よしなしことを、日々徒然に……



 2015年03月06日の読書
2015年03月06日(Fri) 
本日の初読図書:
「ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント-(小説家になろう)」〜何よりも嬉しい
 http://ncode.syosetu.com/n4237cd/

幾多の戦場を渡り歩き、世界最強のエージェントと呼ばれた男。彼は五十をぎたのをしおに一線を引き、後進を育てるようになった。しかし十年を過ぎた頃、様々な陰謀と組織の思惑が絡みあった結果、一人死地へと送り込まれることとなる。相棒と弟子達のために計画を受け入れ命と引き換えにターゲットを始末した男は、敵の本拠地を己もろとも爆破し帰らぬ人となった。途中で手を離すこととなった弟子達のことは心残りだが、それでも託すものは全て託し、最後の仕事をやり遂げたのだから悔いはない、と。
そうして ―― 気が付くと彼は、見知らぬ場所で赤子になっていた。面倒を見てくれているのは適齢期をわずかに過ぎた外国人のメイドと、彼女よりも年若いもう一人の……猫耳メイド? しかも猫耳メイドは目の前で指先に火を点し、丸い玉にして操ってみせたりして彼をあやす。
どうやらこれは、魔法というやつらしい。目覚めてから一ヶ月、あえて思考から外していたが、そろそろ現実を素直に認めなければいけないようだ。ここは、地球ではないのだと。
前世の記憶はどこかおぼろで、自分や仲間達の名前を思い出すことはできなかった。せっかくこうして新たな生を受け、シリウスという名をもらったのだから、これからはこの世界でしっかり生きていこうと彼は決意する。
すでに本能のレベルで身体を鍛えることが染み付いている彼 ―― シリウスは、そう決めた生後三ヶ月の頃から、手足を動かす訓練を始めた。無理をして肉体を損ねるのは本末転倒だが、適切な運動は確実な結果を生む。言葉に関しても、かつて世界各国を飛び回っていた経験と赤子の学習速度が幸いし、すぐに覚えることができた。
どうやらシリウスの立場は複雑なものがあるようで、両親の姿はまったく見られず、山奥の一軒家で二人のメイドと無口な料理人の青年の四人で暮らしていた。彼らに魔法の初歩などを教わりながらシリウスは成長するが、どうやら彼の魔法の才能は芳しくないらしい。地水火風、どの属性にも適正がないその無色の属性は、あまりの使い勝手の悪さから『無能』と称される、蔑みの対象であるらしかった。しかし魔力の回復が早いことと、前世で鍛えた各種イメージを駆使して、シリウスは様々な応用を編み出してゆく。
彼が夢見るのは、前世で中途半端に終わった教育者としての道を、もう一度目指すこと。そのためにも、まずは見聞を広めるために学園に通い、さらには広い世界を旅して巡りたいと目標を立てる。
しかしシリウスが今の家で暮らせるのは八歳まで ―― あとわずか五年だという。その間に経験を積み、入学金の金貨15枚を稼がなければならない。幸いにも家族に等しい従者達は、全面的な協力を申し出てくれた。
そんなある日のこと、訓練と金になる素材収集を兼ねて魔物を倒そうと分け入った森の中で、奴隷の首輪を嵌められボロボロになった銀狼族の子供を二人見つけて ――

転生チート? 連載中。ハーレム注意。現在書籍化にむけて作業中とのこと。
チートはチートかもしれませんが、主人公の努力っぷりが半端ないので、魔力量が多い&回復が早い程度の優遇は、かわいいものに見えてきます(苦笑)
とにかく息をするように訓練漬け。ほぼ同年代の銀狼姉弟が最初の弟子になってますが、わずか五歳と七歳を相手に、軍隊も真っ青のむちゃくちゃな稽古をつけております。あ、でも無理はやらせてません。あくまで相手の意思を尊重し、ついてこれないなら止める自由を与えてますし、根拠のない根性論も振りかざしません。栄養バランスのとれたたっぷりの食事とすさまじい運動と、時に回復魔法も駆使した英才教育。
銀狼姉弟も主人公に心酔してるので、ついていきますどこまでも、状態。
第五章で主人公八歳、ようやく学園に入学しますが、その時点ですでに三人共すぐに卒業できるレベル。ただし元奴隷の弟子達の方は情緒面の発達がアレだったので、学園生活で友達作ったりと勉強とは異なる意味で成長して行く訳ですが。
主人公自身は、さすが死ぬまで現役だった六十歳凄腕エージェントだけあって、世間の裏側とかも熟知した大人の男です。転生して子供になってもそこらへんはあまり変わらず、身内以外で敵と認識した相手にはとことん容赦ないのがさすがです。魔法とか冒険者ギルドとか出てくる割に、レベルとか経験値とかステータス表記とかがないのも、ゲームっぽくなくていいですね。

現在十二章目を連載中。既に文庫十冊近い量でありながら、ようやく学園を卒業して旅に出たばかりの十四歳と、かなりスローペースな話運び。でも正味二日ぐらいで一気に読んじゃいました。
個人的には魔法学園の校長で、魔法を極めた四百歳超エルフのロードヴェル先生が大好きです。常識を覆す発想を見せるシリウスを、子供と侮らず、共に互いを高め合える友人として対等に付き合っているところや、清濁併せ呑んで二人で黒い笑みを交わし合ってるあたりがたまりませんvv
他にもバトルジャンキーの爺さんや、すごく有能だけどシスコンの王女様など、様々なキャラクターが出てきます。
……主人公の前世での『師匠』の謎も、いずれ明らかになるのかなあ?
No.6640 (読書)


 2015年03月05日の読書
2015年03月05日(Thr) 
本日の初読図書:
4047301779おこぼれ姫と円卓の騎士 二人の軍師 (ビーズログ文庫)
石田リンネ 起家一子
KADOKAWA/エンターブレイン 2015-01-15

by G-Tools
ちょっとした掛け違いから仕事が滞り、レティーツィアは忙しく政務に追われていた。余裕をなくしているその姿を見たデュークは、早急に頭脳担当となる宰相や軍師候補を騎士にするよう進言する。
「下種なことが平気でできる人間がいい」
潔癖なところのあるレティが決断をためらった際、その背中を押せる人物。至高であるべき王に代わって、泥を被る役目の臣下を。
その提案をもっともだと受け入れたレティーは、かねてから軍師候補として情報を集めていた二人の名をあげた。一人は戦があればどこからともなく現れて勝利をもたらすという、正体不明の軍師ゼノン。そしてもう一人は、没落したかつての三大公爵家の一角クラインシュミット侯爵家の冷や飯食い、メルディ・クラインシュミット。
十八歳になるメルディは、爵位を継ぐ可能性が皆無なほど末端の生まれで、王立騎士学校を卒業してからも騎士にならず、家でごろごろしているという。これと言った特徴もない、ごくごく平凡なうだつのあがらない人物であった。だがレティは彼が残した成績に着目していた。十三歳で騎士学校に入学した際には全科目満点。そして卒業時には全科目ぴったり五十点。これはけして、偶然で取れる点数ではないと。
レティらはひとまず、遅れている堤防工事を視察するお供という名目で、メルディを旅行へ連れ出した。
一方でメルディの父親は、浮かれて息子に言いきかせる。自分で政務を執りたがっている次期女王陛下は、夫にすべて“御意はい”で答える無能さを求めているのだろう。お前は一歳違いで年齢も合うし、フリートヘルム派でもグイード派でもない名門クラインシュミット侯爵家の血を引きながら、政治的発言力は皆無。つまり今回のことは夫選びの一環に違いない! と。
メルディはその予測に説得力を感じながらも、裏にはまだ何らかの意図が隠されているのではと推察した。ならばあの王女は相当食えない相手であると、警戒を強める。なぜなら彼は、レティに対して含むところがあったのだ。かつてレティの婚約者候補であった、従兄のマティアス。その変死事件について、メルディは疑惑を抱いていたのである。
そして。
それぞれの思惑を乗せた馬車が通りがかった道中の町で、間もなく盗賊が襲ってくる兆候を発見した一行は……

シリーズ本編10巻目、番外編を含むと11冊目。
今回の騎士候補は軍師枠です。もともとレティが頭良いところへ持ってきて、またぞろ頭の回転が速い人間が相手をしているので、同行しているデュークやクレイグなんかの影が微妙に薄いような(苦笑)
いえ、彼らは彼らでちゃんとそれぞれのやり方で活躍してるんですけどね。特に即興でいきなり「何か耳打ちしろ」って言われて、そこでしれっと大真面目な素振りで朝食のメニューをチョイスするクレイグのお茶目っぷりとかたまりませんがvv
そして真性脳筋のアストリッドも、メルディとは真逆かつ常識に捕らわれない柔軟な発想の持ち主として、認められていくわけですが。
しかし今回はとにかくメルディの内面描写に紙面が割かれていたと思います。
かつての師によって、お前に未来はない、先はない、だから何もするなと深層意識に刷り込まれていたメルディが、自分の意志で一歩を踏み出すまでのストーリー。1冊で安易に叙任まで行かなかったこともまた、アストリッドと対を為すような立ち位置に思えました。
二人の軍師というタイトルの通り、後半ではもう一人名が挙がっていたゼノンも御登場。高名な軍師と言うからもっと年輩かと思っていたら、こっちもしっかりイケメン枠でした。つくづく乙ゲー(笑)

さて次の巻は、長らく棚上げになっていたマティアスの変死事件について調べていくようです。てっきりファンタジックな要素が絡んでの「あり得ない転落死」だと思っていたら、メルディにはトリックらしきものの予想が既についているようで。次の巻は謎解き色が強くなるのかな?
ともあれ、このシリーズを読み始めて一ヶ月。ついに最新巻まで追いついてしまったので、次が読めるのは数ヶ月後(しょぼん)
首を長くして刊行を待つことにします。
No.6637 (読書)


 2015年03月04日の読書
2015年03月04日(Wed) 
本日の初読図書:
「公爵令嬢の嗜み(小説家になろう)」〜王太后様の助け
 http://ncode.syosetu.com/n1337cn/

かつて日本で税務事務所に勤めており、30過ぎで死んだ彼女は、気が付くと乙女ゲームの世界に生まれ変わっていた。
しかしかつての記憶を取り戻し、状況を把握したのはまさにバッドエンディングのまっただなか。
筆頭公爵家の第一公女アイリスとして生まれ、父は宰相、母は軍を司る将軍家の娘と文武官僚トップの家柄を両親に持ち、国の中でも王家に次ぐそそれは血筋の宜しいお嬢様の彼女は、ほとんど表に出てこない第一王子よりも権力を持つ、第二王子の婚約者だった。だが、そこは乙ゲーのお約束。
男爵令嬢という貴族社会では底辺に位置するヒロインが、貴族の子女・子息が集まる学園の中で貴族社会のトップに位置する青年達とシンデレラストーリーを繰り広げた結果、第二王子以下取り巻きはすべてヒロインの信奉者となり、王子エドワードとの婚約は破談。ヒロインに嫌がらせをしたり誹謗中傷をするライバルの悪徳令嬢キャラに位置づけられた彼女は、生徒たちの前で吊し上げにされたあげく、王子の恋人を私怨で傷つけたとして学園を追放されるという、まさにその場面で前世の記憶を取り戻したのである。
このままではゲームのエンディング通り、自宅謹慎からの教会幽閉コースにまっしぐらだ。
……でも、よく考えたらおかしくない?
身分違いの恋といえば聞こえはいいけれど、要するにあのヒロイン婚約者がいる人間に横恋慕して、寝取っちゃったんだよね。普通に考えたらヒロインの方が悪者じゃない。誰だってそんな相手が現れたら憎らしく思うだろうし、嫌がらせぐらい普通にするわよ。
とは言え、恋愛で脳味噌お花畑になった第二王子には、すっかり愛想が尽きた。かくなる上は、生涯幽閉だけは避けるべく、父宰相にかけあうしかあるまい。
そう考えたアイリスは父との交渉に挑み ―― 領地での謹慎という名目で領主代行の任務を与えられた。どうやら父は父で、第二王子と第一王子のパワーバランスや、第二王子とヒロインに心酔して公爵家の跡取りの責務を疎かにしている弟について、いろいろと思うところがあったらしい。
かくして社交界から追放され領地に引きこもったアイリスは、記憶のない頃から引き取って養育していた孤児上がりの使用人らなどの手を借りて、領地の改革に乗り出す。
まずは税金に頼らずに公爵家を運用してゆくため、新商品の開発と商会の立ち上げ。そして浮いた税を利用して、中長期を見据えた民達の生活の向上。
豊かではあるけれど、熟れきった果実のようにあとは腐り落ちてゆくばかりのように思える公爵領の経済を回転させ、富める者に集中している富を再分配し、いずれ訪れるだろう王都の混乱……すなわち第一王子と第二王子の勢力争いの折りにも、揺るぐことなく国を支え続けられるように、と。
そんな彼女の働きは、じょじょに周囲も認めるところとなって ――

異世界転生FT。バッドエンドから始まる内政チートな成り上がりもの。連載中。
んー……内政部分がかなり順調すぎるというか、挫折や失敗がほとんどないので、ちょっとそのあたりはご都合主義が気にかかるかな。
しかし主人公を裏切った第二王子と、彼をたぶらかしたゲーム上のヒロインの、とにかく脳味噌お花畑ぶりがいっそ突き抜けていて、「次は何をやらかしてくれるんだww」とワクテカしてしまいます(笑)
これはもしかしたら、ヒロインも転生者なんじゃないかなあ。それも夢見がちな中高生ぐらいの。
下級とはいえ貴族としての教育を受けたとは思えない、ルール無用な短絡かつふわふわな言動が、そんな疑惑を感じさせます。
ほぼ毎日のペースで更新されているので、こちらも日参チェックする作品になりそうです。
第一王子(推定)との今後も気になるなあ。ふふふふふ……
No.6636 (読書)


 2015年03月03日の読書
2015年03月03日(Tue) 
本日の初読図書:
4087475905平面いぬ。 (集英社文庫)
乙一
集英社 2003-06

by G-Tools
父の実家があるその地方には、石の目、あるいは石のと呼ばれる伝承があった。人間を石にする目を持つ、化け物の伝説。大人になるにつれ、そんなものは教訓や戒めを子供に言い聞かせるための、おとぎ話にすぎないと判っていった。それでも地元の人々は、石の目が棲むという山にはほとんど入ろうとせず、そこの地形に関する情報は乏しかった。母は、わたしが小学生の頃、その山に入って行ったきり行方が判らなくなっていた。そんな母の遺体を探すため、わたしは夏休みになると山に登る。その話をすると、興味を覚えたのか今年は同僚のN先生がついてきた。ところが不案内な山の中で足を踏み外し、わたし達は崖下に落ちて遭難してしまう。足を痛めたN先生を背負って辿り着いたのは、数多くの精巧な石像が周囲を囲む、山中の民家。住んでいた老婆は助けてくれはしたものの、けして自分の顔を見てはいけないと言って ―― 「石の目」
はじめは不思議な少女だった。出会いは、小学校四年生の時。最初は木園淳男と管耕平の二人で、ヒヨコ殺しの架空の犯人として作り出した、口からでまかせの存在に過ぎなかった。ところが噂は噂を呼び、いつしか一帯で起きる子供のイタズラは、すべて彼女の仕業とされていった。二人ははじめについての設定をどんどん細かく作りこんでいき……そうしていつしか二人の目には、彼女の存在がはっきりと見え、耳には快活なその言葉が聞こえるようになっていた。三人で地下道を冒険したり、閉店した駄菓子屋を荒らしに入ったりと、彼らは楽しく遊んだ。けれどはじめの姿が見えるのは、淳男と耕平の二人だけ。彼女はあくまで幻覚にすぎない存在で ―― 「はじめ」
アル中のぬいぐるみ作家が遺作として残したのは、五体のぬいぐるみだった。王子様とお姫様と騎士と白馬、そして残り布でできた手足の長さもバラバラな、つぎはぎの青い一体。彼らはそれぞれ意志を持っており、人形同士で話し合ったり動くこともできた。けれど動く人形だと判ったら返品されると店で言い聞かされたので、黙って普通の人形のふりをしていた。ある日、小さな女の子の誕生日プレゼントとして王子と姫と騎士と馬が選ばれ、青い一体……ブルーはおまけとしていっしょに買われた。しかし少女はきれいな四体は気に入ってかわいがったけれど、ブルーは乱暴者の弟に押し付けてしまい ―― 「BLUE」
高校を卒業したら、家業を継いで彫師になるという友人に誘われて、わたしは謎の中国人の手で腕に犬の刺青を入れる。ポッキーと名づけた三センチほどの青いそれは、ふと目を離した隙にあちらこちらへと動いては、皮膚にあるほくろやニキビを食べ始めた。幸い糞はしなかったが、時おり鳴き声を上げるので、周囲から隠すのに苦労した。けれどポッキーを見ているのは楽しかった。刺青を入れたなど、家族に知られれば怒られるに違いない。そう思って秘密にしていたわたしにつきつけられたのは、折り合いの良くない父と母と弟の三人共が、癌で余命半年だという宣告だった ―― 「平面いぬ。」

名前は以前から聞いたことがあったけど、一冊も読んだことがなかった乙一さん。
タイトルと表紙に心惹かれて手に取ってみました。
う〜ん、これはなんて言うんだろう。ホラーというには弱いけど、単なるファンタジーとはちょっと違う感じ。大人向けの童話とでも表現するべきでしょうか。けしてハッピーエンドではないけれど、読後感は悪くなく、何かが心に残る。そんな印象。

「BLUE」以外の三作はどれも主人公の一人称で語られており、限られた情報を少しずつ淡々と積み上げていく雰囲気が、なんだか独特に感じられました。
特に「石の目」などは、かなり進むまで主人公のS先生の性別を勘違いしていたぐらいで。
だって人称代名詞「わたし」だし、言葉遣いがていねいだったから、てっきり女性だとばかり(苦笑)
内容的には、その「石の目」が一番好き……というか、深く印象に残りました。
読んでいて思い浮かんだのは、那州雪絵さんの「魔法使いの娘〜」シリーズ。
脳内に展開される映像イメージのカメラワークといい、理不尽でありぞっとするほど怖く、怪奇現象が関わっているのに、一番怖いのは人間の心だったというところといい、まさにあんな感じ。
乾いた切なさを残す、ラストの余韻も見事でした。なんとなく耳の奥に蝉の声がこびりつくような。
「はじめ」は、うって変わって神谷悠さんの絵柄が思い浮かびました。
子供の頃の無鉄砲さや、何かがきらめいているような明るさ、子供達の間でいつしか広がってゆくまことしやかな噂話。そこに加わる一滴の不思議のエッセンス。普通なら一夏のファンタジーぐらいで抑えてしまいそうなところを、八年間にも引き伸ばしたところがさすがかと。
「BLUE」はちょっとホラーテイスト。ケリーさんなんで死んじゃったんだろうとか、不思議な布や謎の骨董屋の正体はいかに?? など、解かれない謎が残りまくってるんですよね。そしてこのお話も、子供の残酷さが切ないっす。
そして表紙と表題作の「平面いぬ。」。これは「はじめ」と「BLUE」を足して二で割ったような雰囲気でした。謎の中国人のお姉さんは、BLUEで出て来た骨董品屋の関係者かも? とか思ったりして。
叙述トリック的な仕掛けもあり、少女の別れと成長の物語でもある訳ですが。やっぱりなんといってもポッキーが可愛い! の一言につきます(笑)
……しかし高校二年生で、いきなりその場の思いつきで腕にタトゥーを入れてしまえるその感覚は、さすがにちょっと共感できないかもと思ってしまうのは、私が年をとったからか……

あ、あとほくろやニキビを食べるというエピソードになんか覚えがある……としばらく頭を悩ませて、ようやく思い出せました。
TONOさんのチキタGUGUシリーズだ(笑)
あれもなんというか、いろいろと複雑で切ないお話だったなあ……
No.6633 (読書)


 2015年03月02日の読書
2015年03月02日(Mon) 
本日の初読図書:
「魔法使いの婚約者(小説家になろう)」〜魔法使いの妻(4)
 http://ncode.syosetu.com/n8262bn/

よくある剣と魔法の世界に転生した、元日本人の三十路女性フィリミナ。
そこそこの貴族の家に生まれ愛されて育った彼女は、七歳のある日、父の友人に連れて来られた少年の黒髪を懐かしく思った。しかしこの世界における髪の黒さとは、保有する魔力量の証。純粋な黒を持つ彼は、実の親に恐れられたあげく、屋敷内に封印されて育った人嫌いのトラウマ持ちだった。いくら精神年齢が大人とはいえ、訳ありの子供の相手など手に余る。そう思って無理に構い付けず放置することに決めたフィリミナだったが、少年 ―― エギエディルズは、そんな扱いに安心したらしい。いつしか肩を並べて魔導書を読むようになった二人の穏やかな時間は、しかしエギエディルズが魔力を暴走させたことで終わりを告げる。
フィリミナは背中に消えぬ傷跡を受け、貴族女性としては疵物となった。そうしてエギエディルズは全寮制の魔法学院へ入学し、魔法を学ぶことになる。「まっていてくれるか」という言葉ひとつを残して。
それから七年。一度も帰省することなく魔法学院を主席で卒業したエギエディルズは、中性的な美貌と研ぎ澄まされた毒舌を持つ、国一番の魔法使いとなっていた。再会して最初の一言は、
「―――――残念なほどに変わらないな、お前は」
である。
折しも世界では魔王が復活し、魔物が暴虐の限りを尽くし始めていた。伝国の聖剣に選ばれた勇者が旅立つこととなり、女神の加護を受けた王女と王国一の剣技を持つ騎士団長と、そして王宮筆頭魔法使いがお供として選ばれた。
そう、フィリミナの婚約者であるエギエディルズは、魔王退治に赴く勇者一行の魔法使いとなったのである。
これは前世でいうRPGの王道だ。思えば彼は、幼い頃からフラグを立てまくっていた。この先やってくる展開といえば、やはり死亡フラグだろうか。勇者を先に行かせて自分は残るだとか、命を代償に大魔法を使うだとか、勇者を庇うだとか、ヒロインを勇者の代わりに庇うだとか。
あるいは姫様との恋愛フラグもありえる。王宮の噂によれば、あの男と王女は、自分の知らないところで侵攻を深めていたらしい。ならばたとえあの男が無事に帰ってきたとしても、このまま自分と結婚するとは思えない。
そう考え、心ひそかに覚悟を決めていたフィリミナに、しかしもたらされた知らせはやはり衝撃的なもので ――

異世界転生FT。本編完結済。番外編連載中。
そこそこ恵まれた、でもこれといって突出したところのないモブとして生まれ変わった ―― と自分では信じている主人公と、彼女に心を救われ唯一絶対と思いながらも、自衛のため身についた毒舌が邪魔をしてなかなかそれが伝わらない魔法使いサマのすれ違い気味なラブストーリー。
本編よりも、エギエディルズ視点で再構成された補足のほうが楽しいです(笑)


「フィエスタ・シレンシオ(ムーンライトノベル)」
 http://novel18.syosetu.com/n0147co/

無限の荒野と呼ばれる不毛の地にある、不思議なほど豊かな村。そこで15年に一度行われる奇祭。
恐ろしいほどの沈黙の中で訪れたのは……

諸口正巳さんの短編。5000字と、この方にしてはかなり短いです。
「声無しの情景」という企画に合わせて書かれたものだそうですが、いつも安定の諸口さん仕様です(笑)
No.6627 (読書)


 2015年03月01日の読書
2015年03月01日(Sun) 
本日の初読図書:
4047298840おこぼれ姫と円卓の騎士 恋にまつわる四行詩 (ビーズログ文庫)
石田リンネ 起家一子
KADOKAWA/エンターブレイン 2014-09-13

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レティーツィアの侍女候補となった王立騎士学校に通うアイリーチェには、9歳年上の恋人がいる。
もともと一桁年齢の少女しか愛せないという特殊な性癖の持ち主であった彼、オルランディ伯爵家のウィラードが、14歳のアイリーチェを恋人に選んだのは周囲をおおいに驚かせたものである。
二人の出会いは偶然から。しかし偶然も四度重なれば運命となる。
とは言え最初は打算の付き合いであった。いい加減、結婚して子供を作れとせっつかれるのに困ったウィラードと、踊り子上がりの異国の孤児で奨学金だけでは生活費が足りないアイリーチェ。お互いの利害が一致して、アイリーチェが卒業するまで期間限定の偽装恋人を演じるという契約で始まった関係だった。しかし手紙のやり取りやデートのふりを重ねるうちに、互いの互いに対する気持ちがじょじょに変化していって……
初々しい二人の恋物語「葡萄姫の恋愛未満」をメインにした、恋愛をテーマにした短篇集。

通し巻数が振られていないうえ、途中でCD付特装版とかまで挟まっててややこしいこのシリーズ。刊行順番と作中時系列は10冊目、9.5巻と表現するのが妥当でしょうか。
番外短篇集と銘打たれていますが、本文280Pぐらいのうち210Pが、8巻「伯爵の切り札」で登場した葡萄色の髪の騎士見習いアイリーチェと真性ロリコン騎士ウィラードとの、出会いから始まる恋物語に費やされております。
本編ではまだあんまり活躍のないアイリーチェも、今回は主役でしっかり内面まで描写されていました。彼女が一見素っ気なく見えるのは、そういう性格だというのもあるけれど、母国語がソルヴェール語ではないせいもあったんですねえ。なるほど納得です。
そしてこのシリーズは、女性が本当に格好良い!
レティも見事な『女王様』ですけれど、アイリーチェも幼い見た目とは裏腹に、自分の意志と努力で未来を切り開く男前な少女でした。
ウィラードの命を自分の手で救いたいからと、剣を持って戦いに行くことを選択する彼女は、立派な『騎士』でしょう。
……ってか、ウィラードは完全に「貴族という身分だけで騎士を名乗ってる弱い男」だから「自分が守る」とリーチェに認識されてますけど、その誤解は解けたんでしょうか。……ってか、誤解だよね? 文官的な能力以外も、それなりにちゃんと備えてるよね??

ウィラードがノータッチ! な紳士へんたいなことと、まだ恋を知ったばかりの十四歳のカップルですから、そのお付き合いが実にスマートかつ初々しいものになってるのも良かったです。
今どき素であーーーん止まりとかvv
逆に新鮮で微笑ましいわ! 爆発しろ!!>ウィラード

ちょっと意外な展開を見せたのは、銀狼公アウグストのお話。
四人の妻たちとの関係がビジネスライクなのは判ってましたが、私はてっきり彼ってなんだかんだ言ってレテを……だと思ってたんですよ。でも今回のデュークの解釈を読んで、ああなるほどとすごく納得できました。

アストリッドのお話は、まあこういう感じでしょう。
むしろレティの妹姫が、やっぱり男前で格好良かったです。

最後の話では、レティがデュークを見初めた経緯が回想シーンとして語られていましたが、そこに恋愛感情がまったく挟まれていないあたり、本編から完全に切り離されたお遊び番外という感じでした。いくら手が空いたからって、レティが本気でああいう時間の使い方をするとは思えませんし。何かの企画で書かれた短編だったのかな?

ともあれ、レティに恋愛が絡むのは複雑な気分になる私でも、これは充分楽しく読めました。読まなくてもストーリー上ほとんど支障ない巻ですけど、読んでおくと本編がよりいっそう面白くなるんじゃないかと思います。
No.6626 (読書)


 2015年02月26日の読書
2015年02月26日(Thr) 
本日の初読図書:
B00L4XSMCKおこぼれ姫と円卓の騎士9 提督の商談
石田 リンネ 起家 一子
KADOKAWA / エンターブレイン 2014-07-13

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デュークの『未練』を断ち切るためにも、早々に結婚というカードを切ることに決めたレティーツィア。
考慮した結果、夫候補に上げたのは南国ナパニア国の第六王子ソレス・デ・ラ・イグレシオだった。彼は庶出で十二歳までを王宮の外で育ち、現在は臣下としてナパニア海軍に務めているという。つい先日、若干二十歳にして、他国にも名高い勇敢なる大艦隊バリエンテの総司令官に就任したというから、そのネームバリューは申し分ない。血筋の低さなどはどうでも良い。むしろナパニア国への忠誠心など持っていられては困る。女王の夫としては、生家への情など持たず、他国のであれ王の配偶者としての名誉に満足してくれる程度の男がちょうど良い。
そんな次期女王としての公の部分ばかり条件にあげるレティに、デュークら周囲の騎士達はそれぞれ複雑な反応を見せる。
ともあれまずは、見合い ―― の、前段階となるお互いの顔合わせをしなければならない。
レティはデューク、アストリッド、クレイグの三人を連れて『公のお忍び』でナパニア国へ向かう。ナパニア王家と交わした計画では、ナパニア王室御用達の商家“野うさぎ商会”の商船に乗って、海上で『偶然』バリエンテ艦隊と遭遇し、総司令官であるソレス王子と『意気投合』した結果、ナパニア港まで送ってもらうという手はずになっている。
ところが濃霧のせいで、レティ達の乗る船とバリエンテの三番艦が衝突事故を起こしてしまう。
野うさぎ商会の副船長ザイーツと三番艦の艦長がもめているところへ颯爽と現れたのは、夕焼け色の髪に琥珀色の瞳を持つ青年だった。
純白の軍服に身を包んだ奔放で人懐っこい彼 ―― ソレス王子は、どこか騎士王の生まれ変わりの一人、失恋王ルートガーを思わせて、レティに強烈な印象を残す。
無邪気で好き勝手に動いているようでいて、部下達にしっかりと目を配り、厚い信頼を寄せられている。自分がお飾りの提督だという自覚を持っていて、きちんとその役割を果たしている。
いつも相手にしている人間とは異なるその言動に振り回されながらも、レティは相手の有能さとその心のうちに隠した寂しさを見つけてゆく。
ところがナパニア港に到着する寸前、ソレスの船室から麻薬が見つかるという事件が起きた。即座に見合いは中止となったが、しかしレティはソレスの今後については楽観していた。彼が麻薬など使う人間ではないと、周囲の者は口を揃えて証言するだろうし、いくら後ろ盾がないとはいえ王族は王族。内々に事件はもみ消され、なかったことになるだろうと。
ところがソレスはろくな弁護士もつけられないまま、公開軍法会議にかけられることとなって……

シリーズ9巻目は、レティの縁談というかなり重要な展開だったんですが。
……なんか本編と関係ないところで交わされる、ちょっとした会話の方が個人的にツボにはまりました(笑)
アストリッドがデュークに、嫉妬ってどういう感情なのかと質問して説明されたあとで、ソレス王子の行動を見て「……これが嫉妬」「新しい体験おめでとう、良かったな」ってやりとりしてるとか。
レティに誕生プレゼントを贈られた艦長さんをうらやましがるアストリッドに、「お前の誕生日っていつなんだ」ってデュークが訊いて、「騎士学校の入学申込のときに慌ててねつ造したので、覚えてないんです」「虚偽申請を堂々と暴露するな」って淡々と話しつつ、後で書類を調べてやると約束してるとか。
最初の頃はアストリッドの才能に複雑なものを抱いていたデュークなのに、いつの間にやらすっかり仲良くなっちゃってvv
そしてそれを(生)暖かい目で見守っているクレイグがまたグッジョブ! というか。

心配していた恋愛方面については……レティが徹頭徹尾朴念仁だし、デュークが鋼の理性の持ち主なので、すれ違いのドロドロ展開には拍子抜けなほどならなかったのが、良かったのか悪かったのか(苦笑)
とりあえず夫候補のソレス王子が、ルートガー似のやんちゃかつ魅力的な存在だったので、これはこれでレティと並び立っても悪くないなと思わせるところが、作者様の憎いところ。
この作者様は、いったい何パターンの「イケメン」引き出しをお持ちなのか。

前巻で、ある意味ことの発端でありながら、結局は出てこないままに終わってしまった「人身売買で売られて行方不明になった、美しい声で歌う白髪紅眼の少年」についても、きっちり伏線として回収してくるし……本当にさすがですねえ、このシリーズは。

実は私、正直言うと裁判モノが苦手です。テレビドラマとかで法廷の場面が出てくると早送りで飛ばしたり、事前にそう言うシーンがあると判ってたら、あえて見なかったりするタイプです。
なので今回は公開軍法会議になった時点で「あ、これヤバイ展開かも」と思ったんですが。そこはさすがのレティですね。負ける勝負はしないというか、負ける要素があるうちは勝負しないというか。見事に懸念事項を潰しまくってくれたので、心安らかに読むことができました。

結局、今回は「夫」についての問題は解決しなかったものの、「多少の減点は怖くなくなった」という新たな強さを身につけたレティ。
……そう言えば、王の間の面々に助力を求めることもなかったですし、着々と成長して行くさまが本当に格好良いですね。
ナイツオブラウンドも、残すところあと四人。もう一人ぐらい女性枠があっても良いと思いつつ、次はどんなタイプのイケメンが引き抜かれるのか、まだまだ楽しみでなりません。
……ってか、まさか最後の二人は兄上達だったり……しないよね……?
No.6622 (読書)


 2015年02月25日の読書
2015年02月25日(Wed) 
本日の初読図書:
「兎偽姫の憂鬱(小説家になろう)」〜感情の爆発
 http://ncode.syosetu.com/n2745cb/

兎人族の国から狼人族の国へ輿入れすることになった姫は、その婚姻を厭うあまり自害して果てた。
残った王族たちは妹の死体に異世界から召喚した魂を無理やり押し込み、逆らえぬよう声と足の自由を奪って偽の姫を仕立てあげた。相手は野蛮な狼族。さっさと殺されてしまえば、ケダモノの王に貸しが作れるからと、そう言って。
そうして兎偽(うさぎ)となり、生贄のように輿という名の箱に詰められ狼族に送りつけられた元OL ―― 葛方或架(くずかたありか)を迎えたのは、精悍という言葉も足りないほど迫力に満ちた、目付きの鋭い皇帝だった。
しかし彼は或架の状態を見ると、息を呑みすぐに医者の手配をしてくれた。柔らかなベッドに寝かされて、鼠族の侍女に世話される待遇は、兎族の国で受けたものとは雲泥の差で。
或架はその扱いに感謝し、どうにか自分が本物の姫ではないのだと伝えようとするのだが、姫の記憶がうまく馴染んでいないため、言葉はなんとか理解できるものの読み書きはおぼつかない。そのため皇帝とのやりとりには、どうしてもすれ違いが生じてしまい ――

異世界に拉致され踏んだり蹴ったりな目にあった挙句の強制結婚から始まる、ほのぼのラブコメ。連載中。
一話目にけっこうな残虐描写があるので、そこのところ注意です。狼族の国に輿入れしてからは、むしろ溺愛系に行くんですけど。
ってか、見た目はすげえ怖いのに、「私は貴方の花嫁ではありません」って手紙をもらって、リアル orz になってる皇帝が(笑)

そしてものすごく重要なところで、一年近く更新が止まっていることに気が付いて、私が _| ̄|○
読み始める前に気づこうよ自分……


「異世界転生して「ようこそ○○の町へ!」という町人Aになれたけど、ラストダンジョンがすぐ目の前にあった件(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n3581ck/

生まれ変わる際に神様から願いを三つ叶えてやると言われ、大好きだったゲームの世界で『高いコミュ力』を持ち『町を案内する仕事』をしたいと答えた彼。
願いは叶い、町の入口で「ようこそ○○の町へ!」と旅人に声をかける町人Aになれたのだが……そこには重大な問題があった。
彼が生まれ変わった町は、ラストダンジョンがすぐ目の前にある、いわゆる勇者様御一行が訪れる「最後の町」であった。つまり旅人などまったくやってこない。
今日も暇を持て余し、町の入口で立ち尽くす彼に話しかけてきたのは……

タイトルが全てを語るネタ短編(笑)
ラストの牧歌的微笑ましさが、いい感じの読後感です。
No.6619 (読書)


 2015年02月24日の読書
2015年02月24日(Tue) 
本日の初読図書:
4048691899ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
三上 延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-12-25

by G-Tools
かつて太宰治の『晩年』を手に入れるため、栞子に重傷を負わせた田中敏雄が仮保釈された。判決が出るまでのわずかな間とはいえ、あの男が野放しになっているかと思うと大輔は気が気でない。しかも店には田中敏雄の名で「晩年をすり替えた猿芝居を知っている」という手紙が届く。
しかし手紙が投げ込まれた日には、田中はまだ拘置所の中でアリバイがあった。いったい何者が、どういった目的で手紙を送りつけてきたのか。
情報を得ようと接触した大輔に、田中は意外なことを依頼してくる。
彼が執拗に狙った栞子のアンカット本は、田中の祖父が所持していたものではなかったのだという。何者かから送られてきた匿名のメールによると、田中嘉雄が持っていた『晩年』は一部のページが既に切り開かれており、太宰の署名もないとのことだった。しかし見返しにはより希少な直筆の書き込みがなされているらしい。田中はビブリア古書堂の正式な仕事として、その本を探しだして欲しいと言った。見つけてくれたなら、きちんと代価を支払って売ってもらえるよう交渉するから、と。
栞子には申し訳ないことをしたなどと、殊勝な事を言われてもとうてい信頼できるはずがなかったが、大輔はひとまず依頼の内容を栞子に伝えた。すると彼女はその『希少な書き込み』の内容に興味を覚えたようで。それにこのまま放置しておけば、田中は自力でその本の持ち主を見つけ出すかもしれない。そうすれば再び以前のような強行手段をとることも予想できた。ならば自分達の手で先に所在を確認し、そして持ち主に気をつけるよう警告するしかないだろうと結論する。
そうして二人は四十七年前の、『晩年』を手放した頃の田中嘉男について調べ始めた。すると様々な事件が浮かび上がってくる。
太宰治の研究家の家で起きた、古書の盗難。田中嘉男が関わっていると思しきその事件で、盗まれた本を取り戻したのはビブリア古書堂の初代店主 ―― 栞子の祖父だった。しかし彼は犯人や詳細を明らかにしなかったため、事件に関わった人々はそれぞれ今でも心に傷を残している。栞子の祖父はどうして、そんな中途半端な真似をしたのか。
多くの人達に当時の様子を訊き、やがてたどり着いた真相は、田中敏雄や大輔、栞子らの祖父母が複雑に関わりあっていて ――

シリーズ六冊目は「走れメロス」、「駆込み訴へ」、「晩年」の太宰尽くし。
大輔さんと栞子さんのじれじれな恋愛模様が一歩進展したと思ったら、今度は話が一番最初に戻って来ました。
一巻のメイン軸だった、田中敏雄と太宰治の『晩年』アンカット本を巡る第二弾。
……一巻目では「もう証明しようもない」と、二人だけの秘密として葬られたはずの大輔の出生の秘密が、もはや確定事項として関係各所に語られております(苦笑)
そして男爵改め田中敏雄は、相変わらずどう転ぶか判らない危うさを秘めていて、話を引っ掻き回してくれるし。
何しろプロローグからしていきなり、事件が終わって大輔さんが入院してるところから始まってますからね……大輔、いったいいつ誰に何をされたの!? とハラハラドキドキしながらページをめくる羽目になりました。
って言うか、スタンガンで殴られまくっても気を失えない大輔さんの丈夫さは、良かったのか悪かったのかヽ(´〜`)/

ああそれにしても、260ページ目あたりからの展開は楽しかったですねえ。
詳しくはネタバレになるので伏せますが、田中敏雄ももうちょっと違う形で栞子達と出会えていたら、いい仲間内になれていたんじゃないかと、運命の巡り合わせが惜しまれました。

そして最後の最後に大輔が気がついた、新たな『疑惑』がまた重たく。
そもそも大輔さんって、けっこう頭良いんですよね。けっして情報収集と肉体労働だけの筋肉馬鹿ではなく、ある程度の謎は自力で解いちゃうし、栞子さんの本のウンチクとかもきちんと記憶しておける頭脳を持ってます。
そして栞子さんにも言えない秘密をまたひとつ胸の奥にしまい込んだ彼は、彼女をきっちり支える甲斐性のある、良い男になっているとしみじみ思いました。
後書きによれば、シリーズはもう1〜2冊で終了とのこと。
栞子さんと大輔さんの未来が、どうか幸せな形で終わって欲しいと心から願います。


「駈込み訴え(青空文庫)」太宰治
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card277.html

ビブリア〜6巻目で大輔さんが「面白そうだと素直に思った」とか言っていたので、試しに読んでみました。
役人のもとに駆け込んで、己の師を金で売る。そんな弟子の訴えが延々と綴られた、のたうち回るような告白文。
それは憎しみゆえだったのか、愛ゆえだったのか。弟子自身にももう判らない。けれども彼は、師を売ることを選んだ。選ばざるを得なかった。そんな彼の名は……という短編です。
最後のオチをビブリア〜で知ってしまっていたのは、良かったのか悪かったのか。まあ、ある程度の知識さえあれば、他の弟子たちの名前が出た段階ですぐに気付くんでしょうけどね。
……そしてこんな昔から、BLはあったのかとか思ってしまったり(苦笑)
No.6615 (読書)


 2015年02月23日の読書
2015年02月23日(Mon) 
本日の初読図書:
「Clump,Clump(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n7466bd/

かつて無色透明だったという海は、いつの頃からか赤錆や乾いた血を融かしたような色に染まっていた。
大地には鉄と銅しか存在せず、人びとはやせて錆びた土地を、努力と根性とあやしい〈錬土術〉で畑に変えた。とは言え金属粉から有機質培地を生み出す術は、現在では失われてしまい、農地として使える土は今あるだけしか残っていない。
ヴォード大陸の〈第五ワンダーランド〉は、世界に5つしかないクイーン・アリスの治める街のひとつだ。
クイーン・アリスは魔法使いの子孫の子孫。金属を操り、機械をペットのように手懐け、電気を生み出すことさえできるという。無人トラム、電動アシスト銃、グリフォン。文明の利器のほとんどは、クイーン・アリスの一族によって作られた。おかげで〈ワンダーランド〉は他の都市よりもいくぶん豊かで、そして少しだけ安全だ。
世界には〈スナッチ〉と呼ばれる、なんでも食ってしまう化け物がいる。犬も猫も鳥も豚も、もちろん人間も、ときには石や鉄まで喰らっては、己の内に取り込んで進化してゆく、あらゆる生物の天敵。そんな百害あって一利なしの存在から、〈ワンダーランド〉は張り巡らされた塀とそこに設置された重火器によって守られているのだ。
不思議なことに、〈スナッチ〉は一度でも奴らを殺した人間を敏感に見分ける。一度でも〈スナッチ〉を殺した人間は、生涯〈スナッチ〉に狙われ続けるのだ。故に彼らはひとところに留まることなく、ヴォード大陸を放浪し、〈スナッチ〉を駆除し続けることとなる。そんな男たちを、いつしか人々は〈ヴォーパル〉と呼んだ。
ソロはそんな〈ヴォーパル〉の一人だった。年齢は三十前後だと思うが、自分でもはっきりしたところは覚えていない。二十八か九かもしれないし、三十一か二かもしれない。長い放浪の末に、余計なことは忘れてしまうのが得意になった。
それでもここ数年のことは、比較的よく覚えている。第二ウェンガンという都市で5年ほど暮らし、その後流れ着いた第五ワンダーランドでもう2年暮らしている。どちらもヴォーパルには寛容な都市で、届けさえ出せば、彼らが定住することを認めてくれていた。
ソロはこの街で、まっとうな生活を営んでいる。ガンショップ〈ネコのタルト〉の店番として、パートで働いているのだ。給料は安いが〈スナッチ〉と戦わずにすむ、平穏な暮らし ――
最近はその生活に、ちょっとした変化が現れた。男たちに絡まれているのを助けたのがきっかけで、店に少女が出入りするようになったのだ。ネイダと名乗る14歳の彼女は、金髪をツインテールに結っており、まるで人形のように愛らしかった。ソロのことを気に入ったらしく、やたらとつきまとってきては過去のことなどを詮索してくる。
その日も同じように顔を出したネイダだったが、ソロが以前第二ウェンガンにいたと聞いて、急に顔色を変えた。
「――その町。『なくなった』って、言ってた」
「なくなったんだって、滅びたんだって。〈スナッチ〉にやられたの!」
それは誰も知らないはずの、規制された機密情報で ――

商業作家 諸口正巳さんの以下略。無料で読めます。もともとは投稿作品で書籍化の話も出てたらしく、クォリティはかなり高いです。完結済。
えー……このところだいぶこの方の作品にも慣れてきたよなあ、とか調子こいてました。ごめんなさい _| ̄|○
作品紹介にまったく誇張がありません。開幕五分でスプラッタ。大人も子供も、カッコ良いと思った人間も、次の瞬間ゴミのように死んでゆきます。
血と肉と臓物と金属で出来たクリーチャーが縦横無尽に暴れまくり、銃火器で武装したオヤジ達が対抗しては返り討ちに合いまくり。
……でもまあ、ソロとネイダは無事だったし、読後感は悪くなかったかな(笑)
ソロの女王たらしっぷりがまたvv

ただ作品の根底に「不思議の国のアリス」がモチーフとして使われているのですが、実は私ちゃんと読んでないんですよね。過去何度か挑戦したものの、どうもあれ苦手で……それもあってかいろんな所が、正直良く判らなかったです。まあそこらへんはフィーリングで(苦笑)

個人的には、最終章でサウンドが見せた愛妻家な面にギャップ萌えvv
そしてブラッドとソロの関係ってどういうことだったのか、謎が一部残ってるのがちょっと残念。
No.6612 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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