よしなしことを、日々徒然に……
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 積録消化
2014年12月30日(Tue) 
録り溜まっていたあれこれの中から、アニメ「グスコーブドリの伝記」と、映画「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」を視聴。
どちらも映画公開時から気になっていて、テレビ放送を待ち望んでいた作品です。
……シャドウゲームの方は、尺の関係で128分のうち40分ぐらいも削られていたのが、残念でたまりませんが(しょぼん)

ええと、まずは宮沢賢治原作「グスコーブドリの伝記」。

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バンダイビジュアル 2013-01-28

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うん……映像はとても綺麗でした。はるか昔に公開された、アニメ「銀河鉄道の夜」でもたいがい感動したものでしたが、さすがにレベルが違います。背景の美しさ。幻想的な光の乱舞。奇妙なスチームパンクっぽい機械の数々。宮沢ワールドの不可思議なイメージを、ひとつの映像として表現した、そこのところは大きく評価できます。
……でも、原作を一度読んだきりでうろ覚えだった私ですら、これは違うと思いました。

※以下、辛口なので、記事をたたみます。

視聴後、改めて原作を読み返して、やっぱりこのアニメは、一番大事なところを描いていないと思えてなりません。
「グスコーブドリの伝記」は、飢饉で両親を失い、妹を人さらいに奪われ、住んでいた家すらもが都会の商人によって工場に変えられてしまった木こりの少年が、厳しい現実に翻弄されながらも努力して一歩一歩、自分の信じる道を歩んでゆくお話ではないでしょうか。
そうして働きながら懸命に勉強し、彼は自分を生かしてくれた人々に恩を返し、そして同じ苦しみを味わう人々がこれ以上出ないよう、仲間と協力して研究を重ねます。やがて一人前の学者となった彼は、その発明によって人々を救う。そして報われるかのように、妹と再会し、かつて彼をこき使った商人の部下から両親の墓の所在も教えてもらい、貧しさに別れるしかなかった山師の赤ひげとも再び交流を取り戻す。
そう、彼は確かに幸せになったのです。
幸せになったからこそ、彼は決断することができたのではないでしょうか。この幸せを分かち合い、大切な人々をこの先も守りたいのだと。
だから、彼は師や仲間達と力を合わせ、再び訪れた冷害に「自分達の力で」立ち向かいます。
そこにファンタジックな要素が入り込む余地はありません。
彼は確かに幸せだった。世間に愛され、世間を愛し、だからこそ世間と協力して冷害に立ち向かった。
彼はけして、自分の不幸に酔ったり、安易なヒロイズムに身を任せた訳ではない。
このアニメは、妹がさらわれる経緯や家がテグス工場になる場面などへ非現実な演出をした分、ブドリが現実に適応できない、異界に片足を突っ込んだ人物に見えてしまいます。そもそも台詞に「ハイ」が多すぎる。誰に何を言われても、ひたすら「ハイ」。唯々諾々と、ただただ状況に流されているようにしか見えません。
そうしてラスト。これでは誰も、ブドリの決意を知ることはない。彼が何を思い、そうして何を為したのか、知る者は誰一人いない。むしろ彼が決意をしたのか、そのことすらもが怪しい。
田舎からやって来た、真面目だけれど世間知らずで非社交的な子供が一人、ある日ふいっと姿を消した。
この終わり方では、そんなふうに思われても仕方がないでしょう。
重ねて言いますが、映像はとても美しい。テグス工場の場面も、緑に輝く森や田畑も、本当に見事でした。
様々な台詞やエピソードは、原作をかなり忠実に取り込んでいますし、学校の授業の場面では同じ宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を朗読してみたりと、各要素は実によく出来ているのです。
それだけに、惜しい……あの浅草十二階っぽい建物の場面なんかは必要ない。都会のスチームパンクっぽい描写ももっと少なくて良い。人さらいをファンタジックな存在にするのもやめて、そこのところにブドリが都会で成長し成功してゆくエピソードを入れてくれれば……っっ

……宮沢賢治にそこまで思い入れがない私でもこうなのだから、普通のファンにはかなりアレだったんじゃないでしょうか。そして原作を知らない人は、きっとラストの意味がよくわからなくて、置いてけぼりだったんじゃないかと<事実、横で見ていた母などは「何? 何が起きたの??」って言ってました
メディアミックスで原作をアレンジするのは製作者サイドの自由かもしれませんが、それならそれで、その作品単体として理解ができるようにするのが、メディアミックスにおける最低責任だと思います。
このアニメは、「原作のストーリーを知っているけれど、内容には思い入れのない、きれいな映像を喜べる人」だけが楽しめるんじゃないかなあ、と。

そんなふうに思えてしまったのでした。
とりあえず、映画を見た人は原作も読んで欲しいと切に思います。

■宮沢賢治 グスコーブドリの伝記
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1924_14254.html

……長くなったので、シャドウ・ゲームの感想は、また明日。
No.6474 (映像)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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