2015年05月19日の読書
2015年05月19日(Tue)
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本日の初読図書: 食べることが大好きで、町を歩きながら様々な店から漂ってくる料理の匂いを嗅ぎ分けるのが得意な女子大生、秋山結月。ある日、芳醇なコーヒーの香りに誘われて辿り着いたのは、大学の裏手にある古びた小屋だった。そこはもともと薬学部の芳香研究部の部室だったのだが、廃部になった今では神門千尋という男子学生が私物化しているらしい。香道宗家の跡取りだが家出中だという偏屈者の彼は、その小屋の中に様々な香料や精油などを持ち込んでいて、結月にはそれらの入り混じった香りが、まるで色とりどりの花畑のように感じられた。 数日後、友人から謎の手紙について相談を受けた結月は、便箋にほのかな芳香が残っていることに気が付いて、香りの専門家である千尋に相談しようと思い立つ。 それをきっかけとして、二人はいくつかの香りにまつわる謎に関わることとなった。 一年前に交通事故で急死した女子高生が、幼馴染の少年に遺した白紙の手紙の意味を探す「一炉 初恋」 神門流香道の門人で大きな寺の住職から、檀家の娘の結婚祝いに贈る香木を選んでくれと千尋が頼まれる「二炉 勝れる宝」 煙草を所持していたと停学処分を受けた結月の妹分が、懸命に隠そうとしている事情を巡る「三炉 君を想う」 目に見えるものだけが、この世のすべてではない。目には見えないけれど、大事なものの方がずっと多い。 香りを通すことで、彼らは目には見えない様々なものへと巡り合ってゆく ――
「神様の御用人」シリーズを書かれてる浅葉なつさんの、一冊もの。 っていうかこれ、続編出てもおかしくない作りだと思うんですが、そのへんどうなんですか〜〜〜?>浅葉先生
内容はほのぼの日常ミステリー……と言い切るには、背景にある事情がかなり深刻だったりもするんですが。それでも殺人とか傷害事件が起きる訳ではありません。 基本的にはお気楽脳天気なワトソン役の女の子と、クールな人嫌い系天才肌の探偵役が、目には見えない『香り』を通して、やはり目には見えない人の心のひだやもつれた想いを解いてゆくお話です。 ついつい理論に凝り固まりがちな探偵役へ、何気ない天然な発言で人の心を教えつつヒントを与えるワトソン役はお約束★
そんな結月が香りから、様々な情景を映像的に感じ取る描写が読みどころでしょうか。 嗅覚って、人間の思い出とダイレクトに繋がってる……って、誰かが言ってましたっけ(BY糸村さん@遺留捜査)
できれば千尋の家庭内の問題とか、千尋から見た結月の印象とかも見てみたいです。 特に最初の方、結月はかなり強引でマイペースなところがあるので、実はちょっと感情移入しにくかったんですよ。でも話が進むにつれて、いつの間にかすっかり受け入れてしまっているあたり、千尋もこんな感じだったのかなあ、と(苦笑) さらに言うなら、香道に留まらずアロマテラピーや香水といった様々な角度から『香り』について積極的に知識を取り入れてゆく千尋にとって、理論なんかまったく関係なく、感性で『香り』を『聞く』結月の存在ってのは、いろいろ複雑だと思うんですよねえ。 こと香りに関しては、千尋は努力のできる秀才で、結月は自分の才能に無頓着で磨くことすら考えない天才なんじゃないかとか。千尋はきっと、結月に対して嫉妬する思いもあるんじゃないかなあ。その鼻と感性を、自分が持てていたら……って。
でも結月の強みは既成観念に囚われない奔放な発想と直感力ですから、理論を学んでしまっては、その持ち味が失われてしまう訳で。 だからこの二人はこのままで、互いに互いの持ち得ない部分をフォローしていくのが正解だと思います。千尋もこの巻だけで、だいぶ丸くなってきてますし、あとは家族との和解さえできれば良いんじゃないかな。
千尋の従兄弟の隆平くんもなかなか美味しいキャラクターですし、いずれは結月を巡っての三角関係とかもあるんじゃないかとか。いろいろと妄想する余地が残されていて楽しい一作でした。
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No.6825
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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