よしなしことを、日々徒然に……



 2014年02月10日の読書
2014年02月10日(Mon) 
本日の初読図書:
「不死王の息子(小説家になろう)」〜クリスマス中止のお知らせ
 http://ncode.syosetu.com/n2023bc/

小学六年生の日高由紀子は、学級崩壊気味のクラスで学級委員をやっていた。面倒見のいい性分がたたって、担任から押し付けられたのである。そんなクラスにある日転校生がやってきた。まだ子供ながら、異国の血を感じさせる白皙の美少年だ。しかし美しい容貌と裏腹なその名前は『山田不死男』。かの不死王ノーライフキングの息子だという。
現代社会において、差別は駄目だと初等教育から教えられている。たとえそれが化け物であってもだ。世の中にはけっこう普通に人狼や吸血鬼といった人外が暮らしていて、ちゃんと人権も保証されている。とは言え人が己と異なる存在を、そうそうたやすく受け入れられる訳でもなく、根深い所に差別や偏見は残っているのだが。
ともあれ不死王といえば、紀元前から存在し続ける不老不死の存在である。たとえどんな傷を負ってもすぐに再生し、老いることもなく二千年以上生き続けてきた。かつては神と呼ばれ生贄を捧げられたりもしていたらしいが、今では菜食主義になっているそうだ。
そんな存在の息子である山田少年は、やはり不死身の肉体を持っている。転校してきたその日に校門の前でトレーラーに轢かれた彼は、見ている者に一生のトラウマになるだろうスプラッタを展開したのち、何事もなかったかのように復活した。その後もグラウンドを歩けば転んで突き出た石で頭を割り、体育の授業でサッカーをやれば何故かボールの代わりに生首がゴールする。血が飛び肉片が散る惨状に、周囲の人間は阿鼻叫喚であるが、当の山田少年はのほほんとお気楽に日々を過ごしている。
由紀子は山田少年が肉片状態から血まみれで復活してきた際、うっかり持っていた体操着を投げつけてしまった。身体は再生するが服は戻らない。つまり大変目のやり場に困る状態になっていたため、思わず反射的にやってしまったのだ。よもやそれが己の未来を一変させるきっかけになるとは、夢にも思うことなく。
翌日、駄目にした体操着を弁償するというのを断りきれず、由紀子は山田少年の自宅へと足を運ぶこととなった。立派な洋館に住んでいたのは、山田少年によく似た美貌とお花畑の脳味噌を持つ、天然人外な不死王こと山田父と、同じく山田母。彼らはニコニコと笑顔で由紀子を迎え、息子が友人を連れてきたと大喜びで彼女を夕食に誘った。当然断ろうとした由紀子だったが、献立が大好物のレバ刺しだったことで、ついご相伴に預かってしまう。
レバ刺しは美味しかった。お世辞でなく、今まで食べた肉料理の中で一番美味しいと思った。お代わりまでして食べてしまった由紀子に罪はない。
まさかそのレバーが、不死王その人の肝臓だと、誰が思うだろう。お客さんはもてなさなきゃの一念で、山田親子は最高の食材を振る舞ったらしい。
普段は止め役にまわる山田少年の兄姉達が、たまたま席を外していたのが仇となった。
不死王の血肉を受けたものは、その血族となる。
そう、由紀子もまた不死身の一族の一員となってしまったのである。
そんなこんなで否応なく死亡フラグを立てまくる山田少年と、文字通り一蓮托生になってしまった由紀子だったが……お気楽脳味噌花畑な山田少年とその両親にも、その過去には深刻な事情が絡んでいるようで……

商業出版された「薬屋のひとりごと」を書かれた、日向夏さんの現代ファンタジー。本編完結済で、時おり番外編が投稿されているようです。
えーと……ジャンル的には、ドタバタスプラッタコメディ。恋愛とシリアス成分もありというところでしょうか。
馬鹿馬鹿しい理由で不死者になってしまった委員長タイプ(でもけっこうちゃっかり者)の女の子が、ちょっと目を離すと血まみれ臓物だらけになる問題児を面倒見ているうちに、いろいろ巻き込まれたりほだされたりといった感じです。小学生編・中学生(前後)編・高校生編の四部構成。
由紀子ちゃんが恋愛方面に対して相当に鈍いというか朴念仁なので、天然ぼんやりのくせに好きな子には一直線な山田少年との噛み合ってないやりとりに、周囲の方がやきもきと。

そして文庫五冊分ぐらいある本編を数日かけ読み終えて思った感想は、『結局、山田青年(長男)がすべての元凶じゃん(−ー;)』でした(苦笑)
この人が生き神様レベルの博愛主義を展開したあげく、自分が壊れていることに気が付かなかったおかげで茨木は950年苦しんだんですよね。いや彼女のやらかしたことは許されないことだと思いますけど、でも山田青年がもっとしっかりしていれば、お互いにお互いを探しつつも『出会えない』という状況は避けられたはずでしょう。っていうか、それだけ茨木が特別だったくせに、それでもあちこちに子供いるって、どんだけ博愛主義なんだ、山田青年……

まあ、そんないろんな意味で駄目駄目だった彼が、ちゃんと茨木と決着をつけられたのは、山田少年と由紀子ちゃんの存在あってこそなんでしょうが。
……それにしても、神様レベルの博愛主義から一点集中型のヤンデレにジョブチェンジって、どっちにしても迷惑に変わりないあたり(笑)

あ、文章は非常に読みやすかったです。
たまに『てにをは』がおかしかったりとかしますが、それはまあさておき。読んでいて「えっと、これだれだっけ?」ということがほとんどないのはありがたいです。
なにしろ山田家の家族の呼称なんて、基本的に「山田少年」「山田青年」「山田父」「山田母」「山田姉」「山田兄」「恭太郎」ですしね。
正直なところ地の文で毎回アヒム(山田兄)とかオリガ(山田姉)とか書かれていたら、多分途中でどっちがどっちかわからなくなったと思います。そして本名で書かれる場面になると、とたんに文章の雰囲気がシリアスに変わり、その落差が読む方に飽きを感じさせない、と。
天然一直線な山田夫妻+少年の取り合わせと、不死王・撫子・富士雄のギャップは半端ないです。
ラストがどうなることかとハラハラさせられもしましたけれど、不死王の選んだ道は意外でしたねえ。彼もまた山田青年が山田少年に影響を受けたように、山田父によって少なからぬ変化を遂げたのでしょうか。まあ今後はもう少し『出て』来やすくなるでしょうから、息子たちの苦労は少しは低減される……かも?

そして個人的には山田兄(アヒム)がけっこう好きだったり。
誠実で有能でセンスが良くて金離れもばっちり。スーツが似合うエリートサラリーマンでメガネで苦労性で、そしてちょっと残念な美形(笑)
やべえ、ドストライクだvv
ああでもオリーブオイルは飲み物じゃないよ……料理として使われるのは確かに嫌いじゃないけれど、でも日本人はうっかり摂り過ぎるとお腹壊すらしいし、やっぱり彼の嗜好にはついていけない……
No.5579 (読書)


 2014年02月09日の読書
2014年02月09日(Sun) 
本日の初読図書:
4253154026霊験お初捕物控 其ノ2 (プリンセスコミックスデラックス)
宮部 みゆき 坂口 よしを
秋田書店 2007-05-16

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霊験お初のマンガ版、2巻目からは「震える岩」の開始です。
この巻では、お初が庭石の前で浪人の姿を幻視して、さらに死霊が取り憑いた二人目の人間 助五郎が、下っ引きの文吉さんを釜に放り込んで逃げ出したあたりまで収録されています。
割と原作に忠実だった1巻に比べると、相当に改変がありました。
なにしろ直兄さんがちゃんと存在しているので、原作で右京之介さんが担当していた見せ場のいくつかが、しっかり持って行かれてしまっているのですよ(苦笑)<吉次からお初を助けるシーンとか
キャラデザイン的には「あんまり美形に描こうとしすぎててちょっと引く」レベルだった1話目からすると、だいぶすっきりした二枚目程度にはなっているんですが。でも(たぶん身分を隠すためなんだろうけど)髷をほどいて髪を下ろしてる=典型的な長髪美形キャラになっている場面とかあるし、完全に女子受け狙いの美形枠vv
っていうか御前さまとの会話から察するに、これ完全にお初との恋愛フラグが立ってますよね。まだこのマンガでは出てきていませんが、原作通りにお初が拾い子だったとしたら、血の繋がりがない=直兄の秘めたる恋心が! って感じです。むしろそうじゃないと、ここまでのシスコンぶりはさすがにちょっと……
そしてストーリーにも大幅な違いがありました。
原作では、連続子供殺しと死人憑きという二つのラインに赤穂浪士が絡んできて、それだけで充分に話が複雑かつややこしかったのに、このマンガ版ではさらにもうひとつの復讐劇が平行して存在しています。まだ全三冊のうちの1冊目で細かいところまでは判らないのですが、最初に子供の死体を投げ込まれた油屋さんが、十五年前に商売敵を追い落として破滅させており、その生き残りの子供が成長した美貌の女芸人『手妻使いの京』というキャラが、なにやら意味ありげで怪しげな行動をとっているのです。
陥れられた親の敵を討つ芸人といえば、私は真っ先に『雪之丞変化』を思い出します。あの話はあの話で大好きなのですけれど、このお話の京さんは父親の呪縛に苦しんでいるようで、なかなか胸が痛みます。
しかし……原作では何故あの油屋に子供の死体が投げ込まれたのかという理由付けがいささか弱いので、こう言ったオリジナル展開が入ったのかもしれませんが……これ以上話を広げられると、私ついていけるかしら(汗)
逆に今後ざっくり削られそうなのは、百年前に生き残った『りえ』さんの、曾孫のお内儀さんまわり。だってお初が『震える岩』を見物に行った段階で、気がつくともう膝の上に鎖帷子の断片があったのですもん。これは曾孫のお内儀さんが代々伝えて持っていたはずのものなのに……ああでもそこを削るとなると、お内儀さん夫婦を守るはずの最後の大立ち回りはどうなるんだろう??

ちょっとほっとしたのは、二人目の子供 長坊が殺されるのを阻止できたことでしょうか。ストーリー展開的にはともかくとして、やっぱり罪のない幼子が被害者というのは、読んでいて辛いので。

あ、直兄のことばかり書いてますが、右京之介さんもそれなりに活躍してますよ?
絵になったことで、立ち枯れ胡瓜の眼鏡侍というキャラが文章で読むよりも具体的になっていて面白いですし。暴れる吉次を殴る場面は直兄に持ってかれましたが、代わりに味噌汁をぶっかけてとどめを刺す役目が割り振られました。
そして特に大きいのは、父親の呪縛に囚われているという共通の点で、京さんとの絡みがあります。確かに京さんの凝り固まった心へ言葉を届けられるのは、美形繋がりの直兄よりも、同じような苦しみを知る右京之介さんの方が相応しいと思います。

さて、今後の展開はどうなることやら。ここまでストーリーが異なると、まったく先が読めなくって、不安やら楽しみやら。さて図書館で借りてきてる本と、どっちを先に手に取ろうかしら……
No.5570 (読書)


 2014年02月08日の読書
2014年02月08日(Sat) 
本日の初読図書:
4062635909震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社 1997-09-12

by G-Tools
時は享和二年の夏。岡っ引き六蔵の妹で、一膳飯屋「姉妹屋」の看板娘である十六才の少女お初は、南町奉行所の奉行 根岸九郎左衛門鎮衛に呼び出された。気さくなこの御前は世の中の不思議な話を聞き集めては、「耳袋」という書物に書き留めることを楽しみとしている。そしてお初は幼い頃から何故か、人の目には見えぬものを見、聞こえぬ声を聞く不思議な力を持っていたため、御前に気に入られ珍談奇談を集める手伝いをしているのであった。その日もいつものように、深川で起きたという死人憑きの話をしたのだが、その後、御前はお初に一人の人物を引き合わせた。古沢右京之介という与力見習い。お初と同年代の細い身体に腰の大小が重そうに見える、なんとも頼りなげな若侍である。御前はお初に、しばらく彼を預かって町方の探索を共にやって欲しいと告げた。詳しい説明はなかったが、どうも右京之介は奉行所内でも軽んじられているらしく、お初や六蔵と行動することで、もう少し見聞を広めることを期待されているようだった。困惑しつつも右京之介を連れ帰る事になったお初は、その道中でまたも余人の目には映らぬものを幻視する。それは油問屋丸屋の油樽の中に、幼い子供の死骸が沈んでいる光景であった。話を聞いた兄の六蔵はさっそく子供を殺した下手人を捜しにかかる。やがて浮かび上がってきたのは、深川で起きた死人憑きの噂の張本人、一度死んで生き返ったという吉次という男だった。しかし死人憑きについて聞き集めていたお初と右京之介の前で、吉次は突如狂暴化して暴れ出し、取り押さえられたときには、死後何日も経っていると思われる死体になっていた。ひどい目にあったお初に気晴らしをさせようと考えたのか、御前は彼女を着飾らせとある武家屋敷へと連れてゆく。その屋敷の庭は、百年前かの赤穂浪士の主君であった浅野内匠頭が切腹した場であり、その目印として置かれた庭石が、最近になって夜ごと鳴動するという怪異が起きているというのだった。事実、お初と御前の目の前で、確かに岩はぎしぎしと音を立てて震える。そしてお初は岩の傍らに立つ、侍の姿を幻視した。その侍は「りえどの……」と呟いて消える。その名は吉次が死体に戻る前に呼んだものと同じだった。やがて再び子供が殺される事件が起こる。謎を追うお初達は、次第に一連の事件が百年前に起きた赤穂浪士の討ち入りと、深く関わっていることを確信するようになって……

単行本「かまいたち」に2作ほど収録されていた霊験お初の、正式シリーズ第一作です。っていうか、現在のところ二作目までしか出てないようですが。
設定は少々変えられていまして、まず最大の改変は「直兄さんがいない」に尽きるでしょう。
うん……あの人がいると、便利すぎてあっと言う間に話が終わっちゃうし、せっかくの良い男枠は、どうせなら将来恋愛方向にも発展させられそうな相手の方が良いと理解はできるんですが。そんな訳で新しい相方として、算学好きの見習い与力にして眼鏡の優男、古沢右京之介さんのご登場です。
腕っ節はからっきし。ひょろりと頼りなくって穏和かつ気弱な右京之介さんですが、さすがの記憶力と分析力でお初を見事にサポートしてくれます。超常的な能力で手掛かりを得るのがお初なら、それを元に論理を展開させるのが右京之介さん。どんな些細な言葉尻も逃しません。そして荒事関係は、もっぱら六蔵兄さんと下っ引き達が担当。
あとお初の家庭環境にも大きな変化があります。なんとお初ちゃん、捨て子で六蔵兄さんと血の繋がりがないのですよ。だから年もずいぶん離れている、と。 ……あれ、じゃあ直兄さんも恋愛枠として残しとけたんじゃ……
六蔵兄さんが昔はかなりやんちゃをやらかしていて、パイロット版のように頭の固い四角四面ではないところも地味に変化が大きいですね。お初の異能が大人になってからではなく、子供の頃からちょいちょい現れているため、いきなり変なことを言い出しても受け入れるのが早いですし。
お奉行様とお初達の馴れ初めも異なっていますね。お初が何度か六蔵の捕り物に口を挟んだことで、不審に思ったお奉行様がお初を直々に召しだした結果、すっかり彼女を気に入って、自分が好きな怪奇話を集めるのを手伝わせているといういきさつになっています。
うーん……直兄ファンとしてはちょっと残念、かも(苦笑)

でもって、今回のメインテーマは「忠臣蔵」。
……実は私、忠臣蔵をちゃんと見たことがありません。小説でもマンガでもドラマでも。ドキュメンタリー番組すらほとんど見ていないので、正直ちゃんとしたお話をほとんど知らなかったりします。
それというのも、「忠臣蔵」というものの存在を知る前の子供の頃から、母に「あれは忠義の話なんかじゃない。どこにも再仕官できなかった要領の悪い能なしの残り物家臣が、食い詰めたあげくまわりからそうせざるをえないように追い込まれて、格好を整えるためにやった茶番劇。吉良こそ良い迷惑だ」と言い聞かされて育ちまして。おかげで今さら純粋な目で見て、素直に喝采することなんてできなくなっちゃったんですよ(しょぼん)
そう言ううがった目で見る裏の解釈は、せめてスタンダードな認識を知ってから聞かせて欲しかったッス……>母

まあそんな印象を根底に持っている私からすると、今回のこのお話は、「赤穂浪士討ち入りの裏側を斬新な解釈で!」という衝撃を感じられなかったのがいささか残念でした。
そして幕府や侍の意地といった理不尽によって泥を被る弱者がいるという流れは、同じく宮部さんの作品「幻色江戸ごよみ」の「紅の玉」を思い出させられましたね……己に何の咎もない死人(子供含む)がたくさん出て、世間の歪みに翻弄される人々も多数登場する今回のお話は、読後感が苦く。
救いは右京之介さんの葛藤に解決がついて、将来が明るく開けそうな点ですかね。次の巻で彼がどのように活躍してくれるかに期待したいです。
No.5565 (読書)


 2014年02月06日の読書
2014年02月06日(Thr) 
本日の初読図書:
4163900004陰陽師 蒼猴ノ巻
夢枕 獏
文藝春秋 2014-01-14

by G-Tools
今回は270ページほどに10話が収録されているという、短編と言うよりはSS集という感じでした。ただでさえこのシリーズは活字密度が低くって、ページの下半分は白いような文章なので、ますます今昔物語集とかを彷彿とさせられる感じ。
いやでもしっかり面白かったですよ? あまりひねりはなく、短い文章でストレートに語る感じが、いかにも古典っぽくて。
さらに今回収録のお話は、いつものお約束をちょっと外しているものもあって、なんだかファンへ送るサービストラックみたいに思いました。
たとえばそれは、「これで良かったのか」と沈む晴明さんを博雅さんが力づける場面だとか。「ゆくか」といつものように問われて、「いや、ゆ、ゆけぬ」と苦渋の返答をする博雅さんだとか。博雅さんも晴明さんも登場しない、道満主役の番外編ぽいお話だとか、あるいは博雅さんだけが登場して、無自覚に楽聖ぶりを発揮するお話だとか。
タイトルの通り「猴(さる)」が関わる話も多かったですね。虫愛づる姫君 露子姫が登場する「からくり道士」などは、猿を含めたさまざまなからくりや、色とりどりに飛び交う蝶々が見栄えのするお話でした。
そもそもこのシリーズは、映像的な美しさが素晴らしいと思います。
あれだけの短い文章、限られた言葉で、なんて美しい光景を描き出すのかと、いつもうっとりとさせられてしまいます。
降り注ぐ月光がもたらす、蒼く透明な夜の闇。空気さえ色づかせるような、かぐわしい芳香。そして神々をも魅了する、博雅の笛の音。
今回は各話の筋立てがシンプルだけに、いっそうそれらが際立っているように感じられました。
No.5560 (読書)


 2014年02月05日の読書
2014年02月05日(Wed) 
本日の初読図書:
40221412711/4×1/2(R) 6 (Nemuki+コミックス)
篠原烏童
朝日新聞販売部 2013-08-07

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動物の霊しか呼べないうえ、自分では見ることができない(人には見せられる)、霊力1/4な動物専門霊媒師クォートと、前世が犬だったゆえの忠誠心と猫の霊能力で彼を支えてくれる黒猫のハーフちゃんが織りなす、ハートフル霊能コメディ。
クォートの友人で毒舌霊媒師のラクシャスが、ある日目覚めると何故か犬の身体になっていた……「バディ」
漢方のスープを食べたプロデューサーのライミーが、なんだか様子がおかしくって……「ライミー○○する」
ハーフがいなくなっちゃった!? クォートはもちろん大慌てするが……「 Catchi me please 」
周囲の状況や人の感情を増幅してしまう弁護士のシンバさん。彼といっしょにいたクォートは、道端で大怪我をした犬を拾うが、その犬は病院から消えてしまい……「聖痕」
交通事故の現場を見に行った、霊媒師とTVスタッフ一行。その側で作業していたオブジェ作家の頭上には、何故かクォートにしか見えない、石のブロックが浮いていた。事故の犠牲者はその塊に引っかかっているようで……「囚われの君」
仕事で日本へ出張した動物タレントスカウトマンのジョイスさん。そこで出会ったのは、クォートとハーフのツンデレ版??……「ジョイスさんのお土産話」

やあ、もう今回もほんっとに可愛かった!!
ラクシャスがハーフちゃんを受け入れるようになったりとか、いつも動じなくって、前向き元気にバイタリティのあるシンバさんだって、過去にはいろいろあったのさ……という「聖痕」前後編ももちろんファンとしては萌えどころなんですが。
しかしこの巻で一番の見所は、やっぱりシンバさんに役目を取られちゃって、すねちゃうハーフちゃんでしょうvv
拗ねる気持ちまで増幅されちゃって、一度は家出しちゃうものの、クォートに何かあったと感じたらすぐに正気に戻るハーフちゃん。そしてハーフのためなら微塵も迷わず階段に身を投げ出すクォート。もう、このラブラブコンビめ《o(>▽<)o》
なによりも拗ねて「ぶーっ」ってなってるハーフちゃんの顔が、ラブリー過ぎる(*´Д`)

R以前の、パイロット版とも言える2冊も持っている私としては、「ライミー○○する」で登場した中華料理店とその主人に、思わず『彼女』の登場か?? とも思ったのですが、そんなことはなく。
当分クォートに春は来そうにないですけれど、このRでは良い男いっぱいなので、このままサザエさん状態で続いていくのも良いのではないかと(クォートには気の毒かもしれませんが/苦笑)。
No.5557 (読書)


 2014年02月04日の読書
2014年02月04日(Tue) 
本日の初読図書:
4048913778路地裏のあやかしたち―綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)
行田 尚希
アスキーメディアワークス 2013-02-23

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綾櫛(あやくし)横町の奥には大妖怪が住んでいて、幽霊や妖怪に関わる悩み事を解決してくれる。そんな噂を耳にした高校生 高幡洸之介は、駄目で元々と思いつつ丑三つ時に細い路地へと足を踏み入れた。
そこで目にしたのは、ひとりでに祭囃子を演奏する楽器と、言葉をしゃべり酒を酌み交わして宴会する動物達の姿という、摩訶不思議な光景で。そんな路地の奥にあった建物には、加納表具店という看板が掛かっていた。
表具店とは、掛け軸や屏風の表装を仕立てる店のことだ。そこの主だと現れたのは、美しい着物姿の女性。環(たまき)と名乗った。
なんでも表具師の仕事には表と裏の二つがあるのだという。表は普通の表装だが、裏の仕事はいっぷう変わっている。様々な思念を宿しすぎた絵は、世に言う心霊現象のようなものを起こすことがあるのだが、その思念を表具を使って封じ込める。あるいは正しい道筋に戻すのだと彼女は告げた。そして環は伝説とも呼ばれる名表具師として、業界では名を馳せているらしい。
洸之介の悩み事とは、まさしく絵に関わることだった。彼は三ヶ月ほど前に日本画家だった父親を病で亡くした。その父が残した数点の絵が、夜になると動き出すのである。真っ暗な部屋で動き回る絵は気味悪く、ここしばらくというもの、残された母子は満足に眠ることもできずにいたのだった。
環から絵に宿る念の話を聞いた洸之介は、父親はそんなにも生に執着し、無念を残して死んでいったのかと暗澹たる思いを感じた。しかし環は鮮やかな手腕で父の残してくれた、優しくも不器用なその真意を明らかにしてくれる。
そうして彼女はこう提案した。
自分に弟子入りし、その手で父親の残した絵の表具を仕立ててみないかと。
そうして洸之介は、加納表具店へと出入りすることになった。
ところがその店に集まる存在は、天狗の王子にイケメンの化け狸、ギャル系女子高生の猫又や雪女といった、人間世界に馴染みすぎるほどに馴染んだ人ならぬモノたちばかり。
洸之介はそんな彼らと共に、様々な絵にまつわる様々な物語と関わりを持ってゆく ――

「人間の話」「天狗の話」「狸の話」「猫又の話」「狐の話」の五話に別れた短編集の形を取りつつ、全体を通してひとつのお話になっています。
基本的には、何らかの思いが宿ったせいで不可思議な現象を起こす絵が存在し、それを掛け軸や屏風という形に表具したり、あるいは壊れた部分を直すことで、その思いを昇華させてやるというのが、大まかな流れです。あまりおどろおどろしい雰囲気はなく、むしろほのぼのとした読後感の温かい感じのストーリー。
それぞれのお話には、それぞれのキャラ達の過去や思い入れを絡めてあったりもして二度美味しいです。
最初は主役の洸之介の物語で始まり、最終話はキーキャラとなる環さんで締める。中の三話は脇キャラ達がメインとなりますが、彼らもみな個性的で、読んでいて楽しいったら。
個人的には「結婚詐欺もできない駄目狸」こと、残念なイケメン樹(いつき)さんが大好きです。人を騙すのが得意な化け狸たちは、現代の世ではもっぱら詐欺師として生計を立てている。特にどんな美形に化けるのもお手の物なので、結婚詐欺は基本中の基本。できて当たり前というその設定がまず面白い。しかし樹は甘いマスクのハンサムなのに、人が良すぎてなかなか相手を騙しきれない。この女性にだって生活がある、お金だって無限ではないと思うと、どうにも「借金があって」とか「事業を興したいけれど資金が足りなくて……」といった決定的な言葉を口にできないのですよ。そうこうしているうちに、女性達の方から「あなたとつき合えて楽しかったわ。良い思い出をありがとう」って振られてしまうというvv
でも母性本能をくすぐるせいか、「これで美味しいものでも食べなさい」みたいにお小遣いを渡される上、最後は「夢のような時を過ごさせてくれたお礼よ」っていろいろもらっちゃうらしく、ある意味ではこの上なく良心的なジゴロとして大成功しているのではないかと(笑)
あとはカリスマ美容師として名を売っている、河童のジョージさんもイカスとか思う私は、やっぱり面食いなのか……

ともあれ今回は、一冊で綺麗にまとまっているけれど、全体的に各キャラクター達の背景紹介という感じでさらりと終わっていたのが少々物足りなかったかな。語り手が男子高校生ということで、文章がいかにも「ライト」だったのも★ひとつ減。
洸之介の柔軟さというか、人外のモノを受け入れる器の大きさとかもまだまだ片鱗しか見えていないので、これは続編を楽しみにしたいところです。
どうやら環さん達は、洸之介が年を取ってもちゃんと縁を切らずに付き合いを続けていってくれるようなので、そのあたりは安心して読めるところかと。
No.5556 (読書)


 2014年02月03日の読書
2014年02月03日(Mon) 
本日の初読図書:
「え、変?普通だよ!!(ムーンライトノベルズ)」〜メテオ
 http://novel18.syosetu.com/n8070bu/

二十二歳の時、車に轢かれそうな犬を助けて死んでしまった青年は、異世界で魔貴族キオ・ナイン・アルフォードとして生まれ変わった。
この世界の魔族とは、魔法の扱いがもっとも得意な種族である、生れてすぐ生きるために必要な知識を親から転写され、1ヶ月で十五歳程に、2ヶ月で二十〜二十五歳程に成長するという反則ぶりだ。
ところが日本人からの転生者であるキオには非常に困ったことがあった。それは食事だ。魔族にとっての食料とは、魔力そのものにほかならない。そしてその摂取方法とは、『肉体的接触』による他者からの譲渡なのだ。生まれてすぐは両親からのキスで分けてもらえるが、一ヶ月もすればガチでエッチをしなければならない。おまけに魔族には男性しか存在しないのだ。
前世でも女性経験のなかったキオにとって、生まれて一ヶ月で男性と……というのは倫理的なハードルが高すぎた。
幸いにも魔力を豊富に含むルビの実という木の実が存在したため、かろうじて餓死を免れていたキオだったが、その実はかなり高価で、下級貴族であるアルフォード家で購入し続けるのは厳しかった。そこへ持って来て何故か急に値段が高騰し、ついに家族から通常の方法で魔力を摂取するか、家を出るかのどちらかを選べと言われてしまう。
魔力が強ければ美しい、美しければ強い、強ければ出世できる。それが普通のこの世界で、積極的に魔力を得ようともせず、結果的に見た目もそこそこで家の出世にも役立とうとはしないうえ、エンゲル係数ばかりかさむキオにかまけていれば、アルフォート家自体が倒れてしまうだろう。だから家族の判断は間違っていない。そう思ったキオは、素直に家を出ることにした。
幸いにも家から持ちだした衣服(突出した美形の兄のお下がり)が高く売れたおかげで、当座の住処と着るものはなんとかなった。後は食べ物だが……すったもんだのあげくに、なんとか自分の庭でルビの木を育てることに成功し、生き抜く目処は立った。
しかし一人暮らしは寂しい……と思っていたところへ、ある日門の前に怪我をした子犬が落ちているのを見つけた。魔法で傷を直してやると、子犬は四〜五歳ぐらいの獣耳を生やした可愛い男の子に変身する。
「おねぇがい。にいちゃを助けて(≧Д≦)」
前世の頃から動物大好き、モフモフ最高! だったキオは、奴隷としてさらわれたという獣人たちを救うべく、魔貴族の屋敷へと突入して……

えーと……R18指定でBL注意のほのぼのものです。
魔族の設定とかはあれですが、直接的描写はほとんど出てきません。可愛いモノ大好きの主役が、美形の獣人兄弟を引き取って、ふわふわと楽しく暮らしております。
まあ、55話ぐらいから、少しずつ恋愛模様(男同士)が混じってきてるので、要注意ではありますが。
キオが自覚なしにいろいろやらかしては、いつの間にか超絶美形の規格外魔族になっているのは、転生チートの御約束★

あとこの作品はスマホで書かれているらしく、誤字脱字や不要な改行・スペースなどが山ほどあります。予測変換によるものと思われる変な言葉遣い(おっちゃん→おちゃん)なども相当にあるうえ、作者様がそれらはスルーしてほしいとおっしゃっておられるので、読んでいて脳内補正作業がフル活動で必要です。顔文字とかも多用されているので、そういうのが苦手な方は避けられたほうがいいかもですね。
No.5550 (読書)


 2014年02月02日の読書
2014年02月02日(Sun) 
本日の初読図書:
B000JADNNC20億の針 (1965年) (創元推理文庫)
ハル・クレメント
東京創元新社 1965

by G-Tools
児童向けジュヴナイル「星からきた探偵」の原作小説。なのであらすじは先日読んだものに準拠です。
そして実はこの話、このブログを始める前にも一度読んでいるんですが、その時は新装版(2002年発行)だったので一応今回(1963年発行旧版)は初読にカウントしようかと。……まあ中身(訳者)は同じなんですけどね(苦笑)
旧版は表紙のイラストがいかにも一昔前の怪奇SFっぽいエイリアンの図でした。書影を紹介できないのが無念です。
そしてその印象とは裏腹に、非常に理知的で大人で友好的な異星人の登場するのが、ハル・クレメントの書く小説の特徴らしいです。そんな解説を読むと他の作品にも手を出してみたくなるけれど、積読が(ry

文章としては、ジュヴナイル版で「デカ」だった異星人が「捕り手」、「ボブ」だった主役の少年が「バブ」になっているのが最初ちょっと違和感を感じさせますかね。あとバブの友人達も数人出てくるのですが、場面によって名字や名前や愛称(複数)など呼び方がかなり入り乱れているせいで、どれがどの子のことか把握しにくいのが難点です。
そのくせジュヴナイル版ではざっくりカットされていた、SF小説の中に推理小説の要素が色濃く入っているテイストがありまして。ホシがいったい誰の体内に潜んでいるのか、ひとつひとつ可能性を潰していく課程がつぶさに書かれているのに、肝心のキャラの見分けがつきにくいせいで、いま一つ話に没入しにくいのが難点かと。
島のお医者様という第三者の協力者を得るエピソードも、ジュヴナイルでは削られていた楽しいポイントですね。十五才の少年では行き届かない部分をフォローしてくれる、理解ある頼もしい大人の専門家。続編「二千億の針」では、このお医者さんの存在が非常な助けになってきてますし。
あと大人向けバージョンの見所は、バブがかなり最後の方まで捕り手への疑いを持ち続けているところでしょうか。素直かつ無鉄砲な少年の心と、年に似合わぬ聡明さを持ち合わせた彼は、途中で「実は捕り手こそが犯罪者であり、自分(バブ)を作り話で言いくるめて、追っ手を『ホシ』と偽っているのではないか」という可能性に気がつくのですよ。
捕り手と交流を深め、お互いに親愛の情を抱きながらも、その心中では捕り手=ホシでは? という疑いを捨てきれない。しかしその疑いを表に出すことはけしてせず、時々さりげない問いかけで捕り手を試しつつ、反証を得るたびにそっと笑みを浮かべる。そんなバブの思慮深さがあるからこそ、たまにやらかす子供っぽいポカのあれこれも、許容することができるのですよ。
翻訳が古すぎるせいか、バブの話し言葉が子供らしくないというレビューも見かけますが、私はこのくらいの方が「聡明な少年」という印象がはっきりして良いと思います。
……まあ、「キャットウォーク」が「猫道」だったり「シアトル」が「シャートル」だったりとかするのには、違和感を感じなくもありませんが(苦笑)
あとたまに、地形描写で東西南北がおかしい気がするのが困りどころですかね。文章だけだと、うまく脳内で地図を描けないんですよ。たとえばどう考えても南東が、北東って書かれてる場所がある気がする……もしかして文中で出てくる地図、北が上じゃないのか??
新装版には確か島内地図が載ってたと思うんですが……いっそ新装するだけでなく、新しい訳が出てくれないかなあ。古い文章は古い文章で味があるのですけれど、どうせなら判りやすい方でちゃんと内容を把握した後で、ゆっくり味わいを楽しみたいところです。
No.5542 (読書)


 2014年01月31日の読書
2014年01月31日(Fri) 
本日の初読図書:
4253154018霊験お初捕物控 其ノ1 (プリンセスコミックスデラックス)
宮部 みゆき 坂口 よしを
秋田書店 2006-11-16

by G-Tools
はい、霊験お初のマンガ版です。
むかーし雑誌掲載していた時に存在は知っていたのですが、当時は宮部さんにあんまり興味がなかったので、さらっと流していました。今になって原作を読んだので、思わずポチッとな(笑)
収録作は「迷い鳩」と「騒ぐ刀」の二作。
なんか直兄さんの描写に異様に力が入ってるvv
キャラデザがいかにも二枚目で、さすがにここまで来ると直次ファンの私でも笑えてきます。個人的には、幕間に試し書きされている、黒髪の月代バージョンの方が好みかもなあ(本文は白髪で前髪あり)。
っていうか、いくらなんでもシスコンが過ぎるかろう(苦笑)<そんなにほいほい妹に抱きつくなって
お話は一部の改変を除けば、おおむね原作の流れに忠実です。最初にお初を助けに入るのがお奉行様じゃなく直兄さんだとか(続けてお奉行様もご登場なさいます)、医者への聞き込みに行くのが六蔵兄さんじゃなく直兄さんだとか、刀匠の娘が結婚してなくて独身だとか、事件の数が微妙に減ってるとか、刀を寺に埋めたのが刀匠本人だとか、最後の締めがお奉行様の代わりに直兄さんだとか(笑)
倒れたお初を心配した六蔵兄さんが、「病気じゃねえんだから」とそっけなく言いつつ、使ってる箸が左右テレコになってるあたり、妙に微笑ましかったvv
あと画面の細部にこだわりがあるのは良いですね。
姉妹屋の看板がちゃんと「鬼と姫二人」だったり、立ち回りの最中に小太郎の耳が切られる場面が入ってたりとか、けっこう細かったです。
さて、このシリーズ続編がまだ出てるんですが……まずは原作を読んでからかな……
No.5534 (読書)


 2014年01月28日の読書
2014年01月28日(Tue) 
本日の初読図書:
410136916Xかまいたち (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 1996-09-30

by G-Tools
享保二年、大岡越前守忠相が南町奉行の職についてから、様々な不正が正され江戸の庶民たちは大いに喜んでいた。しかし奉行所の一部の人間からは彼の存在は煙たがられているらしく、水面下で不満も湧いているようである。そんな状況で、連続辻斬り事件が発生した。姿を見たものは犬でさえ手にかける残虐なその人斬りを、いつしか人々は「かまいたち」と呼んで恐れるようになる。ある日のこと、医者の娘おようは往診に出た父親を迎えに出て、人が殺される現場を見てしまった。かまいたちだ、自分も殺されると覚悟したおようだったが、なぜか気が付くと一人死体と共に取り残されていた。だが慌てて自身番に駆け込み居合わせた同心を現場に案内すると、もう死体は消えており、これだから若い娘はと叱責を受けてしまう。あれはけして見間違いなどではないと不満をつのらせるおようの前に、元目明しの平太が現れた。越前守によって目明しの存在は禁止されたが、実は越前守自身に使われる特別な探索役「お耳」が存在するのだという。自分はそれであり、おようの目撃証言を信じるから協力して欲しいと平太は告げてきた。喜ぶおようは、しかし真向かいに引っ越してきた新たな住人を知って背筋を凍らせる。新吉と名乗るその男は、確かにおようが見た人殺しの犯人だったのである……「かまいたち」
旅籠梅屋には、毎年師走にやってきて五日ほど逗留する客がいる。伊達様の城下で小間物屋を開いている常二郎という男だ。気の良い男で、梅屋の家族はいつも彼の逗留を心待ちにしていた。それには彼の宿賃の払い方が、いっぷう変わっていることもあげられる。彼は宿賃に毎年小さな干支の金細工を置いていくのである。換金はできない約束なので実質は身にならない支払いだが、そこにはちょっとした事情があった。最終的には十二年かけて十二支がひと通り揃ったところで、それを改めてまとまった金額で買い戻してくれるという。いわば梅家は担保として細工物を預かって、十二年後に利子を含めた預かり料をもらえるという趣向だ。細工物が実に良くできていることもあって、今年の細工はさてどんなものかと、それもまた家族の楽しみであった。ところが六年目になる今年、常二郎が発った後に預かった巳の置物が消えてしまい……「師走の客」
義姉と共に一膳飯屋を切り盛りする少女お初は、道行く商家のお内儀のたもとが血で染まっているのを目撃する。しかし傷はないかと問いかけると、お内儀も周囲の人々もそんな血など見えないと言う。危うく巾着切りと勘違いされかけたお初を救ってくれたのは、通りすがりの武家の老人であった。なんでも植木職人である次兄直次の知り人らしい。後日、お初が岡っ引き六蔵の末妹であると知った商家は、酒樽を持って詫びに訪れた。いまその蝋燭問屋柏屋では、女中の失踪が相次いで、六蔵の世話になっているのだという。いなくなった女中はいずれも謎の病気で寝込んでいる主人の世話をしていたのだが、主人と共にいると自分も具合が悪くなるからと、病が感染るのを恐れていたらしい。兄からそんな話を聞きながら柏屋からもらった酒樽を持ち上げたお初は、激しい頭痛とともにまたも自分にしか見えない不思議な光景を目にした。それは畳いっぱいに飛び散る真っ赤な血しぶき。そして耳も割れんばかりの悲鳴。その声は確かに「人殺し」と叫んでいて……「迷い鳩」
お初達のもとへ、不思議な脇差しがやってきた。六蔵の上役でもある同心の一人、内藤新之助が古道具屋から買ったそれは、夜になると呻き声を上げるという。気味の悪さに眠れず御役目にも支障をきたした内藤は、六蔵へ相談を持ちかけ脇差しを預けてきたのだった。夜になると確かに脇差しは怪しい声を発し始める。六蔵夫婦も直次も何を言っているかまでは聞き取れなかったが、一人お初だけはその言葉を理解できた。「小咲村、坂内の小太郎に伝えてくれ。虎が暴れている」と。しかしこの日の本に本物の虎などいるはずがない。不思議に思いつつも、ひとまず直次が小咲村へと向かった。だが彼の留守の間にとんでもない事件が起こる。とある商家で父親が乱心し、妻と嫁入り間近の娘を斬殺。自らも首をはねて死んでいたのだ。しかも現場には凶器となったはずの刃物が見当たらない。首を傾げる六蔵だったが、惨劇はそれだけにとどまらず……「騒ぐ刀」

宮部みゆきの江戸モノを読もう月間。今回は初期短編集のひとつ「かまいたち」です。
収録作は中短編が四作。うち後半二作は、後にシリーズ化される「霊験お初」のパイロット版です。
うむ、やはり宮部作品は短編集、それも初期の作品のほうが好みだなあ。
表題作は、もう最初から最後まで「お約束」が満載。最初の殺人が起きた時点から、こいつが真犯人で、犯人だと思われてる人はアレやろと分かり切っているだけに、主役のやらかしちゃうあれこれが可笑しいやらいたたまれないやら。オチも秀逸。まさにTVの時代劇SPのようでしたvv
短編「師走の客」は、貧しくとも心豊かに暮らしていた純朴な家族がひどい目に遭わされて……と他人事ながら心を痛めていたら、最後には気持ちのいいどんでん返しがあって、ほんわりできる読後感でございました。
後半の二つは、ミステリとしてはちょっぴりずるい、超常現象が絡むお話。
これはジャンルとしてはどうなるんでしょうね。推理物というには、手掛かりを得る手段がフェアではないので、やはりミステリ風ファンタジーでしょうか。
個人的に直兄さんが格好良くて大好きです。しかしこの人、正式な下っ引でもないのに、いきなり仕事休んで遠出とかして、大丈夫なんだろうか……(苦笑)
さて次は正式版シリーズの「震える岩」あたりを借りてきましょうかね♪
No.5525 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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