よしなしことを、日々徒然に……



 2014年12月16日の読書
2014年12月16日(Tue) 
本日の初読図書:
4103003154閻魔の世直し―善人長屋
西條 奈加
新潮社 2013-03

by G-Tools
悪党ばかりが集まる『善人長屋』こと千七長屋で、ただ一人心底からのお人好し加助。彼が今回拾ってきたのは、父親が商売に出たきり帰ってこないという、六人もの子供達だった。幸いにも父親はすぐに見つかる。なんでもいつもと違う方面へ出かけたところ、崖から落ちて動けないまま、3日も見つけてもらえなかったのだという。
しかも詳しく話を聞くと、その父親は怪しげな町人と若い侍が人殺しの算段をしているのを耳にしてしまい、追われて逃げる途中に足を踏み外したとのことだった。
それを聞いて、差配人であり故買屋の儀右衛門や、裏で情報屋を営んでいる髪結い床の半造は眉をひそめた。
つい先日、香具師の元締め辻屋が殺されたのだが、その日時や場所が父親が耳にした話と一致するのである。さらに調べてみると、他にも掏摸の元締め石火の伝造や、江戸一番の大盗人と謳われる月天のお頭こと丁兵衛といった、裏の世界の大物達が次々と襲われていた。そのどれもが、たまたま場に居合わせた使用人や妾などまで一刀で切り捨てるという、酷いやり口だそうで。
やがて読売屋に投げ文があり、やっているのは閻魔組と名乗る三人の侍だということが判明した。彼らは江戸にのさばる悪行を見過ごせず、閻魔に代わって悪党を成敗したと主張している。読売屋はこぞって大げさに記事を書き立て、町民たちは正義の味方が現れたと、やんやの喝采を送った。
しかし善人長屋の者達にとって、殺された元締めなどは、みな付き合いのある間柄。ことに月天のお頭は、つい半年前、加助の妻を助ける件でもずいぶんと世話になった。
確かに彼らや長屋の者達は、大手を振って道を歩けない稼業なのかもしれない。それでも悪人ならば殺されても構わないというのか。
複雑な思いを抱えるお縫の前に現れたのは、見慣れぬ歳若い定町廻り同心だった。白坂長門と言う堅物同心の彼は、「善人を気取るものほど、胡散くさい」と言って、千七長屋に目をつけているようだ。
そうこうするうちにも閻魔組の行動は留まるところを知らず、次々と盗賊ややくざ者らが無残に殺害されてゆく。しかし江戸の治安は良くなるどころか、束ねる要を失った下っ端達が利権を巡って争い始め、さらには江戸の外から流れ込んだ新たな盗賊たちが、荒っぽい手段で強盗を繰り返し、かえって人々の暮らしは悪くなってゆく一方で。
はたして閻魔組の真の目的は何なのか。また彼らはどうやって標的となる者達の所在や正体を探りだしているのか。
善人長屋の住人たちは、閻魔組の凶行を止めようと、ひそかに情報を集めていくのだが……

シリーズ二作目は、1冊1話の長編もの。
月天のお頭との関係など、前作から引き続いているエピソードがけっこうあるので、読む順番を間違えないようにしたいところです。

前回も蚊帳の外感が強かった加助さんは、今回も要所要所で顔見せはするものの、相変わらず長屋で何が起きているのかは全然判っていません。でも最初に目撃者(の子供達)を拾ってきたり、途中で怪我した白坂さんを拾ってきたり、最後は最後で彼の存在によって物語は日常に戻って行ったりするわけで、やはりキーキャラではあるんですよね。

白石さんについては、「ああ、はいはいそう言う事ですか」と思っていたら、ちゃんとどんでん返しが用意されていて、ちょっとホッとしたりとか。……それはさすがに西條さんを侮りすぎたか(苦笑)

そして今回も美味しいところを持っていく ―― と言うか、今回唯一良いことが会った文吉さん。
そうだよねえ、やっぱり彼だよねえ。文×縫押しの私には、文さんがちょっと報われたっぽいのが嬉しかったのでした。
No.6433 (読書)


 2014年12月12日の読書
2014年12月12日(Fri) 
本日の初読図書:
4334925634烏金
西條 奈加
光文社 2007-07

by G-Tools
烏金とは貧乏人が、その日暮らすのに必要な銭を、朝カラスがカアと鳴く時に借りてゆき、夕方カアと鳴く時間に一日の稼ぎの中から利息をつけて返すことから名がついた、その日払いの日銭貸しのことだ。一日一割の利息を払えなければ、元金に追加されて、どんどん借金は膨れ上がる。
江戸は三軒町に住む因業な金貸し婆ことお吟の元へ、浅吉と名乗る若い男がやってきた。田舎から出てきて日雇い仕事をしていたが、先日の火事で焼け出されてしまい、住むところがないと言う。そうして彼は、どうせなら今までしたことがない仕事をやりたいから金貸しの手伝いをさせてくれと、半ば無理矢理に転がり込んだ。
お吟の助手となった浅吉は、焦げ付いた厄介な借金を持つ人々にさまざまな知恵を貸し、新しい働き口を見つけてやったり商売の方法を工夫させることで、見事に貸し倒れ寸前だった借金を回収してゆく。
人当たりの良い笑顔と、親身になって相談に乗ってくれること。そしてマメに気を遣ってくれることなどから、浅吉はだんだん人々の信頼を勝ち取り、客に笑顔で挨拶されるという、いっぷう変わった借金取りになっていった。
しかしそんな浅吉には、大きな秘密があったのだ。
実は彼は、最初からお吟の財産を目当てに近付いたのである。
お吟は溜め込んだ金を、烏のようにどこかへ隠しているはず。それを見つけ出し、丸ごとせしめるのが浅吉の目的だった。返せぬ借金を整理して、首が回らぬ貧乏人たちに生記の道を世話してやるのも、お吟を儲けさせることでいずれは自分の懐に入る金を、少しでも増やしてやりたいがため。
果たして浅吉は、首尾よく大金を手に入れられるのか……?

西条さんの江戸もの。今度は因業(?)な金貸しのお話です。
「お江戸の企業アドバイザー、走る!(坂木司)」なんて解説文に、思わず笑っちゃいましたvv
貧乏浪人には商家の用心棒の口を紹介し、潰れる寸前だった八百屋には、質のいい仕入先や取引先と引きあわせつつ、目玉商品になるよう、やはり身売り目前だった少女の作るめっぽう旨い漬物を店に置かせる。
多重債務に押しつぶされかけていたお武家さまに、借金と現在の資産を残らず書き出させ、不正に多く取られていた利息を洗い出しつつ、利息の多いものから優先して返却させてみたり。
カッパライで食いつないでいた浮浪児達を説き伏せて、元手を貸してやり、稲荷寿司売りを始めさせてみたりと、もはや金貸しというよりコンサルティングな投資家。
すべてが順風満帆に行く訳ではなく、危ない目にも遭うし、計算違いもたくさんある。
お吟さんとの関係だって、元の目的が目的だから、認められてハイおしまい目出度し目出度しではすまないし。
あちこちで裏切られたり、恋に破れたりといろいろあるけれど、それでも最後の最後には、切なくも温かな読後感を味わえました。
一生懸命生きている人には、ちゃんとそれに応じた報いがあるんだよと、そう思えるお話です。

……とか言いつつ、実は読んでて一番ほっこりしたのは、浅吉の相棒で、雛の時から育ててやったカラスの勘左との絆だったりするんですが(笑)

ちなみに浅吉さんが金勘定に強いのは、算学を学んでいたからだと、ちゃんと理由付けができています。
江戸の頃に流行っていた和算って、いま見てもものすごく難しい問題を、計算機もなしに解いちゃうんだから、ほんとにすごいんですよね……

個性的な脇キャラ達の、今後がちょっぴり気になる一冊でした。
No.6422 (読書)


 2014年12月11日の読書
2014年12月11日(Thr) 
本日の初読図書:
「ぽっちゃりの動く飯屋(小説家になろう)」〜門番
 http://ncode.syosetu.com/n1928by/

太った女子高生が異世界転生したら、そこでは美醜の価値観が違っていて絶世の美女扱い。
食事も美味しくないので、前世の知識とチートな能力を活かして新たな味覚を生み出して。
今ではお金持ちになったけれど、殺伐とした世界のなか子供の頃には周囲に疎まれたりしたせいで人間不信かつ、この世界の一般的な美形=デブだからまともに恋愛ができない。よし、絶対に裏切らないよう、痩せた奴隷を買って結婚しよう!
という、まあ割りとお約束な感じのお話。女性主人公と男性奴隷っていうのは珍しいパターンですが。
視点が主人公側と奴隷側からと、交互に描写されています。まあ、お互いそれなりにラブラブ。
タイトルの飯屋部分がまだほとんど語られていないのと、更新が止まってること、ちょっと世界観が浅く感じられるのがネックでしょうか。
あ、虫食べてたりするので、そっち系が苦手な人も要注意かもです。
No.6416 (読書)


 2014年12月09日の読書
2014年12月09日(Tue) 
本日の初読図書:
4434185993天井裏からどうぞよろしく (レジーナブックス)
くる ひなた
アルファポリス 2013-11

by G-Tools
冒頭の流れはWEB版とアルファポリスのWEBマンガを読んだ時に書いているので、省略。
書籍版、買っちゃいました(笑)
内容は大幅書き下ろし。全十章のうち、短編のWEB版と公開済みWEBマンガの第一話部分は、第一章で語られ終えてしまいます。
実は密偵に扮して、天井裏に出入りしていた皇帝陛下。彼に見初められ、嫁入り先を強引に皇帝陛下の元へと変更された少女は、その後「自分は密偵として皇帝に協力し、しばらく皇妃候補のふりをすることになったのだ」と思い込み、本気で少女と婚約したつもりの皇帝との、すれ違い気味なラブコメが展開vv
この段階で、少女にとっての皇帝は、あくまで優しいお兄さんレベルです。好意を抱いてはいるし、全力で力になろうとはしていますが、あくまでそこ止まり。
しかしプロ意識高く、「潜入任務として完璧に皇妃候補を演じきってみせる」と決意しているため、パーティーでの礼儀作法などは庶民出に似合わずバッチリこなしています。そういう点でポカをやって周囲から呆れられることもなく、見事にこなしていくのが好感度高いです。

……ただ密偵としてはけっこうスペック高いのに、年頃の少女としてはあり得んほどにいろんな意味で世間知らずかつ天然なのは、子供の頃から訓練漬けだったが故なのか。むしろ子供の頃から女密偵の訓練を受けていたのなら、もうちょっと早くいろんなことを教わっていそうなものなのですが……そこは義父義兄達によって阻止されていたのかなあ。
精神年齢的には十七才というより、十三〜四才ぐらいと思って読んだほうがしっくり来るかもしれません。中世のトルコとかペルシャっぽい世界観的にも、貴族女性が成人と見なされて結婚するのってそれぐらいでしょうし。

皇帝に見出された少女が、その無邪気な天真爛漫さで周囲の人々を魅了してゆく、ある意味王道シンデレラ・ストーリー。
ちょっと少女の無垢さが過ぎて鼻につく部分もありますが、それでもある一点で、私は彼女を見直しました。
それは自分の本当の祖国が、どうして戦争に巻き込まれたのかを知った時。
それは表向き、先代皇帝が唯一の妃を想って、彼女の故郷を守るために行なった、いわば私情による戦争だと語られます。先代皇帝の私情によって、少女の本当の両親は戦火のなか死んでいったのだと。
しかし彼女はすぐに、それが世間向けに作られた美談だと見抜きます。そしてホッとするのです。
先代皇帝が妻を想った、人間的な部分に安易に心ほだされるのではなく。
あの戦いには隠された政治的な意味がちゃんと存在した。そしてその戦争の結果、いま自分の本当の祖国は戦争前よりもずっと豊かになっている。ならば自分はけして先代皇帝を、そして彼と血が繋がっているというだけの現皇帝を、無闇に恨むことはすまいと。

そんな、冷静に物事を分析できる部分にこそ、彼女の人間としての『器』を感じたのでした。

あ、さっきから少女とか皇帝とか書いてますが、この話はすごいことに、一冊300Pを通じてまったく固有名詞が出てきません。地名も人名も、みんな「属国」とか「北の連邦国」とか「宰相」とか「参謀長」とか。
少女もずっと少女とか、せいぜい「おチビ」呼ばわり。ある意味徹底していて、むしろ話が判りやすいです。

宰相がまた、いい味出してるんだよなあ、クセモノっぽくて<もちろん美青年
彼がやらかした数々のあれこれを、きっちり乗り越えた少女に拍手。
あと天井裏に潜みつつ、時にそっとかつ粋に力を貸してくれるおっさん密偵ズの存在も忘れてはいけません。酒税対策に作られた、酒精抜きの麦酒を片手に、おっさん達は可愛い“娘”を全力で見守り続けるのでした★

なお続刊も出ているようですが、これ一冊できれいに落ちが付いているので、これだけ読むのもありだと思います。
No.6411 (読書)


 2014年12月01日の読書
2014年12月01日(Mon) 
本日の初読図書:
4101357749善人長屋 (新潮文庫)
西條 奈加
新潮社 2012-09-28

by G-Tools
差配人の儀右衛門が千鳥屋という質屋を営んでいることから、千七長屋の名を持つその長屋は、善人ばかりが住んでいると、周囲から『善人長屋』の異名で親しまれていた。ところがその実態はといえば、千鳥屋は裏で盗品を捌いているし、髪結い床の半造は情報屋をやっていて、文吉・唐吉の兄弟は季節のものを振り売りしながら美人局稼業。小間物商いの安太郎は巾着切りで、下駄売りの庄治は空き巣や夜盗を繰り返し、煮豆売りの菊松・お竹夫婦も詐欺騙り、浪人の梶新九郎は代書屋の傍ら偽の証文や手形作りを裏の生業としている。
そう、善人長屋の住人は、揃いも揃って『悪党』揃いであったのだ。
裏稼業の間では重宝されているそんな長屋に、新たな住人がやって来ることになった。なんでも三河は赤坂で錠前破りをやっていた男なのだという。
ところが現れた錠前屋の加助は、なんとも人が良さげで涙もろく、他人の難儀を目にすると無条件に首を突っ込んでは助けようとするお人好しがすぎるほどの、文字通り『善人』で。
儀右衛門の娘お縫や長屋の面々は、次々と厄介事を拾ってくる加助に振り回されながらも、時にしぶしぶ時に進んで人助けに手を貸すことになるのだが……

「お蔦さんの神楽坂日記」シリーズが面白かったので、同作者さんの時代物を借りてみました。全9篇からなる短篇集。
んー……面白い設定だとは思うんですが、ちょっとパンチが弱いかな?
個性的なはずの長屋の面々なのに、誰がどんな稼業だったかとか、ちょっと頭に入りにくかったです。まあとりあえずは、美人局の色男 文さんと差配人の娘お縫だけ覚えておけばいいような気もしますが。
でも最初の頃にちょっとだけ名前が出た盗賊のお頭とかが、あとからもちょいちょい関わってきたりとかして、ちゃんと読みこめばかなり楽しいと思うんですよ。

面倒を拾うだけ拾ってきて、皆が裏稼業を駆使して奔走する間、自分は蚊帳の外になってるっぽい加助さん。
彼がどうしてそこまでお人好しになってしまったのかは、書き下ろしのラスト二編で語られています。
時に苛立たしいほどに人が良すぎるように見えた彼が、その内に秘めていた傷。これはかなり重かったです。
この加助さんは、いつまでも何も知らないままで過ごすのか。あるいは知っていて、知らないふりを続けていくのか。それはどうなるのか判りませんが……悪の道にありながら人の心を忘れずにいる、一種いびつな長屋の面々にとっては、逆の方向にいびつな彼とともにあることで、ある意味上手くバランスがとれているのかなあと。
そんなふうに思えるお話だったのでした。
No.6399 (読書)


 2014年11月30日の読書
2014年11月30日(Sun) 
本日の初読図書:
「領主を継いだので好き勝手やってみた(小説家になろう)」〜領主を継いだので散財してやる
 http://ncode.syosetu.com/n0159ck/

武勇に長けた父親が死んだので、若くして領主を継いだボンクラ息子。
部屋でゴロゴロして娯楽小説を読むのと、美味しいものを食べることにしか興味のなかった彼は、よしこれで好き勝手に贅沢ができるぜ! と小躍りした。
そうして彼は美食を求めて領民たちを過酷な労働へと駆り立て、仕事を肩代わりさせるため子供をさらってきては自分に逆らわぬよう洗脳し、下女に手を付けて子供を産ませたりするのだが……

加筆修正版は連載中だし冗長になりそうなので、とりあえず二話で完結しているパイロット版の方をオススメ。
本人は悪役を目指して好き勝手に行動しているのに、結果として領民に慕われる善政を敷いた名君として語られるという、双方にとっての勘違いモノです。
いつも書いてますが、モブ視点も好きなので、こういうのも楽しいです。
No.6396 (読書)


 2014年11月29日の読書
2014年11月29日(Sat) 
本日の初読図書:
4488025293ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)
近藤 史恵
東京創元社 2008-06

by G-Tools
料理が趣味の常連客。しかし彼のスキレット(鍋)は、何故きちんと手入れを続けてもすぐに錆びるのか。
肉も砂糖も一切使わないで欲しい。そうリクエストした女性客は三舟シェフの料理にいたく満足して帰った。しかし彼女達の話をきいた料理人二人が、複雑な表情をしたその理由は。
パ・マルのオーナー小倉が、新しく出店することになったパン屋。パン職人の中江はフランス風の本格パンを焼くと張り切っていたのに、急に姿を消したのはどうしてか。
来ると必ずブイヤベースを頼む若い女性客。三舟が彼女のことを気になると言い出して、ギャルソンの高槻とソムリエの金子は浮足立つが……
十年ごしの片思いの末、ようやく結ばれた恋人に突然出て行かれた青年は、ひどく荒れていた。彼の話を聞いたフレンチレストランの店員は、温かいスープを出してくれる。
海外暮らしのさなか恋人にひどい仕打ちを受けた女性は、やけのように贅沢な外食を繰り返した。そしてフランスの小さな町のレストランで、たまたま相席になった料理人見習いの日本人男性に、愚痴を聞いてもらうことになって……
貧乏旅行の果てにフランスへたどり着いた青年は、風邪をひいて倒れた所を安ホテルで同室になった日本人に味噌汁と卵粥をふるまってもらい回復する。そしてフランスでは風邪の時の定番だという、ヴァン・ショーというホットワインを飲みに出かけた。だがうまいと評判の屋台のおばさんは、もうこれまでのレシピをやめたと言っていて……

フレンチレストランを舞台にした短篇集「タルト・タタンの夢」の続編。
今回も日常の謎をメインに200Pで七本と、さくさくと話が進んでいきます。
謎だけ解いて結果どうなったかは語られなかったり、あとは当事者たちに任せるという一歩引いたスタンスもこれまで通り。
ただ七作中後半の三作は、語り手がギャルソンの高槻智行くんではなくゲストキャラでした。時系列も二作はパ・マルが開店するより前。
……さすがにレストランという限られた舞台では、ネタが尽きてきたのでしょうかね(苦笑)
でもこれまで謎だった三舟シェフの修行時代がかいま見えたり、一巻でキー・アイテムとして活躍していたヴァン・ショー(ホットワイン)の由来が語られたりと、番外編としては楽しいところ。
私はモブ視点もけっこう好きなので、たまにはこういう趣向も悪くないパ・マルです。
No.6395 (読書)


 2014年11月27日の読書
2014年11月27日(Thr) 
本日の初読図書:
448802727Xいつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)
西條 奈加
東京創元社 2013-11-28

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元芸者で今でも粋な祖母お蔦さんと、神楽坂で二人暮らしをしている男子中学生、滝本望。
滝本家では炊事は男の担当で、その日も望は美味しい夕食を作って友人達に振舞っていた。同級生でサッカー部の彰彦と、その後輩でエースストライカーの金森有斗を家に招いて勉強会をしたのである。
いつものようにサッカー談義で盛り上がり、食事に舌鼓をうって、夜の八時にはお開きとなった。有斗の家は同じ町内なので途中で別れ、望は彰彦を駅まで送っていった。ところがしばらく立ち話をしていた二人を、別れたばかりの有斗が真っ青になって追いかけてくる。
なんでも自宅に帰っても真っ暗で、両親も姉も見当たらないというのだ。それどころかリビングが血痕があり、壁にも血しぶきが散っているという。
怯える有斗と共に彼の家を確認しに行った望と彰彦は、ひとまずお蔦さんへと連絡をとった。お蔦さんは警察にはこちらから連絡するから、すぐにその場を離れるように指示する。もしも『犯人』が近くにいたら、三人の身も危険だからだと。
そうして有斗はひとまず滝本家で預かることになり、警察の捜査が始まった。
最初は家族の誰かが大怪我をして、そのため急遽全員で病院に向かったとも考えられたが、それにしては家族の誰とも連絡が取れないし、近隣の病院で該当する緊急搬送も見つからなかった。あるいは家族の誰かが他の家族を殺害し、逃走しているのではないか。有斗の姉はキャバクラでバイトをしており、そのとき目をつけてきたストーカーが怪しいとか、有斗の家は両親の仲が冷えきっていて互いの愛人が何かをしたのではとか、裕福そうに見えて実は借金まみれだった金森家に何らかのトラブルが起きたのではとか、世間は無責任な憶測でニュースやネットを賑わせる。
やがて学校でも有斗を誹謗する人間が現れ始め、望は懸命に後輩を支えようとした。だがリビングに残されていた血痕のDNAが有斗の家族の誰とも一致しないことが判明し、世論は一気に姿を消した金森家の人々が、被害者ではなく加害者であるという方向に傾いて ――

無花果の実のなるころに」に続く、お蔦さんと望くんの神楽坂謎解き物語。
今回は短篇集ではなく、一冊一話の長編作品でした。事件の内容も、がっつり殺人事件なうえにヤクザやヤミ金が関わってきて、かなりシリアスです。
ただ語る視点が中学生なので、事件のドロドロした部分にはあんまりフォーカスを当てず、突然非日常に巻き込まれた少年たちが、懸命に日々を過ごそうとしている点に重きが置かれているように思いました。
前回活躍した彰彦や洋平、楓ちゃんにミドなども力を貸してくれて、彼らは子供なりに頑張ります。
謎を解くのは大人の役目。子供は子供で、勉強に部活に家事にと、できることをできるようにやっていく。そんな姿が、事件に関わる大人達の心を溶かしていくのです。

ああそれにしても、今回も望くんは格好良かった。
普段は温和で、料理上手な男の「子」なのに、ここぞというところでは決めてくれます。本気で怒ると、頭の中が逆に冷たくなる望くん。けして声を荒らげたり暴力に訴えたりはせず、さりとて相手に飲まれるでもなく、ビシッと言うべき事を言う。やあ、将来有望ですねえ(にやにや)

事件の内容的にはかなりハードなエピソードも多いのですけれど、子供たちがいたから、そして彼らには未来があるからと考えると、読後感は悪くありません。
人生経験のたっぷりある、酸いも甘いも噛み分けてきた大人のお蔦さんと、純粋で真っ直ぐで未来への希望を持っている望くん。この二人が揃っているからこその気持ちよさなんじゃないかなあと思いました。
No.6390 (読書)


 2014年11月25日の読書
2014年11月24日(Mon) 
B00PRWTSL8召しませMoney!4 ヘレネの涙
TERU
2014-11-17

by G-Tools
フランスにも拠点を構えることになった圭介達。田島らしからぬタイトなスケジュールの要求に、屋敷を整備するメイドやタイガーチーム達は忙殺されていた。
一方で、長らく失われていた歴史的なブルーダイヤ「ヘレネの涙」がルーヴル美術館に寄贈された記念パーティーに、圭介と麻里は招かれていた。だが圭介は同じ夜に開かれるオークションにモネの睡蓮が出品されると聞いて、麻里を先に会場に行かせ、自分はオークションに参加してしまう。そしてちょっとした騒ぎは起こしたものの、なんとかパーティーの開始時間に間に合うようオークションを後にしたのだが、ルーヴル美術館に向かう途中で何者かの襲撃を受けた。タイガー・チームの警護をかいくぐり、マシンガンで撃とうとしてきたのは、紛れも無くプロの仕業だった。
それでもどうにか無傷で切り抜けた圭介は、スケジュールの変更を拒否しパーティーへと向かう。しかしそこでも大きな事件が待ち受けていた。モナリザの展示室を訪れた圭介と麻里の前に、一人の男が姿を現したのだ。彼の名は桐島六郎。幼い麻里を捨てて母とともに姿を消した父親、統一郎の末の弟であり、かつて麻里に対し桐島家の面汚しとまで言ってのけた男だった。
当然、麻里は六郎を嫌いぬいており、いったい何の目的で現れたのかと詰問する。そんな麻里を嘲るようにモナリザを盗んでみせろと提案した六郎は、圭介が断ると他の客達が展示室に入ってくるのを見計らい、明かりを落とした。そしてわずか十秒後。展示室の明かりがついた時には、壁にかかっていたすべての絵画が跡形もなく消えていたのである。ただひとつ、モナリザ一枚を残して……
果たして六郎は、どんな手段を使って絵画を盗み出したのか。圭介は頭を悩ませるがまったく想像も付けられない。
一方で圭介を襲ったのがロシアン・マフィアだと予想したタイガーチームは、過去の人脈を頼りにロシアの元参謀次長ユーリー・マカロフへと接触した。彼もまたかつて麻里の祖父 重三郎と交流があり、圭介の話術でなんとか協力を取り付けることができた。しかし交換条件としてエルミタージュ美術館の館長の頼みを聞くことになる。それは圭介を狙ったロシアン・マフィア、ムソルグスキーが各国から盗み出しエルミタージュに隠させている名画を、表の世界へ戻すべくパリまで輸送してほしいという依頼だった。パリでの手はずはすべて整っている。圭介達はただ、見つからぬように絵画を運び、ロイズ保険会社の社長へ引き渡してくれれば良いのだと。
だがそれは、複雑に絡み合った陰謀の一端であった。
かつて「ヘレネの涙」をきっかけに、イギリス王家と桐島家を巻き込んで起きた悲劇。イギリス王家はそのスキャンダルを隠蔽しようとし、六郎は暴き立てようとする。桐島家に対抗するべく、イギリスは圭介らを抱き込みにかかり、六郎もまた復讐に力を貸せと様々な方法で圧力をかけてくる。
信頼していた田島の身柄は六郎に奪われた。しかも田島もまた、麻里に両親のことで長年嘘をつき続けていたことが判明する。いったい誰が本当のことを言っていて、誰が嘘を言っているのか。誰が敵で誰が味方なのか。あらゆることが信用できなくなってゆく中で、圭介らはイギリス政府の傘下に入り社会的生命を保つか、あるいは六郎に与し裏の世界での自由を得るかの二者択一を迫られて……

ほんのつい一月ほど前、なんとなーくその気になって、三巻「メトロポリタン・ブルー」を読み返していたのは、何かの予感ででもあったのか。
先週、いきなり四巻「ヘレネの涙」が発売されたので、嬉々としてポチッとな。
もともとは1巻目がWEBで無料公開されていた頃、続編のパイロット版として途中までUPされていた作品でして、いつか完成品が読めるようになるのを待ち望んでいました。
いざ読んでみれば、以前に公開されていた部分でさえ、相当の改変や書き足しが盛り込まれています。しかもそこからが長い!
作者様のブログによれば、なんでも56万字超。原稿用紙で1800枚ぐらいあるそうなので、580円ならむしろ格安と言えるでしょうvv<普通の文庫換算でざっと三〜五冊

前回のメトロポリタン〜は、ちょっと彼らにしては話のスケールが小さいなあとは思っていたのです。
ですが今回を読んで判りました。あのお話はこの四巻目の前座でしかなかったのだと!
前回は作中時間がわずか24時間、舞台はほぼ美術館を動かず、物々しく登場したロシアン・マフィアも結局は噂話だけで、微妙に肩透かし感がありました。今回はそのロシアン・マフィアががっつり関わってまいります。作中時間も一年半ぐらいあって、圭介らとタイガーチームはアメリカ・イギリス・フランス・ロシアと縦横無尽に動き回ります。あまりにめまぐるしくって、「えっと、バッキンガム宮殿ってフランスだっけ、イギリスだっけ?」「ルーブル? メトロポリタン?? エルミタージュ???」とかなりました(苦笑)

そして何よりも、前半のハラハラ・ドキドキ感。
今回は圭介達をかつてない危機が襲います。一巻でお祖母様に生命を狙われた時も、危機といえば危機でした。しかし今となっては世界的なセレブリティとなった圭介らが、今度は社会的に抹殺される ―― あの瞬間ときたらもう(><)
っていうかね、もうね、あの依頼をされた瞬間から、そんなに簡単に信じていいのかと。裏をとってから動けよ、あああああ!! ともう、スマホを握りながら身悶えしまくり。むしろ決定的瞬間が来た時には、ああやっぱり……とむしろちょっとホッとしたぐらいで。くっそう、作者さんに踊らされてる(悔)

そしてようやく半分まで読み進んで、圭介の逆襲のターンに入ってからは、今度は別の意味でワクワク・ドキドキ。いったいどんなすごい計画を見せてくれるのだろうと、心が弾みます。
しかし今度はこれまでのように、圭介側の一方的な展開とは行きません。
計算違いに、トラブルにつぐトラブルはいつものこととしても、今回は六郎おじ様が控えているのです。
重三郎お祖父様を彷彿とさせる天才的な閃きを持つ圭介も、まだこの世界に入ってわずか三年。対して六郎おじ様は生まれた時から桐島家の人間。しかも十年以上前から今回のための計画を練り、あらゆる手配りをしてきた男です。
どれだけ裏をかいたと思っても、それを読んで更に上をいく六郎おじ様に翻弄されまくる圭介サイド。
ようやくこぎつけたマフィアの逮捕後も、次々と明らかにされる新事実に、いったい六郎はどれだけの情報を持ち、人脈を繋ぎ、そして操作してきたのかと……

いやもうほんとね、六郎おじ様すごすぎます。その彼をしてなお届かないと言わしめる、重三郎お祖父様と、今もなお尊敬し続ける統一郎兄(麻里の父親)は、どれほどの存在であったのか。

でもでもですね。
圭介の人タラシぶりは、相変わらずの安定ぶりなのですよvv
まさかあの人を、という人まで味方に引き込んで、いつものように突き進んでいきます。
そして最後はきれいに気持ちよく、すべてが収まるところへ収まってくれるのが、召しませクォリティ。
だからこのシリーズは安心して読めるのさ♪

圭介と麻里は今回も多くの資産と、それ以上の人脈を手に入れました。
そして今まで避けてきたものに対して、向き合う覚悟もまた。

なにを書いてもネタバレになってしまいそうなので、あまり多くを語ることはできませんが、今回も非常に面白く満足できる作品だったとだけ。
まさにボリュームも内容もお腹いっぱいです。

あ、それとこの話を読む前に、「メトロポリタン・ブルー」は読み返しておさらいしておいたほうがいいかもしれません。いえ作中でちゃんと、それとなく関連情報の説明は入っているのですけれどね。
……あるいはこっちを読んだ後に二巻「モネの誘惑」も合わせて読み返したほうが、あそこはこうだったのか、と目から鱗が落ちるかも(笑)
No.6387 (読書)


 2014年11月22日の読書
2014年11月22日(Sat) 
本日の初読図書:
「天井裏からどうぞよろしく(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n6313bi/

先代皇帝の度重なる遠征により、百の属国を抱える大帝国。
先代の皇帝は日々を戦に明け暮れたが、世を平定すると早々に年若い息子へと王位を譲り渡してしまった。幼き頃から神童の異名をとったその息子は、属国にも自治を認め、帝国の支配は表面上は平和的なものになっている。
しかし属国側にとって、帝国の動向は気になるところだった。特に年若い皇帝など、若さゆえの気まぐれで、いつまたおかしな政策を打ち出すか知れたものではない。
そこで各国は諜報活動に力を入れ、特に帝国の中枢 ―― 皇帝陛下の執務室などは、多くの諜報員によって監視されていた。
……もはやそれは、各国諜報員の溜まり場にも等しく。
もと孤児であった少女もまた見習い諜報員として、一年ほど前から天井裏に出入りし、様々な国の諜報員達からチビと呼ばれて可愛がられていた。互いに顔も名前も所属も判らない。それでも同じ立場にある彼らは、どこか和気あいあいとした時を天井裏で過ごしている。
しかし間もなく成人を迎える彼女は、その日を限りに異動が決まっていた。城での諜報活動から外れ、半年ほど床の技術を学んだのち、別の監視対象である貴族の愛人になることになったのである。
少女の義父を含めた諜報員達はみな、年若い少女の未来に心を痛め、寂しくなると別れを惜しんだが……中に一人、もっとも年若い青年だけは、覆面の下で口を引き結び、鋭い目をして宙を睨んでいて ――

「名も無き者達の幸福」とシリーズタイトルがついた、名無しキャラクター達のささやかな幸せ短編集の第一話。読切短編です。
アルファポリスさんでWEBコミックが公開されていたのを読んで、けっこう面白かったので元の話も読んでみました。

■天井裏からどうぞよろしく | アルファポリス - 電網浮遊都市 -
 http://www.alphapolis.co.jp/manga/viewOpening/392000086

一話目で短編のお話がすべて語られていますが、どうやらこれ、大幅書き下ろしで書籍化され、既に二巻目も出ているようです。どうしよっかなあ。買おうかなあ。

4434185993天井裏からどうぞよろしく (レジーナブックス)
くる ひなた
アルファポリス 2013-11

by G-Tools

短編故の、いろいろ削りまくったスピード感も魅力なので、悩むところではあります。
No.6384 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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