よしなしことを、日々徒然に……



 2015年05月25日の読書
2015年05月25日(Mon) 
本日の初読図書:
4063856569寄生獣 獣の章 アンコール刊行 (講談社プラチナコミックス)
岩明 均
講談社 2015-05-08

by G-Tools
田宮涼子の選択によって、新一は失っていた涙を取り戻す。そしてついに情報提供者として政府機関に協力することとなり、パラサイトを見分ける能力を持つ死刑囚、浦上と邂逅する。政府は見せしめも兼ねてパラサイトの拠点へと武力による大規模襲撃を決定、実行。
最強のパラサイトである五体結合型、後藤との対決とミギーの戦線離脱。単身、隻腕で後藤と戦うことを決めた新一の想いと葛藤。選んだ道。
混乱の中、逃亡した死刑囚浦上の主張する人間の姿とは。そして新一とミギーの見出したものは ―― ?

全三巻の完結編。ちょっと少なめの670ページでした。
いやあ、何度も言ってますが深いです。
一見、過激描写が売りのバトルアクションと見せかけて、その実態はけして化け物と人間との単純な善悪二元論に留まらず。人とは何か、生きるとは何か、利他とは、利己とは、罪とは、悪とはと、これでもかというほどに問いかけてきます。
人間を何百人と殺しまくった後藤との戦いで、重要なキーとなったのが、その人間が無責任に不法投棄した産業廃棄物だという皮肉。そして広川市長の正体と、新一を最後に追い詰める『彼』。
田宮涼子の語る「我々はか弱い。だからあまりいじめるな」という言葉がじわじわと効いてきます。

そしてこの作品のすごいところは、これだけの紙面を費やしてなお、それらの問いに明確な答えを出していないところではないでしょうか。
なんかそれらしいことを言いつつも、あくまで解答はぼやかされており、読者それぞれがそれぞれに考えろといわんばかりの問題提起で終わっています。
人やそうでないモノ達の持つ醜さや罪悪感、葛藤、逃避やエゴをもきっちりと描き出した上で、さあ、あとは自分で考えろと放り出す。

この話を読んだあとは、モヤモヤが残る人も多いかもしれません。しかしそのモヤモヤに対して自分の頭で考えさせる。けして判りやすい答えを目の前に提示して、「ほらこれが正解なんだよ」と安易に読者へ押し付けない。
だから読み終えた後に、新一の行動やミギーの選択、パラサイト達の未来について思いを馳せてしまう。それで良いのか、自分ならこうするんじゃないのかと批判してみたり、いややっぱりそれで良かったじゃないかと共感してみたりする。
単純にめでたしめでたしで思考停止に陥らせないところが、この作品の魅力なんだと思います。

私は実写映画は金曜ロードショウの特別編を見ただけで、劇場版の方は一作目も完結編も未視聴です。
劇場版がどんなふうになっているのか知りませんが、改めて原作を読んでみて、そこらあたりをきっちり描いていて欲しいなと切に思ったのでした。

ところでちょっと気になった所。
「生の章」の方で、広川市長が車の上に並んで立ち演説してるシーン。ミギーが「高い位置に(パラサイトが)六人」って勘定してるんですが……この最終巻を読んでみると、あれ、計算あわなくね? と。
……まあ、実はこの時点ではまだ後藤が全身を統合しきれておらず、一人で二〜三体勘定されてたって解釈すれば、筋が通らなくもないんですけどね(苦笑)
そこのところだけ、少々違和感だったのでした。
No.6837 (読書)


 2015年05月24日の読書
2015年05月24日(Sun) 
本日の初読図書:
4063856550寄生獣 生の章 アンコール刊行 (講談社プラチナコミックス)
岩明 均
講談社 2015-04-24

by G-Tools
全三巻の真ん中。今回は750ページあります。
「島田秀雄を屋上で狙撃」→「パラサイトの見分け方判明」→「広川の市長選立候補」→「スケバン加奈ちゃんとの関係決着」→「探偵にミギーを見られる」→「三木(三体統合体)に追われて逃げる」→「後藤(五体統合体)に追われてさらに逃げる」→「父親に電話で警告」→「探偵が政府に情報を流す」→「田宮涼子がコミュニティと敵対」ときて、探偵が隙を見て子供を誘拐したところまで。

今回は新一のさらなる心身共にの人間離れや、パラサイト達の成長、政府機関の動きが語られていきました。
ミギーの秘密もパラサイト・人間の複数に漏れてゆき、それぞれがそれぞれの対応をとっていく。
パラサイトVS新一+ミギーだった構図に、政府機関やパラサイトに大切な相手を殺された人間が混ざり始め、さらにパラサイト達の間でも意見の相違が生じ始める。
そして誰よりも研究熱心で、パラサイトの種族としての未来を見据える田宮良子の変化。ひとつの肉体に五体のパラサイトが共存し、統合を果たしている、かつてない強敵後藤の存在。政治家として政府機関の一角に食い込んでいる広川の今後は……

大切な人を守ろうとして、結果的にどんどんヒトから逸脱していってしまう新一の、エゴをも内包した冷酷さと、それでも懸命に人間としてあろうとする感情との葛藤が切ないです。
No.6834 (読書)


 ……読みたかったんだもん
2015年05月22日(Fri) 
本日、仕事から帰宅した私の手には、こんなものがありました。



あー……(遠い目)

いえね、4月に実写映画第一作が金曜ロードショウで放送されてから、読み返したい読み返したいと言い続けていた私は、見事にメディアに踊らされているのでしょう。
おそらく映画公開前は一冊108円とかで売られていただろう20年以上前の古本が、旧版コミックの「コンディション可」ですら、2015年5月現在、10冊セットで安くても送料抜き3千円超。完全版とか文庫版に至っては、7〜8千円から万単位の値段がついているぐらいで。たぶん今が一番、高騰している時期なんじゃないでしょうか。
しかたがない、映画ブームが去って相場が落ち着くまで待つか……とか思っていたのですが。

新しい通勤路は、ちょっと遠回りするといわゆる新古書店があるんですよ。ちょっと覗いてみようかなと思ったのは一昨日のこと。しかしその日はうっかり忘れてしまい、自宅近くまで帰ってきてから「ああっ」と頭を抱えていたんです。
でもって。
今日はちゃんと良いタイミングでそれを思い出し、えっちらおっちら自転車を漕いで辿り着いた先で、まずはセット売りコーナーからチェック。ない。高価買取りコーナーもチェック。ない。続いて108円コーナーをチェック。……旧版の最終巻しかねえ(−ー;)

状態がそこそこの通常コーナーだと、あったとしてもだいたい一冊350円の値が付いてるしなあ……と。半ば諦めつつ、ふと「そういやペーパーバック版なんてのもあったな」と、コンビニ廉価版のコーナーを見てみたのですよ。
そしたらまあ、全三冊取り揃ってるじゃないですか。しかも状態のかなり良い、先月アンコール刊行されたばかりの最新版が!
ひっくり返して値札をチェックしてみたら、ネット上での相場の半額以下。

そんな訳で立ち読みですまそうかという選択肢は消え、速攻でレジに持って行きました(笑)
しかもレジでは「この値札、間違ってますね」って言われて、さらに100円引いてもらえたしvv

表紙が実写版なのがちょっとアレですけど、内容を読むには問題ありません。

やー……リアル古書店ってのも、やっぱり馬鹿にはできませんねえ。
品揃えを考えると、全国規模で展開しているネット通販には一歩譲りますが、それでもこういう出会いがあるから、たまにはリアルのお店にも足を運ぶべきなんでしょう。

うふふふふ、念願の寄生獣。しかもページが黄ばんでない、ほぼ新品vv
じっくりしっかり楽しんだら、やっぱり裁断してPDF化するべきか、それとも大事にとっておくべきか……
No.6830 (読書)


 2015年05月22日の読書
2015年05月22日(Fri) 
本日の初読図書:
4063856542寄生獣 寄の章 アンコール刊行 (講談社プラチナコミックス)
岩明 均
講談社 2015-04-10

by G-Tools
ある晩のこと、世界中に奇妙な物体が人知れず降り注いだ。大きさと形はテニスボールに似ている。数は不明。
それらの物体は内部から蛇のような謎の生き物を孵化させた。そしてその生き物は眠っていた人間の頭部へと次々に潜り込み、脳を食ってひそかに成り代わってゆく。
ごく平凡などこにでもいるような高校生、泉新一もまた、その生き物に襲われた一人だった。しかしとっさに抵抗した結果、謎の生き物は脳まで到達することができず、右腕へ寄生するに留まった。
彼の右腕を食らい代わりに擬態したその生き物は、旺盛な知識欲を見せ言葉を学び、宿主である新一と会話を交わすようになる。
寄生生物 ―― パラサイト達は、自由に形を変えることができ、普段は普通の人間に見えるよう装っていた。しかし実際には自由に変形することができ、ゴムのように伸びることもできれば、鉄のように硬くもなれる。人間では太刀打ちできぬほどの怪力とスピードも兼ね備えており、まさしく化け物と言えた。
そして何よりも恐ろしいことに、奴らの主食は『人間』だったのだ。
本能の赴くままに人間を捕食し食べ残しを放置する化け物達の所業を、世間はミンチ殺人と呼んで恐れ騒いだ。
しかしその犯人が人に成り代わった寄生生物なのだと知っている人間は、おそらく新一ただ一人。そして彼の右手に寄生しているパラサイト ―― ミギーもまた、完全な味方とは言えなかった。ミギーは人間を捕食する本能こそ持たなかったが、それでも人間に対して親近感を抱いている訳ではない。新一に対しても、あくまで宿主の肉体的健康を維持する必要を覚えているだけであって、自身の身に不都合を及ぼすのであれば、発声機能や視覚聴覚を奪うぐらいは辞さないと宣言しているのだ。
己の安全と人間としての責任に葛藤する新一だったが、それでも少しずつミギーとの共生生活に馴染んでゆく。
しかし他のパラサイト達は、人間の脳が生き残っている二人の状態を見ると、嫌悪感を露わに襲い掛かってくるのだった。二人は時に協力し合い、なんとかそれらを返り討ちにしていく。
新一の通う高校に赴任してきた田宮涼子という女教師もまた、首から上が寄生生物にすり替わったパラサイトであった。しかも人間社会に適応して一個人としての生活を維持させるだけの知性と、人喰いの冷酷な思考回路を併せ持つ、恐るべき存在である。
警戒する新一に対し、田宮涼子は人間と共存している二人のケースは興味深いから、敵対せずに研究するつもりだと告げた。実際に彼女は普通の教師の仮面をかぶり、日常生活を送り続ける。しかしそれに反感を覚えた他のパラサイト「A」が、新一とミギーを殺すべく、真っ昼間の高校に乗り込んできて……

高校時代、次兄が持っていたのを借りて読み、強烈に印象に残った作品です。
残念ながら引越しの際に次兄は多くのマンガを処分してしまい、この「寄生獣」も長らく読み返せずにいたのですが。先日の金曜ロードショウで実写版を放送されたらもう、読み返したい熱が高まって高まって。
いやはや、マスコミと出版業界の思うツボですね!

このコンビニ向けペーパーバックだと全三冊。B6サイズの新装版だと全10巻、大判サイズの完全版だと全8巻です。程よい長さで完結しているのも好感度高いかと。

このペーパーバック版は、完全に映画公開に便乗した実写デザインの表紙ですし製本も安っぽいですけど、とにかく安くて手軽に読めるのがありがたいです。刊行されたのがつい先月ですから、状態も良くページが黄ばんだりとかも全然してませんし。
ちなみに最初はどれが1巻だ?? と悩んだのですが、何の事はない。
「寄の章」「生の章」「獣の章」で、三冊合わせて「寄生獣」なんですね(笑)

一巻目「寄の章」は764ページ。
「犬に寄生したパラサイトと邂逅、初戦闘」→「人間に(略)、こっちの右腕に引っ越してこないかと勧誘されるも返り討ち」→「田宮涼子の赴任」→「Aが高校に乱入、死者二人」→「母親が旅行先でパラサイトに乗っ取られる」→「新一が死にかけて『混ざる』」→「『脳が残ってる仲間』の宇田さんと出会う」→「母親関連の事件ひとまず収束」→「子犬のエピソード(新一の変貌)」→「パラサイト島田秀雄の転入」→「政府機関がパラサイトに気付いて動き始める」ときて、ラストは島田秀雄が暴走して校内で暴れ始めたところまで収録されていました。

こうやって改めて読むと、確かに映画は相当はしょられてたっていうか、Aと母親を乗っ取ったパラサイトと島田秀雄の三人を、足して二で割ってたんですね……母親のエピソードのきっかけや終わり方についても、かなり改変されていました。確かにこれは、きちんと内容覚えてるファンなら怒るわなあ(苦笑)

自分としては、何年も前に読んだっきりなのに、細かいストーリーはともかくあちこちのコマの絵が未だに記憶に焼き付いていることにびっくりでした。

そして猟奇的な表現に目を奪われがちですが、ミギーが人間味を増していく一方で新一がパラサイトに近付いていく意識の変化の推移とか、人間という種のあり方への問いかけとか。生きるとは何か、生物とは何か。食べることの意味は、繁殖とは。などなど、様々な部分で奥が深いなあとしみじみと。
やっぱり記憶に残る作品というのは、それだけの深みとパワーがあるんだと思いました。

一気に読むのはもったいないので、二巻以降はまた後日じっくりと楽しもうかと。
No.6829 (読書)


 2015年05月21日の読書
2015年05月21日(Thr) 
本日の初読図書:
「明日は廃墟でふたりきり(ムーンライトノベルス)」〜狂言 What the fuck !?
 http://novel18.syosetu.com/n4735cr/

ゴシックファッションを扱うショップで店員を務めている須川香澄には、普通の人間には見えないものが見えていた。まるでCGで描かれた異形のモンスターのようにくっきりと見える彼らは、殺人者の背後に浮かんでおり、大きな鎌や刃が湾曲した剣といった凶器を持っている。顔や手は死人のように干からびており、時に剥がれかけた鱗や爪を備え、ぼろぼろの服やベルトを身にまとう。
まるでモノクロ写真や廃墟のように、鮮やかな色彩とは無縁の ―― しかし時にかすかなきらめきを見せる退廃的なその存在に、香澄は心を惹かれていた。
たとえ幼い頃から彼らを目にしてきたことで、周囲から孤立しがちだったとしても。
あれは、〈死神〉。
彼らが見えるのは世界でたったひとり、この自分だけなのだ、と。
廃墟巡りが趣味になったのも、廃墟の持つ印象が、〈死神〉のそれと似ていたからだった。最初は有名な廃墟を外から眺めるだけであったが、じょじょにその趣味はエスカレートしてゆき、今では立入禁止になっている内部へと踏み込み、自身の手で写真を撮るようになっている。
その休日も、彼女はネットで知った郊外の廃墟を訪れていた。人里離れた山の中にある、元はホテルだったと思しき建物。雑草に埋もれた中へ入り込んだ香澄は、そこで一人の男に出会った。
明らかにこんな場所で遭遇するべきではない、暴力の世界に身を置く男だ。しかも今時こんなチンピラなど、ヤクザもののVシネの中にしかいないだろうと思えるくらいに、絵に描いたようなチンピラである。
だがその背後には、〈死神〉が浮いていた。今まで見たことがないような、すさまじくおぞましくて……美しい、〈死神〉。
これほどの〈死神〉を連れているのであれば、この男は絶対に人殺しだ。しかも殺したのは一人や二人ではないだろう。この場でレイプされるかもしれない、売り飛ばされるかもしれない、殺されるかもしれない。弾け飛びそうに脈打つ心臓は、しかしそんな恐怖からくるものではなかった。
そう、その瞬間に彼女は一目惚れしたのだ。
男にではなく、彼の背後に浮かぶ〈死神〉に ――


諸口さんの新作が連載始まりました。いつもは完結してから一気に読むのですが、今回は待ちきれずに速攻で手を付けてしまいましたことよ。
メインキャラは先日公開された「ヤクザな退魔外伝 神無沼」で御登場なさった、一見チンピラにしか見えないけれど実は凄腕ヒットマンな第四支部の武闘派ヤクザ、ヤスこと深谷 靖ふかたに おさむさん(32歳)。主役で語り手なのは、その年下のイロとなる須川香澄ちゃんです。年齢はまだはっきり出てきていませんが、高卒の社会人。諸口さんのツイッターによれば、ぎりぎり未成年、なのかな?

ヤス ―― にではなく、その背後にいる〈死神〉に一目惚れしてしまった香澄ちゃん。
武闘派ヤクザの事務所に一人で会いに行ったりと、無茶苦茶やらかしてくれます。しかもそれが命や貞操に関わる無謀だと、判ってやっているから始末が悪い(苦笑)
かなり最初の方からヤスさんが香澄ちゃんに振りまわされ気味なのが、予想外で面白かったです。もっとこう、毎メリの灯子ちゃんみたいに、最初はヤクザに対して怯えたりとかするんじゃないかと思ったら、さすが諸口さん、予想の斜め上vv ←褒め言葉

〈死神〉の造形も独特で素晴らしいです。
諸口さんご本人が描かれたイラストは↓こちら。

■新作連載開始: スタンスフィールドに花束を。
 http://mmolockchi.sblo.jp/article/132533918.html

この、判りやすい格好良さに走らず、グロテスクでありながら、しかしどこか美しさを感じさせるデザインが見事ですよねえ……(しみじみ)

今までのところはほのぼのギャグパート多めなるも、そこは「エロよりグロで18禁な感じ」との予告がありますし、またも諸口さん一流の猟奇で鬱な展開が待っているのでしょう。
今回はリアルタイムで、他の読者様といっしょに一喜一憂していきたいと思います。
No.6827 (読書)


 2015年05月20日の読書
2015年05月20日(Wed) 
本日の初読図書:
4086300281バトル・ホームズ―誰がために名探偵は戦う (集英社スーパーダッシュ文庫)
梶 研吾 浅田 弘幸
集英社 2001-03

by G-Tools
元ボクサーの黒人ガイ・フリーマンは、対戦相手をリングで死なせてしまい、プロボクサーとしての資格を剥奪されてしまった。今では父親の権力を傘にやりたい放題をしている貴族の坊っちゃん、クレメント・ウッドワードの用心棒に落ちぶれている。クレメントの悪行は気に入らないが、金で雇われている以上、逆らうことはできなかった。その日も気に入ったピアニストを口説こうとして突っぱねられたクレメントは、腹いせに彼女の指を折ろうとしたが、それを止めることすらできない。
ところがただ一人、颯爽と割って入ってきた青年がいた。誰一人動けなかった中で娘を救ったのは、背こそ高いものの、スレンダーで血色もあまり良くない若者。しかし猛禽を思わせるその眼差しには強い光と奥深さがあり、まるで魂の奥底まで見透かされるのではないかという、得体の知れなさを感じさせた。
そしてガイは不思議な格闘技 ―― ジュウジュツで、あっという間にノックアウトされてしまう。クレメントは気絶したガイを見限り、さっさと退散してしまった。
意識を取り戻したガイは、明日からの生活を心配しながらも、虫の好かない雇い主と縁を切れたことにどこかせいせいとする。そうして柔術に興味をもった彼は、若者 ―― まだ大学を出てロンドンに住み着いたばかりだという青年、シャーロック・ホームズと言葉を交わした。
翌日、ホームズはガイをある道場へと案内してくれる。リトル・タニと呼ばれる日本人が経営するそこでは、ホームズを含めた様々な年齢層の男達が柔術を学んでいた。リトル・タニはガイの胸にも届かない小柄で穏やかな中年男だが、ガイはおろか倍以上の体格を持つレスラーが相手でもあっさりと投げ飛ばしてしまう、凄腕の柔術家だったのだ。
タニの強さに感銘を受けたガイは、道場に入門し、柔術を学びながらまっとうな仕事を探し始める。
しかしある日のこと、ホームズと二人で自主トレーニングをしていると、タニがただならぬ様子で戻ってきた。話を聞くと、道場のマネージャーで興行師でもあるアポロ・リブマンが、三日前から行方不明になっているのだという。どうやら収益金の分配の関係で暗黒街の連中と揉めていた形跡があるらしい。その関係で闇組織に拉致されたと思われたが、しかし確たる証拠がないためスコットランド・ヤードは動いてくれないとのことだった。
話を聞いたホームズは、自分がアポロを見つけ、無事に連れ帰ってみせると宣言する。そして自ら暗黒街に潜入すると言うホームズに、ガイも力を貸すことになって……


ネット上でガイ・リッチー版「シャーロック・ホームズ」関係の感想記事を読んでいて、たまたま紹介されているのを見つけました。ホームズと名が付いていたら、とりあえずチェックしたくなるのが私のサガ。しかも今まで聞いたこともなかった作品で、レーベルがスーパーダッシュ文庫となると、興味をそそられます。
まだ221Bで開業する前でワトソンさんが出てこないとか、これは推理モノじゃない、バトルアクションだといったレビューを見てちょっと不安に思ったのですが、うっかり全2巻で送料込み180円なんて出物見つけてしまったら、もう逃す手はないでしょう(笑)

で、買いました。とりあえず一巻目を読みました。

……予想以上に面白かったですvv ってか、ちゃんとパスティーシュしてるじゃん。
確かに格闘技をメインにしたアクション重視のエンターテイメント満載な話運びでしたが、推理もしてるし変装術も駆使。相手を一目見て状況を読み取り、並べたて、びっくりされてから根拠を説明 → なんだそんなことかと言われ、だから説明したくなかったんだ的展開のお約束なやりとりも、きっちり盛り込まれています。むしろメイン相棒が脳味噌筋肉を自他ともに認めるボクサー崩れだけに、推理に対する驚きっぷりはワトソンさん以上かもしれません。
若かりしマイクロフト兄もしっかり御登場。まだそんなに太っていなくて、むしろがっしりとした体格と描写されてます。弟を上まわる推理の切れは、もはやエスパーの域vv

本文は200ページ足らずとちょっと短め。偶然が重なりまくって御都合主義も相当なるも、そのぶんスピード感が半端なく、まさにアクションエンターテイメントなハリウッド映画を見ている感覚でした。
こう言うとあれですが、これむしろイラストない方が良かったかも……特に表紙絵から妙にハードボイルド感が漂っていて、それで手を伸ばすのにだいぶためらいました。 内部挿絵も本文と食い違ってたりして、個人的に微妙でしたし(−ー;)

表紙こんなですけど、ちゃんとこのホームズさんもイギリス紳士なんですよ〜、正装してバイオリン弾いたりロンドン中の泥の種類や路地の隅々をきっちり暗記してる、インテリ派なんですよ〜〜。
あと、面白そうだと思った事件に対しては、玩具を与えられた子供のような興味とエゴイストぶりを発揮するあたりも、ホームズさんらしかったんじゃないかと。

なお三人称で書かれていて、ホームズさん視点の部分はほんのごく僅かです。
ほとんどの語りがボクサー崩れの黒人ガイで、あと一部は柔術の師匠リトル・タニが組んでる興行師アポロさん。ホームズさんの一人称は、原典でもなんというか微妙なところがあるし、彼は理解し難い神秘的な謎の人という立ち位置にした方が今回の場合は効果的だと思うので、他者視点メインなのは正解だと思います。

ちなみにリトル・タニとは、谷幸雄という英国で活躍した実在の柔術家。
タニさんと組んでる興行師がアポロという名前だったのも本当。
さらにラストにはミツヨ・マエダ(前田光世:グレイシー柔術の開祖の師匠)まで登場するサービスぶり。
すがすがしいまでにエンターテイメントです★

……ただ惜しむらくは、現実の谷さん1880年生まれ。前田光世も1878年生まれと、1881年に「緋色の研究」でワトソンさんと出会ったはずのホームズさんとは、ちょーーっと時代がずれてるんですよねえ……まあそこは、あくまでフィクションってことで(苦笑)

ともあれ予想以上に楽しめました。買ってみて良かったです。
No.6826 (読書)


 2015年05月19日の読書
2015年05月19日(Tue) 
本日の初読図書:
404891751X香彩七色 ~香りの秘密に耳を澄まして~ (メディアワークス文庫)
浅葉なつ
アスキー・メディアワークス 2013-06-25

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食べることが大好きで、町を歩きながら様々な店から漂ってくる料理の匂いを嗅ぎ分けるのが得意な女子大生、秋山結月。ある日、芳醇なコーヒーの香りに誘われて辿り着いたのは、大学の裏手にある古びた小屋だった。そこはもともと薬学部の芳香研究部の部室だったのだが、廃部になった今では神門千尋という男子学生が私物化しているらしい。香道宗家の跡取りだが家出中だという偏屈者の彼は、その小屋の中に様々な香料や精油などを持ち込んでいて、結月にはそれらの入り混じった香りが、まるで色とりどりの花畑のように感じられた。
数日後、友人から謎の手紙について相談を受けた結月は、便箋にほのかな芳香が残っていることに気が付いて、香りの専門家である千尋に相談しようと思い立つ。
それをきっかけとして、二人はいくつかの香りにまつわる謎に関わることとなった。
一年前に交通事故で急死した女子高生が、幼馴染の少年に遺した白紙の手紙の意味を探す「一炉 初恋」
神門流香道の門人で大きな寺の住職から、檀家の娘の結婚祝いに贈る香木を選んでくれと千尋が頼まれる「二炉 勝れる宝」
煙草を所持していたと停学処分を受けた結月の妹分が、懸命に隠そうとしている事情を巡る「三炉 君を想う」
目に見えるものだけが、この世のすべてではない。目には見えないけれど、大事なものの方がずっと多い。
香りを通すことで、彼らは目には見えない様々なものへと巡り合ってゆく ――

神様の御用人」シリーズを書かれてる浅葉なつさんの、一冊もの。
っていうかこれ、続編出てもおかしくない作りだと思うんですが、そのへんどうなんですか〜〜〜?>浅葉先生

内容はほのぼの日常ミステリー……と言い切るには、背景にある事情がかなり深刻だったりもするんですが。それでも殺人とか傷害事件が起きる訳ではありません。
基本的にはお気楽脳天気なワトソン役の女の子と、クールな人嫌い系天才肌の探偵役が、目には見えない『香り』を通して、やはり目には見えない人の心のひだやもつれた想いを解いてゆくお話です。
ついつい理論に凝り固まりがちな探偵役へ、何気ない天然な発言で人の心を教えつつヒントを与えるワトソン役はお約束★

そんな結月が香りから、様々な情景を映像的に感じ取る描写が読みどころでしょうか。
嗅覚って、人間の思い出とダイレクトに繋がってる……って、誰かが言ってましたっけ(BY糸村さん@遺留捜査)

できれば千尋の家庭内の問題とか、千尋から見た結月の印象とかも見てみたいです。
特に最初の方、結月はかなり強引でマイペースなところがあるので、実はちょっと感情移入しにくかったんですよ。でも話が進むにつれて、いつの間にかすっかり受け入れてしまっているあたり、千尋もこんな感じだったのかなあ、と(苦笑)
さらに言うなら、香道に留まらずアロマテラピーや香水といった様々な角度から『香り』について積極的に知識を取り入れてゆく千尋にとって、理論なんかまったく関係なく、感性で『香り』を『聞く』結月の存在ってのは、いろいろ複雑だと思うんですよねえ。
こと香りに関しては、千尋は努力のできる秀才で、結月は自分の才能に無頓着で磨くことすら考えない天才なんじゃないかとか。千尋はきっと、結月に対して嫉妬する思いもあるんじゃないかなあ。その鼻と感性を、自分が持てていたら……って。

でも結月の強みは既成観念に囚われない奔放な発想と直感力ですから、理論を学んでしまっては、その持ち味が失われてしまう訳で。
だからこの二人はこのままで、互いに互いの持ち得ない部分をフォローしていくのが正解だと思います。千尋もこの巻だけで、だいぶ丸くなってきてますし、あとは家族との和解さえできれば良いんじゃないかな。

千尋の従兄弟の隆平くんもなかなか美味しいキャラクターですし、いずれは結月を巡っての三角関係とかもあるんじゃないかとか。いろいろと妄想する余地が残されていて楽しい一作でした。
No.6825 (読書)


 2015年05月16日の読書
2015年05月16日(Sat) 
本日の初読図書:
4344829697翼の帰る処 4 ―時の階梯― 下
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2013-11-29

by G-Tools
名目上は隠居の立場になったのを利用して、ヤエトは世界の罅を塞ぐ方法について情報を集めることへ手を付ける。幸いにも恩寵の力が増しているのを肌身で実感している皇妹が、興味を示して力を貸してくれた。まずは邪竜の心臓が埋まっているアルハンを領内に持つ、第二皇子の元へ向かった二人及びジェイサルドとファルバーン。だがそこで告げられたのは、第二皇子に預けていたファルバーンの母親、すなわちアルハンの元王妃で浄化の恩寵を持つ女性が、何者が相手とも知れぬ子を孕んだうえで失踪したという衝撃の知らせであった。
とにかく詳しい状況を調べかつ、放置された沙漠の水源の浄化を行うべく、第二皇子を含む一行は水源のあるアルハンの廃墟へと向かう。そこでヤエトを待っていたのは預言者にしてしるべの星、ウィナエであった。
彼女の案内で迷宮状になった地下の水源に向かうと、地下洞窟内部で魔物の群が襲ってくる。だがそれさえも、しるべの星は折り込み済みだった。分断されたヤエト、ジェイサルド、ファルバーンの三名のみを連れた預言者は、彼らを水源ではなくかつて帝国に滅ぼされた都市のひとつ、シンリールの廃墟へと導く。智慧の女神を崇め、この世のありとあらゆる知識が集まっていた、かつての迷宮図書館都市。それらの貴重な資料は帝国の侵攻によってすべて焼き尽くされ、失われたのだとヤエトは心を痛めていた。しかしそれは誤りであった。シンリールの深部には現在も智慧の女神が眠る扉が存在し、正しき問いを持つ者には、一人につき一つのみ答えを返してくれるのだという。
預言者と共に異界へ通ずる扉をくぐったヤエトは、そこで世界の罅を塞ぐのに力を貸してくれる神の名を問うた。
いっぽう帝国中枢では、同母の兄達を次々と失った第七皇子が、不穏な動きを見せていた。沿岸部に領地を与えられていた彼は、帝都への物流を止め、海賊達と手を結び、着々と力を蓄えているという。
そして竜種と貴族達が集まる新年祭の場で、ついに第七皇子は帝国から独立し、自らの国を打ち立てるとの意志を明らかにした。
それはこれまで水面下で行われてきた密かな後継者争いとは一線を画した、帝国をも割りかねない戦の幕開けを宣言するもので ――

えー、キリの良い所からあらすじ書きましたが、実際の下巻の始まりは預言者が登場したところからです。というか、上巻のラストがウィナエさんの立ち姿イラストで終わってます。
登場した頃は人間らしさがなく、神の言うがまますべてを任せきっているような部分など掴みどころのなかったウィナエさんが、今回は打って変わってすごく身近に感じられるキャラになっていました。
彼女も彼女で、これまで生きてくる中でいろいろあったんだなあ……っていうか、まさかそこでヤエトがそういう関わり方をしてたって(驚)
ターンの神の性質上、この世界にはタイムパラドックスも存在せず、すべては最初から決まった形に流れ続けているのかもしれませんが……それにしてもヤエトの歴史への関わりかたってパねえなとしみじみ思ってみたり。
そしてターンの神に「必要ない」と言われながら、それでもジェイ爺に昔の名前を探しだすよう指示したりと、なんだかんだで神に逆らっちゃって、しかもそれがちゃんと的を射ていたあたりの譲らなさとかが、ああヤエトさんだなあ、みたいな。
ジェイ爺も懸念だった鬼神関連を乗り越えて、もはや心置きなくヤエトさんに忠誠を誓いまくってるところが格好良いです。ビバ人外最強武闘派爺!

人間は人間として、人間にできうる限りの手段を尽くして、未来へ続く梯子をかけてゆくべきだと語るヤエト。
なまじ自分が過去視などという、ある種ずるい恩寵を持っているだけに、正確な情報を未来へ遺していくことがいかに難しいのかを、彼は実感しているのかもしれないなあと思いました。
特にヤエトがシンリールの門番の老人に語る言葉は、お遊びとはいえ創作に足を突っ込んでいる人間として、すごく心に染みるものが。

でもって。
それやこれやはさておいて。
皇妹・第二皇子・ジェイ爺の三人が取り揃って、今にも気絶しそうなヤエトを『痛ましく』見守ってる場面に、思わず悶えてしまいました。よもやこの三人が、意志を一つにしてヤエトの体調を気遣ってくれる日が来るとは。何をどうしたらそんなことが可能なんだ。まさしく人たらし(優秀な人物に限る)の面目躍如だなヤエト!!
ちなみに絶不調で冷や汗かきながら、必死で意識を保とうとしてる苦しげなヤエトのイラストに、今回の上下巻 ―― いや下手すると1巻から通じて一番萌えた私の感覚も、いかがなものかとは思うんですが(苦笑)

今回の下巻で改めて強く思ったのは、この物語はつくづくヤエト視点で綴られているんだなあということです。文体こそ三人称ですが、ヤエト以外の心内語は出てこないし、彼が感知しない事実は伝聞でしか語られません。
……つまり、ヤエトが異界に行ってる間、帝宮で起きていただろう高度に政治的かつドロドロした開戦間近の駆け引きとか、同じくジェイ爺の死闘あたりはさらっと流されてますし、あるいは戦争の場面なんかも例によって人事不省になってるので、目が覚めたら肝心な部分はほぼ終わっているという、いつものダイジェスト仕様です。
北嶺でレイランドが皇女に何やらかしたのかとか、北部でセルクとルシルがどうしてるのかとかも、ぜんぜん出てこないですしね。
レイランドと言えば、登場時にはもうちょっと活躍するキャラになるのかと思ったのに、今のところどうにも小物感が拭えません。暗躍するならする、皇女に傾倒するならするで、もうちょっと突き抜けてくれないとヤエトの視界には入り得ないなあって感じでした。

どうやら予告によれば、次の上下巻でこのシリーズも完結とのこと。
上巻はもう発売されているのですが、これまで読んだ感じだと上下の間にたいてい「ここで終わるの!?」的「以下続く」が用意されているので、やはり下巻が出てからまとめて読む方が良いだろうと我慢の子です。
上巻で意味ありげに登場した割に、今回はまったく出番なしだったタナーギンとか、いまいち影が薄くて誰だっけ感の強い第六皇子とか、ラストでは出番があるのでしょうか。
あとそろそろ、シロバのヒナたちの活躍をプリーズ《o(><)o》
最近ヤエトが北嶺に行かないので、もふもふ成分が足らんのですよ。もっともふもふを! ヒナたちに全力でじゃれかかられて倒れそうになりつつ、シロバに襟元くわえられて支えられる尚書卿を!!>妹尾先生&ことき先生
No.6823 (読書)


 2015年05月14日の読書
2015年05月14日(Thr) 
本日の初読図書:
4344827465翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2013-02-28

by G-Tools
隣接する踏野郡太守が隠匿し、私腹を肥やしていた青鉄鉱床の存在を炙り出したヤエト。皇帝は即座に兵を送り、踏野太守を討ち取ると共に、裏で彼と結託していた第五皇子を戦の混乱のなか粛正する。
第四皇子に引き続き第五皇子も死んだことで、二人の後見を担っていた白羊公家は大きく勢力を落とした。生母であるセンヴェーラ妃は帝都を追放され、そして同母の弟である第七皇子もまた、後継者争いから大きく後退したとみなされる。
勢力図が次々と書き換えられる帝宮で、戦後の論功行賞が行われた。踏野郡はこれまで権力から遠ざけられていた、第三皇子に任されることが決定する。かつて皇女を呪いによって害そうとした第三皇子が力を手に入れた。しかも北嶺のすぐそばに領地を賜るとなると、油断はできない。
そう危惧するヤエトだったが、青鉄鉱床を発見した《黒狼公》に皇帝が与えた報償は、彼がそれまで求めて止まなかったもの……すなわち『隠居』であった。
《黒狼公》でなくなったヤエトは、当然、北嶺の相も辞さねばならなくなって ――

妹尾さんの重厚かつちょっと難解文章で、大判サイズを350ページ近く。
読むのに何日かかるかと戦々恐々としていたのですが、読み始めたら予想以上にさくさくと読めてしまいました。うむ、やはりこのシリーズは面白いvv<これを読むために、まず既刊六冊読み返すところから始めた
最初は表紙絵の真ん中の人物が誰か判らず、「ルーギン……? こときさん、続刊出るの待つ間に絵柄変わっちゃったのかなあ」とかしょぼんとしていたら、何のことはない、第二皇子でした(苦笑)
ちなみに裏表紙には預言者さんがいらっしゃいます。そしてこときさんの美麗絵は、内部イラストでも健在vv
挿し絵におけるヤエトさん登場率の高さに、こときさんの愛を感じました(笑)

前作「歌われぬ約束」では北部地方がメイン舞台でしたが、今回は主に黒狼公領と第二皇子の博沙国近辺と、南方より。
夢の隠居を果たしたはずのヤエトさんは、しかし名目ばかりでちっとも仕事が減らないまま、今回も内心で悪態をつきつつ奔走してらしゃいます(笑)
最初に隠居を言い渡された場面を読んだ時は「うぇぇええ!?」となったものの、蓋を開けてみればいつも通り。洒落にならない事態だったはずなのに、何故かいつの間にか何事もなかったかのように平常運転になっているのが、翼の帰る処クォリティじゃないかと。

皇女とルーギンは冬という季節の関係上、ほとんど北嶺におり、今回の登場は少なかったです。そのぶんジェイサルドとファルバーン、そして皇妹と第二皇子がご活躍。
特にこれまで敵か味方か判断できない言動の多かった皇妹殿下が、かなり胸襟を開いた感じで歩み寄りを見せてくれたのが、読んでいる方としては気疲れしなくてすんで助かりましたね(苦笑)
前回どうやれば回避できるんだ!? と心配させられた復縁の件も、皇帝の親馬鹿先回り処置のおかげで自動的に立ち消えましたし。こうなると皇妹殿下とヤエトは、割と互いに相手を理解し合える良き友人に……なれませんかねえ。 とか言ったら、ヤエトに「知るかボケ」と罵ってもらえたりしてvv
そして貴族なのに尚書官で、強引だけどなんだかんだでヤエトを友人認定している新キャラ、タナーギン。
ヤエト自身はあまり自覚がないままに、罪を引き受けて恩を売った形になっている貴族という点では、ルーギンとも同じ立場にある存在なんじゃないでしょうか。これで文武共に信頼できる、帝国上層部に顔が利く人材が揃ったのかも?
アクの強かった赤犬家のギスケルとも、なんだかんだでうまくやり始めたりしていて、結局ヤエトは人望を集めるのがうまいんですよねえ……

皇帝も、いろいろ娘馬鹿を炸裂させつつ、ヤエトのことを受け入れてきてるみたいですし、この先どんなふうに展開していくことやら、楽しみでなりません。
皇女が……なのは、正直ちょっと複雑ではあるんですが。
確かに年の差も身分差も大好物ではあるんですけれど、それ以上に男女の恋愛の絡まない主従関係というのに萌えるタチなので……ああでも、ヤエトがしれっと皇女に***したのが、挿し絵つきであったのは、びっくりしつつもやっぱり萌えたvv 斜め後ろ四十五度かつ、ヤエト自身があくまでしれっとしてるのがポイントです。

……っていうか、前々から思ってたんですけど、ヤエトってそこらへんの経験値、どうなってるんでしょうね。彼が玄人とどうこうする気概とか体力を持ってるとは思えないし、かといって結婚をしないと心に決めているうえで、それでもなお恋人を作るという選択肢を取るとも思えないし。
それにしてはやけに手慣れてたけど……果たして真相はいかに??
No.6820 (読書)


 2015年05月11日の読書
2015年05月11日(Mon) 
本日の初読図書:
「翼の帰る処(WEBマンガ)」
 http://www.gentosha-comics.net/event/tsubasa/01.html

おおおおおお!!
まだ3(6冊目)までしか読めていないFT小説「翼の帰る処」ですが、ネットでうろうろしていたら、公式絵描きさんによる1巻冒頭のコミカライズが!!
すすす、素晴らしい〜〜〜( T ▽ T )
ほんの8ページほどの、ほんとのほんとに冒頭、会議の怒鳴り合い〜姫さまとルーギン一行が北嶺にやってきたまでのシーンだけなのですが、あの ことき さんの絵で、絵でvv
ヤエトが内面をほとんど外に出さず見た目だけは淡々としてる雰囲気とか、無駄に美麗な金髪美形ルーギンの剣に、ちゃんと小さい鈴がついてるとか、もう雰囲気ぴったりですよ。
金髪青目がデフォルトの北嶺人(プラス帝国人)の中で、黒髪黒目のヤエトがどれだけ浮きまくってるのかも、一枚絵とはまた違ってはっきりと判りますし。遠景の北嶺の山とか、もう私の脳内から出力されたんじゃないかってぐらいでした。
うっわー、これこときさん、マジで最初の上下巻だけでもコミカライズしてくれないかなあ。どうせなら鳥達の姿も見てみたい〜〜><

なお原作小説は、新書版だったのが現在は大判単行本で出直しています。書き下ろしSSなども足されているらしく、今から読まれる方は大判の方を選ばれたほうがよろしいかと。

4344826345翼の帰る処 (上)
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2012-10-31

by G-Tools
4344826353翼の帰る処 (下)
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2012-10-31

by G-Tools
No.6818 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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