よしなしことを、日々徒然に……



 2015年05月19日の読書
2015年05月19日(Tue) 
本日の初読図書:
404891751X香彩七色 ~香りの秘密に耳を澄まして~ (メディアワークス文庫)
浅葉なつ
アスキー・メディアワークス 2013-06-25

by G-Tools
食べることが大好きで、町を歩きながら様々な店から漂ってくる料理の匂いを嗅ぎ分けるのが得意な女子大生、秋山結月。ある日、芳醇なコーヒーの香りに誘われて辿り着いたのは、大学の裏手にある古びた小屋だった。そこはもともと薬学部の芳香研究部の部室だったのだが、廃部になった今では神門千尋という男子学生が私物化しているらしい。香道宗家の跡取りだが家出中だという偏屈者の彼は、その小屋の中に様々な香料や精油などを持ち込んでいて、結月にはそれらの入り混じった香りが、まるで色とりどりの花畑のように感じられた。
数日後、友人から謎の手紙について相談を受けた結月は、便箋にほのかな芳香が残っていることに気が付いて、香りの専門家である千尋に相談しようと思い立つ。
それをきっかけとして、二人はいくつかの香りにまつわる謎に関わることとなった。
一年前に交通事故で急死した女子高生が、幼馴染の少年に遺した白紙の手紙の意味を探す「一炉 初恋」
神門流香道の門人で大きな寺の住職から、檀家の娘の結婚祝いに贈る香木を選んでくれと千尋が頼まれる「二炉 勝れる宝」
煙草を所持していたと停学処分を受けた結月の妹分が、懸命に隠そうとしている事情を巡る「三炉 君を想う」
目に見えるものだけが、この世のすべてではない。目には見えないけれど、大事なものの方がずっと多い。
香りを通すことで、彼らは目には見えない様々なものへと巡り合ってゆく ――

神様の御用人」シリーズを書かれてる浅葉なつさんの、一冊もの。
っていうかこれ、続編出てもおかしくない作りだと思うんですが、そのへんどうなんですか〜〜〜?>浅葉先生

内容はほのぼの日常ミステリー……と言い切るには、背景にある事情がかなり深刻だったりもするんですが。それでも殺人とか傷害事件が起きる訳ではありません。
基本的にはお気楽脳天気なワトソン役の女の子と、クールな人嫌い系天才肌の探偵役が、目には見えない『香り』を通して、やはり目には見えない人の心のひだやもつれた想いを解いてゆくお話です。
ついつい理論に凝り固まりがちな探偵役へ、何気ない天然な発言で人の心を教えつつヒントを与えるワトソン役はお約束★

そんな結月が香りから、様々な情景を映像的に感じ取る描写が読みどころでしょうか。
嗅覚って、人間の思い出とダイレクトに繋がってる……って、誰かが言ってましたっけ(BY糸村さん@遺留捜査)

できれば千尋の家庭内の問題とか、千尋から見た結月の印象とかも見てみたいです。
特に最初の方、結月はかなり強引でマイペースなところがあるので、実はちょっと感情移入しにくかったんですよ。でも話が進むにつれて、いつの間にかすっかり受け入れてしまっているあたり、千尋もこんな感じだったのかなあ、と(苦笑)
さらに言うなら、香道に留まらずアロマテラピーや香水といった様々な角度から『香り』について積極的に知識を取り入れてゆく千尋にとって、理論なんかまったく関係なく、感性で『香り』を『聞く』結月の存在ってのは、いろいろ複雑だと思うんですよねえ。
こと香りに関しては、千尋は努力のできる秀才で、結月は自分の才能に無頓着で磨くことすら考えない天才なんじゃないかとか。千尋はきっと、結月に対して嫉妬する思いもあるんじゃないかなあ。その鼻と感性を、自分が持てていたら……って。

でも結月の強みは既成観念に囚われない奔放な発想と直感力ですから、理論を学んでしまっては、その持ち味が失われてしまう訳で。
だからこの二人はこのままで、互いに互いの持ち得ない部分をフォローしていくのが正解だと思います。千尋もこの巻だけで、だいぶ丸くなってきてますし、あとは家族との和解さえできれば良いんじゃないかな。

千尋の従兄弟の隆平くんもなかなか美味しいキャラクターですし、いずれは結月を巡っての三角関係とかもあるんじゃないかとか。いろいろと妄想する余地が残されていて楽しい一作でした。
No.6825 (読書)


 2015年05月16日の読書
2015年05月16日(Sat) 
本日の初読図書:
4344829697翼の帰る処 4 ―時の階梯― 下
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2013-11-29

by G-Tools
名目上は隠居の立場になったのを利用して、ヤエトは世界の罅を塞ぐ方法について情報を集めることへ手を付ける。幸いにも恩寵の力が増しているのを肌身で実感している皇妹が、興味を示して力を貸してくれた。まずは邪竜の心臓が埋まっているアルハンを領内に持つ、第二皇子の元へ向かった二人及びジェイサルドとファルバーン。だがそこで告げられたのは、第二皇子に預けていたファルバーンの母親、すなわちアルハンの元王妃で浄化の恩寵を持つ女性が、何者が相手とも知れぬ子を孕んだうえで失踪したという衝撃の知らせであった。
とにかく詳しい状況を調べかつ、放置された沙漠の水源の浄化を行うべく、第二皇子を含む一行は水源のあるアルハンの廃墟へと向かう。そこでヤエトを待っていたのは預言者にしてしるべの星、ウィナエであった。
彼女の案内で迷宮状になった地下の水源に向かうと、地下洞窟内部で魔物の群が襲ってくる。だがそれさえも、しるべの星は折り込み済みだった。分断されたヤエト、ジェイサルド、ファルバーンの三名のみを連れた預言者は、彼らを水源ではなくかつて帝国に滅ぼされた都市のひとつ、シンリールの廃墟へと導く。智慧の女神を崇め、この世のありとあらゆる知識が集まっていた、かつての迷宮図書館都市。それらの貴重な資料は帝国の侵攻によってすべて焼き尽くされ、失われたのだとヤエトは心を痛めていた。しかしそれは誤りであった。シンリールの深部には現在も智慧の女神が眠る扉が存在し、正しき問いを持つ者には、一人につき一つのみ答えを返してくれるのだという。
預言者と共に異界へ通ずる扉をくぐったヤエトは、そこで世界の罅を塞ぐのに力を貸してくれる神の名を問うた。
いっぽう帝国中枢では、同母の兄達を次々と失った第七皇子が、不穏な動きを見せていた。沿岸部に領地を与えられていた彼は、帝都への物流を止め、海賊達と手を結び、着々と力を蓄えているという。
そして竜種と貴族達が集まる新年祭の場で、ついに第七皇子は帝国から独立し、自らの国を打ち立てるとの意志を明らかにした。
それはこれまで水面下で行われてきた密かな後継者争いとは一線を画した、帝国をも割りかねない戦の幕開けを宣言するもので ――

えー、キリの良い所からあらすじ書きましたが、実際の下巻の始まりは預言者が登場したところからです。というか、上巻のラストがウィナエさんの立ち姿イラストで終わってます。
登場した頃は人間らしさがなく、神の言うがまますべてを任せきっているような部分など掴みどころのなかったウィナエさんが、今回は打って変わってすごく身近に感じられるキャラになっていました。
彼女も彼女で、これまで生きてくる中でいろいろあったんだなあ……っていうか、まさかそこでヤエトがそういう関わり方をしてたって(驚)
ターンの神の性質上、この世界にはタイムパラドックスも存在せず、すべては最初から決まった形に流れ続けているのかもしれませんが……それにしてもヤエトの歴史への関わりかたってパねえなとしみじみ思ってみたり。
そしてターンの神に「必要ない」と言われながら、それでもジェイ爺に昔の名前を探しだすよう指示したりと、なんだかんだで神に逆らっちゃって、しかもそれがちゃんと的を射ていたあたりの譲らなさとかが、ああヤエトさんだなあ、みたいな。
ジェイ爺も懸念だった鬼神関連を乗り越えて、もはや心置きなくヤエトさんに忠誠を誓いまくってるところが格好良いです。ビバ人外最強武闘派爺!

人間は人間として、人間にできうる限りの手段を尽くして、未来へ続く梯子をかけてゆくべきだと語るヤエト。
なまじ自分が過去視などという、ある種ずるい恩寵を持っているだけに、正確な情報を未来へ遺していくことがいかに難しいのかを、彼は実感しているのかもしれないなあと思いました。
特にヤエトがシンリールの門番の老人に語る言葉は、お遊びとはいえ創作に足を突っ込んでいる人間として、すごく心に染みるものが。

でもって。
それやこれやはさておいて。
皇妹・第二皇子・ジェイ爺の三人が取り揃って、今にも気絶しそうなヤエトを『痛ましく』見守ってる場面に、思わず悶えてしまいました。よもやこの三人が、意志を一つにしてヤエトの体調を気遣ってくれる日が来るとは。何をどうしたらそんなことが可能なんだ。まさしく人たらし(優秀な人物に限る)の面目躍如だなヤエト!!
ちなみに絶不調で冷や汗かきながら、必死で意識を保とうとしてる苦しげなヤエトのイラストに、今回の上下巻 ―― いや下手すると1巻から通じて一番萌えた私の感覚も、いかがなものかとは思うんですが(苦笑)

今回の下巻で改めて強く思ったのは、この物語はつくづくヤエト視点で綴られているんだなあということです。文体こそ三人称ですが、ヤエト以外の心内語は出てこないし、彼が感知しない事実は伝聞でしか語られません。
……つまり、ヤエトが異界に行ってる間、帝宮で起きていただろう高度に政治的かつドロドロした開戦間近の駆け引きとか、同じくジェイ爺の死闘あたりはさらっと流されてますし、あるいは戦争の場面なんかも例によって人事不省になってるので、目が覚めたら肝心な部分はほぼ終わっているという、いつものダイジェスト仕様です。
北嶺でレイランドが皇女に何やらかしたのかとか、北部でセルクとルシルがどうしてるのかとかも、ぜんぜん出てこないですしね。
レイランドと言えば、登場時にはもうちょっと活躍するキャラになるのかと思ったのに、今のところどうにも小物感が拭えません。暗躍するならする、皇女に傾倒するならするで、もうちょっと突き抜けてくれないとヤエトの視界には入り得ないなあって感じでした。

どうやら予告によれば、次の上下巻でこのシリーズも完結とのこと。
上巻はもう発売されているのですが、これまで読んだ感じだと上下の間にたいてい「ここで終わるの!?」的「以下続く」が用意されているので、やはり下巻が出てからまとめて読む方が良いだろうと我慢の子です。
上巻で意味ありげに登場した割に、今回はまったく出番なしだったタナーギンとか、いまいち影が薄くて誰だっけ感の強い第六皇子とか、ラストでは出番があるのでしょうか。
あとそろそろ、シロバのヒナたちの活躍をプリーズ《o(><)o》
最近ヤエトが北嶺に行かないので、もふもふ成分が足らんのですよ。もっともふもふを! ヒナたちに全力でじゃれかかられて倒れそうになりつつ、シロバに襟元くわえられて支えられる尚書卿を!!>妹尾先生&ことき先生
No.6823 (読書)


 2015年05月14日の読書
2015年05月14日(Thr) 
本日の初読図書:
4344827465翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2013-02-28

by G-Tools
隣接する踏野郡太守が隠匿し、私腹を肥やしていた青鉄鉱床の存在を炙り出したヤエト。皇帝は即座に兵を送り、踏野太守を討ち取ると共に、裏で彼と結託していた第五皇子を戦の混乱のなか粛正する。
第四皇子に引き続き第五皇子も死んだことで、二人の後見を担っていた白羊公家は大きく勢力を落とした。生母であるセンヴェーラ妃は帝都を追放され、そして同母の弟である第七皇子もまた、後継者争いから大きく後退したとみなされる。
勢力図が次々と書き換えられる帝宮で、戦後の論功行賞が行われた。踏野郡はこれまで権力から遠ざけられていた、第三皇子に任されることが決定する。かつて皇女を呪いによって害そうとした第三皇子が力を手に入れた。しかも北嶺のすぐそばに領地を賜るとなると、油断はできない。
そう危惧するヤエトだったが、青鉄鉱床を発見した《黒狼公》に皇帝が与えた報償は、彼がそれまで求めて止まなかったもの……すなわち『隠居』であった。
《黒狼公》でなくなったヤエトは、当然、北嶺の相も辞さねばならなくなって ――

妹尾さんの重厚かつちょっと難解文章で、大判サイズを350ページ近く。
読むのに何日かかるかと戦々恐々としていたのですが、読み始めたら予想以上にさくさくと読めてしまいました。うむ、やはりこのシリーズは面白いvv<これを読むために、まず既刊六冊読み返すところから始めた
最初は表紙絵の真ん中の人物が誰か判らず、「ルーギン……? こときさん、続刊出るの待つ間に絵柄変わっちゃったのかなあ」とかしょぼんとしていたら、何のことはない、第二皇子でした(苦笑)
ちなみに裏表紙には預言者さんがいらっしゃいます。そしてこときさんの美麗絵は、内部イラストでも健在vv
挿し絵におけるヤエトさん登場率の高さに、こときさんの愛を感じました(笑)

前作「歌われぬ約束」では北部地方がメイン舞台でしたが、今回は主に黒狼公領と第二皇子の博沙国近辺と、南方より。
夢の隠居を果たしたはずのヤエトさんは、しかし名目ばかりでちっとも仕事が減らないまま、今回も内心で悪態をつきつつ奔走してらしゃいます(笑)
最初に隠居を言い渡された場面を読んだ時は「うぇぇええ!?」となったものの、蓋を開けてみればいつも通り。洒落にならない事態だったはずなのに、何故かいつの間にか何事もなかったかのように平常運転になっているのが、翼の帰る処クォリティじゃないかと。

皇女とルーギンは冬という季節の関係上、ほとんど北嶺におり、今回の登場は少なかったです。そのぶんジェイサルドとファルバーン、そして皇妹と第二皇子がご活躍。
特にこれまで敵か味方か判断できない言動の多かった皇妹殿下が、かなり胸襟を開いた感じで歩み寄りを見せてくれたのが、読んでいる方としては気疲れしなくてすんで助かりましたね(苦笑)
前回どうやれば回避できるんだ!? と心配させられた復縁の件も、皇帝の親馬鹿先回り処置のおかげで自動的に立ち消えましたし。こうなると皇妹殿下とヤエトは、割と互いに相手を理解し合える良き友人に……なれませんかねえ。 とか言ったら、ヤエトに「知るかボケ」と罵ってもらえたりしてvv
そして貴族なのに尚書官で、強引だけどなんだかんだでヤエトを友人認定している新キャラ、タナーギン。
ヤエト自身はあまり自覚がないままに、罪を引き受けて恩を売った形になっている貴族という点では、ルーギンとも同じ立場にある存在なんじゃないでしょうか。これで文武共に信頼できる、帝国上層部に顔が利く人材が揃ったのかも?
アクの強かった赤犬家のギスケルとも、なんだかんだでうまくやり始めたりしていて、結局ヤエトは人望を集めるのがうまいんですよねえ……

皇帝も、いろいろ娘馬鹿を炸裂させつつ、ヤエトのことを受け入れてきてるみたいですし、この先どんなふうに展開していくことやら、楽しみでなりません。
皇女が……なのは、正直ちょっと複雑ではあるんですが。
確かに年の差も身分差も大好物ではあるんですけれど、それ以上に男女の恋愛の絡まない主従関係というのに萌えるタチなので……ああでも、ヤエトがしれっと皇女に***したのが、挿し絵つきであったのは、びっくりしつつもやっぱり萌えたvv 斜め後ろ四十五度かつ、ヤエト自身があくまでしれっとしてるのがポイントです。

……っていうか、前々から思ってたんですけど、ヤエトってそこらへんの経験値、どうなってるんでしょうね。彼が玄人とどうこうする気概とか体力を持ってるとは思えないし、かといって結婚をしないと心に決めているうえで、それでもなお恋人を作るという選択肢を取るとも思えないし。
それにしてはやけに手慣れてたけど……果たして真相はいかに??
No.6820 (読書)


 2015年05月11日の読書
2015年05月11日(Mon) 
本日の初読図書:
「翼の帰る処(WEBマンガ)」
 http://www.gentosha-comics.net/event/tsubasa/01.html

おおおおおお!!
まだ3(6冊目)までしか読めていないFT小説「翼の帰る処」ですが、ネットでうろうろしていたら、公式絵描きさんによる1巻冒頭のコミカライズが!!
すすす、素晴らしい〜〜〜( T ▽ T )
ほんの8ページほどの、ほんとのほんとに冒頭、会議の怒鳴り合い〜姫さまとルーギン一行が北嶺にやってきたまでのシーンだけなのですが、あの ことき さんの絵で、絵でvv
ヤエトが内面をほとんど外に出さず見た目だけは淡々としてる雰囲気とか、無駄に美麗な金髪美形ルーギンの剣に、ちゃんと小さい鈴がついてるとか、もう雰囲気ぴったりですよ。
金髪青目がデフォルトの北嶺人(プラス帝国人)の中で、黒髪黒目のヤエトがどれだけ浮きまくってるのかも、一枚絵とはまた違ってはっきりと判りますし。遠景の北嶺の山とか、もう私の脳内から出力されたんじゃないかってぐらいでした。
うっわー、これこときさん、マジで最初の上下巻だけでもコミカライズしてくれないかなあ。どうせなら鳥達の姿も見てみたい〜〜><

なお原作小説は、新書版だったのが現在は大判単行本で出直しています。書き下ろしSSなども足されているらしく、今から読まれる方は大判の方を選ばれたほうがよろしいかと。

4344826345翼の帰る処 (上)
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2012-10-31

by G-Tools
4344826353翼の帰る処 (下)
妹尾 ゆふ子 ことき
幻冬舎 2012-10-31

by G-Tools
No.6818 (読書)


 2015年05月04日の読書
2015年05月04日(Mon) 
本日の初読図書:
「傭兵団の料理番(小説家になろう)」〜十六、決着ともつ鍋・裏編
 http://ncode.syosetu.com/n3420cm/

子供の頃から料理好きで、和洋中の料理を研究したり、歴史を勉強して昔の料理を再現するのが趣味の青年、東朱里。ある日の仕事帰りに白い光に包まれて、気が付くと剣や槍や弓や矢で武装した中世のような世界の戦場に放り出されていた。
群雄割拠する、時は戦国。戦場では魔法と矢が飛び交い、槍と剣が打ち合うそこサブラユ大陸では、様々な勢力が野望をいだき、戦争に明け暮れているという。
孤児の身から、一国一城の主となることを夢見て幼なじみと共に傭兵団を立ち上げたガングレイブは、いきなり陣地に迷い込んできた奇妙な男に、気まぐれで料理をさせてみることにした。武装した人間に囲まれ命の危機にさらされながら、「お腹空いたんで、料理させてもらえませんか」とか言い出すとぼけた所を面白く思ったのだ。
旨い料理で膠着した戦場での士気が上がればよし。不味ければ腹いせに殺させれば、やはり士気を上げることができるだろう、と。
そうして青年 ―― シュリがわずかな材料から作り上げたシチューは、これまで食べたことがないほどに旨いものだった。
後に、大陸を平定した初代統一帝国皇帝ガングレイブ・デンジュ・アプラーダは、その著書にこう残している。
『大抵の兵は美女を抱き、金を手に入れることが目的だ。だが、それだけでは兵は動かない。結局、旨い飯こそが兵を、民を支え、国を形作るのだ。一日を生きた喜びと、明日を迎えられる感謝。それらを旨い飯で朝を始め、旨い飯で夜を終える。それこそが幸せではないのか。余は、それを彼に教えてもらった』
皇帝ガングレイブは、若き頃に出会い、共に戦場を駆け旨い飯を作ってくれた料理人を、常にその側へと仕えさせていたという。
皇帝と、その側近たる英雄達を陰で支えた料理人。
これは後世に“食王”として語り継がれるシュリ・アズマが、本人は全く気づかぬうちに様々な人々へと影響を与え、そしてそのことに無自覚なまま生き続けた、そんな物語である ――

半端でなく料理好きの青年が、異世界で泥臭い傭兵団に拾われて、そのあまりに劣悪な食事事情を見かねて腕をふるいまくり。ついでにあちこちの領主やら有力者やらも、料理の腕と勘違い気味のあれこれで落としつつ成り上がっていくお話。
すでに彼が日本に帰れないことは、第一話のラストで確定しているわけですが。そして主要キャラ全員が生き残って大成することも語られているわけですが。
それだけに逆に安心して読めます。
基本的にお話は、料理ごとに前後編あるいは3〜5話程度に分かれており、それぞれで視点が異なります。
シュリ視点だとかなりほんわかゆるゆるなお料理パート。しかし同じ場面を別のキャラが別の立場で見ると、深読みしまくったり、なんてことない行動から天啓を受けたりして、いろいろとんでもないことになっています(笑)
特に傭兵団のトップと幹部クラス五名が、シュリの言葉にヒントを見出して編み出すあれこれがすごすぎるvv
個人的にはテグさんの一途っぷりを楽しく眺めつつ、第二章で登場した看守さんの今後がどうなってくるかも着目のしどころです。
……ただ個人的に男装の彼女は、あんまりヒロインにはなって欲しくないかなあ。仲間としてシュリの部下になってくれるなら、それはそれで面白そうですけど、そうなると今度は看守さんが板挟みになりそうだし……ううむ……
No.6808 (読書)


 2015年05月03日の読書
2015年05月03日(Sun) 
本日の初読図書:
「休暇だと思って楽しみます。(ブラックゾーン)(ムーンライトノベルズ)」〜陛下とリゼルとピアスの話。
 http://novel18.syosetu.com/n6137cq/

果てしなくグレイゾーンに近い、男同士の友情以上恋愛未満・恋愛感情なし友愛がモットーの、異世界 → 異世界トリップFT「休暇だと思って楽しみます。」の、作者さんご自身が書かれた二次創作、的な感じ?
一作目の今回はタイトルの通り、本編でリゼルがつけてる例のピアス関連で「魔力を限界まで引きずり出されて込めさせられた」時のお話です。
グレイゾーンを突破してしまったと書かれてはいますが、今回はまだ友愛の範囲内だったかと。たぶん。
……いやある意味これって、なまじな恋愛感情よりよっぽど深い関係だとは思うんですけどねvv
ともあれムーンさんに置くほど直接的な描写はないと、私基準では思いました。手のひらへのキスと、上半身に触れてるだけですもんねえ。しかもそっち目的ではなく、魔力を引き出すためだし。とは言え雰囲気はめっちゃあるぶん、下手に直接描写するよりもよっぽど腐向けではあります(笑)
ともあれ陛下のドSぶりが光る一作でした★
No.6806 (読書)


 2015年05月02日の読書
2015年05月02日(Sat) 
本日の初読図書:
「前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。(小説家になろう)」〜第39話 未来の宮廷料理人?
 http://ncode.syosetu.com/n2721cq/

事故で死んだら幸福ポイントが大量に余っていたので、神様が剣と魔法の異世界に転生させてくれることに。
ポイント消費してスキルを取って、地方貴族の末っ子に転生。七歳で記憶を取り戻してからは、未来を見すえて前世知識を生かしつつ腕を磨き、十一歳で冒険者ギルドに登録して旅に出たぜ! ……という、まあテンプレな異世界転生、チートで俺TUEEEE系。

作者様いわく初投稿で、「極力長い説明文は省き、読みやすく制作したいと思います」とのことなんですが……うーん、さすがにいろいろ省きすぎかな、と。
なんで主役が大量の幸福ポイントを持ってたのかとか、装備を揃える時に金額を聞いて「驚かされた」と書いてあるけど、これって高くて驚いたの、安くて驚いたの、みたいなあまりにも説明不足な部分がちらほらと。
なにより新たに登場するキャラクターの容姿はおろか、性別も書いてないって……神様も黒狼も、最初はてっきり男だと思って読んでたからびっくりしたよ。って言うかこれってもしかしてハーレム系に行くのか??
なまじ突き抜けて中二方向や戦闘面に突出してる訳でもないので、ぶっちゃけると印象薄めかな(苦笑)
まあ、鬱展開には行かなそうなのが、気軽に楽しむには良いかもです。
No.6805 (読書)


 2015年05月01日の読書
2015年05月01日(Fri) 
本日の初読図書:
「アルヴェスク年代記(小説家になろう)」〜野心の目覚め14
 http://ncode.syosetu.com/n3773cp/

ユーラクロネ大陸の中央部西寄りに存在する、大陸随一の大国〈アルヴェスク皇国〉。
大陸暦1054年7月24日に行われた皇立学院士官学校の卒業記念パーティーには、後世に名を残す三人の若者達が出席していた。
わずか14歳の時分に辺境伯領で行われた武術大会において優勝し、また領地運営上の問題を鮮やかに指摘したうえに解決法も提示したことで、一騎士階級の出身でありながらリドルベル伯爵の養子として迎えられた、文武両道の偉丈夫ライシュハルト・ロト・リドルベル。
北方に領地を持つ国内屈指の有力貴族アルクリーフ公爵家の世継ぎで、優秀な成績と麗人と称されるほどの端正な容姿を備えたエルストロキア・ロト・アルクリーフ。
先の隣国との戦争に騎士である兄の従者として参戦し、かつて宰相をも務めた経験を持つ指揮官アーモルジュ・ヨセク・ロト・カディエルティ侯爵の危機を救った結果、その弟子として引き抜きを受けた、貧乏騎士の三男カルノー・ヨセク・オスカー。
この時、三者共に19歳。同級生達の中で最年少の年齢だった彼らは、同い年であるが故にしばしば行動を共にし、そしてそのまま気心の知れた友人同士となっていた。社会的に見れば、けして対等な関係ではありえない身分でありつつも、三人は互いに互いを認め合い、それゆえにこそ親しい友人となりえたのだ。
長いようで短い学生生活が終わり、卒業後の彼らは、それぞれの道を行くこととなる。
ライシュはリドルベル伯爵の実娘と結婚し、正式な後継者として領地運営の手助けを。
エルストは隣国ギルヴェルス王国の姫君と、やはり婚約がほぼ決まっている。政略結婚でアルクリーフ公爵家の地盤を固めつつ、父が皇都で政治工作に奔走する間、領地を守るのがその務めだ。
カルノーは自身を引き立ててくれたカディエルティ侯爵の元で、その恩を返すべく身命をとして働く心積りであった。
それぞれの道は分かたれるが、その友誼は変わることなく続く。三人共がそう思っていた。
しかし、歴史は思わぬ動きを見せる。
彼らが卒業しておよそ一年ののち、賢君と呼ばれた偉大な皇王レイスフォール・イクシオス・グラニア・アルヴェスクが急死したのだ。そしてその崩御をきっかけとして、政変が起こる。
定められていた皇太子の排除。幼君の擁立と、その後見として欲しいままに権力をふるう奸臣達。そしてついに行われる、皇位の簒奪。
内乱に揺れるアルヴェスク皇国の中で、やがて若者達は、それぞれの立場で頭角を現してゆく ――

「乱世を往く!」、「403 シングル・ルーム」に続く、新月乙夜さんの新作長編FT。
とりあえず第一話が終わっていたので、いっきに読ませていただきました。これだけできっちり文庫一冊分あります。
今度はファンタジー要素一切なしの、純然たる戦記もの。国や大陸こそ架空ですが、魔道具だのモンスターだの不思議能力だのはまったく登場しません。
第一話目はタイトルの通り、賢王の崩御から始まる内乱と、それぞれの野心の絡み合い。そしてそれらがもたらした、ひとまずの結果です。
かつての主君の遺志をねじ曲げ、己が野心のままにふるまった御伽衆と侍従長と近衛大将軍。
そして簒奪者を討つという名目のもと、今後における自家の発言力を高めようとした者もいれば、これまで隠し通してきた出自を明らかにし、己こそが皇王たらんに相応しいと名乗りを上げた者もおり。あるいは正統なる後継者に皇位を戻すべく奮戦する師に従い戦場を駆けた結果、思わぬ出世を遂げることとなった者もいて。
ひとまずの内乱は終結を告げたものの、それぞれの心に灯った野心の火は、けして消えず。
第一話終了時点で三人はまだ23歳。くすぶり続ける火種はきっとこの先、様々な波乱を呼び起こすのでしょう。
今のところは大人しく見える『彼』も、幼い頃から内心に秘めていたあれこれを考えると、どこかでいっきに爆発しそうな気配がちらりほらりとかいま見えますし。
って言うか、絶対彼こそが大本命だよね? と思うのは、あまりにも王道すぎるのか。
他の二人もきっちり魅力的ですし、そこは新月さんですから、この先お話がどう転ぶかはまったく予断を許しません。
新月さんであれば、どんな大長編でも投げ出さずにきちんと完結させてくれるだろうという、安心感があるのもありがたいところ。
今後の展開が楽しみな作品ですvv
No.6803 (読書)


 2015年04月27日の読書
2015年04月27日(Mon) 
本日の初読図書:
4063714381Q.E.D.証明終了(49) (講談社コミックス月刊マガジン)
加藤 元浩
講談社 2014-10-17

by G-Tools
就職活動に苦労し、自身の価値を見失いかけていた青年が、殺人事件に巻き込まれ命の危機にさらされることで己を見つめ直す「無関係な事件」
大学時代に撮影しかけていた映画を、45年後に完成させようとしたその寸前で力尽きてしまった老人。その残したかったメッセージを、燈馬がひも解く「ラブストーリー」

ある意味では、人生これからという若かりし時と、全てを終えて見つめ返す人生の終わりと、綺麗に対照をなしている一冊だったのではないかと。
ちなみに一作目には内閣情報室の甘党お兄さんこと梨田さんが、お久しぶりの御登場。
そしてよく考えると、二作目でバイトしてる可奈ちゃんが、燈馬くんを引っ張りこんでいないのも珍しい展開かも(笑)
このシリーズもずいぶんと長く続いてきて、メイン視点が主役二人ではなくモブキャラという演出も増えてきましたよねえ。
燈馬くんが『人の心』を学習してゆくにつれて、可奈ちゃんの存在意義が運動能力方向に特化してきているのが寂しいところかなあ……
No.6793 (読書)


 2015年04月26日の読書
2015年04月26日(Sun) 
本日の初読図書:
406371439XC.M.B.森羅博物館の事件目録(27) (講談社コミックス月刊マガジン)
加藤 元浩
講談社 2014-10-17

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「アステカのナイフ」「爆破予告」「幸運」「大入道の屏風」の四作を収録。
一作目は裏の裏という感じで、どんでん返しが面白かったですね。「爆破予告」も、意外な犯人と、スケールの大きい動機が面白かったです。でも森羅があれだけの情報と短時間で『そこ』に辿り着けるのは、さすがに無理がありすぎるかな(苦笑)
「幸運」は、いかにも加藤さんらしい一作。犯人もトリックも協力者も比較的早めに読めましたけど、でもこういう「お約束」って、なんだか安心できます。
そして「大入道〜」はマオが主役の描き下ろしスピンオフ。過去と現在における、商売のプロが魅せる意識の高さが実に格好良いです。
特に冒頭の、ミュージシャンと学者と仮面のエピソードについては、さすがマオだと感心しきり。

……そう言えば冒頭といえば、「アステカ〜」でヒヒ丸がクッションに文句つけてたのって、何の意味もなかったんですね。あれもてっきり何かの伏線だとばかり(苦笑)<深読みしすぎ
No.6789 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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