2015年01月19日の読書
2015年01月19日(Mon)
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本日の初読図書: 世界中の釘とネジとぜんまいとバネと、そして歯車が生産される町〈ベクス〉。人々の生活は蒸気機関とわずかな電化によって支えられており、そのため街全体が熱と湿気を帯びている。良質の部品を求めて、世界中の職人が集う町。人々は朗らかで楽天的で、町立治安維持軍に守られたそこは、治安も良くごく平和な町だった。 ―― 10年前までは。 きっかけが何だったのかは、誰にも判らない。今のベクスでは当たり前のように人々が妄想を見て、また前触れもなく昆虫へと変わるようになった。通りには〈クマバチ〉と呼ばれる町軍兵が闊歩し、妄想で正気を失った人間を、パイルバンカーで容赦なく殺処分してゆく。 かつて一級の時計職人だったシリル・スワンプは、カマキリ人間になった双児の弟と蝿になった母親と共に、下町のボロアパートで暮らしていた。一家の収入は、シリルが工場で簡単なラベル貼りをする仕事だけに頼っている。生活は楽ではなかったが、この町に住む誰もが、多かれ少なかれ同じような暮らしをしている。自分だけが不幸なのではないと、シリルはそう思っていた。 その日もいつもと同じように仕事を終えたシリルは、工場長から無断欠勤している同僚へと届け物を命じられる。しかし彼 ―― アルハ・ダーリーのアパートにいたのは、巨大な一匹のムカデだった。アルハも虫になってしまったのだ。届け物を置いて帰ろうとしたシリルは、アパートを出ようとしたところで、手押し車を押す双子の姉弟に出会う。彼らが運んでいたのはバラバラ死体 ―― と見えた、瀕死の〈クマバチ〉であった。 ギャング達のもとで監禁され、拷問されていたという彼は、手足をもぎ取られ脳に穴を開けられながらも、まだ生きていたのだ。 追手が迫っていると焦る姉弟を、シリルはクマバチとともにアルハの部屋へとかくまう。ムカデになったアルハには、もう部屋もベッドもいらないのだから、文句は言わないだろう。 そうして助けることとなったクマバチは、何故かシリルのことを知っていた。常に一言も喋らないはずのクマバチは、アンスルライン拾壱號と名乗り、シリルにこう問うたのだ。 「シリル。時計の夢を見たよね?」と。 そうして彼は続ける。 「あなたを守るのが、自分の任務だ」、「シリルなら、壊れた世界をもとに戻せるかもしれない」と。 その出会いが、シリルと世界の運命を、大きく動かしていくこととなって ――
ネット上で公開されている「謳えカナリア」と話がリンクしているというので、遅まきながら購入してみました。既に新刊での入手は厳しい模様。ただし Kindle 版はあるし、古本も状態は微妙ながらまだあるようなので、読むだけならなんとか。 で、もって。 キーキャラクターとなるシリルさんは、〜カナリアだと「オーシャン(海)」でしたが、こちらでは「スワンプ(沼)」でした(笑) スターシステム的に同じキャラが登場しているというよりも、平行世界の同じ存在だそうで、彼らの間をつなぐのが金属の蜂=〈アーカイヴ〉の〈さまよえる針〉=アンスルライン拾壱號らしいです。
見返しの作者コメントいわく「殺人鬼系のキャラは忘れよう」「あまり人が死なない話にしよう」というのが書き始めのコンセプトだったそうですが……そこはやっぱり諸口作品(苦笑) 血飛沫が飛びまくるし、まさかこの人が……な人が容赦なく死んでゆく(^ー^;;) 下巻でそうなるだろうことはある程度予想していましたが、上巻であの人が死んだってことは、下巻ではあの人が危ないな……とりあえずシリルとアンスルは無事……だと予想してるんですけど、大丈夫かなあ……諸口さんだしなあ(汗)
世界観はやはり独特で、カナリア〜よりももうちょっと時代が下がった、産業革命頃っぽいスチームパンクなファンタジー。 元第一級時計士で、一見すると(作者いわく)海外ドラマのアメリカ人のモブキャラみたいな疲れたおっさんのくせに、中身は有能なシリルが格好良いです。後半に行くに従って、どんどん懐が広くなっていきつつ、無精髭伸びてゆくのがオヤジ好きにはたまらんですvv そこにがっちりした熊みたいなごつい体格の、でも朴訥とした一途なタイプの人外が絡んでくるとか、良いですね。倍率ドンvv
グロ展開は多めですし、虫人間とかも出てきますが、それでもこの作者さんにしては描写が控えめだと思うのは、私が訓練された諸口作品読者だからか(笑) 少なくとも、変な奇声は少なめだったと思います。あと内臓描写(どんなや)。
さて下巻はどんな展開になるのかな……(ドキドキ) とりあえず現在生死不明なカマキリ人間の弟と、ムカデになったアルハの今後が気になりつつ。
あ、あと、↓こちらのツイートを読んで、買ったは良いが怖くて読めなかったフジミさんの、最終巻に手を出せそうな気がしています。
■モロクっちさん: あっ、そういえば、フジミさんなんですけど。 https://twitter.com/m_molockchi/status/556834383793881088
今年は諸口作品を読もう月間に突入か?? ……しかしこっちは1巻から読み返さないと、完全に話を忘れてるな……(遠い目)
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No.6517
(読書)
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この記事へのコメント
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paoまま
2015/01/20/13:38:32 [HOME]
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こんにちは。 まこっちゃんの紹介文を読んだら、脳内に大友克洋氏のメモリーズと宮部みゆきさんのドリームバスターが展開されました。
しっかし、前触れなく昆虫に変わっちゃうのですかっ? ・・・怖すぎデス せめて人間以外の哺乳類でお願いしたいわぁ。 蜘蛛とかムカデとかありえんじゃろー!
パオちゃんは猫であるから愛しいのであって、パオちゃんがムカデになっても愛せるかと言われたら・・・ 無理じゃろー! 頼むよパオちゃんムカデにだけは絶対なっちゃイケンよ。
まこっちゃんもムカデにゃなっちゃイケンよ、せめてカブトムシとかテントウムシとかになってね。 私も頑張って、そうじゃねぇ・・・地を這う系じゃなくて空飛ぶ系を目指すわ。
まこっちゃんの本紹介文を読んだだけじゃけど、なんか惹かれる本ですね。 コレって「怖いモノ見たさ」でしょうか。
私は諸口正巳という作家さんを知りませんが、全体的にまこっちゃんが書いているように、なんちゅうかグロい描写がお上手なのでしょうか。
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No.6518
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神崎真
2015/01/20/21:20:24
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ドリームバスターは読んだことないですが、大友克洋は、ああ確かにそんな雰囲気がします! ってもAKIRAの原作ちらっと読んだことぐらいしかないけど(苦笑)
なんというか、退廃的で陰鬱で、でもそんな中でも友情やら人と人との絆があって……そして容赦なく現実が襲ってくるのです…… 私も虫は苦手なので、たとえ空飛ぶ系でも、虫にはなりたくないです〜〜( T _ T ) しかし諸口さんはクリーチャー好きの虫好きな方なので、虫人間の描写にはかなり力入ってます(笑) 巨大ムカデのアルハなんて、ご本人が描かれたイラスト見る感じ、足を入れなくても長さ太さが30センチ定規ぐらいあるみたいです。カマキリ人間の弟くんは、完全に等身大だし。絶対、現実にいたら逃げますね。脱兎です。
> 私は諸口正巳という作家さんを知りませんが、全体的にまこっちゃんが書いているように、なんちゅうかグロい描写がお上手なのでしょうか。
なにしろ作者さんが自身の公式サイトに書かれている紹介文からして、 > ・渋いオヤジキャラがいっぱい > ・展開や結末が鬱 > ・世界観がハードモード > ・グロい > ・へんな効果音 > そんな小説を書く作家 ですからねえ(苦笑) 作品によっては、耐性のない方が下手に読まれると、トラウマになりかねんレベルです。 個人的おすすめはサイトで公開されている、「ヤクザな退魔」の旧作版ですかね。これはグロ度が低めだし、読み切り連作なので気軽に読める感じです。それで大丈夫そうなら、小説家になろうにある改訂版を読んでみて、さらに「ベイス・シャドウズ」とか「謳えカナリア」と進んでいくのが良さげかな。 他にもたくさん作品をWEB公開しておられますが、グロ度や鬱度が半端ないので要注意です(^ー^;;) あ、ちなみにサイトには「超絶渋系狂気都市」で検索すればたどり着けますので。 うちの「参考資料」からもリンクを貼らせて頂いてます。 なんというか、すっごく力のある文章と世界観をお持ちの方かと。
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No.6519
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paoまま
2015/03/07/21:58:09 [HOME]
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まこっちゃわわわーん、こんばんは。 今三次デス。 今日は所要により、一人JRに乗って三次に帰って来たんだわ。 芸備線内で「世界時計〜」の上巻をムカデちゃんアルハのアパートでアンスルさんの手足をくっつけたところまで読みました。
あれだけ「ムカデはありえんじゃろー!」 って散々言ったのに・・・
面白いよーーーコレ! 気のせいかじっと見つめてくるムカデが可愛く感じる程じゃ。 何でじゃぁぁ??? 私の脳内でムカデがかなり可愛くデフォルメされている気がします。 不思議じゃぁぁーー、ムカデなのに。
断言します!私の人生の中で、これほど「ムカデ、ムカデ」とムカデを連呼した事は初めてでしょうて。
もうね、ムカデが気にならん位おもろいです。
まこっちゃん♪私がムカデを散々こき下ろしたのに、諸口押しをして下さって有難うございます。 これからも作品紹介で、私が「ありえんじゃろー!」って言っても、「コレはいける!」とお思いになったらガンガン押して下さいネ〜!
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No.6641
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神崎真
2015/03/07/22:21:35 [HOME]
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おやおや、週末にままさんからの書き込みとは珍しいですね。 ……と、思ったら、今回は電車での移動でしたか。乗車時間でついに「世界時計〜」を読み始められたとは、それはめでたいvv
> 気のせいかじっと見つめてくるムカデが可愛く感じる程じゃ
そうなんですよ! 台詞なんて全然ないのに、その動作がすべてを語るムカデ、アルハ・ダーリー!! これほどムカデを魅力的に書けるのは、諸口さんの他にいないと思います(笑) あ、ちなみに諸口さんご自身が描かれたアルハとシリルのイメージイラストがあるので、↑上の [HOME] にアドレス入れときますね。 私は読了後にこの絵を見て、「思ったよりアルハ大きかった……(汗)」と思いました。 他にもアンスルとか、clamp〜のソロとサウンドとか、かっこいいイラストがいっぱいあるので、諸口さんの手ブロは見ててイメージが膨らみますvv そして私はツイッターとやら言うものをやってないし、画面の見方もよく判らないんですが、諸口さんのツイッターだけは毎日チェックしに行ってます。 「世界時計〜」を読み終えたら、次は是非「謳えカナリア」をおひとつどうぞ★<諸口押し
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No.6643
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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