よしなしことを、日々徒然に……



 2014年05月19日の読書
2014年05月19日(Mon) 
本日の初読図書:
4040663942マギクラフト・マイスター 2 (MFブックス)
秋ぎつね ミユキルリア
KADOKAWA/メディアファクトリー 2014-03-22

by G-Tools
WEBで毎日更新されている、日参が楽しみな作品の書籍化第二弾。
今回は二章目の蓬莱島の開拓及び、エゲレア王国でビーナといっしょに魔道具開発をするお話。モノ作りメインと、ある意味このお話の原点にあるパートではないでしょうか。
書き足しはだいぶあったように思います。研究所内部の細かい描写とか、ビーナの弟妹まわりについてとかが詳しくなっていました。間に挟まる閑話も3つほど書き下ろされていて、それぞれ「ポンプが普及してゆくクライン王国の様子」「仁の遺した物を活用している冬のカイナ村」「着々と開拓を進めるゴーレム達」が描かれています。目次を比べてみると、章の数も増えてるみたいですね。全体的に細かいフォローが入っていて、WEB版よりもだいぶ完成度が上がっていると思いました。

そして書籍版の醍醐味とも言えるイラストですが、今回も満足★
カラー口絵は登場人物紹介に使われており、クズマ伯爵やガラナ伯爵といった男性キャラや悪役も、ちゃんとイラスト化されています。
……自宅の土間で水汲みしてるはずのリシアが、何故か鎧着たまま屋外の井戸の横に立ってるのはご愛嬌(苦笑)
ビーナもなかなか可愛いし、クズマ伯爵も理知的な男性っぽくて格好良かったです。
内部のモノクロイラストも、絵の具で塗ってるのかCGなのか、細かい濃淡のある立体感を感じさせる絵柄でいい感じ。ビーナ出現率が高いのは、まあ今回は登場キャラクター自体が少ないから……

あと作者さんご自身が、ちょっとやり過ぎやろと思うぐらい細かい地図をWEB版の参考資料にUPされているおかげか、今回も巻頭にしっかり地図が載っていて、そちらもありがたかったです。特に蓬莱島の地図は、なんだか航空写真っぽくて、WEB版資料よりも地形が判りやすく。
ああ、グライダーゴーレムが作成した地図という設定だから、こういうタッチにしたのかな??

そんなこんなで、WEB版をお持ちの方でも充分に楽しめる仕様だと思いました。
さて、次回はポトロックでのボートレースか。ようやくラインハルトとエルザの登場ですね!
ラインハルトのキャラデザインが果してどんなふうになるか、今から楽しみですvv
No.5841 (読書)


 2014年05月18日の読書
2014年05月18日(Sun) 
本日の初読図書:
「斑の蛇(近代デジタルライブラリー)」高等探偵協會
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904817

DLしたきり放置していたのを、久しぶりに2日ほどかけて読了。
ナポレオンの胸像が乃木大將の像になっていた「肖像の秘密」の続編で、タイトルを見てお判りの通り「まだらの紐」が原作となっています。
探偵王 緒方緒太郎 理學士と日獨戦争帰りの元軍醫 和田義雄さんのコンビは、比較的原作に近い空気を持っているかと。
舞台は日本で、地名も人名も日本風になっているのは、この時代の翻案のお約束★
たとえば、

依頼人のヘレン・ストーナー → 須藤蓮子
義理の父親のロイロット博士 → 高見澤信武
イングランドのサリー州の西の境 → 武藏相模の神奈川縣の都築郡
オパールのティアラに関するファーントッシュ夫人 → 『猫目石の指環』事件の春山の奧さん

他にもインドは南洋、ベンガル砲兵隊は臺灣(たいわん)の守備隊、千ポンドが一萬圓、クロッカスは躑躅(つつじ)といった具合。
まだらの紐というタイトルの元となった「班点のついたハンカチーフ」に至っては「豆絞りの手拭」ですよ(笑)

内容を読んでいてちょっと違和感を覚えたのは、二人の部屋へ押しかけてきたロイロット博士改め高見澤信武が帰った後で、緒方さんが「彼奴が僕等を探偵と間違えるのは實に失敬極まる次第だ」と言っている場面がありまして。……あんたら探偵じゃねえのかよ。緒方さんのことを、さんざん「探偵王」って表現してるじゃん、と思ったのですが。
これはどうやら原文の official detective を、そのまま「探偵」と翻訳しているからみたいですね。
以前にも書きましたが、どうも英語原文では、 official detective は公的な立場にある警察官のことを指しているようです。そしてホームズさんは consulting detective すなわち顧問探偵コンサルティング・ディテクティブだと。
ちなみに私立探偵や興信所の職員は、 private detective 。
ううむ、同じ「ディテクティブ」でもややこしい(−ー;)

あと残念だったのは、夜が更けるのを待っている間、珍しくホームズさんがデレている会話。

「今夜君を連れていったものかどうか、実はちょっとためらっているんだ。危険なことがわかりきっているんでね」
「役に立たないのかい」
「君がいてくれれば大助かりなんだが」
「それならもちろん行くよ」
「ありがたいね」  ※鈴木幸夫 翻訳

これが無いんですよ! っていうか、なんかホームズさんの台詞がよく判らないんです。
誤訳でしょうか??

緒「和田君。實は今夜君を連れ出すことには僕は躊躇するね。確かに意外な危險物があるんだから。」
和「僕が加勢するから可いぢやないか。」
緒「所で一人でも二人でも同じ理由なんだが。」
和「それぢや唯、御供するだけさ。」

和田さんの台詞はまだしも多少近いものがありますが、それでも微妙なニュアンスがコレジャナイ感でいっぱいです。一人でも二人でも同じって、それじゃあ来ても来なくても同じってことじゃん!?
あああ、原作では数少ないホームズさんの優しい言葉が……(しくしくしく)

それに緒方さんが、場合によっては敵の方が返り討ちに合うかもとか事前に言っちゃってしまっているあたり、最後に犯人が因果応報的な末路を遂げる衝撃が薄れる感じがするかなあと。っていうかこれじゃあ緒方さん、最終結果が未必の故意じゃなくて完全な故意になってるよ……最後に何が起きたのかの説明を聞いてる和田さんも、いくらなんでも察しが悪すぎるし……むむむ(−ー;)
なまじ他の部分が原作に忠実なだけに、細かい所が眼についてしまいます。

ラストもホームズさんの一言でさくっと終わっていた原典と違って、2ページほど和田さんの語りが入っています。これを冗長と取るか否か。
原作を知らずにこの話を単体で読むぶんには、これはこれでおもしろいと思います。まだ全集とかが発行されていなくて、初期に翻訳されて続きが出せるかどうかも判らなかった頃の作品だと考えると、これはむしろ読者に対する親切に部類されるのかなあとも思わなくもなく。
それにどうやらこの探偵王緒方のシリーズは、ホームズさん以外の作品も原作にして、緒方さんと和田さんのコンビで解いていく、複数の原作が入り混じったもののようで。実際この本の後半に入っている作品は、明らかにホームズものではありませんし。そういう事情があるから、ラストに書き足しが増えているのかもですね。

しかし複数の原作をひとつのお話にまとめて翻訳してしまうとは、まだ著作権の概念が怪しかった時代とはいえ、大胆なことをしていたんだなあ……

あれ、よく考えたらこの話、タイトルと表紙で思い切りネタバレしてる??(´・ω・`)
No.5837 (読書)


 2014年05月15日の読書
2014年05月15日(Thr) 
本日の初読図書:
4048662260ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
三上 延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-24

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このところ古本屋仲間の間で、妙な客の存在が噂になっているという。年配の女性なのだが、数年前に休刊になった古書に関する情報誌のバックナンバーを数十冊まとめて売りにきては、数日後に「気が変わったから」と買い戻しに来るらしい。そうして買い戻したものを、再び別の古本屋へ売って同じことを繰り返すのだ。その話を大輔が聞き込んできたまさにその日、ビブリア古書堂にその客が現れた。持ち込まれた雑誌は内外に書き込みが多く、あまり高い値はつけられなかったが、女性客はそれで構わないと売っていく。さっそく棚に並べたところ、最近志田と連れ立ってやってくる初老の男性客が、興味をいだいたようで……「彷書月刊」
滝野ブックスの店主の妹で、栞子とは学生時代からの友人である滝野リュウから、本にまつわる相談を持ちかけられた。彼女の後輩である真壁菜名子が言うには、父がコレクションしていた手塚治虫作品の中から、「ブラック・ジャック」の4巻が3冊ほど紛失したのだという。持ち出したのはおそらく高校を中退した弟で、海外出張中の父親と折り合いが悪いらしい。なんとか父親が帰るまでに戻しておきたいのだと言う菜名子だったが、会ってみた弟は父親を人でなし呼ばわりするばかりで話が通じない。弟は何故に父親をそうまで憎むのか、また父親はどうして同じ4巻を5冊も持っていたのか。謎は深まるが……手塚治虫「ブラック・ジャック」
死んだ長兄が高価な初版本を譲ると言ってくれていたのに、誰も信じてくれないからなんとかしてくれ。そう相談を持ち込んできたのは、一昨年前に栞子が店への出入りを禁じた男、門野澄夫だった。行方をくらましている栞子の母親 智恵子の幼馴染で、かつてはビブリア古書堂にもよく訪れていたという。だが彼が店へ売りに来た本は長兄の元から黙って持ち出してきたり、あるいは他の古本屋から万引きしたもので、発覚した際には警察沙汰になる大騒ぎだったらしい。そんな訳で付き合いを断っていた男の依頼だったが、栞子には無碍に断れない理由があった。どうやらこの頼みの裏には智恵子がいるらしい。栞子は智恵子に連絡をとって話をしたいことがあるのだが、智恵子は自分に会いたければ本に関する問題を用意するから、それを解いてみろという伝言を残していたのだ。しぶしぶながらも門野の長兄の遺族に会いに行った二人は、そこで初版本に挟んであった貴重な直筆原稿が、子供の落書きで台無しになっているのを見付けて……寺山修司「われに五月を」
プロローグ・エピローグ……リチャード・ブローティガン「愛のゆくえ」

前巻を読んでから一年以上経っているので、ちょっと内容を思い出すのに時間がかかってしまいました(苦笑)
おお、大輔さんと栞子さんの間に大進展が!!
前の巻のラストで大輔さんが告白の返事を保留されていたのですが、今回は全体を通して「なぜ栞子さんが返事を待ってもらったのか」、「はたしてどういう返事を返すのか」が根底に流れていました。やー、何事もなかったかのように告白を流されるのかも? とちょっと心配していたので、これは意外な嬉しさでしたvv
そして悩んで悩んでようやく結論を出した栞子さんに、大輔さんが返した答えがまた素晴らしい。
さすがは大輔さん、予想の斜め上を行きやがったvv その時点で子供がいたらどうするんだとかいうツッコミどころはあるけれど、若い二人にそれを言うのは野暮というものか。とにかく彼の「なに当たり前のことを」みたいな言い方がスゲエ面白かったです。


……しかし一点、どうしても不思議な部分がありました。
今回のお話、プロローグとエピローグの整合性がまったくとれていないんですよ。プロローグは5月31日で、大輔さんが告白の返事を聞きたいと栞子さんに問いかけ、栞子さんが「わたし、あなたと……」と言いかけたところで終わります。そこから物語が本編に入り、そしてエピローグへ続きます。
エピローグには「まだ5月は終わっていない。あと五日ほど残っている」とあるので、26日でしょう。そしてこの段階で、栞子さんは大輔さんに返事をしています。しかもプロローグとはまったく繋がらないシチュエーションで。

……あれ??

っていうか、エピローグはまたけっこう衝撃的な「以下次巻へ!」みたいな終わり方をしています。
これって……もしかして5月31日のプロローグは、二人で示し合わせてなにか芝居でもしてるんでしょうか? 主に例のあの野郎に対抗するために。そうとでも思わなければ納得がいかないよ??

例のあいつについては、すっかり終わったことだと思っていたので、かなりびっくりしたんですが。

………………って、違うぢゃんッッッ!!
今もう一度プロローグをめくり返して、ようやく気が付きました。
そっかー、そっかーーー、そういうことかーーーー!!! やられた……見事にしてやられたよ……_| ̄|○
あー、↑のしたり顔な文章が恥ずかしい。消したい。でも一度書いちゃったものを消すのもアレなので、自分がどれほど綺麗に騙されたのかの記念として残しておきます。

ええと、話を戻すと、例のあの野郎が再び戻ってきて、話は折り返しを越えて終盤に入っているとのこと。つまりこの物語は、巡り巡って最初に還っていくという構成なのでしょうか。
今度は大輔さんも文字通り他人事ではなくなっているので、どう展開していくのかが楽しみです。
……残されているのが手紙であることを考えると、本当の本当にあいつの仕業なのかもまだ判りませんしね。
シリーズ当初からいろいろな意味で活躍していらっしゃった志田さんも、ついに過去が明らかになって、今後の二人との関係がどうなるか判らないあたりも続刊が待たれます。

さらに今回は各章の間に断章としてそれぞれ別視点が挟まっていたわけですが、そのラインナップがリュウちゃんはともかく、志田さんと栞子さんというのがまた、意外性があって。プロローグもアレだった訳ですし、この巻は本当に今までとだいぶ趣が違う感じでした。
ある意味では大輔さんが蚊帳の外だったのかもしれないな……でもそれでも、彼は彼なりにちゃんと栞子さんを支えているのだから、これはこれで良いのかも? 逆に大輔さんしか知らない事実(門野澄夫の最後の選択とか)もある訳ですし。

ところで今回は珍しく、知っている作品が取り上げられていました。はい、ブラック・ジャックです。実は1巻だけですが、チャンピオンコミックス版を持っていたりします。懐かしいvv
その後はコンビニの廉価版とか図書館においてある文庫版をパラ見したりとかした程度なんですが、やはりあの作品はすごいですよねえ。そりゃ医学的な部分とかは間違ってたりフィクションも多々ありますけど、それでも不朽の名作だと思います。
単行本未収録作もあると聞くと、つい読みたくなっちゃうのに、さすがに当時の雑誌とか初版コミックスとかは手が出せねえ〜〜《o(><)o》
No.5831 (読書)


 2014年05月14日の読書
2014年05月14日(Wed) 
本日の初読図書:
490720308X霊感動物探偵社 5 (LGAコミックス)
山内 規子
青泉社 2013-10-19

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シリーズついに五巻目、この方の作品の中では一番長く続いているお話ですな。そして後書きによれば、まだ先があるようで、嬉しいったらvv
……しかし立夏と高倉のじれじれカップルには、相変わらず進展がなく。むしろ新キャラUFOオタクの城野くん(大学の同級生)が立夏に告白してきたりと、むしろ二人の間に暗雲が……?
ええい、しっかりしろ高倉! それでもいい大人か!? 互いの家にお泊りまでクリアしてるくせに、何もないとか、どこの熟年夫婦だ!!

そんなこんなな今回の収録作品は、「選択の行方(フェレット)」「桃色の告発(モモイロインコ)」「カメレオンの瞳(カメレオン)」「音のないコトバ(雑種犬)」「幸福の残像(ワニ?)」の五作。「幸福の〜」が全三話でページを取っており、あとの四作は40Pぐらいずつの短編で、全て合わせると320P。かなりのボリュームでした。
「幸福の〜」は、久々にこの方の本領発揮というか、可愛い絵柄でかなり猟奇的でした(−ー;)
動物霊も関わっていなくて、立夏が残留思念的なワニを見た他は、バリバリの人霊と人の心の闇からくるあんなこんなが本筋でした。猟奇的かつサイコホラーというか。笑顔の下に、言葉が通じない、奇形的な精神を隠した人物が登場するようなお話。
こういうの描かせるとうまいですよねえ、山内さんって。
あと「選択の行方」は、珍しく結果を見届けない終わり方でした。情報は渡したから、そこからどう行動するのかはもうその人次第。最後まで世話を焼く義理はない、みたいな。たまにはこういうのも、趣向が変わって面白いかと。
いつもと違うといえば、「カメレオン〜」の方も高倉が霊障で倒れてしまい、立夏が一人で頑張るというのが珍しかったです。そしてわざわざ立夏んちで寝込んじゃったんだから、もう少し二人の仲に進展があっても……と望むのは、この二人には無理なのか(苦笑)
No.5829 (読書)


 2014年05月13日の読書
2014年05月13日(Tue) 
本日の初読図書:
4062172526おまえさん(上)
宮部 みゆき
講談社 2011-09-22

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お徳がお菜屋を始めた幸兵衛長屋で、やっかいな出来事が起きていた。町内の南辻橋のたもとで、辻斬りがあったのだ。死人の流した血脂が地面に染み込んで、何度洗っても人型の影が消えないため、長屋の人々は恐れおののいている。一方で、生薬屋の瓶屋で人殺しがあった。殺されたのは、一代で店を興した主人の新兵衛。彼は戸締まりのされた家の寝間で、一刀のもとに斬り殺されていた。一見すると両者は何の関わりもない事件に思われたが、八丁堀同心の兄や甥達の補佐を長らく務めてきた老人 本宮源右衛門は、二つの死体に残る傷を、同じ人間が同じ凶器で斬ったものだと見立てた。すなわちこれらの事件は単なる通りすがりの辻斬りや金目当ての賊による犯行ではなく、怨恨が動機となった互いに関わりがあるものなのだと。
父の跡を継いで最近同心になったばかりの間島信之輔は、大叔父(の従兄弟)のこの言葉に懐疑的であった。信之輔自身は顔立ちがいささかまずい他は、腕も立てば頭の回転も良く人柄も申し分ない、実に前途有望な若者なのだが、厄介者として盥回しになったあげく遠縁の間島家に居候として押し付けられたこの大叔父とは、あまり折り合いが良くないらしい。
しかし政五郎や平四郎らが調べを進めてゆくにつれ、辻斬りの被害者だった久助と新兵衛の間には確かに繋がりがあることが判ってきた。二人は二十年も前に、共に老舗の生薬問屋大黒屋で調剤人 ―― 薬草を刻む“ざく”として働いていたのだと言う。
さらに現在大黒屋の主人を務めている藤兵衛が、驚くべき事を告白した。彼もまた、当時は一介のざく仲間であったのだが、新兵衛と久助の三人で人を殺してしまったのだと言うのだ。相手はやはりざくの一人で吉松。人柄のあまり良くなかった彼とのいざこざに加え、吉松が開発した新薬の調合方法を巡る欲が絡んだ上での犯行だった。
幸いにもことは事故で片付き、三人はなんらお咎めを受けることはなかった。そうして藤兵衛は跡取りのいなかった大黒屋を継ぎ、新兵衛は新薬を看板商品として独立した。久助は罪の意識に苦しんだあげく、大黒屋を出て方々を転々としていたらしい。
それらの事情を知った平四郎達は、下手人に目星がついたように思った。なんでも吉松には言い交わした女おせつがおり、彼女は当時身ごもっていた。そしてそのおせつだけは、吉松が三人に殺されたのだと確信し、恨んでやると言い残して姿を消したのだという。
産まれた子供は男児だったらしい。無事に育っていれば、ちょうど二十歳。ならばおせつかその子供か、あるいは両者が力を合わせて、殺された吉松の恨みを晴らそうとしているのではないかと考えたのだ。
ところが、だいたいの筋書きが見えてきたと思ったところで、新たな死体が出てきた。大川に投げ込まれていた夜鷹の死体についていた傷を、源右衛門がまたも同じ下手人の手になるものだと言いだしたのである。
しかしいくら調べても、貧しい夜鷹の女と瓶屋や大黒屋、あるいは久助との関わりは出てこない。信之輔などは大叔父の見立て違いではないかと疑い始めるが、そこを疑ってしまっては、そもそも最初の辻斬りと瓶屋の主人殺しの下手人が同じだろうという、その前提からして成り立たなくなってしまう。
困惑する一同をよそに、弓之助にはなにやら推理の筋道が見えてきたようで、自分を瓶屋に連れていってほしいと言い出す。なんでも瓶屋の後妻で、事件後はすっかり寝ついてしまっている佐多枝に聞きたいことがあるそうで ――

「ぼんくら」、「日暮らし」に続く、平四郎・弓之助のシリーズ第三段。
今回は湊屋からはすっかり離れた、新しい事件です。佐吉とお恵の夫婦も、子供が産まれたという噂話でしか、今のところ出てきていません。
二十年前に端を発する辻斬りと生薬屋殺しを軸に、他にも富くじで人生を狂わせてしまったストーカーとか、子供を捨てて裕福な家に後妻に入ったはずが急に離縁されそうになって政五郎親分に泣きつく“おでこ”の実の母親とか、あるいは弓之助の家で起きた長男の嫁取り騒動といった、様々な事件が同時進行しています。これらは下巻で一本に集約されていくのか、それとも「世の中には常に様々な事件が起きているのだ」という形になるのか、どちらなんでしょうね?
間島信之輔と瓶屋の娘 史乃の関係も気になりますし、間島家で厄介者扱いされている源右衛門お爺ちゃんがどうなるかも、きっちり片が付いて欲しいところです。
そして弓之助もそろそろ14歳、いい加減に平四郎も養子に取るのかどうか、はっきりさせてくれないと……(苦笑)
ああ、瓶屋の「かめ様」の異変が、果たして本当に事件に関係あるのかどうかも気にかかるし……とにかく今回は、様々な事情や情報が雑多に散らばっている感じで、早く整理がついて欲しいところです。
どうやら下巻は1/3ぐらいでこの「おまえさん」が終わり、あとは後日談的な中短編が四本ほど入っているみたいですね。ということは、すぐに謎解きに入ってくれるのでしょうか。
この複雑さを忘れないうちに、早く続きを読みたいです(><)

「【習作】一見スタイリッシュにファンタジー( Arcadia )」〜三話
 http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=tiraura&all=25264

異世界転生した凡愚な青年が、神に気に入られると加護がもらえるというダンジョンに挑むお話。
美の女神のダンジョンを選んだ彼は、執事服に食事用のナイフを装備し、極限まで無駄を省いたスタイリッシュな動きでモンスターを倒す!
……その発想と馬鹿馬鹿しさがナイスに面白いですが、三話でエタっているっぽいのが残念です。
No.5826 (読書)


 2014年05月12日の読書
2014年05月12日(Mon) 
本日の初読図書:
「針子の乙女(小説家になろう)」〜レース編み
 http://ncode.syosetu.com/n0020by/

前世で手芸部だった女性(高校は卒業済みらしい)が、異世界に転生。縫い物を家業とする貴族の家に生まれたので、これは天職! と思ったものの、実はその家、魔力によって衣服に加護を縫い込める力を誇りとしており、プライドが異常に高かった。そんなこととは知らない彼女は、普通の服は普通に縫えば良いのだと思い込み、誰よりも綺麗に早く丁寧に縫いあげていたのだが、その家ではそんな技術は無価値だと分かった時には既に遅く。
十歳で仕事を手伝い始めて間もなく、加護縫いのできないみそっかすな子供と嘲笑され、家族からは邪魔者扱い。ろくな食事も服も与えられずに酷使され、十五歳になる頃には貴族の子供でありながら、どこの難民かと見まごう餓死寸前のボロボロ状態に。
もちろん彼女も、やろうと思えば加護を縫い込めることはできて。精霊たちの姿を目にすることもできれば、魔力を糸として彼らの破れた服を繕ってやることも可能。しかしもう今さら、この家のために価値あるものを産み出す意欲など、すっかり削られており。
かくして出来損ないとみなされた彼女は、普通のお針子として別の貴族の家へ引き取られることに。もちろん支度金のたぐいはすべて実家が懐に入れてしまい、持ち物は特殊な糸を紡いでくれる蜘蛛と、針一本のみ。事実上は売り飛ばされたと同じこと。
しかし行った先では、明らかに虐待を受けていたその姿に同情され、皆が優しくしてくれて。十分な食事と優しさを与えられた彼女は、お礼として加護縫いを施した匂い袋を使用人を含めた皆に送った所、それが騒動の元となって……というお話。
まだ始まったばかりでこの先が気になります。
主役の転生前の年齢とか、転生した事情など、語られていない部分が多いです。
文章もちょっと、まだ書き慣れておられないかなあという部分もあったりして。そのあたりは今後に期待というところでしょうか。
No.5808 (読書)


 2014年05月11日の読書
2014年05月11日(Sun) 
本日の初読図書:
4403541984仮面教師SJ (6) (ウィングス文庫)
麻城 ゆう 道原 かつみ
新書館 2013-12-07

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……カラー口絵が表紙カバーに挟まっていて、読み終わるまでその存在に気づけませんでした。
あれ、と思って調べてみたら、一週間前に読んだ5巻も同じようになってたし _| ̄|○ 読み始めた段階で口絵の存在に気づいていたら、わざわざ読んでる途中で「曜変天目茶碗」のネット検索なんてしなくてすんだのに……
ともあれ。
今回もまた、前回に引き続き表紙詐欺? というか、口絵も含めてイラストが内容にほとんど関係ありませんでしたね。あえて言うなら背景が和紙っぽいテクスチャなのが、かろうじて折り紙という部分にかすっている程度でしょうか。
今回のクラクラ先生は、ペーパークラフト学校の折り紙担当教師です。学年が上がるにつれて、和紙漉きや、最近ちょっと話題になっている建築素材としての紙の利用も学ぶ学校という設定。

偶然の人違いから、違法ドラッグを染み込ませた折り鶴を入手してしまった十蔵。
その折り鶴に使われていた紙が、教育監査機構で内偵を視野に入れていたペーパークラフト学校の教材だったことから、乗りかかった船だとその学校に潜入することに。
もともと疑惑があった、教材の減りが異常に早い = 横流し? という点と、違法ドラッグの密売の二つの件を調査することになった十蔵のもとには、例によってショータとスナがついてきている訳で。

前回はちょっと事件要素が薄かったかなあと思っていたら、今回は埋め合わせるかのように、二つの事件が同時進行していて、なかなか密度が高かったです。
でも表紙でご登場の立花先生はあんまり出番がなくって、立場も1巻で名乗っていた「古文書の修復を教える臨時講師」でした。クラクラ先生と違って、一般人ではさすがにこの辺りでネタ切れだったんでしょうか(苦笑)
まあこの巻全体のテーマが『紙』でしたから、無理に新しい技能を登場させることもなかったんでしょうけど。

でもって。
ほぼ特捜司法官候補生に間違いないやろと思われていた彼の、正体がついに確定しました。
ほほう、そうきたか! という感じで、さすがは麻城先生。一筋縄では行きませんでしたね。ふふふふふー、十蔵じゃありませんが、なんだかちょっとホッとしてしまいましたよ。彼はこれからもずっと『彼』として生きていけるんじゃないかという希望がですね、出てきたというか。十二〜七年後の「JOKERシリーズ」や「特捜司法官S−A」の時代でも、世界のどこかで熟年のベテランになった十蔵といっしょに、和気藹々と大人げない会話を繰り広げてくれているんじゃないかなあ、なんて。
あ、よく考えたら彼って、S−Aの主役だった秋津さんと一〜二歳しか違わないんですよね。この段階でドラマS−Aが始まって一年ほどなんだから、ドラマ開始時に17歳だった秋津さんが新・S−Aの時には確か35歳。なら彼はその時代には33〜4歳。良い感じの年齢じゃないですかvv 仮に解体処分の対象のままだったとしても、特捜司法官の耐用年数は35歳。新・S−Aの終了数年前にその制度も廃止されてるんだから、うん、充分間に合ってるし!
十蔵だって、40歳かな? 全然許容範囲です。むしろ童顔の彼なら、その段階でも全然二十代に見えるかもとか考えると、ついニヤついてしまいますvv

さて、そんなこのシリーズも、どうやら次回で最終巻だそうです。
あんまりダラダラ続くのも辛いので、程良い所できちんと話を終わらせてくれる麻城さんは本当にありがたいのですが……それでも、彼らともうお別れかと思うと、それはそれで寂しいです。またこの世界観のお話を、書いてくださらないかな……?

そして巻末短編で意味ありげに書かれていた、JOKERについてが気になります。最終話への伏線? すべての特捜司法官シリーズの謎が明らかに?? わ〜〜ん、気になる〜〜〜《o(><)o》
No.5806 (読書)


 2014年05月10日の読書
2014年05月10日(Sat) 
本日の初読図書:
4048741756ばんば憑き
宮部 みゆき
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-01

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安政年間に起こった、コロリの大流行。材木問屋田屋の主人重蔵は、毎年お救い小屋を建て、多くの人々を救済していた。十四になる少女おつぎもまた、昨年のコロリで家族を失い助けられた一人である。気働きの良さを認められ、田屋の使用人として雇われた彼女は、今年も建てられたお救い小屋の手伝いをしていた。重蔵の指示はいつも的確で、彼の言葉に従っている使用人達は、お救い小屋で働いていても一人としてコロリにかかることはない。ある日のこと、そんな重蔵が取り出してきたのは、おつぎにしか見えない、壷に入った坊主が描かれた不思議な掛け軸で ―― 「坊主の壷」
岡っ引きの政五郎に奇妙な相談が持ち込まれた。内職でほそぼそと紙人形を作っている老人 左次郎は、長屋の子供達と仲がいいのだが、その子供の一人があることで怯えているのだという。それは影踏み遊びをしていると、遊んでいる子供よりも、影がひとつ多いことに気付いたかららしい。主のない影は左次郎も眼にしたことがあった。なのでなんとか当たり障りのないそれらしい理屈をつけて、子供の恐怖を取り除いてやりたいのだと左次郎は言う。だが政五郎が調べるにつれて、気味の悪い因縁話ばかりが浮かび上がってきて ―― 「お文の影」
繁盛している醤油問屋近江屋では、いつも奉公人達と家族が一同にそろって朝食を取る。その日も戦場のように騒がしい食事の席であったが、不意に主の善一が顔色を変えて呟いた。「政吉兄さんが死んだ。あれが、うちに来る」と。地震いと生臭い風を引き連れてやってきた『それ』は、男達の手で蔵へと閉じこめられた。七つになる近江屋の娘お美代は、幼いからと何も見せられず話も聞けなかったが、何かただならぬ事が起きているのは感じていた。近所に住む幼なじみの太七などは、その朝へんてこなものが空を飛んできて、近江屋の蔵へ飛び込むのを見たという。それは大きな黒い蒲団のようで、たくさんの目玉が生えていたらしい。近江屋では親戚一同が集まって、蔵を囲んで寝ずの番をするなど大騒ぎしていた。と、不安に思うお美代に、近所にあるみすぼらしい八幡さまの狛犬が話しかけてくる。訛りがひどくきつく、何を言っているのかさっぱり判らなかったが、その訛りには聞き覚えがあった。それは町内の便利屋になっている、飛脚屋の居候 竹次郎のお国言葉だ。お美代が竹次郎に通訳を頼むと、どうやら狛犬は手助けしてやろうと言っており ―― 「博打眼」
手習い所を営む浪人 青山利一郎の元に、習子の親である大之字屋宗吾郎から頼み事があった。なんと自身の子供である、習子の信太郎を斬って欲しいというのだ。通りすがりの僧侶が、大之字屋を見て「この家には討債鬼が憑いている」と告げたらしい。討債鬼とは恨みを抱いて死んだ亡者がその相手の子供に生まれ変わり、貸していたものと同じだけのものを費やさせて恨みを晴らす存在である。宗吾郎は恨まれている心当たりがあるようで、いっぺんに震え上がってしまった。息子を殺さなければ、自分の命と大之字屋の身上が危ういと、完全に信じ込んでいる。利一郎はひとまず引き受けたように見せかけて、まずは怪しいその坊主の周囲を調べ始めるのだが ―― 「討債鬼」
小物商伊勢屋本家に分家から婿養子に入った佐一郎は、妻のお志津と共に箱根へ湯治に出た帰りだった。妻は何かとわがままを言うが、それも幼なじみの気安さからだと思えば、甘えん坊の可愛い女だと思える。今回の湯治は舅姑の目もなく羽を伸ばすことができて、佐一郎はもう少し長く続けたかったのだが、志津が田舎での生活を厭ったため、早々に帰ることになったのが残念であった。江戸までもう少しというところで雨に降られ足止めを食うことになった佐一郎は、むしろもう少し雨が降って欲しいとまで思っていた。そんな二人の元へ、宿の女将が相部屋を頼んでくる。相手は品の良い老女で、江戸の建具屋の御隠居だと言う。志津は嫌がったが、結局は受け入れることになり、佐一郎は老女と当たり障りのない会話を交わした。そしてふてくされた志津が酔い潰れてしまった深夜、目を覚ました佐一郎は、老女が風の鳴る音を聞きながらすすり泣いていることに気がついた。これもご縁、年寄りの昔話を聞いてはもらえないか。そう言って語り始められたのは、五十年も昔に、田舎の村で行われた奇怪な儀式と、それに翻弄された女達の物語だった ―― 「ばんば憑き」
妻を早くに亡くし、七つになる娘と二人で長屋に暮らす浪人 柳井源五郎右衛門は、何でも屋として周囲に認識されていた。傘張りから代書に用心棒など、困ったことがあれば柳井さんに頼むと良いとの評判である。とはいえ己の凡々たることは自分でも重々に承知しており、たいしたことができる訳ではなかったのだが。そんな彼に、ある日娘の加奈が問いかけてくる。「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」と。なんでも長屋に出入りしている三毛猫のタマは化け猫で、源五郎右衛門に頼みたいことがあるのだが、化け物だからといきなり斬りつけられてはたまらない。そこでまずは加奈からそのあたりを聞いて欲しいと、そう言ったのだという。いったい何を頼まれるのかと首を傾げた源五郎右衛門だったが、娘の手前、化け猫が嫌いだとは言えなかった。そして数日後の夜、加奈が眠った後に美しい女が訪ねてくる。暗がりの中でもはっきり見える姿といい、時おり細くなる瞳といい、明らかに人間ではない。お玉と名乗った彼女は、源五郎右衛門に物の怪を退治してほしいと言った。人に仇を為すようになってしまった、木槌の化け物、野槌を斬ることによって、どうか成仏させてくれと ―― 「野槌の墓」

宮部さんの江戸もの、今回はノンシリーズの短編集です。
収録作品は、どれも『不思議』が関わる怪異譚。……とか言いつつも、「お文の影」には「ぼんくら」シリーズの岡っ引き政五郎と、人間データベースの“おでこ”が登場していたりしますが。ミステリものの登場人物である政五郎達が関わってくるのは、世界観的にちょっと微妙なところではありますね。推理ものに『不思議』が絡まると、アリバイとかの根本的な前提条件が狂ってくるから、なにかと難しいですし。
まあそれはさておき。
今回収録されているお話は、幸いというか宮部さん独特の人間心理をえぐり込むほど後味の悪いものは少なかったと思います。でもよくよく考えると、救われていない部分も多いあたり、やっぱり宮部さんだなあとも言えなくもなく。
特に子供が理不尽な目に遭っている話が目に付きましたね。虐待で殺されるまで行く子が二人、理由は判らないけれど殺された子が一人、主役によって助けられはしたけれどそれでも母子ともに父親から捨てられた子供が一人。フィクションとは言っても、やっぱり読んでいて胸が痛みます……
子供が関わらない方は関わらない方で、なんというか、ううむ。
表題作「ばんば憑き」は、タイトルになるだけあって、突き抜けてゾッとさせられる感が強かったと思います。儀式の様子のおぞましさ。五十年を経てよみがえる過去。人の心が持つ身勝手さと不安定さ。この世に確かなものなど何もないのではという、足元からぐらついてくるような恐怖。そしてわがままな妻を優しく受け止めていた婿養子が、最後に見いだす、狂気と紙一重の慰め ―― それがただの慰めで終わるのか、それともいつの日にか実行されてしまう、恐ろしい計画に変わるのか。はっきりしないあたりが、いっそう空想をかき立てられてゾクゾクしてしまいます。
一方で読んでいて心温まったのは、「博打眼」でした。これも過去に犠牲になった人々を考えると充分に残酷ではあるんですが、それでもおしゃまで素直なお美代ちゃんや、訛りまくったお国言葉で会話する狛犬と竹兄あたりが雰囲気を和らげてくれました。最後にみんなが救われているのも良いことです。
「野槌の墓」も、まあまあそれなりに。自他共に認める凡人と言いながら、それでも理不尽な人生を着実に生きて、娘をまっすぐに育て、もののけにも「この人なら」と見込まれる源五郎右衛門が、個人的にとっても好みです(笑)
最後にお玉がくれた手間賃は、彼の今後を考えると良かったのかどうなのか、微妙な気もしますけどね……人は忘れるからこそ生きていけるのだから。あれじゃあ源五郎右衛門さん、一生後添いは迎えられないんじゃ(苦笑)

しかしどの話も思い返すと、ストーリーとはあまり関わりのないところで、それぞれのキャラクターがこれまで経てきた人生がしっかりと書き込まれていますね。そんなあたりが物語に深みを与えているのだろうなあとか、知ったふうな口をきいてみたり。
妖怪やひとつ多い影といった不思議な現象の部分よりも、人間のする行いの方がずっとずっと怖さを感じさせるあたりも、宮部さんらしいなあと思ったのでした。
No.5803 (読書)


 2014年05月07日の読書
2014年05月07日(Wed) 
本日の初読図書:
4865290362カーマリー地方教会特務課の事件簿 (2) (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
橘 早月 中嶋 敦子
ポニーキャニオン 2014-05-03

by G-Tools
危険すぎて万年人手不足のカーマリー地方協会特務課。主任のオブザーは、間もなく研修期間を終える訓練生アーシェイに、このまま特務課に残らないかと持ちかける。現実主義で、そこそこの出世と堅実な人生を望むアーシェイはもちろん断ろうとするのだが、他の部署に回されるよりも金だけは貯まるぞ、という言葉に心が揺らぐ。父を早くに亡くし、病弱な母親と幼い弟妹を抱えたアーシェイは、金という言葉に弱かった。そんなアーシェイと、剣の腕は立つが単純で不器用なルキアという訓練生コンビに経験を積ませるため、ジークとアッシュの二人が彼らを連れて遺跡のある洞窟へ向かうこととなった。幽霊が出たという目撃証言こそあったものの、危険はさほどないと思われたのだが、しかしルキアが誤って作動させた魔法陣により、アーシェイは一人、洞窟の深部へと飛ばされてしまう。そこには不死の魔物が潜んでおり……「苦学生アーシェイの根性節」
カーマリーの領主から、特務課へと依頼が持ち込まれた。親戚である男爵の一人娘が大切にしているぬいぐるみに、何か良からぬものが取り憑いているというのだ。夜になると少女の部屋で物が宙を飛び回り、その中央でクマのぬいぐるみが踊っているのだと。しかし少女はぬいぐるみことスミス氏を気に入って手放したがらないそうで、なんとか憑いているものだけを祓って欲しいと言う。ブラウンが突然抜けた混乱によって、ただでさえ人手不足の特務課は、現在目が回るほど忙しくなっている。大嫌いな書類仕事に忙殺され機嫌の悪いオブザーは、アッシュとジークにクマの始末を押し付けた。怪しい気配は特にないし、一晩見張って何事も起きなければ突っ返せばいいと。かくしてクソ暑い夏の夜に、念のため武装した状態でぬいぐるみを囲む男二人という図式ができ上がった。ところが夜食の差し入れにやってきたシスター・リリィによって、そのぬいぐるみが大変高価なものだと判明する。そして案の定、異変は起きて……「アッシュと真夏の夜の夢」
近く行われる教会本部の枢密院長選挙では、波乱が予想されていた。これまで枢密院長は正教会派が独占してきたのだが、今回ばかりはそれが怪しいらしい。正教会派の立候補者チャスチル枢機卿は、出世欲が強く大きな勢力も持っているが、同時に各方面の敵もまた多く、劣勢の立場にあるという。彼は正教会派の中でも一部の強行派が掲げる教派統一運動に関わっている節があるのだが、その証拠は見つかっていない。しかしその教派統一運動こそが、先日のイザベラ館の惨劇の原因なのではないかと、オブザーや盗賊上がりの情報収集担当ライツ神父は考えていた。カーマリーは国内でも有数の大都市だが、教会権力が強い土地柄で、中でも知識派がその多くを占めている。教派統一を求める者達が、他派の弱体化を図って狙いを定めるには、うってつけの場所なのだった。死んでいった仲間達の復讐に燃えるオブザーらは、あらゆる手段を駆使し、水面下で懸命に情報を集めてゆく。が、敵はさらなる強行手段を取った。それは対立候補の暗殺。その犯人に同じ聖騎士が含まれていたと知ったジークは衝撃を受けた。だが裏切り者は、思いもよらぬ場所にも潜んでいて……「聖騎士と剣と盾」

今回の表紙はアーシェイとルキア。相変わらず不憫な主役だ、ジークフリート(苦笑)
前巻に引き続きライトなお話2本のあとに、恐ろしいほどシリアスで〆られています。
最初の二話も、コメディタッチなやりとりの中に、情報を集めて話し合うライツとオブザーの深刻な場面が散りばめられてはいるのですが。しかし三話目の重さときたら、もう(−ー;)
1巻目のブラウンさんショックとはまた別の意味で、まさかあの人やあの人が……という衝撃が半端ないです。
そして引き続き、オブザーが怖いです。本当に聖職者かお前と思いつつ、でもこの人は紛れもなく心の底から『聖職者』なんだと納得させられる部分でもあり。

「聖と正は違う。信仰のため、正義のためと信じて疑わない者こそ、もっとも残虐な殺戮者になる」

オブザーの言葉が重いです。そして彼はそれを自覚していてなお、自ら境界線上に立つ。冷たい目で狂信者と紙一重とも思える『己の信仰』を語り、前に立ち塞がるものを容赦なく排除する。
そんな彼が「主任がそれを実行しようとしたら、俺は止めるつもりでした」と言ったジークに対し、「当たり前だ」と答えてくれて、心からほっとしました。
本気で罪なき人をも手にかけることを考えながら、同時に「そうして(止めて)くれなくてどうする。俺を罪人にする気か」とも口にする、その矛盾。しかしそれだけの信頼を、部下に対して持っているという点に、オブザーの有りようへの救いがあると思います。

さて、次回三巻は7月に発売予定。第一部完結! ……ということは、第二部もあるってことですよね(ドキドキ)
あと、第一部とほとんど変わらない量があった外伝群は、果たして書籍化されるのかしら……?
No.5795 (読書)


 2014年05月04日の読書
2014年05月04日(Sun) 
本日の初読図書:
4403541933仮面教師SJ (5) (ウィングス文庫)
麻城 ゆう 道原 かつみ
新書館 2013-08-09

by G-Tools
和時計技師 → バーテンダー → ショコラティエ → 刺繍職人と、一流派遣教師の仮面をかぶってきたクラクラ先生。今回は陶工教室です。
……表紙イラスト、まったく中身に関係ないやん(苦笑)
これはあれでしょうか、キツネとタヌキの化かし合い的なものを狙っているのかな?
前回でついに正体がほぼ確定した特捜司法官候補生。しかし何故か姿を消すでもなく、これまでと同じように十蔵の前に現れてはいつも通りに過ごしております。十蔵もほぼ確信を持ちながらも、直接問いただす訳にもいかず、気付かないふりを続けながら、内心であれこれと思いを巡らしています。
……そして意外なことに、相方もまた、うすうすはそれと察しているのでは? という描写のあったあたりが、今回の表紙の意味するところなのかもしれませんね。

三人が三人とも心のうちで秘密を判っていながら、何も言わずに変わらぬ生活を続けている。
―― 否、あるいは特捜司法官候補生ただ一人だけは、気付かれていることに気付いていないのかもしれない。
未だ研修途中の未熟な彼は、犯罪者の心理こそよく知っているが、相手への好意ゆえにあえて黙して語らない、そんな心の機微にはまだ疎いのではないか。人間ではなく、合成人間であるがために ―― と。
そんな感じでぐるぐるしていた十蔵くん。
おかげで今回は、肝心の事件に入るまでに時間がかかったような気がしました。
死体が登場するのは全体の半分近くが過ぎてから。そして十蔵がどうしてその学校に潜入する羽目になったのかが判明してから、本編が終了するまでは40Pぐらいしかありません。ちなみに264Pある全体のうち50Pぐらいは番外編なので、本編は200Pぐらいしかないです。おかげで「まさかこの人が犯人ってのは引っ掛けでしょう?」という人がまんま犯人でした(苦笑)
まあ、犯行動機とかはひと捻りあったし、孤島の全寮制学校という閉鎖空間における情報伝達の妙とか、なかなか楽しめる部分はありましたけどね。 学園七不思議の成立における、口伝の変異とか噂が誤報に変わってゆく過程の心理とかは、「かくれおに」を書いた時に調べたっけなあ(懐)

なお今回、一番「おお」と思ったのは、やはり「曜変天目茶碗(稲葉天目)」についての薀蓄でした。
文章を読んで、綺麗そうだなあとはなんとなくイメージできたのですが、ネットで画像検索したらまあ! 目を奪われるとはこのことか。ネットの粗い写真でここまで美しいんだから、実物を色んな角度から見たら、キラキラしてもっと素敵なんでしょうねえ(うっとり)

■世界の謎と不思議: 国宝 曜変天目 茶碗の中の宇宙
 http://pub.ne.jp/sakura2011/?entry_id=3870613

もともと自然釉で、虹色がかった銀になっている風合いが大好きなのです。それが黒い地肌に舞い散って、ほんのり青味を帯びて、それでいて茶碗の外側は黒無地。もしもこれでお茶を点てたなら、地味な黒い茶碗を傾けて呑んでいくごとに、目の前に宇宙が現れてくるのではないでしょうかvv ※国宝でお茶は飲めません
そりゃあ織田信長も気に入るだろうよと、なんだか深く納得しました。

……そのうち日月堂で晴明くんが天目茶碗について語り出したりしたら、ああ、と暖かい目で見守ってやって下さい(笑)

あと、今回は「自分は模倣が出来るだけの偽物にすぎない」と思い込んでいる十蔵くんに、ゲストキャラのイエティ先生が、意図せずして救いとなる言葉を放ってくれたように思います。
見たものを模倣しているだけとはいえ、本当にそれだけであれば、手の大きさなどが違う十蔵が、まったく同じものを作成できるはずがない。十蔵は目で見たものをちゃんと自分なりに吸収して、自分の手や体格に合わせた絶妙な動きを行っている、と。
十蔵はそれでもまだ納得できていないようでしたが、読者としてはいろいろ腑に落ちた気がします。だってねえ、やっぱり映像をまったくそのまま模倣しただけじゃあ、周囲の環境を参考映像と完全に同じにできない以上、一流の職人の仮面を完璧に被ることは不可能だと思いますもん。
そこには確かに、十蔵自身の持つ「プラスアルファ」があるのだ、と。
そう思いたいのが読者の心情なのでした。

あと巻末恒例の後日談的番外編、今回は複数人が集まってのコンゲームっぽくて、これまた面白かったです。
お前は詐欺師にしかなれない ―― という父親の言葉に縛られていた十蔵くんの世界が、良い意味で広がっていくようだと思いました。
No.5789 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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