2014年06月15日の読書
2014年06月15日(Sun)
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本日の初読図書: 子供の頃に両親を亡くし、その遺産を食いつぶしながら暮らしている天馬大吉は、何度も落第を続ける劣等医学生だった。医者になる未来に疑問を覚え、雀荘に入り浸る堕落した日々を過ごしている。 そんな大吉は、マスコミに就職した幼なじみの別宮葉子にハメられて、地域の終末医療を担当している桜宮病院へ潜入取材をする羽目になった。なんでも厚生労働省から、葉子の務める会社へ調査協力の要請があったのと同時に、葉子の人脈の一つである医療事務関連会社メディカル・アソシエイツからも捜査を頼まれたのだという。メディカル・アソシエイツはいわゆる企業舎弟のアンダーグラウンドな会社なのだが、そこの社員であり代表者 結城の娘婿である立花善次という男が、桜宮病院の調査中に行方が判らなくなったらしい。 桜宮病院の内情と善次の消息を探るため、大吉はしぶしぶ桜宮病院へ医療ボランティアとして訪れる。 ところが、実際に働き始めたその日の内に、大吉は手首を骨折してボランティアから入院患者へと立場を変えた。担当患者は一週間以内に死亡するという不吉なジンクスを持つ、ドジで失敗ばかり繰り返している新人看護師 姫宮香織のせいで、階段から落ちてしまったのだ。その後も車椅子に乗れば振り落とされるわ、清拭をしようとすれば熱湯をぶっかけられるわと、大吉の傷はどんどん増えてゆく。 一方で、桜宮病院全体は、不思議な雰囲気を持つ病院だった。死を待つばかりの末期患者が入院患者の殆どを占めているのに、何故かみな活き活きとしており、病院内の様々な業務を手伝っている。 ……しかしひとたび調子を崩し、三階にある特別室に入ると、彼らはその晩の内に死んでしまう。遺体はすぐに地下で解剖され、火葬から埋葬まで迅速に行われる。大吉が入院してからも、毎日のように患者が死んでゆき、桜宮病院は閑散としていきつつあった。 あまりにも急速すぎる患者の死に疑惑を抱いた大吉は、病院長の桜宮巖雄やその娘のすみれや小百合などに話を聞いてゆく。そうする内に、現場の終末医療と、国の官僚達が掲げる医療の経済化との溝が浮き彫りになってきて……
チーム・バチスタシリーズの外伝で、時系列的には「ナイチンゲール〜」の半年あと。 ナイチンゲールで桜宮病院を潰すと決意した白鳥さんが、部下の『氷姫』姫宮さんと潜入捜査を行っております。今までは噂でしか出てこなかった姫宮さん、こんなキャラだったのかと、なかなか驚かされました。 お話そのものは新キャラ天馬くん視点で語られていきますので、東城大学医学部附属病院の印象が今までとまったく異なります。特に東城医大を敵視している桜宮病院のすみれさんが、悪徳病院だと連呼しているせいもあって、本当にどうしようもない悪役に見えてくるあたり、事実はひとつでも真実は人の数だけあるんだなあと思ってみたり。
そして本編ではだいぶ親しみが出てきた白鳥さんも、再び得体の知れない人としてご登場。 彼は本編ではほぼ最強キャラとして描かれていましたが、今回は完全に巖雄病院長に呑まれています。さすがは十五にして南方戦線を駆け抜けた、銀の獅子。若造な白鳥さんなど歯牙にもかけていません。 今回は最後まで、この病院長にしてやられた感じでした。 読み終わったあとは、しばらくなんだかぼぅっとしてしまう感じ。 結局のところ何が真実で、勝ったのは誰なのか。そもそも勝ちとは何か、負けとは何か。生きるとはそもそもどういうことなのか、死とはいったい……と脳みそがぐーるぐーる(@_@) そもそも最後の『彼女』は、はたしてすみれなのか、小百合なのか……
医学会の闇とか、行政側と現場医療との乖離とか確執とか、非常にドロドロした感じで。 そういえば私は最初、本編の田口・白鳥シリーズはこういう話なんだろうなあと思っていたんですよ。そうしたら意外とライトなキャラクターノベルでびっくりしたんですね。 それが再びひっくり返されて、初心に帰ったような感じでした。
善次の死に様ついては……あんまり想像したくない(汗) しかし善次と大吉くんがそういう関わりを持っていたとは。びっくりすると同時に、いささかご都合主義的なものも感じなくもなく。 まあ、この物語はなんだかんだで、モラトリアムだった大吉くんが、前を向いて真摯に医療の道を歩き始めるところが主題の一つだったのかと思うと、それもありなんでしょうがね。
なお田口先生は、最後にちょこっとだけのご登場。今回の田口先生は、割りとドラマの伊藤淳史にイメージが近いかもしれません。
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No.5919
(読書)
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2014年06月14日の読書
2014年06月14日(Sat)
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本日の初読図書: 「光届かぬ迷宮の闇の中へ(小説家になろう)」〜2連戦 http://ncode.syosetu.com/n0646bm/
異世界の少年と魂を入れ替えた三十男が、冒険者を養成する学園に入学。 周囲のレベルの低さに驚きつつ我が道を行った結果、周囲から高評価を受けて青田買いを狙われるお話。 あ、ハーレム注意です。 んー……設定的には面白いのですが、全体にいまひとつ盛り上がりに欠ける、かな。 主役がもともと地球に適応できない魂の持ち主ってことで、嬉々として冒険者をやっているのはいいんですが、とにかく脳天気というか、生死の危機があってもあんまり応えていないっぽく。 周囲から青田買い含めていろいろ仕掛けられているのも、今のところまったく気づかずスルーしてますし。本来なら手痛いしっぺ返しになるはずの危機的状況も、微妙にドキドキ感が足りないような。それでいて無双とはちょっと違うし……むう。
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No.5918
(読書)
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2014年06月13日の読書
2014年06月13日(Fri)
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本日の初読図書: 「払暁(小説家になろう)」〜第五十一話 http://ncode.syosetu.com/n4173o/
隠遁生活をしていた老魔術師の魔法実験によって、異世界に召喚され、戻ることができなくなってしまった女子高生 遥。 生きるために魔術師の弟子となり、魔法を覚えて数年。師匠はすでに亡く、彼女は成人していた。山奥でひっそりと暮らしていた彼女に訪れた転機は、戦争。特殊職業人として、国から強制的に戦争に出ることを命じられたのだ。女の身であることに不安を感じた彼女は、魔術を用いて姿を変えることにし、目立たない鳶色の髪と瞳の、少年のような姿を選んだ。 そうして戦わされ続けた遥は、敵の急襲を受け絶滅の憂き目にあった時、魔力による粉塵爆発を起こし辺り一帯を吹き飛ばした。その後は周囲にいた負傷者達を、手当たりしだいに治療してゆく。現実逃避にも似たその行為の最中に、一人の男が目に止まった。瀕死の重傷を負い絶望をその眼に宿した彼は、治療を拒み、自ら死んでいこうとしていた。そのことに、無性に腹が立って。 「ここで死んでいい奴は、勝つために来た奴か、守るために来た奴だけなんだよ。お前みたいな負け犬が死ぬ場所じゃねぇ!!」 散っていった戦友たちと、ただの自殺志願者が同列に語られることなど許せない。 「俺が死んだら、家に帰って自殺でも好きにしな。だが俺が生き延びたら、お前の捨てた一生を俺が拾ってやるよ。俺の為に生きて俺の為に死ね」 そう吐き捨てて、残る魔力のすべてを注ぎ込み、男の傷を癒やす。 そうして意識を失った彼女が目覚めたのは、病院の一室だった。魔力の使いすぎで入院生活を余儀なくされた遥の元へと、助けられたという兵士たちが次々と見舞いに訪れる。 やがて現れたのは、一人の騎士だった。彫刻よりも整った顔立ちに、太陽の光に輝く金糸の髪と、晴天を映した青い瞳。絵に描いたような騎士である彼は、伯爵家の三男リカルド・メルツァース・ブラムディと名乗った。 「賭は成立しました。どうか証をお受け取りください」 少年の姿をした一平民である遥へと跪き、男 ―― リカルドは騎士の誓いを捧げる。 それは地位や見た目や能力は人並み以上の、しかしそれまで生きる意味を何も見いだせなかった男が、たった一つの執着できる存在を見つけた瞬間で……
異世界トリップ、すれ違い系恋愛物、かな。現在連載中。陰謀も絡みまくって、正直何が何だか(苦笑) とりあえず、押し掛けで主従関係を結ばされたまでは良かったものの、過保護なほどに守られ続けるので反発してみたら、実は戦場を薙ぎ払ったことで周囲から英雄として持ち上げられていることが発覚。隣国からも命を狙われていたりした、と。 いっそどこかへ逃げようにも、異世界出身では師匠と暮したこの国以上に愛着のある場所はなく、死を偽装すれば再び隣国が攻めてくるかもしれないという訳で、仕方なく魔術師としてある程度の地位と権力を確保しようとする、そのすったもんだがややこしいです。 おまけにリカルドは遥を少年だと信じきっているし、その上で精神的には完っ全に依存してるし。遥は遥で、元一般人なだけに、なかなか権謀術策の海を泳ぐのは難しく。女性としてリカルドに惹かれつつも、彼の理想的な主人であるべく恋心を抑えようと苦悩してみたり、リカルドの自称親友からは友人に悪影響を及ぼしそうだからと当たりがきついしと、なんかもうてんやわんやヽ(´〜`)/ 最近の数話でようやく、自称親友が遥の性別に気がついて味方にまわったものの、事態はこじれまくっております。 うーん、護衛として雇われていたアルフレドさんがいい味を出していたと思ったら、まさかの引っ掻き回しにかかったあたり……これはあとで一発殴られるぐらいは覚悟しておいて欲しいところですね。あ、もちろん遥にですよ。リカルドに殴られそうになっても、普通に避けて憎まれ口叩きそうだ、こいつはvv
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No.5917
(読書)
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2014年06月12日の読書
2014年06月12日(Thr)
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本日の初読図書: チーム・バチスタのスキャンダルから数ヶ月。ようやく落ち着きを取り戻しつつある東城大学医学部附属病院は、年末を迎えようとしていた。 病院をあげた忘年会の出し物では、小児科の看護師である浜田小夜が見事な歌声で一位をかっさらう。 その後、同僚の看護婦 翔子とともに飲み直すべく繁華街へと繰り出した彼女は、怪しげな男に声を掛けられ、ミニライブを見に行くことになった。歌うのは最近爆発的な人気が出ている白銀の迦陵頻伽こと水落冴子。小夜たちを誘ったのは、彼女のマネージャーでピアニストの城崎だった。 冴子の歌は怖ろしいほどに素晴らしかった。その歌によって小夜は過去の悪夢を引きずり出され、心を激しくかき乱される。が、ライブの途中で、冴子は倒れてしまった。吐血し意識がない彼女を、翔子の指示で東城大付属病院へと緊急搬送したものの、あいにくベッドに空きがない。各部署に電話し手をつくした結果、冴子は神経内科のドア・トゥ・ヘヴン、すなわちVIP用特別ルームへと運び込まれた。 診断の結果は、肝硬変の末期。重度のアルコール中毒だが、アルコールを抜く前に命が尽きるだろうとの事。 緊急搬送を受け入れた場合は、専門がなんであれ受け入れた当直医が担当となるのが伝統である。かくして愚痴外来のグッチーこと、不定愁訴外来の田口公平医師は、冴子の担当医となった。酒をよこせと暴れる冴子に特別アンプルと称してワインやウイスキーを処方する彼は、瞬く間に彼女の信頼を得る。 一方、小児科病棟では、問題のある患者が入院していて、一同手を焼かされていた。牧村瑞人、十四歳。網膜芽腫で眼球摘出が必要なのだが、本人は手術を拒否しているし、家族とは連絡が取れない。なんでも母親はとうにおらず、失職中の父親は育児を放棄しているのだという。なんとか手術の同意書にサインを貰おうと、小夜は瑞人の父親に会いに行くが、まったく埒が明かなかった。 そんなある日のこと、瑞人の父親が殺されたという知らせが入った。死体はまるで解剖したように内臓が取り出され、部屋の四方へ捧げるように置かれていたという。 警察は変質者による猟奇殺人を疑うが、中央から派遣されているキャリアの加納だけは意見を異にしていた。 彼はデジタル・ムービー・アナリシスという手法によって犯人像を割り出し、被害者と直前に会っていた小夜か、あるいは虐待を受けていた息子の瑞人が犯人だろうと目星をつけたのだ。 そうして病院へと事情聴取にやって来たのだが、手術を控えた不安定な子供が多くいる小児科病棟で、警察による事情聴取などもっての外だと、小児科側は突っぱねる。 病院長も交えた話し合いの結果、聴取は不定愁訴外来で行われることになった。関係ない子供達も交えた複数名で不定愁訴外来を受診させ、その中で必要な情報を聞き出そうというのだ。 そしてその受診中に、厚生労働省の役人で、バチスタ・スキャンダルの時にも大きく関与した白鳥が姿を現す。 病院長の依頼でやって来たという彼は、加納とも旧知の間柄らしい。加納から閉鎖性の高い病院内での調査を頼まれた白鳥は、小夜と瑞人が事件に関与しているかどうかという点に限定して協力を受け入れた。当然田口もそこに巻き込まれることとなって……
「チーム・バチスタの栄光」の続編。田口・白鳥シリーズの二作目です。 ただし今回は、看護師の小夜さんサイドの方がメインの感じで、内容も前回にもまして医療ミステリーっぽくなく。むしろファンタジックな要素が大きかったように思います。あと少年の成長物語。 なにしろ冴子さんも小夜さんも、その歌声によって他者の脳を刺激して、感情を増幅させたり映像を見せたりできるんですよ。それもMRIでの脳波計測に、数値として現れるレベルで。 その才能に目をつけた城崎さんによる小夜さんのスカウトとか、城崎さんと冴子さんの愛憎入り交じった複雑な関係とか、瑞人くんと末期白血病患者由紀ちゃんの、幼くも純粋な心の交流とか、あるいは医師としてちょっと問題ありなんじゃないかという小児科の中堅医師のありようとか、いろいろ人間関係が入り交じっていて、事件の謎解きの方にはあんまり重きが置かれていない感じです。むしろどこかでどんでん返しがあるかと期待していたら、全然なくってかえってびっくり、みたいな(苦笑)
とりあえず今回は、白鳥さんのグッチー認め度合いが多少上がっていたので、ちょっと嬉しかったです。 なんとなーく、前回よりも二人のイメージがドラマに近づいたような気もしたりとか。あと文章も読みやすくなってたように思います。良くも悪くもクセが少なくなった、のかな?
あとやたら「桜宮病院」「螺鈿」というキーワードが出てきてたんですが、これは外伝の『螺鈿迷宮』に関わってるんですかね? ドラマ版ではグッチーと白鳥さんの話だったみたいだけど、原作は白鳥さんの部下の姫宮さんのお話だそうで……ううむ、そちらは読もうかどうしようか……(悩)
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No.5913
(読書)
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2014年06月05日の読書
2014年06月05日(Thr)
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本日の初読図書: 「異世界漫遊記(小説家になろう)」〜第一話、あるいはそれは運命の出会いである筈がない http://ncode.syosetu.com/n8364n/
勇者として異世界に召喚された少年がその場で遁走し、たまたま魔法で飛ばされて迷子になった人間として、市井に混じって郵便ギルドの配達員として働くお話。 とりあえず見習いから正規配達員にランクアップして、次の章のプロローグと一話目まで行った段階で前触れもなく更新停滞してますが。 ちょっとネタや誤字脱字が多いけれど、テンポは良いし魔王や世界を見守る女神たちの設定も一捻りある感じで面白そうなので、是非再開を願いたいところです。
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No.5894
(読書)
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2014年06月04日の読書
2014年06月04日(Wed)
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本日の初読図書: ―― あの子がいたということを、一生、忘れないでくれ。 この二年半の間、その言葉だけが須賀原を生かしていた。死んで償うことなど許されない。自分は生きて、ただ生き続けて、あの子のことを覚えていなければならないのだ、と。 抜け殻のように生きる彼は、務めているレンタルDVDショップを最近訪れる中学生が妙に気になっていた。その少年はこの10日というもの、毎日のように店を訪れては、ホラーものの棚の前で涙を流しているのだ。しばらくそうして立ち尽くし、何も借りずに帰っていく。まったくもって意味が判らない。 ある日のこと、信号待ちをしていた須賀原の隣に、たまたまその少年が並んだ。そしていきなり怯えた様子を見せたかと思うと、赤信号の横断歩道に飛び出した。とっさに手を伸ばし、走ってくる車から救い出した須賀原は、少年を怒鳴りつけた。だがその視線を追った先に立っていたのは、血まみれでどう見ても生きているとは思えない一人の老婆で。 死者を見ることができる少年 明生と須賀原は、そうして出会った。 明生に触れることで、須賀原もまた、死者を見ることができる。最初は打算から明生に近づいていった須賀原だったが……
二三日かけてゆっくり読むつもりで読み始めたら、さくっと読了。 これは主役二人がもっと仲良くなって、読切連作のバディものとして続けていくこともできたと思うのですが……こういう終わり方だからこそ、主人公救済の物語として、深みが出ているのかもしれません。 五話収録されている物語は、ずっと須賀原視点で進んでいきます。彼が何故、抜け殻のようになって暮らしているのか、自分は幸せになってはいけないと考えているのか、少しずつ匂わされては行くのですけれど、はっきりとはなかなか語られません。 最初から判っているのは、彼が過去に子供の交通事故死を間近で目にしたこと。そのことに責任を感じていることぐらいです。おそらく彼が過去警察官であっただろうことも読者はすぐに気がつくでしょうが、それさえも確定するのはかなり後になってから。 交通事故で死んだ老婆、虐待されて死んだ犬、冬の池に落ちて死んだ少女、狂言自殺を図って本当に死んでしまった女性。そんな霊達と出会っていく内に、彼は少しずつその過去を明らかにしてゆき ―― そうして最後、意図せずしてその心を救った孤独な少年 明生との別れを迎えるにあたって、ようやく自身が過去死に至らしめてしまった少年とその家族に、向き合うこととなるのです。
須賀原さんも、過去に死なせてしまった少年も、そしてその遺族も、切ないまでに普通の人でした。 真面目で、融通がきかなくて、他人を愛し、そして弱い。自分の罪を誰よりも知り、自分を貶め、それでいて誰かを遠ざけたり憎んだりしなければいられなかった。
須賀原さんが明生くんに出会えたのは奇跡と言っていいでしょう。 彼と出会えたから、須賀原さんや遺族達は、二度と会えなかったはずの少年と再会し、その言葉を聞き、前へと進むことができた。これはあくまでフィクションで、実際にはけっして起こらないことです。 それでも……こんなことが起きてくれたらいいと、そう思えるお話でした。
そして、須賀原さんが明生くんと出会えたのは、やはり彼が彼だったからなんですよね。 様子のおかしい明生くんに気が付き、そして事故にあいかけた彼へと、とっさに手を伸ばせた須賀原さんだったから。 そんな彼と出会ったからこそ、明生くんもまた自身の道へと顔を上げて踏み出すことができた。 けして互いに依存し、二人で世界を閉ざしてしまうのではなく、それぞれの新たな道を選んだ二人。 切ないし寂しいけれど、彼ら二人はこれでよかったんだろうなあと思います。
願わくば数年後、二人がまた再会し、良き友人として付き合っていけますように……
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No.5890
(読書)
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2014年06月03日の読書
2014年06月03日(Tue)
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本日の初読図書: 下巻を読了。 んー面白かったけど、夢中になってかぶりつくほどではなかったというか、正直途中でちょっとダレました。 瓶屋の事件のからくりと犯人は、比較的早めに弓之助が解いたのですが、新米同心間島さんが女性によろめいたせいで、泳がせていた犯人を取り逃がしてしまう結果に。 そこからお話は別視点に移って、三話ほど「おでこの母親の顛末」「富くじで身を持ち崩した仙太郎の後始末」「男女の仲に翻弄され、立ち直れずにウロウロしている間島さん」を中心にしたお話が挟まって、二ヶ月後にようやく見つかった犯人たちを捉える最終章に向かいます。 今回はやはり、「世の中には常に様々な事件が起きているのだ」という形でしたね。 ひとつの事件にずっとスポットを当てているのではなく、その頃にはこんな事件もあんな事件もあって、誰も彼もそれぞれに手を取られ気を取られ、ひとつひとつを解決していきつつ、あちらの事件でこちらの事件のヒントも得たり、という感じでした。 現実にはこういうほうが近いのでしょうが、物語として読むには少々とっちらかっているというか、散漫な印象もなくもなく。
とりあえず源右衛門お爺ちゃんが安住の地を得られたのは良かったです。仙太郎や、弓之助の三番目のお兄さん淳三郎も、身の振り方の未来が見えてきたようですし。 ……今回、一番気の毒だったのは、やっぱり夜鷹のお継さんですかねえ……彼女の一件だけで、私は今回の犯人たちに感情移入ができませんでした。たとえどれだけ献身的に病人の面倒を見てたとしても、犯行の動機が彼らなりの『正義』に基づいたものだったとしても。
やはり宮部作品は、切なくやりきれない部分が多いなあ……
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No.5888
(読書)
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2014年06月01日の読書
2014年06月01日(Sun)
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本日の初読図書: 「仕立て上げられた勇者の仕返し(小説家になろう)」 http://ncode.syosetu.com/n8427be/
異世界召喚され、無理やり勇者にさせられた女子大生の復讐譚。短編です。 彼女を召喚した国がとにかくひどくって、ほとんど勇者を奴隷扱い。使い物になるようにするために、訓練でボロボロになるほど叩きのめしては、強制的に魔法で治癒を繰り返し、モンスターを殺して思わず吐けば問答無用で蹴り飛ばされる。 あげく「魔王を倒したら元の世界に返してやる」と約束したその裏で、PTメンバーには「魔王を倒したその場で殺せ」と密命が下してあり……とゲスも極まれり。 それを知った勇者が選んだ道は……? というお話。
どこかの勇者専用掲示板に登場しそうな展開ですが、話はダークというかハードというか。 とりあえず、因果応報。勇者さんはどうかお幸せに……(合掌)
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No.5884
(読書)
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2014年05月29日の読書
2014年05月29日(Thr)
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本日の初読図書: 二巻目の収録作品は「針」「おばあちゃん」「シャチの詩」「三者三様」「地下壕にて」「ダーティ・ジャック」「友よいずこ」「誘拐」「流れ作業」「助け合い」「ストラディバリウス」「ハッスルピノコ」「病院ジャック」「座頭医師」の14作。 特に印象に残るものとしては、 「針」→BJも人体の神秘には叶わない 「シャチの詩」→種族を越えた友情と別れ 「友よいずこ」→BJが顔の色違いの皮膚を再手術しない訳 「助け合い」→無償の善意に報いるためなら金も力も惜しまないBJ 「ハッスルピノコ」→学校に行きたいピノコ 「座頭医師」→盲目の鍼灸医登場 と言ったあたりでしょうか。いやうん、どれも名作なんですけど! 「シャチの詩」がまた切なくてですね……これアニメ版では、トリトンちゃんと助かるんですよ。実は悪者でもないし。 原作「万引き犬」に出てくる犬のラルゴも無事生き延びていたりとかというあたり、原作ファンにはアニメはぬるい! と感じられるかもしれませんが、個人的にバッドエンドが辛いお年頃としては、それもありかなあと思ってしまいます。ほんとに、改めて読むと「シャチの詩」は悲しい…… 「針」は子供の頃に親から「縫い針をなくすな。踏んで刺さったら血管に入って心臓に刺さって死ぬぞ!」と脅かされたのを思い出して怖いです。幼心に本気で信じてたんだよなあ。 そして「助け合い」は、こういう話があるからBJ格好良いと思うんです(しみじみ) 他にも「ダーティ・ジャック」「ストラディバリウス」「病院ジャック」では、彼をしても救えなかったものに苦悩する場面があります。BJはけっして万能ではなく、悩み苦しみ、そしてあがき続ける一人の人間である所が共感を覚えさせてくれるキャラクターなのでしょうね。
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No.5873
(読書)
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2014年05月28日の読書
2014年05月28日(Wed)
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本日の初読図書: ビブリア古書堂の5巻を読んだ勢いで借りてきてしまいました(笑) 確かに収録内容がチャンピオンコミックスの1巻とは違いますね。良くは覚えていませんが、少なくともあれには確か、鳥に改造してもらって自然に旅立つ歩けない少女の話が載っていた記憶があります。それにピノコはまだいなかった。 この巻の収録作は「医者はどこだ!」「春一番」「畸形嚢腫」「人面瘡」「ときには真珠のように」「めぐり会い」「絵が死んでいる!」「六等星」「ブラック・クイーン」「U−18は知っていた」「アリの足」「二つの愛」の12作。 ……なんだかんだで、どれも読んだ記憶がありました。 BJの過去とか家族とかに大きく関る話が多いのは、やはり1巻だからでしょうか。 「畸形嚢腫」→ピノコの誕生 「ときには真珠のように」→BJが医者になったきっかけと恩師の死 「めぐり会い」→過去の恋 「アリの足」→幼い頃のリハビリの日々 ざっとこんな感じです。
「ときには〜」のように、天才外科医である彼をしても、どうしても救えない命、直せない疾病があるということが、この作品の魅力だと思います。 BJは挫折を知っているし、それでもなおあきらめずにあがこうという「医師としての心」を持っている。そして何よりも「命」を大事に思っている。時に金にがめつく、時に悪ぶって見せても、そこに彼のたまらない格好良さがあるのではないでしょうか。
たしかにこの作品には、時に医療知識の間違いや、時代を反映した差別的な表現がままあります。 それでもやっぱり、この話は名作だなあとしみじみ思うのでした。
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No.5870
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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