よしなしことを、日々徒然に……



 2014年12月24日の読書
2014年12月24日(Wed) 
本日の初読図書:
「ハルジオン〜口だけ野郎一代記〜(小説家になろう)」〜ふざけんな! エンジェルだろ当時の俺! いや、今だって大天使だよ!!
 http://ncode.syosetu.com/n9485cg/

二十一世紀末、世界各地に不思議な“孔”が空いた。
その内部はゲームで言うところのダンジョンのようで、様々なモンスターと、金属や薬草、その他諸々の摩訶不思議で、そして尽きることない資源が存在している。人類は試行錯誤して“孔”と付き合ってゆく方法を模索し、三世紀が過ぎる頃にはもう、その存在は非日常ではなくなっていた。
孔によってもたらされた恩恵により、人々の中には常人を越えた膂力や魔力と言った才能を持つ存在が現れるようになり、彼らの多くは冒険者として“孔”に潜っては、様々な資源を採取してくる。もはや世界は“孔”の存在なくして成り立たなくなっていた。
当然、冒険者という職業も、重要なものになっている。各地に冒険者を養成する学校ができ、そこを卒業した人間は、たとえ冒険者にはならずとも、民間企業への就職に有利に働くという。
そんな冒険者学校に、一人の少年が入学を志望した。彼の名は春風紫苑。漆黒の髪にヘーゼルの瞳を持つ、剃刀のように鋭い美貌を持つ無表情な十五歳。その適正は後衛の補助魔法で、力の強さはごく平均的なものに過ぎなかった。
しかし紫苑は、入学試験で起きた悲惨な事故を期に、教師達の目に留まる。確かにその戦闘能力は平々凡々。だが過酷な状況下においての判断力、精神力、そして仲間を想って泣ける魂の高潔さが、評価されたのだ。
かくして彼は、その実力からは異例とも言える抜擢を受け、最高レベルのAクラスへと入学することになった。そこで能力は高いがクセの強いメンバーと、否応なしにパーティーを組まされる。
ドイツ出身で槍の名手だが、強さを追求するあまり他のことをおろそかにしがちな少年、ルドルフ・フォン・ジンネマン。
目に見えぬ強靱な糸を自在に操る、旧家育ちの浮き世離れした少女、醍醐栞。
一分以内なら、たとえ心臓を吹き飛ばされても大丈夫だという強い回復魔法を扱えるものの、対象に触れなければ能力を発揮できない桝谷麻衣。
そして命をチップに危険と戯れることを至上の悦びとする、狂気の前衛 外道天魔。
そろいも揃って優秀である代わりに、非常に付き合いにくいパーティーメンバーだった。
しかし紫苑は誠実なその言葉と態度で、ほどなく彼らの尊敬を集め、リーダーとして強い信頼を寄せられてゆく。
けれど紫苑には、誰にも知られていない、とんでもない秘密が存在していて……

現在60話ちょいだったので気軽に読み始めてみたら、予想以上に一話一話が長くって、最新話に追いつくのに三日ぐらいかかってしまいました。
えー……タイトルからもお判りの通り、主人公の本性は口だけ野郎です(笑)
人の心を打つその弁舌も、時に流される清らかな涙も、すべてが保身の為だけにその場ででっち上げられた、演技と嘘八百ww
台詞の前後に( )でその時の本音が綴られてるんですが、まあ、その内面のゲスいこと。地の文でもツッコミが追いつきませんww
彼が考えていることはただ一つ。己の見栄、のみ!
むしろ見栄を守るためであれば日々の細かい努力を惜しまず、それどころか自分の腹だってぶっ刺すし、命さえかけられる。無様に生きて他人に嗤われるぐらいであれば、美しく死んで、死後にその行いを称えられることを望むあたり、いっそブレなく突き抜けています。
あ、ちなみにパーティーメンバーを含めたその他の人間に対しては、まったく思い入れを持っていません。むしろ常にすべてをディスりまくり。自分より優秀な存在はみんな死ねとか、普通に思考しています。
現在の一番の夢は、誰にも後ろ指をさされることない状況で危険なAクラスを抜け、平凡な成績で大過なく卒業し、民間企業に有利な条件で就職すること。そのためには「パーティーメンバーがダンジョンで全滅し、自分だけが生き残れば、これ以上仲間の死を見たくない……って泣いて見せて、格好良く冒険者を止められるよな」って本気で考えてるってあたり……(汗)
しかしそんなこんなな内面を一切周囲に悟らせておらず、完璧にコントロールできる表情筋と涙腺を駆使し、心に傷持つ人々を脳内で「(ザマァww)」と悦に入りつつ、「(ここで何もしないと、俺の評価が下がるからな。チッめんどくせえ)」と舌先三寸で慰める結果、周りからの評価はうなぎ登りの天井知らず。
そしてどんどん増えていく恋人志望は、彼にトラウマから救ってもらった結果、紫苑至上主義と化し、世間的な倫理観を遠く彼方へすっ飛ばした ヤ ン デ レ ヒ ロ イ ン ばかり(笑)
どうしてこうなった、と嘆くも、す べ て 自 業 自 得 。

更新ペースがそこそこ早く、文章量も多いので今後も楽しめそうです。
……ただ紫苑が本当にゲスで、常に周囲をディスりまくり。あと一章目からざっかざっか人が死んでいくし、猟奇的な展開も多いので、そのあたり苦手な方は要注意です。
まあ、なんだかんだで紫苑は抜けているところも多いので、思考がゲスくてもどこか憎めないんですけどねvv


あと関係ないですが、小説家になろう繋がりで。
403 シングル・ルーム」がついに完結しましたね。
最後がちょっと駆け足だったのがもったいなかったけど、今回も壮大なお話を楽しめました。新月さんの次作、今度は最初からリアルタイムで追っていけるといいなvv
No.6454 (読書)


 2014年12月19日の読書
2014年12月19日(Fri) 
本日の初読図書:
4104424013仮想の騎士
斉藤 直子
新潮社 2000-12

by G-Tools
時は1755年のパリ。フランス革命を三十年後に控えた、貴族政治爛熟の時代。
国王ルイ15世の従兄コンティ親王を主君に持つ騎士デオン・ド・ボーモンは、さる密命を帯びてロシアに送り出された。半フランス派であるロシア宰相の目をかいくぐり、女帝エリザヴェータにフランス国王の親書を届ける密使の護衛という任務である。しかし頼りだった密使は早々に逃げ出してしまい、取り残されたデオンは一人でロシア宮廷に潜入する羽目になった。
もともと彼は、騎士服を着ていてさえ、しばしば女性に間違われるほどの繊細な美貌を備えていた。そこで宰相の目を誤魔化すためにドレスを着用。令嬢リア・ド・ボーモンと名乗ると、首尾よく女帝の朗読の教師として雇われることに成功し、なんとかその任務を果たすことに成功した。
しかしそのようないかがわしい方法を取ったことは、故郷で待つ恋人クリスティーヌに対する、強烈な後ろめたさをもたらした。少年の日、騎士として出世するためパリに出てきて以来、手紙で言葉を交わすことしかできない、愛しい乙女クリスティーヌ ―― 彼女にこのような姿を知られたくないと、デオンは激しい羞恥を抱く。
しかし彼の想いとは裏腹に、ロシアに建てられることになったフランス大使館に、デオンは女性リア・ド・ボーモンとして赴任せよと、コンティ親王から命じられる。女帝と懇意であるからというのが、その理由だった。ところがそこへ、今度はルイ15世の愛妾であるポンパドゥール夫人から、騎士デオン・ド・ボーモンを大使館書記に任ずるという命が下る。二つの命令系統からの異なる指示に、デオンは困惑した。どうやら裏にはデオンの学問の師でもある、謎の男サンジェルマン伯爵の存在があるらしい。ポンパドゥール夫人とコンティ親王は、ルイ15世を挟んで政治的に対立しているのだが、サンジェルマン伯爵の取り成しがあったらしく、その関係でいろいろと混乱しているらしい。
デオンがロシアではリアという女性であることを知らないポンパドゥール夫人は、凄腕の騎士である彼の腕を見込んで、ロシア宰相を暗殺しろと命令してくる。
難題に困りながらも、ロシアに発ったデオン。
そしてそれを見守りながら、裏では何やら思惑があるらしいサンジェルマン伯爵。
やがてデオンはロシアの地で、恋人クリスティーヌの危機を耳にして ――

実在の人物、女装騎士であり凄腕スパイでもあるシャルル・ジュヌヴィエーヴ・ルイ・オーギュスト・アンドレ・ティモテ・デオン・ド・ボーモンを主役とし、やはり様々な有名実在人物と歴史事実を絡めた、『あの事件の真相は、実はこうだった』系のお話。あ、ファンタジー要素(錬金術)が入ってます。
私は最初このデオンという人物の存在をまったく知らずに読み始め、途中で「え? もしかして実在の人なの??」とネットで調べ、びっくりしました。
80年を超える生涯の内、前半生を男性として、後半生を女性として生きたって……そんなことが可能だったのか、当時のヨーロッパは(汗)

ともあれ。
表紙絵とあらすじ紹介やライトな文章から、純粋でちょっと不幸体質な青年の、爽やかかつコメディタッチな成長物語かと思っていたら、後半どんどん雰囲気が怪しくなってゆき、ラストはまさかの主役悪堕ち(汗)  ←ネタバレにつき要反転。

いやうん…… Wikipedia とかで調べてみると、どうやらデオンという人物は、けっこう性格が悪かったというのが通説らしく。それを踏まえるとこの終わり方は、むしろ納得がいくんですよ。若く素直で純粋だった若者が、いかにして後世に伝えられるような人物像になっていたのかを語ったお話として、これはありだと思います。
しかし予備知識なしに読んだ身としては、ちょっと裏切られた感が半端なかったッスね……(遠い目)

そもそも当時のヨーロッパ(特にフランス)関連の世界情勢や人物が、あんまり説明なしにガンガン出てくるので、気軽に手にとったのに、読んでいて脳内がぐーるぐーる( @ _ @ )
ほんの端役かと思っていたキャラまで、実はルイ15世を暗殺しそこねて処刑された人物だったとか、判るかーーーーっっ(ノ`□´)ノ 彡┻━┻。・;゜・。+ 

面白かった点としては、フランスをメイン舞台としているためか、イタリア訛りが関西弁で表現されています(笑)
文章も現代に立って書かれているため、当時はなかった技術や物品が例えとして使われており、かなり読みやすいです。
そしてデオンの老若男女を魅了する、無敵の美しさvv

先日ドラマ「雪之丞変化」で美輪さんの性別を超えた美しさを堪能したこともあり、デオンのそれもなんだか共通するものを感じました。
「女装の凄腕騎士(スパイ)」なんてキーワードに心惹かれる方は、とりあえず「シュヴァリエ・デオン」「ジャック・カサノヴァ」「サンジェルマン伯爵」「ダヴィンチの洗礼者ヨハネ」「フランツ・アントン・メスメル」「ポンパドゥール夫人」「ルイ15世」「カリオストロ伯爵」あたりについて検索してから、手にとってみられることをおすすめします。
No.6446 (読書)


 2014年12月17日の読書
2014年12月17日(Wed) 
本日の初読図書:
「竜に生まれ変わっても、ニートはニートを続けるのだ!(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n9596ce/

ネトゲの最中、突然の発作で死を遂げた大南梃太は、気が付くと卵の中にいた。苦労して殻を割り這い出してみると、そこは火山の噴火口。そして両手は鱗に覆われた異形と化している。さらに自分の体をよく見れば、羽の生えた爬虫類だ。そうして脳内に響く不思議な声。
――赤竜の子供。
どうやら自分は、一時期はやった異世界転生というやつで、竜の子供に生まれ変わったらしい。
疑問を抱くたびに脳内で答えてくれる声によって、現在の状況を把握してゆく。なんでも竜の親は超放任主義で、基本的に子供は産んだら放置だという。そしてとりあえず目の前のマグマに浸かって魔素を得ていれば、何も食べずとも餓え死にはしないようだ。
そんな訳で恐る恐るマグマに入ってみれば、竜の身体はたいしたもので、やや熱めの快適なお風呂程度。
ひとまず餓死の危機を脱した彼は、脳内に浮かぶ声について考えてみる。すると返った答えは「高階梯魔物の誕生初期段階における、知識サポート」とのこと。どうやら生まれて間もない頃限定ではあるが、この世界にいる全ての生物の蓄えられた記憶から、疑問に合う答えを自動検索して教えてくれるのだという。
そこでよくよく思考を突き詰めてみると、この知識サポートを、永続的に使用する方法もあるようだった。
そうして元ニートだった男は、溶岩風呂に浸かりながら工夫をこらし魔力を蓄え、一ヶ月をかけてついに知識サポートの固定に成功する。
よし、異世界でのネット環境ゲットだぜ! 邪魔な親はいないし、何も食べなくても溶岩風呂に入っているだけで生きていける。これはもう一生働かずにニート生活を満喫だ!!
……と喜んだのもつかの間。
何故か次々と現れる、盗賊や村人や冒険者や勇者。
一人引きこもってひっそりと暮らしたい彼なのに、押しかけてくる輩になにかと煩わされる羽目になって……

ニートは生まれ変わってもニートを貫く!
……つもりだったのに、なんだかいろいろ計算違いが……というお話。完結済。
知識サポート改め収束情報型知性体チサに言われるまま、いろいろとやらかしているうちに、いつの間にか上級竜に進化してしまって、本人あまり自覚なしに俺TUEEEE状態です。しかも意識は対人関係苦手なニートのままなので、極力荒事を避けよう避けようとしているのに、なぜか放っておいてくれない周囲が(笑)

テンプレなトリップ勇者や、ヤンデレ寸前ヒロインなども出てきて、異世界転生・トリップものを読みつけていると、お約束の茶化しぶりにクスリとできます。
No.6439 (読書)


 2014年12月16日の読書
2014年12月16日(Tue) 
本日の初読図書:
4103003154閻魔の世直し―善人長屋
西條 奈加
新潮社 2013-03

by G-Tools
悪党ばかりが集まる『善人長屋』こと千七長屋で、ただ一人心底からのお人好し加助。彼が今回拾ってきたのは、父親が商売に出たきり帰ってこないという、六人もの子供達だった。幸いにも父親はすぐに見つかる。なんでもいつもと違う方面へ出かけたところ、崖から落ちて動けないまま、3日も見つけてもらえなかったのだという。
しかも詳しく話を聞くと、その父親は怪しげな町人と若い侍が人殺しの算段をしているのを耳にしてしまい、追われて逃げる途中に足を踏み外したとのことだった。
それを聞いて、差配人であり故買屋の儀右衛門や、裏で情報屋を営んでいる髪結い床の半造は眉をひそめた。
つい先日、香具師の元締め辻屋が殺されたのだが、その日時や場所が父親が耳にした話と一致するのである。さらに調べてみると、他にも掏摸の元締め石火の伝造や、江戸一番の大盗人と謳われる月天のお頭こと丁兵衛といった、裏の世界の大物達が次々と襲われていた。そのどれもが、たまたま場に居合わせた使用人や妾などまで一刀で切り捨てるという、酷いやり口だそうで。
やがて読売屋に投げ文があり、やっているのは閻魔組と名乗る三人の侍だということが判明した。彼らは江戸にのさばる悪行を見過ごせず、閻魔に代わって悪党を成敗したと主張している。読売屋はこぞって大げさに記事を書き立て、町民たちは正義の味方が現れたと、やんやの喝采を送った。
しかし善人長屋の者達にとって、殺された元締めなどは、みな付き合いのある間柄。ことに月天のお頭は、つい半年前、加助の妻を助ける件でもずいぶんと世話になった。
確かに彼らや長屋の者達は、大手を振って道を歩けない稼業なのかもしれない。それでも悪人ならば殺されても構わないというのか。
複雑な思いを抱えるお縫の前に現れたのは、見慣れぬ歳若い定町廻り同心だった。白坂長門と言う堅物同心の彼は、「善人を気取るものほど、胡散くさい」と言って、千七長屋に目をつけているようだ。
そうこうするうちにも閻魔組の行動は留まるところを知らず、次々と盗賊ややくざ者らが無残に殺害されてゆく。しかし江戸の治安は良くなるどころか、束ねる要を失った下っ端達が利権を巡って争い始め、さらには江戸の外から流れ込んだ新たな盗賊たちが、荒っぽい手段で強盗を繰り返し、かえって人々の暮らしは悪くなってゆく一方で。
はたして閻魔組の真の目的は何なのか。また彼らはどうやって標的となる者達の所在や正体を探りだしているのか。
善人長屋の住人たちは、閻魔組の凶行を止めようと、ひそかに情報を集めていくのだが……

シリーズ二作目は、1冊1話の長編もの。
月天のお頭との関係など、前作から引き続いているエピソードがけっこうあるので、読む順番を間違えないようにしたいところです。

前回も蚊帳の外感が強かった加助さんは、今回も要所要所で顔見せはするものの、相変わらず長屋で何が起きているのかは全然判っていません。でも最初に目撃者(の子供達)を拾ってきたり、途中で怪我した白坂さんを拾ってきたり、最後は最後で彼の存在によって物語は日常に戻って行ったりするわけで、やはりキーキャラではあるんですよね。

白石さんについては、「ああ、はいはいそう言う事ですか」と思っていたら、ちゃんとどんでん返しが用意されていて、ちょっとホッとしたりとか。……それはさすがに西條さんを侮りすぎたか(苦笑)

そして今回も美味しいところを持っていく ―― と言うか、今回唯一良いことが会った文吉さん。
そうだよねえ、やっぱり彼だよねえ。文×縫押しの私には、文さんがちょっと報われたっぽいのが嬉しかったのでした。
No.6433 (読書)


 2014年12月12日の読書
2014年12月12日(Fri) 
本日の初読図書:
4334925634烏金
西條 奈加
光文社 2007-07

by G-Tools
烏金とは貧乏人が、その日暮らすのに必要な銭を、朝カラスがカアと鳴く時に借りてゆき、夕方カアと鳴く時間に一日の稼ぎの中から利息をつけて返すことから名がついた、その日払いの日銭貸しのことだ。一日一割の利息を払えなければ、元金に追加されて、どんどん借金は膨れ上がる。
江戸は三軒町に住む因業な金貸し婆ことお吟の元へ、浅吉と名乗る若い男がやってきた。田舎から出てきて日雇い仕事をしていたが、先日の火事で焼け出されてしまい、住むところがないと言う。そうして彼は、どうせなら今までしたことがない仕事をやりたいから金貸しの手伝いをさせてくれと、半ば無理矢理に転がり込んだ。
お吟の助手となった浅吉は、焦げ付いた厄介な借金を持つ人々にさまざまな知恵を貸し、新しい働き口を見つけてやったり商売の方法を工夫させることで、見事に貸し倒れ寸前だった借金を回収してゆく。
人当たりの良い笑顔と、親身になって相談に乗ってくれること。そしてマメに気を遣ってくれることなどから、浅吉はだんだん人々の信頼を勝ち取り、客に笑顔で挨拶されるという、いっぷう変わった借金取りになっていった。
しかしそんな浅吉には、大きな秘密があったのだ。
実は彼は、最初からお吟の財産を目当てに近付いたのである。
お吟は溜め込んだ金を、烏のようにどこかへ隠しているはず。それを見つけ出し、丸ごとせしめるのが浅吉の目的だった。返せぬ借金を整理して、首が回らぬ貧乏人たちに生記の道を世話してやるのも、お吟を儲けさせることでいずれは自分の懐に入る金を、少しでも増やしてやりたいがため。
果たして浅吉は、首尾よく大金を手に入れられるのか……?

西条さんの江戸もの。今度は因業(?)な金貸しのお話です。
「お江戸の企業アドバイザー、走る!(坂木司)」なんて解説文に、思わず笑っちゃいましたvv
貧乏浪人には商家の用心棒の口を紹介し、潰れる寸前だった八百屋には、質のいい仕入先や取引先と引きあわせつつ、目玉商品になるよう、やはり身売り目前だった少女の作るめっぽう旨い漬物を店に置かせる。
多重債務に押しつぶされかけていたお武家さまに、借金と現在の資産を残らず書き出させ、不正に多く取られていた利息を洗い出しつつ、利息の多いものから優先して返却させてみたり。
カッパライで食いつないでいた浮浪児達を説き伏せて、元手を貸してやり、稲荷寿司売りを始めさせてみたりと、もはや金貸しというよりコンサルティングな投資家。
すべてが順風満帆に行く訳ではなく、危ない目にも遭うし、計算違いもたくさんある。
お吟さんとの関係だって、元の目的が目的だから、認められてハイおしまい目出度し目出度しではすまないし。
あちこちで裏切られたり、恋に破れたりといろいろあるけれど、それでも最後の最後には、切なくも温かな読後感を味わえました。
一生懸命生きている人には、ちゃんとそれに応じた報いがあるんだよと、そう思えるお話です。

……とか言いつつ、実は読んでて一番ほっこりしたのは、浅吉の相棒で、雛の時から育ててやったカラスの勘左との絆だったりするんですが(笑)

ちなみに浅吉さんが金勘定に強いのは、算学を学んでいたからだと、ちゃんと理由付けができています。
江戸の頃に流行っていた和算って、いま見てもものすごく難しい問題を、計算機もなしに解いちゃうんだから、ほんとにすごいんですよね……

個性的な脇キャラ達の、今後がちょっぴり気になる一冊でした。
No.6422 (読書)


 2014年12月11日の読書
2014年12月11日(Thr) 
本日の初読図書:
「ぽっちゃりの動く飯屋(小説家になろう)」〜門番
 http://ncode.syosetu.com/n1928by/

太った女子高生が異世界転生したら、そこでは美醜の価値観が違っていて絶世の美女扱い。
食事も美味しくないので、前世の知識とチートな能力を活かして新たな味覚を生み出して。
今ではお金持ちになったけれど、殺伐とした世界のなか子供の頃には周囲に疎まれたりしたせいで人間不信かつ、この世界の一般的な美形=デブだからまともに恋愛ができない。よし、絶対に裏切らないよう、痩せた奴隷を買って結婚しよう!
という、まあ割りとお約束な感じのお話。女性主人公と男性奴隷っていうのは珍しいパターンですが。
視点が主人公側と奴隷側からと、交互に描写されています。まあ、お互いそれなりにラブラブ。
タイトルの飯屋部分がまだほとんど語られていないのと、更新が止まってること、ちょっと世界観が浅く感じられるのがネックでしょうか。
あ、虫食べてたりするので、そっち系が苦手な人も要注意かもです。
No.6416 (読書)


 2014年12月09日の読書
2014年12月09日(Tue) 
本日の初読図書:
4434185993天井裏からどうぞよろしく (レジーナブックス)
くる ひなた
アルファポリス 2013-11

by G-Tools
冒頭の流れはWEB版とアルファポリスのWEBマンガを読んだ時に書いているので、省略。
書籍版、買っちゃいました(笑)
内容は大幅書き下ろし。全十章のうち、短編のWEB版と公開済みWEBマンガの第一話部分は、第一章で語られ終えてしまいます。
実は密偵に扮して、天井裏に出入りしていた皇帝陛下。彼に見初められ、嫁入り先を強引に皇帝陛下の元へと変更された少女は、その後「自分は密偵として皇帝に協力し、しばらく皇妃候補のふりをすることになったのだ」と思い込み、本気で少女と婚約したつもりの皇帝との、すれ違い気味なラブコメが展開vv
この段階で、少女にとっての皇帝は、あくまで優しいお兄さんレベルです。好意を抱いてはいるし、全力で力になろうとはしていますが、あくまでそこ止まり。
しかしプロ意識高く、「潜入任務として完璧に皇妃候補を演じきってみせる」と決意しているため、パーティーでの礼儀作法などは庶民出に似合わずバッチリこなしています。そういう点でポカをやって周囲から呆れられることもなく、見事にこなしていくのが好感度高いです。

……ただ密偵としてはけっこうスペック高いのに、年頃の少女としてはあり得んほどにいろんな意味で世間知らずかつ天然なのは、子供の頃から訓練漬けだったが故なのか。むしろ子供の頃から女密偵の訓練を受けていたのなら、もうちょっと早くいろんなことを教わっていそうなものなのですが……そこは義父義兄達によって阻止されていたのかなあ。
精神年齢的には十七才というより、十三〜四才ぐらいと思って読んだほうがしっくり来るかもしれません。中世のトルコとかペルシャっぽい世界観的にも、貴族女性が成人と見なされて結婚するのってそれぐらいでしょうし。

皇帝に見出された少女が、その無邪気な天真爛漫さで周囲の人々を魅了してゆく、ある意味王道シンデレラ・ストーリー。
ちょっと少女の無垢さが過ぎて鼻につく部分もありますが、それでもある一点で、私は彼女を見直しました。
それは自分の本当の祖国が、どうして戦争に巻き込まれたのかを知った時。
それは表向き、先代皇帝が唯一の妃を想って、彼女の故郷を守るために行なった、いわば私情による戦争だと語られます。先代皇帝の私情によって、少女の本当の両親は戦火のなか死んでいったのだと。
しかし彼女はすぐに、それが世間向けに作られた美談だと見抜きます。そしてホッとするのです。
先代皇帝が妻を想った、人間的な部分に安易に心ほだされるのではなく。
あの戦いには隠された政治的な意味がちゃんと存在した。そしてその戦争の結果、いま自分の本当の祖国は戦争前よりもずっと豊かになっている。ならば自分はけして先代皇帝を、そして彼と血が繋がっているというだけの現皇帝を、無闇に恨むことはすまいと。

そんな、冷静に物事を分析できる部分にこそ、彼女の人間としての『器』を感じたのでした。

あ、さっきから少女とか皇帝とか書いてますが、この話はすごいことに、一冊300Pを通じてまったく固有名詞が出てきません。地名も人名も、みんな「属国」とか「北の連邦国」とか「宰相」とか「参謀長」とか。
少女もずっと少女とか、せいぜい「おチビ」呼ばわり。ある意味徹底していて、むしろ話が判りやすいです。

宰相がまた、いい味出してるんだよなあ、クセモノっぽくて<もちろん美青年
彼がやらかした数々のあれこれを、きっちり乗り越えた少女に拍手。
あと天井裏に潜みつつ、時にそっとかつ粋に力を貸してくれるおっさん密偵ズの存在も忘れてはいけません。酒税対策に作られた、酒精抜きの麦酒を片手に、おっさん達は可愛い“娘”を全力で見守り続けるのでした★

なお続刊も出ているようですが、これ一冊できれいに落ちが付いているので、これだけ読むのもありだと思います。
No.6411 (読書)


 2014年12月01日の読書
2014年12月01日(Mon) 
本日の初読図書:
4101357749善人長屋 (新潮文庫)
西條 奈加
新潮社 2012-09-28

by G-Tools
差配人の儀右衛門が千鳥屋という質屋を営んでいることから、千七長屋の名を持つその長屋は、善人ばかりが住んでいると、周囲から『善人長屋』の異名で親しまれていた。ところがその実態はといえば、千鳥屋は裏で盗品を捌いているし、髪結い床の半造は情報屋をやっていて、文吉・唐吉の兄弟は季節のものを振り売りしながら美人局稼業。小間物商いの安太郎は巾着切りで、下駄売りの庄治は空き巣や夜盗を繰り返し、煮豆売りの菊松・お竹夫婦も詐欺騙り、浪人の梶新九郎は代書屋の傍ら偽の証文や手形作りを裏の生業としている。
そう、善人長屋の住人は、揃いも揃って『悪党』揃いであったのだ。
裏稼業の間では重宝されているそんな長屋に、新たな住人がやって来ることになった。なんでも三河は赤坂で錠前破りをやっていた男なのだという。
ところが現れた錠前屋の加助は、なんとも人が良さげで涙もろく、他人の難儀を目にすると無条件に首を突っ込んでは助けようとするお人好しがすぎるほどの、文字通り『善人』で。
儀右衛門の娘お縫や長屋の面々は、次々と厄介事を拾ってくる加助に振り回されながらも、時にしぶしぶ時に進んで人助けに手を貸すことになるのだが……

「お蔦さんの神楽坂日記」シリーズが面白かったので、同作者さんの時代物を借りてみました。全9篇からなる短篇集。
んー……面白い設定だとは思うんですが、ちょっとパンチが弱いかな?
個性的なはずの長屋の面々なのに、誰がどんな稼業だったかとか、ちょっと頭に入りにくかったです。まあとりあえずは、美人局の色男 文さんと差配人の娘お縫だけ覚えておけばいいような気もしますが。
でも最初の頃にちょっとだけ名前が出た盗賊のお頭とかが、あとからもちょいちょい関わってきたりとかして、ちゃんと読みこめばかなり楽しいと思うんですよ。

面倒を拾うだけ拾ってきて、皆が裏稼業を駆使して奔走する間、自分は蚊帳の外になってるっぽい加助さん。
彼がどうしてそこまでお人好しになってしまったのかは、書き下ろしのラスト二編で語られています。
時に苛立たしいほどに人が良すぎるように見えた彼が、その内に秘めていた傷。これはかなり重かったです。
この加助さんは、いつまでも何も知らないままで過ごすのか。あるいは知っていて、知らないふりを続けていくのか。それはどうなるのか判りませんが……悪の道にありながら人の心を忘れずにいる、一種いびつな長屋の面々にとっては、逆の方向にいびつな彼とともにあることで、ある意味上手くバランスがとれているのかなあと。
そんなふうに思えるお話だったのでした。
No.6399 (読書)


 2014年11月30日の読書
2014年11月30日(Sun) 
本日の初読図書:
「領主を継いだので好き勝手やってみた(小説家になろう)」〜領主を継いだので散財してやる
 http://ncode.syosetu.com/n0159ck/

武勇に長けた父親が死んだので、若くして領主を継いだボンクラ息子。
部屋でゴロゴロして娯楽小説を読むのと、美味しいものを食べることにしか興味のなかった彼は、よしこれで好き勝手に贅沢ができるぜ! と小躍りした。
そうして彼は美食を求めて領民たちを過酷な労働へと駆り立て、仕事を肩代わりさせるため子供をさらってきては自分に逆らわぬよう洗脳し、下女に手を付けて子供を産ませたりするのだが……

加筆修正版は連載中だし冗長になりそうなので、とりあえず二話で完結しているパイロット版の方をオススメ。
本人は悪役を目指して好き勝手に行動しているのに、結果として領民に慕われる善政を敷いた名君として語られるという、双方にとっての勘違いモノです。
いつも書いてますが、モブ視点も好きなので、こういうのも楽しいです。
No.6396 (読書)


 2014年11月29日の読書
2014年11月29日(Sat) 
本日の初読図書:
4488025293ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)
近藤 史恵
東京創元社 2008-06

by G-Tools
料理が趣味の常連客。しかし彼のスキレット(鍋)は、何故きちんと手入れを続けてもすぐに錆びるのか。
肉も砂糖も一切使わないで欲しい。そうリクエストした女性客は三舟シェフの料理にいたく満足して帰った。しかし彼女達の話をきいた料理人二人が、複雑な表情をしたその理由は。
パ・マルのオーナー小倉が、新しく出店することになったパン屋。パン職人の中江はフランス風の本格パンを焼くと張り切っていたのに、急に姿を消したのはどうしてか。
来ると必ずブイヤベースを頼む若い女性客。三舟が彼女のことを気になると言い出して、ギャルソンの高槻とソムリエの金子は浮足立つが……
十年ごしの片思いの末、ようやく結ばれた恋人に突然出て行かれた青年は、ひどく荒れていた。彼の話を聞いたフレンチレストランの店員は、温かいスープを出してくれる。
海外暮らしのさなか恋人にひどい仕打ちを受けた女性は、やけのように贅沢な外食を繰り返した。そしてフランスの小さな町のレストランで、たまたま相席になった料理人見習いの日本人男性に、愚痴を聞いてもらうことになって……
貧乏旅行の果てにフランスへたどり着いた青年は、風邪をひいて倒れた所を安ホテルで同室になった日本人に味噌汁と卵粥をふるまってもらい回復する。そしてフランスでは風邪の時の定番だという、ヴァン・ショーというホットワインを飲みに出かけた。だがうまいと評判の屋台のおばさんは、もうこれまでのレシピをやめたと言っていて……

フレンチレストランを舞台にした短篇集「タルト・タタンの夢」の続編。
今回も日常の謎をメインに200Pで七本と、さくさくと話が進んでいきます。
謎だけ解いて結果どうなったかは語られなかったり、あとは当事者たちに任せるという一歩引いたスタンスもこれまで通り。
ただ七作中後半の三作は、語り手がギャルソンの高槻智行くんではなくゲストキャラでした。時系列も二作はパ・マルが開店するより前。
……さすがにレストランという限られた舞台では、ネタが尽きてきたのでしょうかね(苦笑)
でもこれまで謎だった三舟シェフの修行時代がかいま見えたり、一巻でキー・アイテムとして活躍していたヴァン・ショー(ホットワイン)の由来が語られたりと、番外編としては楽しいところ。
私はモブ視点もけっこう好きなので、たまにはこういう趣向も悪くないパ・マルです。
No.6395 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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