2015年12月18日の読書
2015年12月18日(Fri)
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本日の初読図書: 今回の御用は紀伊(和歌山県)国造の祖たる天道根命(あめのみちねのみこと)からのものだった。 やはり神力を削がれ、もはやかつての記憶すら薄れつつある天道根命は、己が何者であったのかすら見失い始めていた。そんな彼が、夜ごと見る夢の中に、現れる女性がいるのだという。 逆光で、姿ははっきりと見えない。何を言っているのかも、ほとんど判らない。ただ「忘れるな」と告げる言葉だけが、はっきりと聞き取れた。そんな彼女は、髪に簪を挿している。そしてそれと同じような品を、天道根命は持っていた。神倭伊波礼比古命(神武天皇)からこの国を治めるよう命じられた頃には手元にあったそれが、しかし誰の物であったのかを、天道根命はもう思い出すことができない。 どういったいきさつで己の手に渡ったのか、あるいは夢の女性が自分に贈ったものなのか。 しかしあの女性のことを思い出そうとすると、底知れぬ恐怖が湧き上がってきて、呼吸すらもがままならなくなる。失った記憶のその向こう、「忘れるな」と言われながら忘れてしまったその過去に、いったい何が隠されているのか。 神として社に祀られている以上、神としてふさわしくあらねばならない自分が、このように訳の判らない状態のまま全てを忘れてゆく訳にはいかない。 だからどうか、この簪の持ち主を見つけ出し、この恐怖の理由を明らかにして欲しい、と。 そう願う天道根命だったが、良彦は2600年も前の出来事を調べることの困難さを思うと同時に、本当に真相を明らかにすることが天道根命にとって良いことなのかどうかと迷う。事実が判ったとして、それがより天道根命を苦しめる結果になるのではないかと。 迷いながらも調査を開始した良彦は、そこで意外な人物に再会することとなる。高校時代の野球仲間だった大野達也は、神武の東征で討伐された、名草戸畔(なぐさとべ)の頭が葬られたという神社の息子だったのだ。しかし彼は、古い資料を調べることにばかり夢中な父親と、折り合いが悪いらしい。 さらに今回は、なんだかんだといつもは協力してくれる、もふもふペディアこと黄金の様子が、なんだか妙で ――
四巻目はいつもの短編集形式ではなく、一冊でひとつの御用を取り扱ったお話でした。 いやまあ、その御用に様々な神様や人々の思惑が複雑に絡み合っていたので、一概にひとつの御用とも言いがたかったのですが。 今までに比べて、だいぶ神話関係のあれこれ、失われた歴史を紐解く的な方向に踏み込んでいっていて、個人的にはすっごく面白かったです。 こういう、正史の裏に隠された、本当はこうだったんだ……というタイプのお話、大好きです。 2巻目で楽しい活躍を見せてくれた、オオクニヌシとスセリヒメのご夫婦も再登場★ なるほどなあ、あの理不尽とも言える無抵抗に近い国譲りの裏には、そんな事情があったのかあ……と思うと、なんだか感慨深いです。オオクニヌシも、けしてチャラい浮気男なだけじゃなかったのねww オオゲツヒメとスサノオのエピソードなんかも絡まってくるし、これはやっぱりある程度、古事記の知識を持ってから読むと、より楽しめると思います。
ずーーーっと最初から引っ張られ続けていた謎のひとつ、本来御用人を務めるはずだった存在とのいきさつも明らかになりましたし。あとは語り部の正体ですね! ……そう言えば今回は、いつも入ってる語り部のパートがなかった(びっくり)
そしてこの「本来御用人になるはずだった人物」の事情を知ったいま、前の巻が非常に読み返したいのですが。 次に図書館に行った時、借りられてないと良いなあ……
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No.7284
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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