よしなしことを、日々徒然に……
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 2015年01月13日の読書
2015年01月13日(Tue) 
本日の初読図書:
4022643757鬼譚草紙 (朝日文庫)
夢枕 獏 天野 喜孝
朝日新聞社 2006-09

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清和天皇の母 染殿の后が病に倒れた際、加持祈祷を行うべく呼び出された、時の高僧 真斉聖人。几帳を挟んで祈祷し、される間柄でしかなかった二人を出会わせたのは、一陣の風だった。ほんの一瞬かいま見えた姫の姿に、真斉聖人は激しい恋情をつのらせて ―― 「染殿の后、鬼のため※[#「女+堯」、第4水準2-5-82]乱せらるる物語」
三善清行や菅原道真と時を同じくする才人、紀長谷雄は、冷静なその見た目とは裏腹に、負けず嫌いの感情に満ち溢れた男だった。道真の詩はきらびやかなばかりで本然が感じられず、清行の詩は自らを誇ろうとする我が見えすぎる。何するものぞと思っている。そんな長谷雄が夜そぞろ歩きながら詩を練っていると、闇の中から鬼が語りかけてきた。その鬼は、まさしく長谷雄が思っていた通りの言葉で、道真と清行をこき下ろした。そうしていま長谷雄が作っているその詩の続きを、交互に作ってゆくことで、勝負しようと持ちかけてきて ―― 「紀長谷雄 朱雀門にて女を争い鬼と双六をする語」
後の世に、冥府の役人としても働いていたとの伝説を持つ、官人 小野篁。その文才は遠く唐にまで伝わるほど。また他にも幽冥界のものとも付き合いがある、年若い美しい女が常に傍らにいる、といった噂までも彼にはつきまとっていた。もう二十年も前から同じことが言われており、眉目秀麗なその姿は、一見すると若くも年経たようにも見え、年齢が判らない。仕事にはそつないが、人付き合いが悪く、宮中で親しく語らう人間などまるでいなかった。ただ一人、高藤卿だけはさまざまなことが重なって、ときおり言葉を交わすようになっている。そんな高藤卿は、ある日のこと神泉苑の一角で、姿の透けた女と親しげに話している篁の姿を見かけた。女が空気に溶けるように姿を消すと、なんとあの篁が、はらはらと涙をこぼしている。高藤卿は驚き何も言わぬままその場を離れたが、後日篁から不思議な話を聞かされる。それは許されぬ恋に身を焦がす、悲しい男女の辿った壮絶な物語で ―― 「篁物語」

3日ぐらいかけて読了。
ロングセラー「陰陽師」シリーズの夢枕獏と、独特な世界観を持つイラストレーター天野喜孝のコンビによる、妖しい平安絵巻です。
後書きに曰く、「何かHな譚(はなし)をやりたいねえ」「もう、ものすごくえげつないやつを」「こわいなあ、どんなものになるかなあ」「やりましょう」「やりましょう」そういうことになった。みたいな感じだったらしく(笑)
確かにもう、読んでいて良いのかこれは……と思うぐらい、男女の絡みが出てきます。しかしけして、下品で直接的な書かれ方ではない。いかにも平安時代っぽい文体を使い、簡素でありながらも独特のエロティシズムが感じられます。
鬼に魅入られ翻弄される、染殿の后の心の内に隠された真実。
鬼がつれてきた美しい女が、長谷雄を誘惑するその色香。
そして禁断の恋に命を懸ける、年若き恋人達の抑えきれない情熱。
天野氏の挿し絵も、普通の書籍からは考えられないほど多数ちりばめられており、非常に豪華な作りとなっております。

なお、全体のほぼ半分を占めている「篁物語」には、道摩法師なる人物が出てきますが、この人って「陰陽師」の蘆屋道満なのかなあとか思ってみたり。巻末解説では別人として扱われてますけど、性格と言い物言いと言い、どうもあの人っぽくて。時代的なものがどうかはよく判りませんけど、あのシリーズの道満さんなら、いつの時代からいつの時代まで生きてても、なんも不思議はなさそうですし(笑)
篁さんと高藤卿の関係も、ちょっと晴明さんと博雅さんに感じが似てるvv

ちょっと難点だったのは、文中に和歌や漢詩がたくさん引用されてるんですが、内容の解説がない部分も多く、ところどころ意味が判らなかったです。まあそこらへんは、つらっと雰囲気だけで流してしまえば良いのかもしれませんが。

ところで染殿の后のお話なんかは、確か元ネタが今昔物語かなんかにあったエピソードだと思います。同じ元ネタでむか〜〜し、青樹さんという方がマンガを描かれたことがあって、その話がけっこう印象に残っていたり。「妖怪妖恋譚」というコミックに収録されているので、ご興味がおありの方は読んでみられるのも一興かと★
No.6503 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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