よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年08月04日の読書
2014年08月04日(Mon) 
本日の初読図書:
4152090596夏への扉[新訳版]
ロバート・A・ハインライン 小尾芙佐
早川書房 2009-08-07

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えー……お前アホやろうと言われても、反論はできません(苦笑)
いえね、おもしろいから返却前にもう一度読もうかなと思ったんですよ。そしたらどうせなら、新訳版と読み比べれば一石二鳥かな、って……
そんな訳で、ハインラインの「夏への扉」新訳版です。

あらすじや内容についての感想は「旧訳版」を読んだ時に語っているので、省略。
新訳の翻訳者は、やはりベテランの人だそうで。「アルジャーノンに花束を」とかを手がけた人とのこと。
アルジャーノン〜は高校時代に読んだけど、あれも確かに翻訳がすごいと思った記憶があるなあ……

でもって。
もちろんストーリー自体は変わらないわけですが、やはり翻訳によって異なる部分はずいぶんありました。
おおまかな印象で行くと、新訳版は会話やドラマ部分がより判りやすく、平易な文章になっていてとっつきやすいです。ピートのキャリーケースとして新しいボストンバッグを買って覗き窓を付けてやったりといった、旧訳版では削られていたと思しき小エピソードのいくつかが、ちゃんと入っているのも嬉しいところ。
たぶんより原文に忠実なのは、こちらなのでしょう。
ただ一部横文字(「事務所を借りた」が「ロフトを借りた」になってるとか)がそのままだったり、原文に忠実であろうとするあまり、日本人には馴染みのないものを説明なしに直訳(?)している部分が散見されます。おかげで意味がよく判らない部分がところどころありました。

たとえばダンが発明に利用した「電子亀エレクトリック・タートル」。何の説明もないこれは、旧訳版だと「自動操縦草刈機」と書かれていて、すっと違和感なく読んでいけます。
発明部分や法律部分など、SF作品のキモとなるあたりはだいたいそういった感じで、旧訳版の方が「知識の少ないズブの素人読者」にも優しい文章になっていると感じました。
弁護士に対して「情報の秘匿特権を行使できるだろうか?」と訊く場面なども、私の拙い脳ミソでは(?_?)です。
ここは旧訳版だと「ぼくは秘密交通権プリヴイレジド・コミュニケーション(弁護士と依頼人の間の秘密に相談する権利、警察もこれには干渉できない)を行使したいが、いけないだろうか?」となっており、非常に親切設計です。
他にも「少女団」と書いて「ブラウニー」とフリガナをふってあるのも、これがガール・スカウトの年少部門のことだと、日本人のどれだけが知っているでしょう?(旧版では普通にガール・スカウトになっている)
さらに、

滑走道路 → 動路
集団騒擾罪 → バラッキング
ゾンビー組織の秘密勧誘員 → ゾンビ・リクルーター
(省略) → サブフレックス・ファサータス

旧版:嘘をつくと地獄へ陥ちるぞといってやった。
新訳:占い師がお巡りにどんなことを言ったか教えてやった。

なども、旧訳版の方が断然判りやすい翻訳だと思います。


逆に新訳版でようやく意味が判った部分としては、2000年にやって来たダンが、単語の意味が変わっていて戸惑う場面。

旧版:例えば主人ホストという言葉だ。これはオーバーをとってくれて部屋へかけてくれる男のことで、出生率とは何の関係もなかったのだ。

出生率?? なんのことやらと思っていたのですが、

新訳:たとえば“代理ホスト”――その昔“主人役ホスト”とは、コートを脱がせてくれ、寝室に置いてくれる人間を意味していた。出生率とはなんの関係もない言葉だった。

と、たった一単語が加わるだけで、「ああ代理出産(もしくはその機能を持つ技術)のことか!」と想像がつくようになっていました。
他には冷凍場サンクチュアリという言葉が安息所サンクチュアリになっていたのも、なんだか柔らかい感じがして良いですね。

他に新訳版でニヤリと出来たところといえば、旧版の感想でピート(猫)の鳴き声のバリエーションが素晴らしいと書きましたが、その鳴き声にも意味があったことがよく判る点。
たとえばジンジャーエールをねだる時の「モーアー!」と言う鳴き声には「もっと(たぶん more )」というフリガナが振られています。他にも「ナーオウ!」には「いーまあ(おそらく Now )」、「ウェアールル?」には「どこにいたんだよ?( Where were you? かな)」というカッコ書きが。
こういう細かい言葉遊びは、やはりその作品が書かれた言語圏でないと、なかなか理解しにくいですよねえ……(しみじみ)


―― と、まあそういった具合で。
新旧ともに、どちらにも長所と短所があるという感じでした。
理想はやっぱり、両方読むことでしょう(笑)

まあそれは冗談として、
翻訳ものの硬い文章が苦にならず、より内容を深く理解したい人には旧訳がオススメ。
技術的な点や想像された未来像の描写などの細かいところはさらりと読み流し、気軽に人間ドラマを楽しみたい人には新訳版がオススメ、といったところでしょうか。


最後に。
私はこの作品に「巌窟王的復讐もののテイストがある」という情報を見つけて読むことを決めたのですが。しかし主人公のダンは、けしてモンテ・クリスト伯にはならないのです。
恋人と親友に裏切られ、一時は復讐を願っても、彼はけっして人を信じることをやめようとしない。

「何度火傷しようと、ひとを信用しなければならないときがあるのだ。そうしなければ、洞窟の隠者になって片目を開けたまま眠るはめになる。安全でいる方法なんてなにもない。生きていること自体が、そもそもとても危険なことなんだ」

そう語って、彼は新たな友人となったジョンに、莫大な資産となる発明をすべて託し再度の眠りにつく。
受けた裏切りには復讐ではなく無関心を、そして信頼にはより多くの信頼を返す。
そして未来にはきっと良いものが、開いた扉の先には必ず夏が待っていると信じている。
そんな彼の、陰湿さのないある意味「技術バカ」な楽観主義が、この作品をこうまで気持ちいいものにしているのだと思いました。
No.6103 (読書)


 2014年08月03日の読書
2014年08月03日(Sun) 
本日の初読図書:
「平手久秀の戦国日記(小説家になろう)」〜第五十話
 http://ncode.syosetu.com/n2345bj/

何故か戦国時代に、現代から生まれ変わってしまった少年 久次郎。
その身体はほぼ不死身で、異様なほどの膂力も備えたチートボディであった。そうであるが故に迷信深い村人から鬼子を産んだと家族は爪弾きにされ、間もなく疫病で死んだ。一人残された十歳の少年は薪拾いや獣を狩ることで暮らしていたが、ふとしたきっかけで風変わりな子供に気に入られてしまう。
その子供の名は吉法師。
そう歴史上の超有名人、戦国の覇王。第六天魔王。事実上の天下人たる後の織田信長である。
あまりにも時代を先取りしすぎた先見の明を持つがために、誰一人理解者を持たず、うつけ者として奇行をくり返すしかできずにいた吉法師は、未来知識を持つがゆえに己の言葉を理解できる久次郎という友を得て、ずいぶん落ち着き始めたという。吉法師の目付役であり、後にはその不行跡を諌めるために自刃したという平手政秀は、久次郎におおいに感謝し、彼を養子に迎えようと申し出た。どうかこれからも若の支えになって欲しいのだ、と。
そうして久次郎は久秀という、平手家の跡継ぎとなった。
信長は同じ価値観を持つ理解者を得て、戦国乱世を生きてゆくこととなる。それはやがて、久秀が記憶していたものとは異なる流れをたどり始めて……

歴史IFもの。連載中なるも長らく更新停止中。
最新話では1573年。本能寺の変まであと9年というところでしょうか。
基本的にギャク。久秀の人たらしと勘違いっぷりで成り上がる感じのお話ですが、後半の方はだいぶシリアス展開になってきています。
最新話では、織田家の筆頭家老になった久秀が家康と組んで武田信玄を討ち取り、北条・徳川・織田の三国同盟を組みつつも、織田家内部では成り上がりものが武功を立てすぎて、古参家臣団に亀裂が入りつつある状態です。
あと久秀が蒲生氏郷を養子にして跡継ぎとして育てていたら、実子で男の子が生まれちゃって、氏郷を後継者にする気を変えない久秀と、実子を盛り立てたい派閥とで平手家も割れそうになっていたり。
さらに信玄を失った武田家は、上杉と連合を組んで暗躍を始めようとしていたりとかとか、これからが気になるところなのに〜〜〜 《o(><)o》

……ちなみに、ちゃんとした歴史はよく判ってません(てへ)
蒲生氏郷って何した人だっけ。松永弾正? 聞き覚えはあるんだけど……って感じです(苦笑)
まあ楽しめればいいのよ、それで。

あ、文章に関しては誤字脱字変換ミス、読み返してないのか明らかに日本語がおかしい部分が結構あるので、そういうのが苦手な方は要注意です。
No.6101 (読書)


 2014年08月02日の読書
2014年08月02日(Sat) 
本日の初読図書:
4796688218玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社 2012-02-10

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東京へ出張した田口先生が、深夜に公園で死体を発見。別れたばかりだった白鳥を追いかけて訴えたところ、彼はなぜかいきなり死体の足を持たせ、表通りまで運んでから110番通報した。彼がわざわざそんなことをした理由は……「東京都二十三区内外殺人事件」
売れないお笑い芸人を集めた正月用の特番撮影現場で、人が殺された。ブロックを積んで作られた仮設迷路の中で死んでいたのは、唯一売れっ子だった芸人上がりの司会者。彼は多くの人間から恨まれており、少なくとも現場には動機のある人間として、付きまとわれていた女性ディレクター、元相方のAD、同じく元相方で芸人にしがみついている男の三人が居合せた。その誰にもアリバイはなく、設置されたカメラにも怪しい人物は写っていない。果たして彼はどうやって殺されたのか。デジタル・ハウンドドッグこと加納達也が、犯人を追い詰めるために利用したのは……「青空迷宮」
桜宮科学捜査研究所の設立に伴い、DNA鑑定データーベース・プロジェクトことDDPが立ち上げられた。データーベースの根幹となるサンプルを、医療現場から提供してもらうという画期的なシステムである。その案件第一号として逮捕されたのは、通り魔として面識のない女性を殺したとされる、フリーターのゲーマー馬場だった。半年近くも雪の中に埋まっていた女性の死体に被害者以外の血液が大量に附着しており、そのDNA型がDDPに記録されていた彼のものと一致したのだ。現在の検査方法でDNAの型が重なる確率は四兆七千億分の一。地球の人口は七十億人だから、まず間違いはないという。しかしどこか引っかかりを覚えた加納が捜査を開始してみると、馬場は殺された女性の夫が務めている会社と東城医大が共同研究している、治験の被験者になっていて……「四兆七千億分の一の憂鬱」
桜宮市でヤクザが立て続けに自殺する事件が起こっていた。みな同じ竜宮組系列の幹部クラスで、遺書を残して焼身自殺をしている。遺体は黒焦げで、人物同定はデンタルチェック、すなわち歯の治療記録の照合で行われていた。しかし桜宮でのデンタルチェックは、手書きのチャートと目視のみで行われる簡単なものだ。そして竜宮組は現在非常に羽振りがよく、幹部が自殺する理由など考えられない。そこで加納は、近々オープンするAiセンターのセンター長 田口に連絡を取り、焼死体を画像診断にかけるよう依頼した。その結果は……「エナメルの証言」

チーム・バチスタシリーズのスピンオフと題されていますが、キャラクターも時系列も完全に一致しているので、せいぜい「外伝」とでも称したほうがいいのではないでしょうか。
体裁としては、玉村警部補が桜宮市で加納警視正の携わった事件を取りまとめるため、高確率で巻き込まれていた田口先生の元へと協力要請にやってきて、愚痴外来で珈琲飲みつつ過去の事件について改めて振り返っていく形です。
「〜二十三区内外〜」は、「イノセント・ゲリラ〜」の中で触れられている、田口先生が偶然死体を見付けた事件。文庫版ではちゃんと本編に組み込まれているらしいですね。
……しかし前の晩にこんな事件に遭っているのに、何事もなかったかのように会議に参加していた田口先生がよっぽど大物なのか、それとも単に医者として死体に慣れているだけなのか……(汗)
なおこの作品はミステリものとしての要素は薄く、謎解きなんかもほとんどなし。いつものように白鳥さんが現在の死亡時診断について問題提起するお話でした。
「青空迷宮」は田口先生も医療現場も関わっていません。作中時系列は「イノセント・ゲリラ〜」まっただ中の2007年11月(※バチスタ・スキャンダルが2005年)。これが一番、短編ミステリっぽかったかな?
加納さんが犯人につきつけた証拠が「んな御都合主義な」と思ったら、あっさりハッタリで苦笑いしたりとか。
「四兆七千億〜」も、比較的ミステリ色が強かったです。時系列は「アリアドネの弾丸」直前らしく、これと次の話は、ちょっと読む順番を間違えたかなあという気もしたりとか。まあ致命的なネタバレはなかったですけどね。
検査方法が正確になればなるほど、扱う人間はそれに頼り切りになってはいけないという話でした。
あと玉村警部補が、ひそかにネトゲにハマっていることが判明したりとか(笑)
忙しい刑事の仕事と、他人と時間を合わせる必要があるネトゲって、両立できるものなんだろうか……?
「エナメル〜」は、一風変わったお話でした。物語のほとんどは「非合法行為を合理化し社会適応する団体」に雇われている死体の歯医者ネクロデンティスト栗田さんの語りで進みます。こういうのをコロンボ式というんでしょうか?
死体の歯を『治療』して、別人のカルテと同じものに仕上げてしまう栗田さんと、その師匠の高岡さん。異なった主義と技術を持つ二人のやりとりと、その結果出来上がる『別人の死体』の完成度の差。そしてそれを見破ろうとする加納さんや東城医大サイドの描写が、交互に出てきます。
栗田さん独特の人生観というか淡々とした語り口調に、気がつくと引きこまれている感じでした。
こちらは「アリアドネ〜」も通りすぎて、「ケルベロスの肖像」にまでかかっているらしいです。

……今回一番のネタバレは、「イノセント・ゲリラ〜」で警察庁に帰った加納さんが、また桜宮市に戻ってくることだったなあ……
あと田口先生がAiセンター長になることも、まだ本編では出てきてなかったんじゃなかったっけ?
まあそっちは、ネットやムック本で既に知っちゃってたからいいんですけどね(苦笑)
そして田口先生がなにか思わせぶりに、「残されたものが頑張らなくては」とか言ってるんですが……「アリアドネ〜」では誰かなんかヤバイことになっちゃう、とかあるのか……?
No.6096 (読書)


 2014年07月31日の読書
2014年07月31日(Thr) 
本日の初読図書:
4403670512番線―本にまつわるエトセトラ (ウンポコ・エッセイ・コミックス)
久世 番子
新書館 2008-03-27

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「配達あかずきん」のコミカライズについて調べていて、うっかり単行本化されていることを知り、ポチッとしてしまいました。
とにかく『本』についての『愛』をこれでもかと詰め込んだエッセイコミックです。
アマゾンさんの「なか見!検索」で、一話目をほぼ読めるのでご覧になってみていただけると、その独特のノリとあふれる愛が判ってもらえるんじゃないかと(笑)
もうね、この一話目で出てくる本居宣長の、本の貸し借りについてのエピソードが本好きにはすっげえ笑えるんだvv
今も昔も、読書家の考えることって変わらないんだなあ、と。
他にも気がつくと本棚が一杯になってるので、いかにして内部配置に試行錯誤するかとか、『本好きあるある』が目白押し。
後半は写植とか校正とか国会図書館の内部レポートといった、一般人には馴染みがないけれど、本好きなら興味津々な内容もあって、一冊で二度美味しいみたいな?

ただ掲載誌がBL系の雑誌だったため、ところどころにBL的な文例やたとえ話が入っているのが、ちょっと読む人を選ぶかもしれません。

ああ、国会図書館、私も一度は行ってみたいなあ……そして朝日ソノラマの廃刊雑誌『チャキチャキ』を出してもらって、単行本化されてない、氷室奈美さんの「砂塵の王国」を全ページコピーしてやるんだ……
No.6091 (読書)


 2014年07月30日の読書
2014年07月30日(Wed) 
本日の初読図書:
「旅行から娘が連れ帰ってきたのはどうやら異世界の勇者様らしい(小説家になろう)」〜勇者と聖女2
 http://ncode.syosetu.com/n2256bj/

二十三歳になった娘と旅行に出かけようとした直前、階段を踏み外して足を痛めた母親は、娘一人を旅行へ送り出し ―― そして帰ってきた娘は、旅行前よりいくらか髪が伸びており、そしてハリウッド俳優のような金髪に紫がかった青い瞳の美青年を連れていた。
「お母さん、私この人と結婚したから。で、この人、異世界では勇者なんて言われてたけど、この世界じゃ新居なんて用意できないし、お母さん一人だと心配だし、一緒に住む事に決めたけど問題無いよね」
ちなみに娘は超現実主義で、昔からアニメにも漫画にも興味はなかったが、母にはいくらかなりとそういったものの知識があった。
「これ、選ばれた勇者にしか持てない『せいけん』」
……ああ、『せいけん』って『聖剣』の事ね。
なんでも娘は旅行中に異世界へ飛んでしまい、三泊四日の間に一年をかけて、勇者とともに異世界を救ってきたのだという。
そして勇者は娘と結婚することを選び、彼女とともに日本へ渡ってきたと。
うん、想像以上にファンタジー。
ともあれ。戸籍もなにもないがゆえにニートとならざるを得ないけれど、順応性だけは高く主夫と化しつつある勇者と、異世界で聖女と呼ばれていた現実主義の娘と、なんだかんだで懐の広いお義母さんは、かくして共同生活を営むことになったのだった。

タイトルが全てを表しております(笑)
語り手は、女手ひとつで娘を育て上げた五十代になろうかという『お母さん』。
毎朝五時に起きて近所を散歩し、子どもたちと仲良く戯れるアグレッシブなニートの勇者と、嫁姑ならぬ婿姑のほのぼのした会話を繰り広げております。
異世界サイドではけっこう厳しい事もあったようですが、そのあたりは軽く触れる程度で。
長らく更新停止中なのが惜しまれます。
No.6089 (読書)


 2014年07月29日の読書
2014年07月29日(Tue) 
本日の初読図書:
「彼は素材屋(オンライン小説)」〜トニとの出会い 後編
 http://verbum.web.fc2.com/004sozaiya/sz-000.html

「彼は優しいご主人様」と同作者さんの、異世界トリップもの。読切連作。
神様の手違いで世界からつまみ出され、お詫びとして桁外れに膨大な魔力をつめ込まれ、着の身着のまま平成日本からファンタスティックな異世界へと送り出された日本人恭一が、趣味と実益を兼ねた「素材屋」を経営するお話。
素材屋とは魔法、錬金術、料理、工芸など多岐にわたる分野の素材を調達する仕事。観光と珍品コレクションが趣味の恭一は、有り余る魔力を無駄遣いして世界を行き来し、見付けた素材をストックしては、必要な人間に売りつける、と。品揃えの豊富さと、依頼されればどんなものでも納期を守って納品することから、その分野ではかなりの有名人となっているのだけれど、そもそもその分野の人間には変人が多く、必然的に交友関係は特殊なものに偏り気味で……といった感じ。
細かい所はさらりと流されて、個性的なキャラクターの軽妙なやりとりを楽しむタイプかと。


「家事手伝いシリーズ(オンライン小説)」〜その3−3
 http://verbum.web.fc2.com/005kaji/kaji-000.html

上に同じく、異世界召喚もの。現在三作目を連載停滞中。
家事手伝いをしているちょっと料理の得意な女性が、勇者や魔王や宇宙船内に召喚されて、料理をするお話。主役がけっこうちゃっかり者で、三話目頃にはいい加減に召喚慣れしているあたりがなんともはや(笑)
テンポの早さが面白みのひとつだけに、三話目がいいところでぶっちぎれているのが惜しまれます。
No.6079 (読書)


 2014年07月28日の読書
2014年07月28日(Mon) 
本日の初読図書:
4488487025晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫)
大崎 梢
東京創元社 2009-11-10

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駅ビル六階にある成風堂書店に務める書店員 杏子と、バイトの女子大生 多絵。
しっかりものの杏子と、手先が不器用だけれど頭の回転は良い多絵のコンビは、これまで本屋に関わるちょっとした謎をいくつも解いて来た。と、そんな杏子の元へとかつての同僚であり、今は長野の老舗書店に勤める美保から手紙が届く。なんでもその書店「まるう堂」こと宇都木堂書店で、幽霊騒ぎが起きているというのだ。現れるのは二十数年前に殺人事件を起こした、小松秋郎という男だと噂されているらしい。地元の名士で作家としても名の売れていた嘉多山成治のもと、住み込みで書生をしていた男たちの一人で、嘉多山が殺された日に死体の傍に血まみれで立ち尽くしているのを見つかり、そのまま逮捕されたのだという。犯行を肯定するでもなく否定するでもなく、ただ沈黙を貫いた彼は、情況証拠から投獄され、その二年後に獄中で死んだそうだ。
まるう堂の店主は生前から嘉多山成治と懇意にしており、秋郎とも家族ぐるみで親しく付き合いがあった。それだけに事件のことは衝撃的で、今でも割り切れないものを感じているのだという。
そんな秋郎の幽霊が現れた上に、最近になって当時の事件関係者のまわりで泥棒が入ったりボヤ騒ぎが起きたりといった物騒なことも起きているとのことで。
美保は手紙で杏子と多絵に対し、なんとか謎を解いて欲しいと助けを求めてくるのだが……

成風堂シリーズ、二冊目はいきなり番外的な出張長編です。
……んー、なんというかこの話はもうちょっと後、せめて4〜5巻目ぐらいに持ってきたほうが良かったんじゃないかなあと思いました。
今まで本屋さんの中で日常の謎を解いていた素人二人組が、いきなり長野まで足を運んで、過去のものとはいえ殺人事件の調査をするというのは、ちょっと違和感を感じてしまったり。
多絵ちゃんの意外な背景もチラ見されたりしたんですが、それも二人がもう少し実績を重ねてキャラが安定してきてからのほうが良かったような……

本屋さんは、店員とお客と出版社だけのものではない。作家さんもまたそこに大きく関わってきているのだ、という観点はおもしろかったんですけどね。
あと「まるう堂」さんのありかたが、ちょうどうちの地元にある某老舗書店を彷彿とさせる感じで、非常に親しみやすかったのも、個人的にはニヤリとできたんですが。

あと最後に、六本ほど4コマ漫画が収録されています。
これはマンガ版を描かれている方の手になるオマケでして、これがなかなかにおもしろく。
……っていうかこのノリと、作画の久世番子さんとやらの自画像になんか覚えがある……と思ったら、 あの書店勤務に関するエッセイコミック「暴れん坊本屋さん」とか、本に対する愛をおもしろおかしく描き綴った「番線」の作者さんか!! と。
これらは雑誌で連載していた当時に、本屋さんで立ち読みしながら思わずくすくす笑っちゃった作品でした(懐)
ああ、この人が作画担当しているのなら、原作の持つ「書店の意外な裏側、楽しく見せます」的テイストを、ちゃんと削らずに表現してくれているだろうと、なんだか安心しちゃいました。

ううう、マンガ版も読んでみたいなあ……でも置き場が……置き場がぁぁああ(苦悩)
No.6078 (読書)


 2014年07月27日の読書
2014年07月27日(Sun) 
本日の初読図書:
4796666761イノセント・ゲリラの祝祭
海堂 尊
宝島社 2008-11-07

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チーム・バチスタこと田口・白鳥シリーズの……ええと、何作目だっけ?
このシリーズは医療ミステリから始まったと思うんですが、じょじょにそのカテゴリから逸脱していっており、今回はもう完全にこれ推理小説じゃなかったですね……

厚生労働省で行われる「診察関連死死因究明等の在り方に関する検討会」、略称「医療事故調査委員会創設検討会」とかいう会議に無理やり招かれた田口先生と、その周囲を取り巻く濃ゆいキャラクター達。
そのそれぞれが田口先生に一目置くというか、彼をキーパーソンとみなして利用する形で、医療と司法のありかたについて激しく問題提起し議論を戦わせつつ、最終的には田口の大学時代の後輩で病理医の彦根が、ものすごい大風呂敷を広げたハッタリを隠れ蓑にしながら白鳥と結託、うやむやのうちに医療事故調査委員会へのエーアイ導入を認めさせるお話、とでもまとめればいいのか。
今回はほとんどが会議や、それぞれが巡らせる策略や駆け引きに費やされていて、正直私では脳ミソが追いつきませんでした(−ー;)
物語の中での時間は(おそらく)「螺鈿迷宮」よりちょっと後の8月に始まって、翌年の10月までの長丁場にわたります。会議が数ヶ月に一度のスパンで行われるため時間の飛び具合も激しく、ほとんど分単位で刻まれていたこれまでの作品とはずいぶん雰囲気が異なりました。

田口先生は、ある意味中心人物でありながら、誰よりも部外者であり、ただ一人すべてを俯瞰しているような立場です。要するにすべてが他人事(笑)
出世欲がまったくなく、失うものも持っていないから「それぐらいなら良いか」と納得ずくで利用されてやる懐の広さが田口先生。
あと事前準備とかまるでなしに、会議の開始寸前でいきなり「講演してくれるそうで」とか言われて、焦りもせずに即興でプレゼンかませる隠れ有能なところもさすがです。

しかし周囲(主に病院関係者)からの、田口先生への勘違いぶりがだんだん激しくなってきているのが楽しいですなあ(笑)
白鳥さんもそれを知っていて、「その大事件(バチスタ・スキャンダル)の最中、バッシングの嵐が吹き荒れる中、ただひとり出世し、リスクマネジメント委員会委員長の座を手にした猛者さ。上昇志向の強いイヤなヤツ。見かけは人が好さそうだけど、実はとんでもないヤツだから気をつけてね」とか敵対する官僚に大ボラ吹いてるしvv

あとこの巻は「ナイチンゲール〜」と「ジェネラル・ルージュ〜」がリンクしていたように、背後で他の作品とかなり繋がっているように感じました。たった一言でさらっと終わってしまった、「田口先生が通りすがりに死体を見付けた」事件は、おそらく「玉村警部補の災難」で詳しく語られているみたいですし、新聞記事のみで触れられ重要な要素のひとつとなる「産婦人科医が医療事故で逮捕された」という事件は、おそらく「極北クレイマー」のことだと思います。
……そしてこの極北っていうのは、たぶんジェネラル・ルージュ速水先生が、三年間の期限付きで島流しにあった、極北救命救急センターと関係があるんじゃないかとか。

ああもう、キャラクターやら時系列やらが絡みあいすぎて何が何だか!
くそう、この前に借りてきたムック本の、人物相関図をコピーし忘れたのは不覚だった!!

そんなこんなで、この巻だけでは解き明かされない謎とか、放りっぱなしになっているエピソードとかがけっこうあるので、なんだかちょっぴり消化不良な部分もあったりとか。

あと医療現場と官僚の世界が、ちょっと狭すぎるというか、田口・白鳥の友人知人が重要ポストにつき過ぎだろうという点も気にかかったり。

まあ、グイグイと読ませるその勢いは、確かに見事だと言えました。
さて次は「玉村警部補〜」あたりを読むべきかな……?
No.6075 (読書)


 2014年07月26日の読書
2014年07月26日(Sat) 
本日の初読図書:
「VRMMO エルフと鬼が旅する仮想世界(小説家になろう)」〜26. 浜辺の街道で
 http://ncode.syosetu.com/n5693bv/

旦那が鬼のタンカーで、嫁がエルフの格闘家。
βテストで知り合って結婚した二人が、正式サービスであらためてプレイを開始。βテスターでも特典はなく、人よりある程度慣れがあるというだけの状態なるも、βテストで二つ名持ちのトッププレイヤーだったプレイヤースキルを遺憾なく発揮しつつ、社会人の余暇としてのんびりマイペースにゲームを楽しんでゆくお話。
デスゲームにはならないし、チートもありません。
NPCと積極的に交流するなど、系統としては「とあるおっさん〜」を思わせる傾向ですかね。ただしこちらは生産はすべて人任せ。剣道や空手や合気道などのリアルスキルを武器に、とにかく戦いまくってます。特に嫁は一見大和撫子風なのにバトルジャンキー気味と、ギャップ好きにはなかなかなキャラクターvv
二人とも三十近いので、それなりに落ち着いたプレイスタイルなのも安心して読める所です。
No.6067 (読書)


 2014年07月25日の読書
2014年07月25日(Fri) 
本日の初読図書:
4120041379あんじゅう―三島屋変調百物語事続
宮部 みゆき
中央公論新社 2010-07

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封印されていた祟り神お旱様に取り憑かれ、周囲の水すべてが逃げてゆくようになってしまった山村の少年 平太。彼は村から追い出されるようにして江戸へと丁稚奉公へ来たものの、そこでも水甕や花瓶、井戸の水まで消えてしまい、厄介者扱いされていた。しかし彼に取り憑いたお旱さまにも、それなりの過去と事情があるようで……「逃げ水」
三島屋のお隣の針問屋、住吉屋の一人娘お梅が嫁入りすることになった。もう二十代も後半とずいぶんな嫁き遅れだが、そこには住吉屋のしきたりが大きく関わっていたらしい。それでもようやく無事に娘の嫁入りを終えたのち、住吉屋のお内儀は変わり百物語の客として、三島屋を訪れる……「藪から千本」
三島屋の丁稚 新太が手習いに通うようになって、同じ年頃の遊び友達ができた。その内の一人で、八百濃の跡取りとして養子に入ったという直太郎は、どうも落ち着きがなく何かきっかけがあると暴れだすという問題児だった。なんでも直太郎の実の父親は火事で死んだのだが、その父親に付け火と横領の嫌疑がかかっているのだという。養父母や周囲から父親を悪し様に言われ、子供ながら飲み込みきれないものが心に溜まり、ときおり爆発してしまうということだった。それらの事情をおちかへ話してくれたのは、直太郎が養子に入る以前に通っていた本所の手習所の若先生、青山利一郎。彼は直太郎の父親がおそらくは無実であると確信しているのだが、しかしその根拠になっているのはなんとも不可思議な、紫陽花屋敷に住まう黒いあやかしにまつわる物語で……「暗獣」
青山利一郎の知り人だという偽坊主 行然坊に興味を持ったおちかは、彼の話を聞きたいと百物語の客として三島屋へ招いた。やってきた行然坊は、三島屋を見て「妙な暈がかかってござる」「なにかおかしな出来事はないか」と言い出す。どうやらそれがこの行然坊のやり方で、彼はそうやって金持ちの家に入り込んでは適当な経を上げたりそれらしい説法をほどこして、礼物をもらっているのだという。しかし実は自分には、本当にそういった、怪しい気配を見る力があるのだと行然坊は告げる。そうして彼が語り始めたのは、まだ諸国を旅して回っていた若かりし頃に目の当たりにした、隠れ里のような山村が滅びていった経緯だった……「吼える仏」

シリーズ二冊目は四話収録。
一冊目に比べると、雰囲気がだいぶ明るくなったように思います。相変わらず人の悪意とか切ない展開はたっぷり出てくるんですが、それでも各話の終わりには、それなりに救いが見えています。
これはやはり、おちかの心の持ちようがだんだん変わってきたからなのでしょうか。
お勝さんや青山の若先生、行然坊といった魅力的なキャラクターも増えてきました。
個人的にはこういう雰囲気のほうが、なんというか心が安らぎます。一巻目の暗さにあきらめてしまわず、二巻目も手にとって良かったなあ…… 〈くろすけ〉の切なくも温かいエピソードはほんと泣ける( T _ T )

変わったといえば、一巻目のようにラストにいきなりスペクタクルな展開が入ることもありませんでしたね(苦笑)
いやまあ、盛り上がりはそれなりにありましたけれど、あくまでそれは『人間』のやることでした。
結局は人の悪意が一番怖いんだという点で、こちらの方がお話として収まりがいいと思います。
今回はおちかの過去もあんまり関わってはこず。
むしろ青山の若先生とおちかちゃんの今後が気になってくる所です。個人的には清太郎さんはおたかさんと幸せになって、おちかちゃんは青山さんとくっつけばいいと思うよvv

なお青山さんと行然坊および悪戯小僧三人組は、「ばんば憑き」に収録されている「討債鬼」で詳しい背景や出会い話が書かれています。

そして文庫版ではどうなっているか判りませんが、ハードカバー版では各見開きごとにカットが入っているのがなんとも豪華。
宮部さんだからこそ許される、贅沢なデザインだなあとつくづく思いました。
No.6037 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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