よしなしことを、日々徒然に……
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 2015年02月23日の読書
2015年02月23日(Mon) 
本日の初読図書:
「Clump,Clump(小説家になろう)」
 http://ncode.syosetu.com/n7466bd/

かつて無色透明だったという海は、いつの頃からか赤錆や乾いた血を融かしたような色に染まっていた。
大地には鉄と銅しか存在せず、人びとはやせて錆びた土地を、努力と根性とあやしい〈錬土術〉で畑に変えた。とは言え金属粉から有機質培地を生み出す術は、現在では失われてしまい、農地として使える土は今あるだけしか残っていない。
ヴォード大陸の〈第五ワンダーランド〉は、世界に5つしかないクイーン・アリスの治める街のひとつだ。
クイーン・アリスは魔法使いの子孫の子孫。金属を操り、機械をペットのように手懐け、電気を生み出すことさえできるという。無人トラム、電動アシスト銃、グリフォン。文明の利器のほとんどは、クイーン・アリスの一族によって作られた。おかげで〈ワンダーランド〉は他の都市よりもいくぶん豊かで、そして少しだけ安全だ。
世界には〈スナッチ〉と呼ばれる、なんでも食ってしまう化け物がいる。犬も猫も鳥も豚も、もちろん人間も、ときには石や鉄まで喰らっては、己の内に取り込んで進化してゆく、あらゆる生物の天敵。そんな百害あって一利なしの存在から、〈ワンダーランド〉は張り巡らされた塀とそこに設置された重火器によって守られているのだ。
不思議なことに、〈スナッチ〉は一度でも奴らを殺した人間を敏感に見分ける。一度でも〈スナッチ〉を殺した人間は、生涯〈スナッチ〉に狙われ続けるのだ。故に彼らはひとところに留まることなく、ヴォード大陸を放浪し、〈スナッチ〉を駆除し続けることとなる。そんな男たちを、いつしか人々は〈ヴォーパル〉と呼んだ。
ソロはそんな〈ヴォーパル〉の一人だった。年齢は三十前後だと思うが、自分でもはっきりしたところは覚えていない。二十八か九かもしれないし、三十一か二かもしれない。長い放浪の末に、余計なことは忘れてしまうのが得意になった。
それでもここ数年のことは、比較的よく覚えている。第二ウェンガンという都市で5年ほど暮らし、その後流れ着いた第五ワンダーランドでもう2年暮らしている。どちらもヴォーパルには寛容な都市で、届けさえ出せば、彼らが定住することを認めてくれていた。
ソロはこの街で、まっとうな生活を営んでいる。ガンショップ〈ネコのタルト〉の店番として、パートで働いているのだ。給料は安いが〈スナッチ〉と戦わずにすむ、平穏な暮らし ――
最近はその生活に、ちょっとした変化が現れた。男たちに絡まれているのを助けたのがきっかけで、店に少女が出入りするようになったのだ。ネイダと名乗る14歳の彼女は、金髪をツインテールに結っており、まるで人形のように愛らしかった。ソロのことを気に入ったらしく、やたらとつきまとってきては過去のことなどを詮索してくる。
その日も同じように顔を出したネイダだったが、ソロが以前第二ウェンガンにいたと聞いて、急に顔色を変えた。
「――その町。『なくなった』って、言ってた」
「なくなったんだって、滅びたんだって。〈スナッチ〉にやられたの!」
それは誰も知らないはずの、規制された機密情報で ――

商業作家 諸口正巳さんの以下略。無料で読めます。もともとは投稿作品で書籍化の話も出てたらしく、クォリティはかなり高いです。完結済。
えー……このところだいぶこの方の作品にも慣れてきたよなあ、とか調子こいてました。ごめんなさい _| ̄|○
作品紹介にまったく誇張がありません。開幕五分でスプラッタ。大人も子供も、カッコ良いと思った人間も、次の瞬間ゴミのように死んでゆきます。
血と肉と臓物と金属で出来たクリーチャーが縦横無尽に暴れまくり、銃火器で武装したオヤジ達が対抗しては返り討ちに合いまくり。
……でもまあ、ソロとネイダは無事だったし、読後感は悪くなかったかな(笑)
ソロの女王たらしっぷりがまたvv

ただ作品の根底に「不思議の国のアリス」がモチーフとして使われているのですが、実は私ちゃんと読んでないんですよね。過去何度か挑戦したものの、どうもあれ苦手で……それもあってかいろんな所が、正直良く判らなかったです。まあそこらへんはフィーリングで(苦笑)

個人的には、最終章でサウンドが見せた愛妻家な面にギャップ萌えvv
そしてブラッドとソロの関係ってどういうことだったのか、謎が一部残ってるのがちょっと残念。
No.6612 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
paoまま  2015/02/24/17:46:45 [HOME]
毎日がメリー・バッド・エンドを書いた人ですよね。
うんうん、確かに容赦ない文章でござりました。
私がウブい女学生だったら途中で読むのをやめ、記憶からデリートしようと努力したかも(笑)

あの後カナリヤがどうとか言う話しをまこっちゃんがご紹介下さったと思うのですが、あれにも手を出しかねておりました。

容赦ない書きっぷりの方ではございますが、小説としては深みを感じました。

なので、「おすすめリスト」に乗っけとこうっと♪

 
No.6613
 
神崎真  2015/02/24/18:10:33
ええ、その通りです。ついでに言うなら、あの「人が突然虫になる」という「世界時計と針の夢」を書かれた人でもあります。
……ってか、ええっ!? ままさん、毎日がメリバ読まれてたんですか!?
そりゃ、あの作品は、諸口さんにしてはグロ度は控えめですが、その代わり本当に容赦ないR18かつ暴力表現が出てくるので、慣れない方にはかなり要注意な作品だと思うんですが(汗)
それこそうっかりウブい女学生が読んだら、トラウマになること必至ですよね……

毎日がメリバに比べると、「謳えカナリア」はだいぶましな方だと思います。
少なくとも流血表現は控えめですし、死人も少なめです(いないとは言わない)。
個人的に諸口作品のオススメは「ヤクザな退魔」ですかね。私が最初に読んだ諸口さんのお話であり、かつほのぼのしてます。少なくとも当社比。
そしてこの Clump,Clump は……精神的な鬱度は低めですが、血飛沫飛び散るグロ度合いはかなりのものです。読まれるなら、どうかご覚悟の程を。

……私は死なせる予定で設定した自キャラに思い入れてしまい殺せなくなった過去があるので、諸口さんの容赦無い書きっぷりは、ある点で尊敬しています。
でもご都合主義でもハッピーエンドが、読んでいて体力使わなくていいのも確かなんですよねえ。
ううむ、複雑だ……
 
No.6614
 
ちなつとも  2015/02/25/09:01:30
諸口さんの設定、すごいすよね。なにその心をくすぐるスチームパンク。紹介を読むたびうずうずしてたっすけど、webならと読み始めてみたっす。

・・・あ、大丈夫そう。

自分的にダメなのは、鬱展開のようで。すぷらったは、リアルに脳内再現するわけじゃないので。
しばらく読んでみるっす!
 
No.6616
 
paoまま  2015/02/25/10:21:29 [HOME]
あらら
ちなつともさんもお読みになられるとの事なので・・・
「おばちゃんも読まんとイケンじゃろう〜♪」

>「世界時計と針の夢」を
あららそうなんじゃ、諸口正巳氏の著作でしたか。
実はねぇ散々「ムカデはありえん!」と言ったにもかかわらず、この本には興味を引かれまして買おーかなーとしたのですが、もう絶版なん?
本屋さんで見つけられずAmazonさんを見ても中古本しかないのよ〜
なので今はAmazonで買うしかないんでしょう。
ん?中古本しか無いってことは、いつまでもそのままにしていたらいつの間にか出品も無くなるかもしれないって事かしらん?

絶版になった本の中古品は基本焦って買った方が良いんかね?

 
No.6617
 
神崎真  2015/02/25/17:45:46
なんと、きみも読み始めたか!>ちなつ
私の紹介文が、あの面白さを少しでも表現できてたのなら嬉しいんだが。諸口さんの作り出す独特の世界観は、どの作品も真似できない深みというか、格好良さがあると思うんだよ。

> 自分的にダメなのは、鬱展開のようで。すぷらったは、リアルに脳内再現するわけじゃないので。
あー、なら、この Clump,Clump は大丈夫だと思うよ。たぶん。あとカーニバルあたりも行けるんじゃないかな。逆にカナリアはグロ度は低いが鬱要素が高いかも。そしてクロマカキリは、悪いことは言わん、やめとけ(苦笑)
私は文章読む時、脳内で映像再生するタチなので、すぷらったー描写はけっこうキツイ。そして名前のあるキャラクターが死んでいくのはもっと辛いッス。
実はこの Clump,Clump も、先に一番最後のページを流し読みして「これなら大丈夫そう」と確認してから読み始めたチキンです。
諸口作品はなあ……ほんとに時々、あらゆる意味で容赦がないからなあ……(遠い目)

pao ままさま>
ふふふふふ、着々と諸口読者が増えて、ファンとしては嬉しい限りですvv
この諸口さんというかたは、読む人を選ぶ癖がある作風という以前に、なんというか出版社運が微妙というイメージがあるんですよね……書籍化の話が途中でなしになったこともあったりとか。最初にデビューした出版社が早々に潰れてしまった時は、当時流通していた作品を大急ぎで購入したものでした。結果としては、むしろそのあたりは古本でけっこう流通してるんですが、ただ世界時計〜に関しては、作者さんいわく純粋に売れなかったらしくって。出版社は健在なのに絶版状態かつ古本も良い状態のものは少ないのが残念です。
なので、

> 絶版になった本の中古品は基本焦って買った方が良いんかね
このへんの見極めは厳しいところですよね(しみじみ)
私だって、私だってお金と置き場さえあれば、あれもこれも流通している間に、いくらでも買い占めておくのに〜〜〜っっっ《o(><)o》
 
No.6618

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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