるシーンがカットされていました。故に金庫の存在と、先を輪にしたムチまで省かれてしまったのが、残念といえば残念な所。おかげで姉の部屋を見ただけで真相を解いてしまうというように、ホームズさんの超絶推理がいっそう際立っています。惜しむらくは、姉妹二人が「寝る時に窓とドアに鍵をかける」という説明もなかったため、謎解きの「危険が窓側から来るものでない以上、隣室、博士の部屋からだろう」の推理根拠が唐突っぽかった点ですかね。あと蛇にまだら模様がなかったのも、微妙に惜しい。
「黄色い顔」は、原作が『ホームズさん珍しく大失敗』なお話なので、正直あんまり内容を覚えていないのですけれども。おおむね忠実な流れだったと思います。依頼人が内面的に男前なあたり、そういう意味ではいま読むと意外におもしろかったかもです。あと女の子がすごく可愛かったvv
「入院患者」は、まあ可もなく不可もなく、といったところでしょうか。気になったのはホームズさんが室内を観察する様子があんまりなく、あとからああだったこうだったと解説するだけなことぐらいでしょうか。あと原作では触れられていませんが、この作画だと首吊ってるシーンで足場になったものが足元に転がっていないあたりに、ミステリファンが逆に目をつけそうだと思いました。とはいえこのお話は、依頼人が犯罪者であることを隠して嘘を言い続けた結果、ホームズさんが依頼を受けなかったため殺されてしまうけれど、犯人たちも因果応報の目に遭うという、ホームズさん達はどこか傍観者的な立場にある回ですし。これはまあこれで。
そして今回の最大の見どころはこれ、「瀕死の探偵」でしょう!
原作中でももっとも風変わりで、振り回されるワトソンさんが気の毒で、そしてホームズさんがワトソンさんに寄せる信頼が珍しくはっきりと現れているお話です。
もうね、さすがはJETさん。ホームズさんの憔悴ぶりの描き方が半端ないです(笑)
まさしく骨と皮のガリガリなところもそうなんですが、迫真の錯乱ぶりもきっちり描写してあります。ポケットの小銭に、太平洋の底の牡蠣♪ ワトソンさんが象牙の小箱を手にした時の形相ときたら、まさしく身の毛のよだつような表情です。事情を知らなければびっくりするし、事情を知ってから読み返すと、なんて微笑ましいvv そんなに顔色変えるほどワトソンさんが心配だったのかvv
そして寸前の瀕死ぶりから一転、「燐寸と煙草を取ってくれないか」のコマの格好良いこと。そうそうこれが見たかったんだよ!! って感じでした。
ただひとつの難点は、ごく一部ですがワトソンさんの表情にコミカルなディフォルメ(目が点とか)があったため、彼が親身になって心配しているという印象がちょっと薄れてしまったことでしょうか。
ああでも「足りぬと言うなら証人もいる」の言葉に合わせて、ベッドの下から出てくる場面は、これまた格好良かった、ふふふふふ。 ……あの角度で出てこられるって、ホームズさんのベッドのマットレス、どんだけ薄いんだってー気はしますが(苦笑)

ところで、事件になるとろくに食事を取らないまま精力的に動きまわるホームズさんが、たかが3日ぐらい食べなかった程度で、あんなにやつれるんだろうかとは、原作を読んだ時からの密かな疑問だったり。動き回りまくってたんならともかく、ずっと寝たきりだしなあ。やっぱり水分が重要なんでしょうか……?

ともあれこれで、現在発売されているJET版ホームズはコンプしたはずです。
いろいろ文句はつけましたけれども、それはあくまで「全体的にすごく良く出来ているからこそ」気になってしまう些細な点とも言えます。
とにかく、私は今まで読んだホームズさんのコミカライズでは、JET版を一番オススメしたいと思います。
本当に素敵なんですよ……?
なおJETさんのコミカライズでは、他に金田一耕助やエラリー・クイーンあたりも良いです。私は読んでいませんが、明智小五郎やルパンも描いてらっしゃるそうです。
No.5787 (読書)


 2014年04月30日の読書
2014年04月30日(Wed) 
本日の初読図書:
4022130016シャーロック・ホームズの冒険 1 バスカヴィル家の犬 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
コナン・ドイル JET
朝日新聞出版 2008-02

by G-Tools
待望の一巻目が届きました★
収録作品は「バスカヴィル家の犬」152Pと「青い紅玉」48Pのふたつ。後書きによると、長いブランクを置いての再出発だけに、最初は作品のチョイスも作画にも多少の自重があったようです(笑)<有名作品&ホームズさんの外見年齢を当社比低めに設定
実は昨日読んだ3巻目で「大人買いはちょっと早まったか……?」とちらっと思わなくもなかったのですけれど。どうしてどうして。やっぱりこの方のコミカライズは面白いvv
バスカヴィル〜は、前中後編の三部構成でたっぷりページ数を取ってあるだけに、なかなかしっかり描かれていたように思います。もちろん限界はありますから、思い切った省略や改変はありましたが、そこはさすがのJET節vv
独立したひとつの作品として、これだけでちゃんと成立していたのではないでしょうか。
マンガであるが故に、途中で何度も魔犬の姿が登場していたので、クライマックスにヘンリが襲われる場面が、ちょっとインパクト薄くなってしまったことは否定できません。しかしその代わり、ラストの犯人の末路。そこに瀕死の魔犬を絡めたことで、「バスカヴィル家に連なる『悪人』には、魔犬の呪いが降りかかる」という伝説が図らずも実証されてしまうと言う、勧善懲悪がより強く感じられました。
そして魔犬と対になるかのようにちょこちょこ登場する、モーティマー医師の飼ってるスパニエルが可愛いvv
しかしワトソンさんが月明かりで謎の人影を見つけて不審に思ったり、その結果として荒野を探したところ、ホームズさんがワトソンさんまで騙して岩山に隠れていたのを見つけて、「僕の手紙は全部無駄だったのか!」「僕を信頼していないのか!」と憤慨する場面。ここが「やあ、ワトソン君。(郵便局から拝借した手紙を読みながら)君のこのレポートは素晴らしいよ! 実に詳細かつ的確だ」「ホームズ!!(青筋マーク)」の数コマで終わってしまったのは、いささか残念でした。とは言え原作を知らない人間が読めば、充分に印象深く思える、格好良い見開きページだったことは確かで。
あと終盤ヘンリが魔犬に襲われる流れも、原作より自然な感じがしました。ホームズさんの指示に従った結果、間一髪という危険な目に遭ったというきわどさがなくなり、そして犯人の悪人ぶりがより増していました。
不満点と言えばただひとつ。ステイプルトンの『妹』がワトソンに向かって「いますぐロンドンにお帰りになって」と言う場面はあったんですが、それがワトソンとヘンリを間違えたからだったという説明が抜けていたことでした。そこを省略してしまうと、彼女がヘンリを助けようとしていたことが曖昧になってしまい(むしろ護衛役を追い返そうとしたように見える)、ラストで彼女を赦すという展開が弱くなってしまうので……でもそれ以外は大満足でしたvv ステイプルトンの可愛いスパニエル犬も、どうにか無事……じゃなかったけど元気になったし(笑)

他方、短編の「青い紅玉」もなかなか素晴らしい出来かと。
帽子を前に推理する、毎度おなじみな二人のやりとり。ガラスがパテみたいに切れる炭素の塊という、原作通りにツッコミどころありまくりな「青い」「紅玉」vv(カーバンクルだからルビーとは限らないとはいえ、やっぱり微妙ですよね/苦笑 ※カーバンクル=丸く磨いたガーネット、転じて赤い宝石の総称)
パブでちゃっちゃと聞き込みを終えちゃったホームズさんのせいで、ワトソンさんまで一口もビールを飲めなかったのは、グラナダ版へのオマージュでしょうか。
もちろんガチョウ屋での息のあった「賭事のふり」も当然あります♪ こっちの流れもグラナダ版っぽいような。
その後、犯人への尋問と「失せろ!」をベーカー街へ連れ込んではなく、その場の路上でやった流れは、通行人とかの目は?? と気になりつつも、話の勢いを殺さずいっきにラストまで盛り上げてくれました。
濡れ衣を着せられそうになった配管工へのフォローもちゃんとあるあたり、良いアレンジだったのではないかと。

とまあ、そんな具合で、この1巻目は非常に面白く、初心者さんにも大手を振ってオススメできる仕上りだったと思います。
……やっぱり三巻目は、ちょっと悪い意味で「慣れ」が出てきて、緊張感が薄れてきてたのかなあ(苦笑)
No.5785 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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