2015年06月04日の読書
2015年06月04日(Thr)
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本日の初読図書: 定期航路の宇宙船をまるごと拿捕し、乗員乗客三十四人を人質とした偽シェンブラック海賊団。 彼らがトゥルーク政府に要求してきたのは、新種のドラッグ「パーフェクション」の原料となる藍王木と白籠岩500万トンであった。七日後までにそれらを用意し、貨物船に積み込んで引き渡せば、人質は開放すると言う。さらにそれまでの間、連邦軍の星系内への進入禁止と宇宙港を閉鎖しろという条件も付けられた。そのためリィ達は、取り引きが終了するまでティラ・ボーンへ戻れなくなってしまう。 それでもどうにか監視の目をかいくぐって宇宙に出たケリーとジャスミンとダイアナは、一週間の猶予を無駄にせず、パーフェクション中毒者の交友関係の方向から調査を進めていった。しかし調査が終わりきらぬうちに期限の日はやって来る。 連邦軍の大艦隊が、カトラス星系の外縁ぎりぎりを包囲していた。偽シェンブラック団とトゥルークの宇宙港は、人質を乗せた搭載艇と20隻の貨物船を、一隻ずつ交換してゆく。しかしすべての船が交換され終えてもなお、海賊達のもとには人質が六名と、そして交渉役として乗り込んでいったエルヴァリータが取り残されていた。人質の中には、エルヴァリータの娘でライジャの姉である、エレクトラも含まれている。 さらに悪い事態は続いた。偽シェンブラック団の手元に渡ったはずの貨物船が、誰も操作しないままいきなり動き出し、すべてどこかへ跳躍していってしまったのだ。これに激怒した海賊達は、核ミサイルのボタンを押した。 惑星全域を破壊し尽くせる数の核弾頭が、トゥルークの地表めがけて降り注ぐ。 大混乱に陥る中で、さらに所属不明の武装船が複数、星系内へと跳躍してくる。 彼らが上げた、その名乗りとは ――
偽シェンブラック&グランド・セヴン海賊団、惑星トゥルーク、連邦軍にケリー達、そして本物のグランド・セヴンの『関係者』達が入り乱れた、大人サイドの番外編シリーズ(とりあえずの)完結編。 ラストに、一部で物議をかもしだした前日譚短編、「大いなる闇が来た」も収録されています。
そ・う・き・た・か!!
というのが、ページをめくりながらの心の叫びでした。 「アンヌの野兎」でネタバレられたとか、偉そうにほざいていてすみません。 《アルベルティーナ》も《ブルーライトニング》も、どっちも《ビート》って愛称にできそうだから、そこを引っ掛けにしたんだな、とかほくそ笑んでいたらどうしてどうして。 まさかここまでしっちゃかめっちゃかだとは、想像のはるかに斜め上をかっ飛んで行かれましたよ(褒め言葉)
……いやはやまったく、今回はもう、全てがランバルトとブルズアイジャックに持って行かれました。 昔のグランド・セヴンの名誉を守るべく駆けつけたかつての乗員(すでに老境)達も、ランバルトにあこがれて密航 → 半年ほど見習いをやったあげく、今では連邦軍司令官になっていた『彼(六十代)』も、かなり初期から思わせぶりに出ていてある意味キーキャラでもあった女僧ラテール・ザンテスも何のその。 この3巻では、ランバルトとジャックの人生と絆を、これでもかーーーーっっっ、と見せつけられる内容でございました。 なにしろこの二人にとっては、ケリーですら『若造』、ジャスミンに至っては『お嬢』扱い(笑) 実際、一度若返ったケリーの総帥時代をちゃんと勘定に入れても、まだ年上ですからね。この二人。 ちゃんと計算してませんけど、ランバルトは下手すりゃ九十超えてるのか……? しかも二人合わせて、まさにケリーとダイアナの二人を混ぜあわせたかのような、壮絶な人生を送ってきた上に、そこへ年月の深みが加わってるものだから、いくら彼らでも勝てるはずがない(笑) アンヌ〜に引き続き、大人どころか老人世代の大活躍でしたvv
そしてトゥルーク……っていうか、カトラス星系の異変の実情がまた『ひでぇ冗談(BYダイアナ)』で(苦笑) 海賊王時代のケリーがここを知らなかったのが、かえすがえすももったいないというか。もし知っていたら、それこそ大喜びで跳びまわって遊んでたんだろうなあ……
結局、ジャスミン達が調査していたドラッグの件については、まるで添え物のように駆け足で片付けられてしまいました。 とにかくこのシリーズは、そのタイトル通り、トゥルークとランバルトとブルズアイジャックのお話だったんでしょう。1〜2巻を読んで、タイトルの「海賊」は、ケリーと見せかけて実は偽グランド・セヴンを指しているのかと思っていたら、さらにどんでん返るとは(しみじみ)
そして裏ではルゥが大鉈を振るいまくったせいで、頭の硬かった本山の面々も、信仰のあり方を見直したようで。 ……でもこれって良いのかなあ。重要な内政干渉かつ文化の破壊に当たる気もするんですが、でもそもそもの根底が、まずトゥルーク側が一方的にルゥを“大いなる闇”と認識したところから始まってる訳で、それならこれはこれで、彼ら自身が選択した道なのか。 ともあれ少なくとも、自分達の信仰に合わぬからと、“神”の方を都合よく歪めようとしないだけ、宗教家としての彼らはそれなりに誠実と言えるんでしょう。たぶん。
……ただ、ライジャの両親はともかく、ラテール・ザンテスが啓示を受けた意味が、いまひとつ収まりが悪いかなあと感じられました。 まあ、確かに彼女がその啓示に従っていなかったならば、今回の事件の人質達は、少なくとも何人かは助からなかったかもしれません(微妙に不確定)。連邦軍の艦隊だって全滅したかもしれないし、パーフェクションが大量生産されて、次期連邦主席がああなると、共和宇宙自体が……とか思うと予定調和なんでしょうが、でもそれって『修行のため』とは言いませんよねえ? それとも共和宇宙を、すなわちそこに属するトゥルークを救うことが、修行のひとつって解釈なんですかね??
そのあたり、これに完結編と銘打たれているのになぜか発行されている4巻で、多少でもフォローが入ると良いと思いました。
……そして、いい感じに枯れたランバルトを、イラストで見てみたいようなそうでもないような。 こういうのは想像で収めておいた方が、むしろ自分の理想を追求できて良いのかもしれないしなあ……
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No.6865
(読書)
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2015年06月03日の読書
2015年06月03日(Wed)
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本日の初読図書: 「世界で一番幸福な奴隷(小説家になろう)」 http://ncode.syosetu.com/n7206co/
アルバス国の王女トリステは、昨年生じたクーデターにより家族を殺され、自身は奴隷として隣国ルクスの王、クピディタス・ファートスに献上された。 王族であるトリステにとって、耐え難いほどに屈辱的なはずの状況。しかし冷酷な王として恐れられているクピディタスは、驚く程に優しかった。 奴隷というよりも愛妾として丁重に扱われ、かつて自国で暮らしていた頃よりもずっと贅沢な品々に囲まれている。 「愛しいトリステ。お前の為だったら、私はどんな願いだって叶えてやる。お前が望むものは何だ? さぁ、望みを口にしてみろ」 普段は滅多に表情を変えないクピディタスが、トリステの前でだけは優しく愛情深い笑みを浮かべ、繰り返し問いかけてくる。トリステはいつも同じ答えを返した。 「私はこれ以上、何も望みません。私は、今の状況が堪らなく幸せなのです」 自分は、世界で一番幸福な奴隷だ、と。 しかしクピディタスはその答えに肩を落としてため息をつく。 「違う。その笑みじゃない。その笑みは、私が見たい笑みではない。私が見たい、そなたの心からの笑みを見せてくれ」 そうして様々な贈り物の末に、クピディタスが用意したものは……
ヤンデレ溺愛系の読切短編。 残酷描写かつ、どんでん返しあり。 ラストは七瀬かいさんの「フロリアーダ綺譚(天使の擬態に収録)」を思い出しました。
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No.6862
(読書)
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2015年06月02日の読書
2015年06月02日(Tue)
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本日の初読図書: 五十年以上前に共和宇宙で活躍し、今でも船乗り達の間で畏怖と尊敬とともにその名を語られる海賊達がいる。大海賊団の長だったキャプテン・シェンブラック。そして彼の引退後、その縄張りを分けあった七名の船長達、グランド・セヴン。 彼らは海賊王と呼ばれた一匹狼キング・ケリーと、まさに同じ時代を生きており、仲間にこそならなかったものの、互いに認めあい尊重しあっていた。 そんな八人の偉大なる海賊達への尊敬を込めて、船乗りたちは自らの船に彼らの乗船と同じ名をつけることすらけしてしない。かの伝説的存在に、自分達のようなひよっこがあやかろうなど、みっともなくてとてもできないというのだ。それは海賊達と敵対していた、連邦軍の軍人達でさえもが同じ考えを持っているほどで。 しかし ―― 惑星トゥルークが存在するカトラス星域で、商船が襲われている現場に駆けつけたパラス・アテナの前に現れたのは、「二代目シェンブラック海賊団」と称する八隻の船だった。 船の名前はおろか、そのキャプテン達もが堂々と二代目シェンブラックとその配下、二代目グランド・セヴンの名を名乗り、そしてケリーへと「ちょうど海賊王」がいなかったんだ。仲間に入れ」と勧誘してくる。その物言いすらもが、あきらかにパラス・アテナを次の襲撃の囮に使おうという魂胆が透けて見えるほど下卑ている。 船乗りとして、そして今はもう誰も生きていないだろう『本物』の彼らを見知っている人間として、こんな身のほど知らずの屑共をのさばらせておくなど許せない。 静かな怒りに燃えるケリーだったが、しかしカトラス星系にはなにか尋常でない空間の異常のようなものがあった。パラス・アテナもクインビーも、いくら照準を合わせてみても、攻撃を当てられない。そしてこの星系を知り尽くした八隻の集中砲火を避けているうちに、未知の《門》、しかもルーレット型を跳躍され、取り逃がしてしまう。 歯噛みしつつも再戦に備えるべく、連邦軍へと情報を流したり、あちこちへハッキングしていた彼らは、放置できない事実を知ってしまう。海賊の襲撃と時を同じくして、一般渡航禁止のカトラス星系に、度胸試しと称して無許可跳躍してきた金持ちの馬鹿坊っちゃんがいた。あまりにも世間知らずで考えなしなその若造は、よりにもよってクーア財閥の役員の甥だったというのだ。これだけでも重大な国際問題になりかねないところへもってきて、彼が乗っていた船の感応頭脳が、渡航禁止に対して警告を出さないよう不法に改造されていたのである。こうなるとクーア財閥そのものが、感応頭脳の違法改変、下手をすれば海賊との共謀容疑をかけられかねない。 ケリーに続きジャスミンまでもが怒髪天をついていた頃、惑星トゥルーク上でも重大な問題が起きていた。 連邦大学惑星で“大いなる闇”ことルゥに拝謁して戻ったアドレイヤ・サリース・ゴウランが、その報告の真偽を疑われたあげく、所属する僧院以外の全山一致した判断により、僧籍を剥奪されることになったのだ。 その知らせを受けた弟子のライジャは、苦悩したあげく、リィへと事情を打ち明ける。 そこでリィが取ったのは、ライジャやシェラはおろか、豪胆なケリーやジャスミン達でさえも震え上がる行動で ――
買ったは良いけど二年ぐらい積んでいたのを、ようやく手に取ることができました。 ……こないだ読んだ「アンヌの野兎」で、ちょこちょこ入っていたネタバレの内容が気になってしまったので(苦笑) 個人的に、茅田作品では大人キャラのほうが好きです。 共和宇宙を舞台にした一連のシリーズなら、ジャスミンとケリー。 デルフィニアならウォルとかイヴン。 「リィ達といっしょにするな。自分はあくまで一般人だ」と主張しつつ、実はとんでもなくぶっ飛んで器がでかい彼らに、周囲が「どこがだよ……」と呆れられながら認めてもらっているというのにたいそう萌えます。 そんな私がなんで二年もこれを積んでいたのかというと、一巻目の怪獣夫婦が、あまりにもトゥルーク(の主に僧侶達)に振りまわされ気味だったからです。 違うだろう!? この二人はあくまで振りまわす側じゃないと!! という不満があったのは否めません。あとライジャの姉がなんというか微妙だったり、これまですっごく大人に見えていたサリース・ゴウランがやけに子供っぽく見えたりとかして、そこらへんを受け入れるのに時間がかかっちゃったんですよねえ……
で、やっと読めた二巻な訳ですが。 うん、やっぱりこうでなくっちゃvv 偽グランド・セヴンまわりへの報復はこれからですが、それでもケリーが反則技で連邦軍へと情報を流したり、その窓口になってるミラン中佐が今後有望っぽかったり、人の迷惑考えずに自分の言いたいこと言いまくってたトゥルークの高僧達を完全にぎゃふんと言わせたのにはスッキリしました。
そしてカラー口絵と冒頭の回想シーンのおかげで、ようやくグランド・セヴンの名前と個性を一致させられたのもありがたかったです。 ……でもまだ、どの船長がどの船に乗ってたのかが、いちいちページ戻らないと把握できない(苦笑)<七人の船長に、それぞれの船名と感応頭脳の名前と通り名がある
これまではもっぱら、銀星ラナートにスポットがあたってましたが、このシリーズでは《ブルーライトニング》に乗ってる稲妻ブルズアイジャックと、《アルベルティーナ》に乗ってる特攻ランバルトがキーキャラになっている模様。 確認してみたところ、スカウィ最終巻の『映画撮影』には駆けつけられなかった二人ですね。 なんだかこの二人はこの二人で、特別な絆があるっぽくて、腐女子センサーにビシビシと反応が(笑)
「アンヌの野兎」を先に読んでしまったが故に、ラストで出航した『彼ら』が何者か、判ってしまっているのが残念無念。でもそんな彼らが何をやらかしてくれるのか、ケリーとどんなふうなやりとりを交わしてくれるのか、それが楽しみで楽しみで。 ああ、早く続きを買わなければvv
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No.6855
(読書)
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2015年06月01日の読書
2015年06月01日(Mon)
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本日の初読図書: 「みにくい、みにくい少女と、あべこべ世界(小説家になろう)」 http://ncode.syosetu.com/n7734ck/
地球に生まれた醜く、周囲に迫害され続けたが故に心さえもねじけて育ってしまった少女が、異世界に聖女として召喚される。その異世界では美醜の価値観が逆転しており、彼女は絶世の美女としてもてはやされた。 ささいな親切を行うだけで、人々は彼女を顔だけでなく心までも美しいと褒め称える。 少女は生まれて初めて心が満たされ、これまでの人生すべてに復讐している気持ちになれた。 そんなある日のこと、彼女はとても醜い使用人がいるという噂を耳にする。元の世界ではとても美しいとされる顔立ちをしているだろうその人物が、みじめに虐げられているさまを見たくなり、少女はこっそりと会いに行ってみた。 しかし、息を呑むほど美しいその少年は、けして周囲を妬むことなく、自分は幸せなのだと微笑んでいた。 かつての自分と同じような境遇にありながら、美しい心を保っている少年の姿に、少女はたまらない惨めさを感じる。 そうして彼女は、どうにか彼の心を醜く歪ませようと、様々な手段を弄していき ――
何らかの企画テーマにそって書かれたらしい、読切短編もの。 童話っぽい文章でひらがな多めですけれど、意外とさくさく読みやすかったです。 美醜逆転系もそろそろ食傷気味だなあと思いつつ読み進めていたら、童話風の文章だけに終わり方も童話風で、お約束的予定調和に教訓めいたものも感じられ、これはこれで面白かったかと。 しかしラストの一文が、最後の最後ですべてをひっくり返しているというか、なんだかんだ言いつつやっぱりそこは気になり続けるんだというか。 価値観とは何か、人の心のあるべき姿とは、と、なかなか考えさせられるお話でした。
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No.6851
(読書)
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2015年05月31日の読書
2015年05月31日(Sun)
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本日の初読図書: 営業を再開したレストラン「テオドール・ダナー」には、以前のように多くの客が訪れるようになっていた。気心の知れた近所の知り合いもいれば、テオの料理に魅せられて、お忍びで通い詰める各界著名人もいる。 料理人風情と結婚したと、今は亡き娘に腹を立て絶縁していた凄腕投資家シメオン・パラデューも、すっかり常連客の一人となっていた。孫や孫の嫁、曾孫ももちろん愛しいのだが、目下の彼の一番の関心は、娘婿テオに向けられている。アンヌが遺した録音メッセージの通り、テオは料理をする以外まったくの役立たずで、常識すらろくに知らない。しかし「料理を引き立てるため店で使う」という観点を持った途端、驚くほどの審美眼を発揮するのだった。パラデューは店にやってくるたび、あらゆる美術品の本物や贋物をテオに見せてみるのだが、テオが「これは良い」「店の備品にしたい」と言うものは、すべてが本物なのである。しかもその値段や作者のことなど何も知らぬまま、ただ「気に入った」というそれだけで、100%本物を引き当てるのだ。 いっそのこと彼を、とある蒐集家が遺した膨大な美術品が収められている宇宙船へ連れていけたら、と。パラデューはそんなふうに嘆息する。その宇宙船には未鑑定の美術品が目録すらないまま、玉石混交の状態で十万点以上積まれているのだという。 ただしその宇宙船は、現在行方が判らなくなっていた。唯一の搭乗者が死亡したのち、感応頭脳が発した通信を頼りに捜索隊が該当宙域へ駆けつけた時には、既に姿を消していたらしい。当然テオを連れて行くことなどできるはずもない。あれほどの美術品が失われてしまうのは、宇宙的損失だとパラデューは嘆いていた。 ルゥもまじえて交わされていたそんな雑談を、たまたま店に居合わせたケリーとジャスミンとダンの三人も、聞くともなしに聞いていた。ケリーは総帥時代にパラデューとも面識があったが、現在の彼を見てパラデューがそうと気づくはずもなく、あくまで偶然同席した常連の一人という態度を貫く。 翌日のこと、テオドール・ダナーの掲示板にひとつの知らせが載った。いわく「店主の都合により、当店はしばらく『ヨハン・ダナー』として営業いたします」と。 なんでもテオは旅に出たらしい。以前も時おり、新たな食材や調理法を求めて、さまざまな土地を巡っていたのだという。当時はそのたびに店を閉めていたのだが、今回は任せてもらえたとあって、息子ヨハンは良い意味で張り切っていた。 ところがその晩のこと、ルゥやパラデュー、ケリーたちだけが残った閉店間際の店に、一本の連絡が入る。 それはテオが500Km離れた海沿いの町で、警察に逮捕されたという知らせで ――
3巻でリィ達の協力のもと無事営業を再開した、テオドール・ダナーのその後のお話。 シリーズタイトルに「天使たちの課外活動」とあるものの、リィとシェラはラストにちょっと出てくるだけ。さらに表紙で怪獣夫婦がでんっと出張っておりますが、メインはむしろテオとシメオン・パラデューです。大人組どころか壮年(推定五十代)と老年(七十代)コンビが主役って、いったい誰得なお話ですか。もちろん美味しくいただきましたともvv
そう、前巻のラストでテオの料理の虜になったパラデューさんは、盛大にデレました(笑) ルゥいわく『可愛さ余って憎さ百倍の逆の心理』とのことで、今回はひたすらテオ(娘婿)の後ろについてまわり、亡きアンヌ(娘)に代わって、決定的に言葉が足りな過ぎるテオのフォローに努めております。 共和宇宙屈指の投資家が、秘書も連れずに田舎へほこほこついていき、嬉々として山小屋の干し草の山で寝てるんだぜ……? パラデューさん、極端すぎるわ(笑)
テオにはまったくその気などないのでしょうが、結果的にアンヌの死後疎遠になっていた取引先へと、新たなスポンサーを案内しつつ紹介してまわったという形に。これで店はますます安泰となることでしょう。 ……しかしチーズや山菜を届けさせるためだけに、発着場と格納庫の建造までしてVTOL飛ばしてたアンヌ、只者じゃなさすぎるぜ……(ため息)
そしてジャスミン。ケツ揉んでんじゃねえよ(笑) お前も大人しく揉ませるな海賊w 部屋で一人吹き出しちまったじゃねえかww
あ、今さら言うのもあれですが、この巻には大人組サイドの外伝シリーズ「トゥルークの海賊」のネタバレも含まれています。 私はまだそっちを1巻までしか読んでなかったので、ちょっとやっちまった感が。 やはりリンクしてる作品というのは、発表順に読まなきゃ駄目ですねえ。
ところでいささか気になる点が。 「茅田砂胡 全仕事1993-2013」に収録されていた鈴木理華さんによる描きおろしマンガで、怪獣夫婦は町を散策中に生前のアンヌと出会い、「今度は息子と三人で食事に来る」と約束しているのですよ。 この巻の冒頭でそれが果たされ、怪獣夫婦と独り立ちしたミニラが店を訪れるのですが……これって時系列おかしくないですか?? ジャスミンが冷凍睡眠から目覚めたのは、リィ達が中学一年の時ですよね。季節までは覚えてませんが、「暁の天使達」のラストだったから、そののち外伝2冊+クラブレ16冊分の時間を一年生で過ごしたとなると、年度もかなり初めの頃だったと思われます。 そして二年生になってまだそう間もないだろう現在、すでにアンヌが死んで二年経っている。……ジャスミンが起きた時点で、アンヌもう亡くなってない?? と。 これは描き下ろしマンガ読んだ時から気になっていたものの、まあ商業ベースとはいえ二次創作だしなと流しておりました。しかしこうして本編に、作者様公認設定として組み込まれるとなると、ちょっと引っ掛かりが。 そのあたり、ちゃんと説明のつく整合性があるんですかね……?
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No.6850
(読書)
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2015年05月30日の読書
2015年05月30日(Sat)
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本日の初読図書: 「悪役令嬢に転生しましたが、それより憧れのあの人を目指します。(小説家になろう)」 http://ncode.syosetu.com/s0783c/
現代日本で暮らしていた『私』は、気が付くと既知の乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わっていた。 前世の記憶を取り戻したのは、ゲーム開始となる十七歳より七年ほど前。ゲームの中の彼女、オリビア=フーエンシュタインは、メイン攻略対象である皇太子シュベルツ=エルセルムの婚約者候補で、類まれな魔法と身体能力を駆使し、清々しいほどにヒロインをいじめ抜く存在だった。そして最終的には王家乗っ取りを目論んだ父と連座し、幽閉されるというバッドエンドを迎える。 可愛らしい姿のヒロインと対比させるかのように、そのキャラデザインは美人だけれどきつめの顔立ちで、背が高く足も長い。むしろ男性キャラの容姿に近いと言えた。 鏡を見ながら七年後の姿を思い返し、オリビアは唾を飲み込む。 これはいける、と。 前世で激ハマりしていた、とある少女漫画があった。フランス革命を舞台に男装した麗人が活躍する、あの国民的名作。 前世の『私』は背が低いうえに運動神経も皆無だったので、あの人のコスプレをしても、子供のお遊戯にしかなりえなかった。しかし今のこの身体なら、できる。 ゲームなんてどうでも良い。憧れのあの人を再現することを極めなさいと、神がそう言っているのだ!! そう確信したオリビアは、さっそく剣術を習いたいと父に願い出る。 前世で憧れ続けた、あの凛々しき男装の麗人を目指すために ――
「題名を出さなければきっとセーフ」をキーワードに、かのオ○カル様になりきって学園で女生徒達の人気をかっさらう、人生をかけたコスプレ道を行く転生者のお話。短編。 続編として、やはり短編の「紅薔薇の君が倒せない」もあります。 最近流行りの悪役令嬢系ですが、発想が一捻りされていて面白い。前世知識で持ち込むのが、よりによってそれかって(笑) 本来なら婚約者候補であり、ヒロインに奪われるはずだった皇太子を、決闘でこてんぱんに叩きのめす悪友ポジションに。さらには同じく日本からトリップしてきたヒロインが宝塚ファンだったため、攻略対象者よりもオリビアの方に夢中になってしまうカオスっぷり(笑)
二次創作禁止な「小説家になろう」では題材がグレイゾーンに入るので、続きはもう書かれないと言うのが非常に残念です。
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No.6847
(読書)
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2015年05月29日の読書
2015年05月29日(Fri)
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本日の初読図書: 三大候爵家の中でも、今は没落しているクラインシュミット家。 その末端に位置するメルディ・クラインシュミットは、レティとの視察旅行を経て諦めていた未来への希望を取り戻した。今は王立騎士団への入団を目指して、体力作りや勉強に励んでいる。レティも将来の有能な人材に恩を売っておこうと、様々な助力をしていた。 また同時にメルディは、五年前に起きた変死事件について調査を始めている。それはメルディの従兄弟で、レティの婚約者候補であったマティアス・クラインシュミットが、王宮の四阿の屋根で死んでいたという事件であった。周囲に高い建物などどこにもないのに、彼の死体はどう見ても墜落死の様相を呈していた。場所が王宮であり、被害者がレティの婚約者候補だったこともあり、事件は半ば揉み消されるように詳しく調べられないまま、事故か他殺かすら曖昧な状態で放置されていたのだ。 当時のマティアスはレティと婚姻したのち、彼女を殺して王位を奪うつもりでいた。その野心にただ一人気付いていた幼いレティは、不可解な現象に見える彼の死を、王になるべく定められた騎士王の生まれ変わりである自分を害そうとしたが故に、運命によって排除されたものと考えていた。それ故に責任を感じていたのだが、メルディはまだ犯人こそ絞り込めないものの、殺害方法だけは予測がついている。あれは人間の手でも起こせる他殺だと断言する。 メルディは従兄弟の、レティは婚約者候補の、その死の真相を知ることで、心の奥底に淀む過去の呪縛を断ち切れるかもしれない。レティに忠誠を誓うナイツオブラウンド達も、それで主君の気持ちが少しでも楽になるのならと力を貸した。 周辺諸国の来賓も迎えて大々的に行われる春のミモザ祭に忙殺されながら、彼らは調査を進めてゆく。 しかし祭の催しのひとつ、狐狩りの最中に、メルディが毒矢を射かけられた。果たして狙われたのはメルディなのか、それとも共に馬を走らせていた友人達なのか。メルディが羽織っていたのは銀狼公アウグストの外套であったから、彼に間違われた可能性もあるし、場合によっては誰でも良かったという可能性も考えられる。 メルディ自身は事件について何かを掴んでいたらしいが、意識不明で生死の境をさまよっている彼に、その内容を聞くこともできず ――
前作から引っ張ってこられた、軍師編がここで決着。 最初の頃は「自分の身は自分で守れる。ナイツオブラウンドは形だけ揃えるにすぎない」とか言っていたレティが、ナイツオブラウンド達を信じて様々な仕事を任せられるようになってきました。 ああ、レティも成長したなあ……とかしみじみ思っていたら、終盤それどころじゃなくなったというか。
もうね、えっそう来るの!? いやいやいや、それはないだろう。ああでもレティならやりかねないか? それもありなのか!? と、ものごっつ動揺しながら振りまわされまくりました。 だってねえ、なんだかんだ言ってメルディって、唯一レティを上回るレベルで脳味噌回転させて、高次元な会話を成立させられる天才じゃないですか? デュークはあくまでレティの思考をシュミレーションできるだけだし(それも充分すごいけど)、グイード殿下は『兄』ですから、『その選択肢』もありといえばありなのかなって思っちゃったんですよ。 政略はマティアスに始まりメルディに戻る。 メルディの父親だって、最初はそのつもりだったんですし、それならそれで綺麗に話はまとまるなあ、と。 やー、踊らされました(笑) ここで前の巻のデュークの発言、「下種なことが平気でできる人間がいい」が生きてくるとは……この作者様の伏線の張り方に脱帽です。
メルディの見せた覚悟。 そしてそれを受け止め「想いを背負うのはわたくしの仕事」と言い切るレティの格好良いことよ……
メルディはけして『平気』ではないし、今後もそうなっていくことなどレティが許さないでしょうが、下種でもずるくても辛くても、自分のやれることを精一杯やっていこうと、己の行くべき道を定められたメルディの成長ぶりに、感無量だったのでした。
ちなみに読んでる時は帯とブックカバーに隠れていて、後書きで初めてそれに気付いたんですが……表紙イラストのレティとデュークが、背中合わせで手ェ繋いでるvv やっべえ、あれほどデュークとレティの恋愛模様は微妙とか言ってたのに、なんだかんだ言ってもやっぱり萌えるっっ 特に本文ではデュークが完全に内心を隠しきって模範的な騎士の振る舞いを見せてるので、こういうさりげなーーい接触が微笑ましく感じられます。 てめえらこの大事な局面で色恋なんぞにうつつ抜かしてんじゃねえよ、と思うことが多い恋愛小説も数ある中で、やるべきことをちゃんと全部こなした上で、エピローグにようやく恋愛色をにじませる程度のこの作品は、これはこれでありかなと思えてきた今日この頃です。
さて次は、今回まったく出番のなかった第一王子がメインですかね……? フリートヘルム殿下も魅力的なキャラですし、次回も楽しみです。 やっぱり11番目と12番目は、あの二人なのかなあ……
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No.6846
(読書)
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2015年05月28日の読書
2015年05月28日(Thr)
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本日の初読図書: 最新科学技術を悪用した犯罪を専門に捜査する、警視庁科学特捜課。昨年新設されたばかりのその部署で、科学的知識も持たず無気力不真面目でお荷物となっている、駄目刑事がいた。いつも仕事をサボって格闘ゲームばかりしている彼、久我山鏡(くがやま きょう)は、ある日いきなり、子供の手伝いを命じられる。 臨時で捜査協力することとなった、科学捜査のスペシャリスト。アメリカの大学で3つの学位をとったIQ250の天才にして、警視総監の孫である保科恭(ほしな きょう)は、まだ12歳の少年だったのだ。 どんな爆発物を使用したのかも不明だった連続爆破事件を皮切りとして、二人の「キョウ」は次々と不思議な事件を解決してゆくこととなる。 初めは反りの合わなかった二人も、少しずつ互いを認めていき……やがては連続する事件の裏に、暗躍する謎の人物が浮かび上がってきて ――
皆川作品への再読熱が高まり、「D−LIVE」、「スプリガン」を全巻読み返したあげく、新たに未読作品へと手を伸ばしてしまいました。 一巻で完結しているというので安心して読んだのですが……ぇぇぇええ、ここで終わるの!? と言う感じ。 相方(大人の方)の過去が明らかになり、新たなライバル教授も登場して、ここからが面白くなってくるだろうに〜〜(><) と、物足りない感でいっぱいです。
1996年刊行の、しかも掲載誌が「小学六年生」にも関わらず、内容は今でもしっかり楽しめました。 テレビがブラウン管だったり、携帯電話がトランシーバーみたいな形してるのはまあ、時代の変遷上しかたないところでしょう(苦笑) 水素吸蔵合金とか、急激な減圧による気温低下とか共振とか、そういった科学技術を利用したトリックは、今野さんの小説「STシリーズ」を彷彿とさせられましたね。
……ただまあ、やはり子供向け雑誌に掲載されていたせいか、立ち回りシーンがほぼ画面外にカットされていたのが残念でした。せっかくの鏡さんの見せ場なのに……暴力表現ってことでアウトだったんでしょうねえ。 皆川作品はアクションシーンが格好良いので、そこらへんをもうちょっと見てみたかったです。
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No.6843
(読書)
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2015年05月25日の読書
2015年05月25日(Mon)
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本日の初読図書: 田宮涼子の選択によって、新一は失っていた涙を取り戻す。そしてついに情報提供者として政府機関に協力することとなり、パラサイトを見分ける能力を持つ死刑囚、浦上と邂逅する。政府は見せしめも兼ねてパラサイトの拠点へと武力による大規模襲撃を決定、実行。 最強のパラサイトである五体結合型、後藤との対決とミギーの戦線離脱。単身、隻腕で後藤と戦うことを決めた新一の想いと葛藤。選んだ道。 混乱の中、逃亡した死刑囚浦上の主張する人間の姿とは。そして新一とミギーの見出したものは ―― ?
全三巻の完結編。ちょっと少なめの670ページでした。 いやあ、何度も言ってますが深いです。 一見、過激描写が売りのバトルアクションと見せかけて、その実態はけして化け物と人間との単純な善悪二元論に留まらず。人とは何か、生きるとは何か、利他とは、利己とは、罪とは、悪とはと、これでもかというほどに問いかけてきます。 人間を何百人と殺しまくった後藤との戦いで、重要なキーとなったのが、その人間が無責任に不法投棄した産業廃棄物だという皮肉。そして広川市長の正体と、新一を最後に追い詰める『彼』。 田宮涼子の語る「我々はか弱い。だからあまりいじめるな」という言葉がじわじわと効いてきます。
そしてこの作品のすごいところは、これだけの紙面を費やしてなお、それらの問いに明確な答えを出していないところではないでしょうか。 なんかそれらしいことを言いつつも、あくまで解答はぼやかされており、読者それぞれがそれぞれに考えろといわんばかりの問題提起で終わっています。 人やそうでないモノ達の持つ醜さや罪悪感、葛藤、逃避やエゴをもきっちりと描き出した上で、さあ、あとは自分で考えろと放り出す。
この話を読んだあとは、モヤモヤが残る人も多いかもしれません。しかしそのモヤモヤに対して自分の頭で考えさせる。けして判りやすい答えを目の前に提示して、「ほらこれが正解なんだよ」と安易に読者へ押し付けない。 だから読み終えた後に、新一の行動やミギーの選択、パラサイト達の未来について思いを馳せてしまう。それで良いのか、自分ならこうするんじゃないのかと批判してみたり、いややっぱりそれで良かったじゃないかと共感してみたりする。 単純にめでたしめでたしで思考停止に陥らせないところが、この作品の魅力なんだと思います。
私は実写映画は金曜ロードショウの特別編を見ただけで、劇場版の方は一作目も完結編も未視聴です。 劇場版がどんなふうになっているのか知りませんが、改めて原作を読んでみて、そこらあたりをきっちり描いていて欲しいなと切に思ったのでした。
ところでちょっと気になった所。 「生の章」の方で、広川市長が車の上に並んで立ち演説してるシーン。ミギーが「高い位置に(パラサイトが)六人」って勘定してるんですが……この最終巻を読んでみると、あれ、計算あわなくね? と。 ……まあ、実はこの時点ではまだ後藤が全身を統合しきれておらず、一人で二〜三体勘定されてたって解釈すれば、筋が通らなくもないんですけどね(苦笑) そこのところだけ、少々違和感だったのでした。
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No.6837
(読書)
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2015年05月24日の読書
2015年05月24日(Sun)
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本日の初読図書: 全三巻の真ん中。今回は750ページあります。 「島田秀雄を屋上で狙撃」→「パラサイトの見分け方判明」→「広川の市長選立候補」→「スケバン加奈ちゃんとの関係決着」→「探偵にミギーを見られる」→「三木(三体統合体)に追われて逃げる」→「後藤(五体統合体)に追われてさらに逃げる」→「父親に電話で警告」→「探偵が政府に情報を流す」→「田宮涼子がコミュニティと敵対」ときて、探偵が隙を見て子供を誘拐したところまで。
今回は新一のさらなる心身共にの人間離れや、パラサイト達の成長、政府機関の動きが語られていきました。 ミギーの秘密もパラサイト・人間の複数に漏れてゆき、それぞれがそれぞれの対応をとっていく。 パラサイトVS新一+ミギーだった構図に、政府機関やパラサイトに大切な相手を殺された人間が混ざり始め、さらにパラサイト達の間でも意見の相違が生じ始める。 そして誰よりも研究熱心で、パラサイトの種族としての未来を見据える田宮良子の変化。ひとつの肉体に五体のパラサイトが共存し、統合を果たしている、かつてない強敵後藤の存在。政治家として政府機関の一角に食い込んでいる広川の今後は……
大切な人を守ろうとして、結果的にどんどんヒトから逸脱していってしまう新一の、エゴをも内包した冷酷さと、それでも懸命に人間としてあろうとする感情との葛藤が切ないです。
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No.6834
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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