……読みたかったんだもん
2015年05月22日(Fri)
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本日、仕事から帰宅した私の手には、こんなものがありました。
あー……(遠い目)
いえね、4月に実写映画第一作が金曜ロードショウで放送されてから、読み返したい読み返したいと言い続けていた私は、見事にメディアに踊らされているのでしょう。 おそらく映画公開前は一冊108円とかで売られていただろう20年以上前の古本が、旧版コミックの「コンディション可」ですら、2015年5月現在、10冊セットで安くても送料抜き3千円超。完全版とか文庫版に至っては、7〜8千円から万単位の値段がついているぐらいで。たぶん今が一番、高騰している時期なんじゃないでしょうか。 しかたがない、映画ブームが去って相場が落ち着くまで待つか……とか思っていたのですが。
新しい通勤路は、ちょっと遠回りするといわゆる新古書店があるんですよ。ちょっと覗いてみようかなと思ったのは一昨日のこと。しかしその日はうっかり忘れてしまい、自宅近くまで帰ってきてから「ああっ」と頭を抱えていたんです。 でもって。 今日はちゃんと良いタイミングでそれを思い出し、えっちらおっちら自転車を漕いで辿り着いた先で、まずはセット売りコーナーからチェック。ない。高価買取りコーナーもチェック。ない。続いて108円コーナーをチェック。……旧版の最終巻しかねえ(−ー;)
状態がそこそこの通常コーナーだと、あったとしてもだいたい一冊350円の値が付いてるしなあ……と。半ば諦めつつ、ふと「そういやペーパーバック版なんてのもあったな」と、コンビニ廉価版のコーナーを見てみたのですよ。 そしたらまあ、全三冊取り揃ってるじゃないですか。しかも状態のかなり良い、先月アンコール刊行されたばかりの最新版が! ひっくり返して値札をチェックしてみたら、ネット上での相場の半額以下。
そんな訳で立ち読みですまそうかという選択肢は消え、速攻でレジに持って行きました(笑) しかもレジでは「この値札、間違ってますね」って言われて、さらに100円引いてもらえたしvv
表紙が実写版なのがちょっとアレですけど、内容を読むには問題ありません。
やー……リアル古書店ってのも、やっぱり馬鹿にはできませんねえ。 品揃えを考えると、全国規模で展開しているネット通販には一歩譲りますが、それでもこういう出会いがあるから、たまにはリアルのお店にも足を運ぶべきなんでしょう。
うふふふふ、念願の寄生獣。しかもページが黄ばんでない、ほぼ新品vv じっくりしっかり楽しんだら、やっぱり裁断してPDF化するべきか、それとも大事にとっておくべきか……
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No.6830
(読書)
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2015年05月22日の読書
2015年05月22日(Fri)
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本日の初読図書: ある晩のこと、世界中に奇妙な物体が人知れず降り注いだ。大きさと形はテニスボールに似ている。数は不明。 それらの物体は内部から蛇のような謎の生き物を孵化させた。そしてその生き物は眠っていた人間の頭部へと次々に潜り込み、脳を食ってひそかに成り代わってゆく。 ごく平凡などこにでもいるような高校生、泉新一もまた、その生き物に襲われた一人だった。しかしとっさに抵抗した結果、謎の生き物は脳まで到達することができず、右腕へ寄生するに留まった。 彼の右腕を食らい代わりに擬態したその生き物は、旺盛な知識欲を見せ言葉を学び、宿主である新一と会話を交わすようになる。 寄生生物 ―― パラサイト達は、自由に形を変えることができ、普段は普通の人間に見えるよう装っていた。しかし実際には自由に変形することができ、ゴムのように伸びることもできれば、鉄のように硬くもなれる。人間では太刀打ちできぬほどの怪力とスピードも兼ね備えており、まさしく化け物と言えた。 そして何よりも恐ろしいことに、奴らの主食は『人間』だったのだ。 本能の赴くままに人間を捕食し食べ残しを放置する化け物達の所業を、世間はミンチ殺人と呼んで恐れ騒いだ。 しかしその犯人が人に成り代わった寄生生物なのだと知っている人間は、おそらく新一ただ一人。そして彼の右手に寄生しているパラサイト ―― ミギーもまた、完全な味方とは言えなかった。ミギーは人間を捕食する本能こそ持たなかったが、それでも人間に対して親近感を抱いている訳ではない。新一に対しても、あくまで宿主の肉体的健康を維持する必要を覚えているだけであって、自身の身に不都合を及ぼすのであれば、発声機能や視覚聴覚を奪うぐらいは辞さないと宣言しているのだ。 己の安全と人間としての責任に葛藤する新一だったが、それでも少しずつミギーとの共生生活に馴染んでゆく。 しかし他のパラサイト達は、人間の脳が生き残っている二人の状態を見ると、嫌悪感を露わに襲い掛かってくるのだった。二人は時に協力し合い、なんとかそれらを返り討ちにしていく。 新一の通う高校に赴任してきた田宮涼子という女教師もまた、首から上が寄生生物にすり替わったパラサイトであった。しかも人間社会に適応して一個人としての生活を維持させるだけの知性と、人喰いの冷酷な思考回路を併せ持つ、恐るべき存在である。 警戒する新一に対し、田宮涼子は人間と共存している二人のケースは興味深いから、敵対せずに研究するつもりだと告げた。実際に彼女は普通の教師の仮面をかぶり、日常生活を送り続ける。しかしそれに反感を覚えた他のパラサイト「A」が、新一とミギーを殺すべく、真っ昼間の高校に乗り込んできて……
高校時代、次兄が持っていたのを借りて読み、強烈に印象に残った作品です。 残念ながら引越しの際に次兄は多くのマンガを処分してしまい、この「寄生獣」も長らく読み返せずにいたのですが。先日の金曜ロードショウで実写版を放送されたらもう、読み返したい熱が高まって高まって。 いやはや、マスコミと出版業界の思うツボですね!
このコンビニ向けペーパーバックだと全三冊。B6サイズの新装版だと全10巻、大判サイズの完全版だと全8巻です。程よい長さで完結しているのも好感度高いかと。
このペーパーバック版は、完全に映画公開に便乗した実写デザインの表紙ですし製本も安っぽいですけど、とにかく安くて手軽に読めるのがありがたいです。刊行されたのがつい先月ですから、状態も良くページが黄ばんだりとかも全然してませんし。 ちなみに最初はどれが1巻だ?? と悩んだのですが、何の事はない。 「寄の章」「生の章」「獣の章」で、三冊合わせて「寄生獣」なんですね(笑)
一巻目「寄の章」は764ページ。 「犬に寄生したパラサイトと邂逅、初戦闘」→「人間に(略)、こっちの右腕に引っ越してこないかと勧誘されるも返り討ち」→「田宮涼子の赴任」→「Aが高校に乱入、死者二人」→「母親が旅行先でパラサイトに乗っ取られる」→「新一が死にかけて『混ざる』」→「『脳が残ってる仲間』の宇田さんと出会う」→「母親関連の事件ひとまず収束」→「子犬のエピソード(新一の変貌)」→「パラサイト島田秀雄の転入」→「政府機関がパラサイトに気付いて動き始める」ときて、ラストは島田秀雄が暴走して校内で暴れ始めたところまで収録されていました。
こうやって改めて読むと、確かに映画は相当はしょられてたっていうか、Aと母親を乗っ取ったパラサイトと島田秀雄の三人を、足して二で割ってたんですね……母親のエピソードのきっかけや終わり方についても、かなり改変されていました。確かにこれは、きちんと内容覚えてるファンなら怒るわなあ(苦笑)
自分としては、何年も前に読んだっきりなのに、細かいストーリーはともかくあちこちのコマの絵が未だに記憶に焼き付いていることにびっくりでした。
そして猟奇的な表現に目を奪われがちですが、ミギーが人間味を増していく一方で新一がパラサイトに近付いていく意識の変化の推移とか、人間という種のあり方への問いかけとか。生きるとは何か、生物とは何か。食べることの意味は、繁殖とは。などなど、様々な部分で奥が深いなあとしみじみと。 やっぱり記憶に残る作品というのは、それだけの深みとパワーがあるんだと思いました。
一気に読むのはもったいないので、二巻以降はまた後日じっくりと楽しもうかと。
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No.6829
(読書)
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2015年05月21日の読書
2015年05月21日(Thr)
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本日の初読図書: 「明日は廃墟でふたりきり(ムーンライトノベルス)」〜狂言 What the fuck !? http://novel18.syosetu.com/n4735cr/
ゴシックファッションを扱うショップで店員を務めている須川香澄には、普通の人間には見えないものが見えていた。まるでCGで描かれた異形のモンスターのようにくっきりと見える彼らは、殺人者の背後に浮かんでおり、大きな鎌や刃が湾曲した剣といった凶器を持っている。顔や手は死人のように干からびており、時に剥がれかけた鱗や爪を備え、ぼろぼろの服やベルトを身にまとう。 まるでモノクロ写真や廃墟のように、鮮やかな色彩とは無縁の ―― しかし時にかすかなきらめきを見せる退廃的なその存在に、香澄は心を惹かれていた。 たとえ幼い頃から彼らを目にしてきたことで、周囲から孤立しがちだったとしても。 あれは、〈死神〉。 彼らが見えるのは世界でたったひとり、この自分だけなのだ、と。 廃墟巡りが趣味になったのも、廃墟の持つ印象が、〈死神〉のそれと似ていたからだった。最初は有名な廃墟を外から眺めるだけであったが、じょじょにその趣味はエスカレートしてゆき、今では立入禁止になっている内部へと踏み込み、自身の手で写真を撮るようになっている。 その休日も、彼女はネットで知った郊外の廃墟を訪れていた。人里離れた山の中にある、元はホテルだったと思しき建物。雑草に埋もれた中へ入り込んだ香澄は、そこで一人の男に出会った。 明らかにこんな場所で遭遇するべきではない、暴力の世界に身を置く男だ。しかも今時こんなチンピラなど、ヤクザもののVシネの中にしかいないだろうと思えるくらいに、絵に描いたようなチンピラである。 だがその背後には、〈死神〉が浮いていた。今まで見たことがないような、すさまじくおぞましくて……美しい、〈死神〉。 これほどの〈死神〉を連れているのであれば、この男は絶対に人殺しだ。しかも殺したのは一人や二人ではないだろう。この場でレイプされるかもしれない、売り飛ばされるかもしれない、殺されるかもしれない。弾け飛びそうに脈打つ心臓は、しかしそんな恐怖からくるものではなかった。 そう、その瞬間に彼女は一目惚れしたのだ。 男にではなく、彼の背後に浮かぶ〈死神〉に ――
諸口さんの新作が連載始まりました。いつもは完結してから一気に読むのですが、今回は待ちきれずに速攻で手を付けてしまいましたことよ。 メインキャラは先日公開された「ヤクザな退魔外伝 神無沼」で御登場なさった、一見チンピラにしか見えないけれど実は凄腕ヒットマンな第四支部の武闘派ヤクザ、ヤスこと深谷 靖さん(32歳)。主役で語り手なのは、その年下のイロとなる須川香澄ちゃんです。年齢はまだはっきり出てきていませんが、高卒の社会人。諸口さんのツイッターによれば、ぎりぎり未成年、なのかな?
ヤス ―― にではなく、その背後にいる〈死神〉に一目惚れしてしまった香澄ちゃん。 武闘派ヤクザの事務所に一人で会いに行ったりと、無茶苦茶やらかしてくれます。しかもそれが命や貞操に関わる無謀だと、判ってやっているから始末が悪い(苦笑) かなり最初の方からヤスさんが香澄ちゃんに振りまわされ気味なのが、予想外で面白かったです。もっとこう、毎メリの灯子ちゃんみたいに、最初はヤクザに対して怯えたりとかするんじゃないかと思ったら、さすが諸口さん、予想の斜め上vv ←褒め言葉
〈死神〉の造形も独特で素晴らしいです。 諸口さんご本人が描かれたイラストは↓こちら。
■新作連載開始: スタンスフィールドに花束を。 http://mmolockchi.sblo.jp/article/132533918.html
この、判りやすい格好良さに走らず、グロテスクでありながら、しかしどこか美しさを感じさせるデザインが見事ですよねえ……(しみじみ)
今までのところはほのぼのギャグパート多めなるも、そこは「エロよりグロで18禁な感じ」との予告がありますし、またも諸口さん一流の猟奇で鬱な展開が待っているのでしょう。 今回はリアルタイムで、他の読者様といっしょに一喜一憂していきたいと思います。
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No.6827
(読書)
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2015年05月20日の読書
2015年05月20日(Wed)
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本日の初読図書: 元ボクサーの黒人ガイ・フリーマンは、対戦相手をリングで死なせてしまい、プロボクサーとしての資格を剥奪されてしまった。今では父親の権力を傘にやりたい放題をしている貴族の坊っちゃん、クレメント・ウッドワードの用心棒に落ちぶれている。クレメントの悪行は気に入らないが、金で雇われている以上、逆らうことはできなかった。その日も気に入ったピアニストを口説こうとして突っぱねられたクレメントは、腹いせに彼女の指を折ろうとしたが、それを止めることすらできない。 ところがただ一人、颯爽と割って入ってきた青年がいた。誰一人動けなかった中で娘を救ったのは、背こそ高いものの、スレンダーで血色もあまり良くない若者。しかし猛禽を思わせるその眼差しには強い光と奥深さがあり、まるで魂の奥底まで見透かされるのではないかという、得体の知れなさを感じさせた。 そしてガイは不思議な格闘技 ―― ジュウジュツで、あっという間にノックアウトされてしまう。クレメントは気絶したガイを見限り、さっさと退散してしまった。 意識を取り戻したガイは、明日からの生活を心配しながらも、虫の好かない雇い主と縁を切れたことにどこかせいせいとする。そうして柔術に興味をもった彼は、若者 ―― まだ大学を出てロンドンに住み着いたばかりだという青年、シャーロック・ホームズと言葉を交わした。 翌日、ホームズはガイをある道場へと案内してくれる。リトル・タニと呼ばれる日本人が経営するそこでは、ホームズを含めた様々な年齢層の男達が柔術を学んでいた。リトル・タニはガイの胸にも届かない小柄で穏やかな中年男だが、ガイはおろか倍以上の体格を持つレスラーが相手でもあっさりと投げ飛ばしてしまう、凄腕の柔術家だったのだ。 タニの強さに感銘を受けたガイは、道場に入門し、柔術を学びながらまっとうな仕事を探し始める。 しかしある日のこと、ホームズと二人で自主トレーニングをしていると、タニがただならぬ様子で戻ってきた。話を聞くと、道場のマネージャーで興行師でもあるアポロ・リブマンが、三日前から行方不明になっているのだという。どうやら収益金の分配の関係で暗黒街の連中と揉めていた形跡があるらしい。その関係で闇組織に拉致されたと思われたが、しかし確たる証拠がないためスコットランド・ヤードは動いてくれないとのことだった。 話を聞いたホームズは、自分がアポロを見つけ、無事に連れ帰ってみせると宣言する。そして自ら暗黒街に潜入すると言うホームズに、ガイも力を貸すことになって……
ネット上でガイ・リッチー版「シャーロック・ホームズ」関係の感想記事を読んでいて、たまたま紹介されているのを見つけました。ホームズと名が付いていたら、とりあえずチェックしたくなるのが私のサガ。しかも今まで聞いたこともなかった作品で、レーベルがスーパーダッシュ文庫となると、興味をそそられます。 まだ221Bで開業する前でワトソンさんが出てこないとか、これは推理モノじゃない、バトルアクションだといったレビューを見てちょっと不安に思ったのですが、うっかり全2巻で送料込み180円なんて出物見つけてしまったら、もう逃す手はないでしょう(笑)
で、買いました。とりあえず一巻目を読みました。
……予想以上に面白かったですvv ってか、ちゃんとパスティーシュしてるじゃん。 確かに格闘技をメインにしたアクション重視のエンターテイメント満載な話運びでしたが、推理もしてるし変装術も駆使。相手を一目見て状況を読み取り、並べたて、びっくりされてから根拠を説明 → なんだそんなことかと言われ、だから説明したくなかったんだ的展開のお約束なやりとりも、きっちり盛り込まれています。むしろメイン相棒が脳味噌筋肉を自他ともに認めるボクサー崩れだけに、推理に対する驚きっぷりはワトソンさん以上かもしれません。 若かりしマイクロフト兄もしっかり御登場。まだそんなに太っていなくて、むしろがっしりとした体格と描写されてます。弟を上まわる推理の切れは、もはやエスパーの域vv
本文は200ページ足らずとちょっと短め。偶然が重なりまくって御都合主義も相当なるも、そのぶんスピード感が半端なく、まさにアクションエンターテイメントなハリウッド映画を見ている感覚でした。 こう言うとあれですが、これむしろイラストない方が良かったかも……特に表紙絵から妙にハードボイルド感が漂っていて、それで手を伸ばすのにだいぶためらいました。 内部挿絵も本文と食い違ってたりして、個人的に微妙でしたし(−ー;)
表紙こんなですけど、ちゃんとこのホームズさんもイギリス紳士なんですよ〜、正装してバイオリン弾いたりロンドン中の泥の種類や路地の隅々をきっちり暗記してる、インテリ派なんですよ〜〜。 あと、面白そうだと思った事件に対しては、玩具を与えられた子供のような興味とエゴイストぶりを発揮するあたりも、ホームズさんらしかったんじゃないかと。
なお三人称で書かれていて、ホームズさん視点の部分はほんのごく僅かです。 ほとんどの語りがボクサー崩れの黒人ガイで、あと一部は柔術の師匠リトル・タニが組んでる興行師アポロさん。ホームズさんの一人称は、原典でもなんというか微妙なところがあるし、彼は理解し難い神秘的な謎の人という立ち位置にした方が今回の場合は効果的だと思うので、他者視点メインなのは正解だと思います。
ちなみにリトル・タニとは、谷幸雄という英国で活躍した実在の柔術家。 タニさんと組んでる興行師がアポロという名前だったのも本当。 さらにラストにはミツヨ・マエダ(前田光世:グレイシー柔術の開祖の師匠)まで登場するサービスぶり。 すがすがしいまでにエンターテイメントです★
……ただ惜しむらくは、現実の谷さん1880年生まれ。前田光世も1878年生まれと、1881年に「緋色の研究」でワトソンさんと出会ったはずのホームズさんとは、ちょーーっと時代がずれてるんですよねえ……まあそこは、あくまでフィクションってことで(苦笑)
ともあれ予想以上に楽しめました。買ってみて良かったです。
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No.6826
(読書)
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2015年05月19日の読書
2015年05月19日(Tue)
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本日の初読図書: 食べることが大好きで、町を歩きながら様々な店から漂ってくる料理の匂いを嗅ぎ分けるのが得意な女子大生、秋山結月。ある日、芳醇なコーヒーの香りに誘われて辿り着いたのは、大学の裏手にある古びた小屋だった。そこはもともと薬学部の芳香研究部の部室だったのだが、廃部になった今では神門千尋という男子学生が私物化しているらしい。香道宗家の跡取りだが家出中だという偏屈者の彼は、その小屋の中に様々な香料や精油などを持ち込んでいて、結月にはそれらの入り混じった香りが、まるで色とりどりの花畑のように感じられた。 数日後、友人から謎の手紙について相談を受けた結月は、便箋にほのかな芳香が残っていることに気が付いて、香りの専門家である千尋に相談しようと思い立つ。 それをきっかけとして、二人はいくつかの香りにまつわる謎に関わることとなった。 一年前に交通事故で急死した女子高生が、幼馴染の少年に遺した白紙の手紙の意味を探す「一炉 初恋」 神門流香道の門人で大きな寺の住職から、檀家の娘の結婚祝いに贈る香木を選んでくれと千尋が頼まれる「二炉 勝れる宝」 煙草を所持していたと停学処分を受けた結月の妹分が、懸命に隠そうとしている事情を巡る「三炉 君を想う」 目に見えるものだけが、この世のすべてではない。目には見えないけれど、大事なものの方がずっと多い。 香りを通すことで、彼らは目には見えない様々なものへと巡り合ってゆく ――
「神様の御用人」シリーズを書かれてる浅葉なつさんの、一冊もの。 っていうかこれ、続編出てもおかしくない作りだと思うんですが、そのへんどうなんですか〜〜〜?>浅葉先生
内容はほのぼの日常ミステリー……と言い切るには、背景にある事情がかなり深刻だったりもするんですが。それでも殺人とか傷害事件が起きる訳ではありません。 基本的にはお気楽脳天気なワトソン役の女の子と、クールな人嫌い系天才肌の探偵役が、目には見えない『香り』を通して、やはり目には見えない人の心のひだやもつれた想いを解いてゆくお話です。 ついつい理論に凝り固まりがちな探偵役へ、何気ない天然な発言で人の心を教えつつヒントを与えるワトソン役はお約束★
そんな結月が香りから、様々な情景を映像的に感じ取る描写が読みどころでしょうか。 嗅覚って、人間の思い出とダイレクトに繋がってる……って、誰かが言ってましたっけ(BY糸村さん@遺留捜査)
できれば千尋の家庭内の問題とか、千尋から見た結月の印象とかも見てみたいです。 特に最初の方、結月はかなり強引でマイペースなところがあるので、実はちょっと感情移入しにくかったんですよ。でも話が進むにつれて、いつの間にかすっかり受け入れてしまっているあたり、千尋もこんな感じだったのかなあ、と(苦笑) さらに言うなら、香道に留まらずアロマテラピーや香水といった様々な角度から『香り』について積極的に知識を取り入れてゆく千尋にとって、理論なんかまったく関係なく、感性で『香り』を『聞く』結月の存在ってのは、いろいろ複雑だと思うんですよねえ。 こと香りに関しては、千尋は努力のできる秀才で、結月は自分の才能に無頓着で磨くことすら考えない天才なんじゃないかとか。千尋はきっと、結月に対して嫉妬する思いもあるんじゃないかなあ。その鼻と感性を、自分が持てていたら……って。
でも結月の強みは既成観念に囚われない奔放な発想と直感力ですから、理論を学んでしまっては、その持ち味が失われてしまう訳で。 だからこの二人はこのままで、互いに互いの持ち得ない部分をフォローしていくのが正解だと思います。千尋もこの巻だけで、だいぶ丸くなってきてますし、あとは家族との和解さえできれば良いんじゃないかな。
千尋の従兄弟の隆平くんもなかなか美味しいキャラクターですし、いずれは結月を巡っての三角関係とかもあるんじゃないかとか。いろいろと妄想する余地が残されていて楽しい一作でした。
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No.6825
(読書)
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2015年05月16日の読書
2015年05月16日(Sat)
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本日の初読図書: 名目上は隠居の立場になったのを利用して、ヤエトは世界の罅を塞ぐ方法について情報を集めることへ手を付ける。幸いにも恩寵の力が増しているのを肌身で実感している皇妹が、興味を示して力を貸してくれた。まずは邪竜の心臓が埋まっているアルハンを領内に持つ、第二皇子の元へ向かった二人及びジェイサルドとファルバーン。だがそこで告げられたのは、第二皇子に預けていたファルバーンの母親、すなわちアルハンの元王妃で浄化の恩寵を持つ女性が、何者が相手とも知れぬ子を孕んだうえで失踪したという衝撃の知らせであった。 とにかく詳しい状況を調べかつ、放置された沙漠の水源の浄化を行うべく、第二皇子を含む一行は水源のあるアルハンの廃墟へと向かう。そこでヤエトを待っていたのは預言者にしてしるべの星、ウィナエであった。 彼女の案内で迷宮状になった地下の水源に向かうと、地下洞窟内部で魔物の群が襲ってくる。だがそれさえも、しるべの星は折り込み済みだった。分断されたヤエト、ジェイサルド、ファルバーンの三名のみを連れた預言者は、彼らを水源ではなくかつて帝国に滅ぼされた都市のひとつ、シンリールの廃墟へと導く。智慧の女神を崇め、この世のありとあらゆる知識が集まっていた、かつての迷宮図書館都市。それらの貴重な資料は帝国の侵攻によってすべて焼き尽くされ、失われたのだとヤエトは心を痛めていた。しかしそれは誤りであった。シンリールの深部には現在も智慧の女神が眠る扉が存在し、正しき問いを持つ者には、一人につき一つのみ答えを返してくれるのだという。 預言者と共に異界へ通ずる扉をくぐったヤエトは、そこで世界の罅を塞ぐのに力を貸してくれる神の名を問うた。 いっぽう帝国中枢では、同母の兄達を次々と失った第七皇子が、不穏な動きを見せていた。沿岸部に領地を与えられていた彼は、帝都への物流を止め、海賊達と手を結び、着々と力を蓄えているという。 そして竜種と貴族達が集まる新年祭の場で、ついに第七皇子は帝国から独立し、自らの国を打ち立てるとの意志を明らかにした。 それはこれまで水面下で行われてきた密かな後継者争いとは一線を画した、帝国をも割りかねない戦の幕開けを宣言するもので ――
えー、キリの良い所からあらすじ書きましたが、実際の下巻の始まりは預言者が登場したところからです。というか、上巻のラストがウィナエさんの立ち姿イラストで終わってます。 登場した頃は人間らしさがなく、神の言うがまますべてを任せきっているような部分など掴みどころのなかったウィナエさんが、今回は打って変わってすごく身近に感じられるキャラになっていました。 彼女も彼女で、これまで生きてくる中でいろいろあったんだなあ……っていうか、まさかそこでヤエトがそういう関わり方をしてたって(驚) ターンの神の性質上、この世界にはタイムパラドックスも存在せず、すべては最初から決まった形に流れ続けているのかもしれませんが……それにしてもヤエトの歴史への関わりかたってパねえなとしみじみ思ってみたり。 そしてターンの神に「必要ない」と言われながら、それでもジェイ爺に昔の名前を探しだすよう指示したりと、なんだかんだで神に逆らっちゃって、しかもそれがちゃんと的を射ていたあたりの譲らなさとかが、ああヤエトさんだなあ、みたいな。 ジェイ爺も懸念だった鬼神関連を乗り越えて、もはや心置きなくヤエトさんに忠誠を誓いまくってるところが格好良いです。ビバ人外最強武闘派爺!
人間は人間として、人間にできうる限りの手段を尽くして、未来へ続く梯子をかけてゆくべきだと語るヤエト。 なまじ自分が過去視などという、ある種ずるい恩寵を持っているだけに、正確な情報を未来へ遺していくことがいかに難しいのかを、彼は実感しているのかもしれないなあと思いました。 特にヤエトがシンリールの門番の老人に語る言葉は、お遊びとはいえ創作に足を突っ込んでいる人間として、すごく心に染みるものが。
でもって。 それやこれやはさておいて。 皇妹・第二皇子・ジェイ爺の三人が取り揃って、今にも気絶しそうなヤエトを『痛ましく』見守ってる場面に、思わず悶えてしまいました。よもやこの三人が、意志を一つにしてヤエトの体調を気遣ってくれる日が来るとは。何をどうしたらそんなことが可能なんだ。まさしく人たらし(優秀な人物に限る)の面目躍如だなヤエト!! ちなみに絶不調で冷や汗かきながら、必死で意識を保とうとしてる苦しげなヤエトのイラストに、今回の上下巻 ―― いや下手すると1巻から通じて一番萌えた私の感覚も、いかがなものかとは思うんですが(苦笑)
今回の下巻で改めて強く思ったのは、この物語はつくづくヤエト視点で綴られているんだなあということです。文体こそ三人称ですが、ヤエト以外の心内語は出てこないし、彼が感知しない事実は伝聞でしか語られません。 ……つまり、ヤエトが異界に行ってる間、帝宮で起きていただろう高度に政治的かつドロドロした開戦間近の駆け引きとか、同じくジェイ爺の死闘あたりはさらっと流されてますし、あるいは戦争の場面なんかも例によって人事不省になってるので、目が覚めたら肝心な部分はほぼ終わっているという、いつものダイジェスト仕様です。 北嶺でレイランドが皇女に何やらかしたのかとか、北部でセルクとルシルがどうしてるのかとかも、ぜんぜん出てこないですしね。 レイランドと言えば、登場時にはもうちょっと活躍するキャラになるのかと思ったのに、今のところどうにも小物感が拭えません。暗躍するならする、皇女に傾倒するならするで、もうちょっと突き抜けてくれないとヤエトの視界には入り得ないなあって感じでした。
どうやら予告によれば、次の上下巻でこのシリーズも完結とのこと。 上巻はもう発売されているのですが、これまで読んだ感じだと上下の間にたいてい「ここで終わるの!?」的「以下続く」が用意されているので、やはり下巻が出てからまとめて読む方が良いだろうと我慢の子です。 上巻で意味ありげに登場した割に、今回はまったく出番なしだったタナーギンとか、いまいち影が薄くて誰だっけ感の強い第六皇子とか、ラストでは出番があるのでしょうか。 あとそろそろ、シロバのヒナたちの活躍をプリーズ《o(><)o》 最近ヤエトが北嶺に行かないので、もふもふ成分が足らんのですよ。もっともふもふを! ヒナたちに全力でじゃれかかられて倒れそうになりつつ、シロバに襟元くわえられて支えられる尚書卿を!!>妹尾先生&ことき先生
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No.6823
(読書)
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2015年05月14日の読書
2015年05月14日(Thr)
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本日の初読図書: 隣接する踏野郡太守が隠匿し、私腹を肥やしていた青鉄鉱床の存在を炙り出したヤエト。皇帝は即座に兵を送り、踏野太守を討ち取ると共に、裏で彼と結託していた第五皇子を戦の混乱のなか粛正する。 第四皇子に引き続き第五皇子も死んだことで、二人の後見を担っていた白羊公家は大きく勢力を落とした。生母であるセンヴェーラ妃は帝都を追放され、そして同母の弟である第七皇子もまた、後継者争いから大きく後退したとみなされる。 勢力図が次々と書き換えられる帝宮で、戦後の論功行賞が行われた。踏野郡はこれまで権力から遠ざけられていた、第三皇子に任されることが決定する。かつて皇女を呪いによって害そうとした第三皇子が力を手に入れた。しかも北嶺のすぐそばに領地を賜るとなると、油断はできない。 そう危惧するヤエトだったが、青鉄鉱床を発見した《黒狼公》に皇帝が与えた報償は、彼がそれまで求めて止まなかったもの……すなわち『隠居』であった。 《黒狼公》でなくなったヤエトは、当然、北嶺の相も辞さねばならなくなって ――
妹尾さんの重厚かつちょっと難解文章で、大判サイズを350ページ近く。 読むのに何日かかるかと戦々恐々としていたのですが、読み始めたら予想以上にさくさくと読めてしまいました。うむ、やはりこのシリーズは面白いvv<これを読むために、まず既刊六冊読み返すところから始めた 最初は表紙絵の真ん中の人物が誰か判らず、「ルーギン……? こときさん、続刊出るの待つ間に絵柄変わっちゃったのかなあ」とかしょぼんとしていたら、何のことはない、第二皇子でした(苦笑) ちなみに裏表紙には預言者さんがいらっしゃいます。そしてこときさんの美麗絵は、内部イラストでも健在vv 挿し絵におけるヤエトさん登場率の高さに、こときさんの愛を感じました(笑)
前作「歌われぬ約束」では北部地方がメイン舞台でしたが、今回は主に黒狼公領と第二皇子の博沙国近辺と、南方より。 夢の隠居を果たしたはずのヤエトさんは、しかし名目ばかりでちっとも仕事が減らないまま、今回も内心で悪態をつきつつ奔走してらしゃいます(笑) 最初に隠居を言い渡された場面を読んだ時は「うぇぇええ!?」となったものの、蓋を開けてみればいつも通り。洒落にならない事態だったはずなのに、何故かいつの間にか何事もなかったかのように平常運転になっているのが、翼の帰る処クォリティじゃないかと。
皇女とルーギンは冬という季節の関係上、ほとんど北嶺におり、今回の登場は少なかったです。そのぶんジェイサルドとファルバーン、そして皇妹と第二皇子がご活躍。 特にこれまで敵か味方か判断できない言動の多かった皇妹殿下が、かなり胸襟を開いた感じで歩み寄りを見せてくれたのが、読んでいる方としては気疲れしなくてすんで助かりましたね(苦笑) 前回どうやれば回避できるんだ!? と心配させられた復縁の件も、皇帝の親馬鹿先回り処置のおかげで自動的に立ち消えましたし。こうなると皇妹殿下とヤエトは、割と互いに相手を理解し合える良き友人に……なれませんかねえ。 とか言ったら、ヤエトに「知るかボケ」と罵ってもらえたりしてvv そして貴族なのに尚書官で、強引だけどなんだかんだでヤエトを友人認定している新キャラ、タナーギン。 ヤエト自身はあまり自覚がないままに、罪を引き受けて恩を売った形になっている貴族という点では、ルーギンとも同じ立場にある存在なんじゃないでしょうか。これで文武共に信頼できる、帝国上層部に顔が利く人材が揃ったのかも? アクの強かった赤犬家のギスケルとも、なんだかんだでうまくやり始めたりしていて、結局ヤエトは人望を集めるのがうまいんですよねえ……
皇帝も、いろいろ娘馬鹿を炸裂させつつ、ヤエトのことを受け入れてきてるみたいですし、この先どんなふうに展開していくことやら、楽しみでなりません。 皇女が……なのは、正直ちょっと複雑ではあるんですが。 確かに年の差も身分差も大好物ではあるんですけれど、それ以上に男女の恋愛の絡まない主従関係というのに萌えるタチなので……ああでも、ヤエトがしれっと皇女に***したのが、挿し絵つきであったのは、びっくりしつつもやっぱり萌えたvv 斜め後ろ四十五度かつ、ヤエト自身があくまでしれっとしてるのがポイントです。
……っていうか、前々から思ってたんですけど、ヤエトってそこらへんの経験値、どうなってるんでしょうね。彼が玄人とどうこうする気概とか体力を持ってるとは思えないし、かといって結婚をしないと心に決めているうえで、それでもなお恋人を作るという選択肢を取るとも思えないし。 それにしてはやけに手慣れてたけど……果たして真相はいかに??
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No.6820
(読書)
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2015年05月11日の読書
2015年05月11日(Mon)
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本日の初読図書: 「翼の帰る処(WEBマンガ)」 http://www.gentosha-comics.net/event/tsubasa/01.html
おおおおおお!! まだ3(6冊目)までしか読めていないFT小説「翼の帰る処」ですが、ネットでうろうろしていたら、公式絵描きさんによる1巻冒頭のコミカライズが!! すすす、素晴らしい〜〜〜( T ▽ T ) ほんの8ページほどの、ほんとのほんとに冒頭、会議の怒鳴り合い〜姫さまとルーギン一行が北嶺にやってきたまでのシーンだけなのですが、あの ことき さんの絵で、絵でvv ヤエトが内面をほとんど外に出さず見た目だけは淡々としてる雰囲気とか、無駄に美麗な金髪美形ルーギンの剣に、ちゃんと小さい鈴がついてるとか、もう雰囲気ぴったりですよ。 金髪青目がデフォルトの北嶺人(プラス帝国人)の中で、黒髪黒目のヤエトがどれだけ浮きまくってるのかも、一枚絵とはまた違ってはっきりと判りますし。遠景の北嶺の山とか、もう私の脳内から出力されたんじゃないかってぐらいでした。 うっわー、これこときさん、マジで最初の上下巻だけでもコミカライズしてくれないかなあ。どうせなら鳥達の姿も見てみたい〜〜><
なお原作小説は、新書版だったのが現在は大判単行本で出直しています。書き下ろしSSなども足されているらしく、今から読まれる方は大判の方を選ばれたほうがよろしいかと。
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No.6818
(読書)
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2015年05月04日の読書
2015年05月04日(Mon)
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本日の初読図書: 「傭兵団の料理番(小説家になろう)」〜十六、決着ともつ鍋・裏編 http://ncode.syosetu.com/n3420cm/
子供の頃から料理好きで、和洋中の料理を研究したり、歴史を勉強して昔の料理を再現するのが趣味の青年、東朱里。ある日の仕事帰りに白い光に包まれて、気が付くと剣や槍や弓や矢で武装した中世のような世界の戦場に放り出されていた。 群雄割拠する、時は戦国。戦場では魔法と矢が飛び交い、槍と剣が打ち合うそこサブラユ大陸では、様々な勢力が野望をいだき、戦争に明け暮れているという。 孤児の身から、一国一城の主となることを夢見て幼なじみと共に傭兵団を立ち上げたガングレイブは、いきなり陣地に迷い込んできた奇妙な男に、気まぐれで料理をさせてみることにした。武装した人間に囲まれ命の危機にさらされながら、「お腹空いたんで、料理させてもらえませんか」とか言い出すとぼけた所を面白く思ったのだ。 旨い料理で膠着した戦場での士気が上がればよし。不味ければ腹いせに殺させれば、やはり士気を上げることができるだろう、と。 そうして青年 ―― シュリがわずかな材料から作り上げたシチューは、これまで食べたことがないほどに旨いものだった。 後に、大陸を平定した初代統一帝国皇帝ガングレイブ・デンジュ・アプラーダは、その著書にこう残している。 『大抵の兵は美女を抱き、金を手に入れることが目的だ。だが、それだけでは兵は動かない。結局、旨い飯こそが兵を、民を支え、国を形作るのだ。一日を生きた喜びと、明日を迎えられる感謝。それらを旨い飯で朝を始め、旨い飯で夜を終える。それこそが幸せではないのか。余は、それを彼に教えてもらった』 皇帝ガングレイブは、若き頃に出会い、共に戦場を駆け旨い飯を作ってくれた料理人を、常にその側へと仕えさせていたという。 皇帝と、その側近たる英雄達を陰で支えた料理人。 これは後世に“食王”として語り継がれるシュリ・アズマが、本人は全く気づかぬうちに様々な人々へと影響を与え、そしてそのことに無自覚なまま生き続けた、そんな物語である ――
半端でなく料理好きの青年が、異世界で泥臭い傭兵団に拾われて、そのあまりに劣悪な食事事情を見かねて腕をふるいまくり。ついでにあちこちの領主やら有力者やらも、料理の腕と勘違い気味のあれこれで落としつつ成り上がっていくお話。 すでに彼が日本に帰れないことは、第一話のラストで確定しているわけですが。そして主要キャラ全員が生き残って大成することも語られているわけですが。 それだけに逆に安心して読めます。 基本的にお話は、料理ごとに前後編あるいは3〜5話程度に分かれており、それぞれで視点が異なります。 シュリ視点だとかなりほんわかゆるゆるなお料理パート。しかし同じ場面を別のキャラが別の立場で見ると、深読みしまくったり、なんてことない行動から天啓を受けたりして、いろいろとんでもないことになっています(笑) 特に傭兵団のトップと幹部クラス五名が、シュリの言葉にヒントを見出して編み出すあれこれがすごすぎるvv 個人的にはテグさんの一途っぷりを楽しく眺めつつ、第二章で登場した看守さんの今後がどうなってくるかも着目のしどころです。 ……ただ個人的に男装の彼女は、あんまりヒロインにはなって欲しくないかなあ。仲間としてシュリの部下になってくれるなら、それはそれで面白そうですけど、そうなると今度は看守さんが板挟みになりそうだし……ううむ……
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No.6808
(読書)
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2015年05月03日の読書
2015年05月03日(Sun)
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本日の初読図書: 「休暇だと思って楽しみます。(ブラックゾーン)(ムーンライトノベルズ)」〜陛下とリゼルとピアスの話。 http://novel18.syosetu.com/n6137cq/
果てしなくグレイゾーンに近い、男同士の友情以上恋愛未満・恋愛感情なし友愛がモットーの、異世界 → 異世界トリップFT「休暇だと思って楽しみます。」の、作者さんご自身が書かれた二次創作、的な感じ? 一作目の今回はタイトルの通り、本編でリゼルがつけてる例のピアス関連で「魔力を限界まで引きずり出されて込めさせられた」時のお話です。 グレイゾーンを突破してしまったと書かれてはいますが、今回はまだ友愛の範囲内だったかと。たぶん。 ……いやある意味これって、なまじな恋愛感情よりよっぽど深い関係だとは思うんですけどねvv ともあれムーンさんに置くほど直接的な描写はないと、私基準では思いました。手のひらへのキスと、上半身に触れてるだけですもんねえ。しかもそっち目的ではなく、魔力を引き出すためだし。とは言え雰囲気はめっちゃあるぶん、下手に直接描写するよりもよっぽど腐向けではあります(笑) ともあれ陛下のドSぶりが光る一作でした★
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No.6806
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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