よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年12月19日の読書
2014年12月19日(Fri) 
本日の初読図書:
4104424013仮想の騎士
斉藤 直子
新潮社 2000-12

by G-Tools
時は1755年のパリ。フランス革命を三十年後に控えた、貴族政治爛熟の時代。
国王ルイ15世の従兄コンティ親王を主君に持つ騎士デオン・ド・ボーモンは、さる密命を帯びてロシアに送り出された。半フランス派であるロシア宰相の目をかいくぐり、女帝エリザヴェータにフランス国王の親書を届ける密使の護衛という任務である。しかし頼りだった密使は早々に逃げ出してしまい、取り残されたデオンは一人でロシア宮廷に潜入する羽目になった。
もともと彼は、騎士服を着ていてさえ、しばしば女性に間違われるほどの繊細な美貌を備えていた。そこで宰相の目を誤魔化すためにドレスを着用。令嬢リア・ド・ボーモンと名乗ると、首尾よく女帝の朗読の教師として雇われることに成功し、なんとかその任務を果たすことに成功した。
しかしそのようないかがわしい方法を取ったことは、故郷で待つ恋人クリスティーヌに対する、強烈な後ろめたさをもたらした。少年の日、騎士として出世するためパリに出てきて以来、手紙で言葉を交わすことしかできない、愛しい乙女クリスティーヌ ―― 彼女にこのような姿を知られたくないと、デオンは激しい羞恥を抱く。
しかし彼の想いとは裏腹に、ロシアに建てられることになったフランス大使館に、デオンは女性リア・ド・ボーモンとして赴任せよと、コンティ親王から命じられる。女帝と懇意であるからというのが、その理由だった。ところがそこへ、今度はルイ15世の愛妾であるポンパドゥール夫人から、騎士デオン・ド・ボーモンを大使館書記に任ずるという命が下る。二つの命令系統からの異なる指示に、デオンは困惑した。どうやら裏にはデオンの学問の師でもある、謎の男サンジェルマン伯爵の存在があるらしい。ポンパドゥール夫人とコンティ親王は、ルイ15世を挟んで政治的に対立しているのだが、サンジェルマン伯爵の取り成しがあったらしく、その関係でいろいろと混乱しているらしい。
デオンがロシアではリアという女性であることを知らないポンパドゥール夫人は、凄腕の騎士である彼の腕を見込んで、ロシア宰相を暗殺しろと命令してくる。
難題に困りながらも、ロシアに発ったデオン。
そしてそれを見守りながら、裏では何やら思惑があるらしいサンジェルマン伯爵。
やがてデオンはロシアの地で、恋人クリスティーヌの危機を耳にして ――

実在の人物、女装騎士であり凄腕スパイでもあるシャルル・ジュヌヴィエーヴ・ルイ・オーギュスト・アンドレ・ティモテ・デオン・ド・ボーモンを主役とし、やはり様々な有名実在人物と歴史事実を絡めた、『あの事件の真相は、実はこうだった』系のお話。あ、ファンタジー要素(錬金術)が入ってます。
私は最初このデオンという人物の存在をまったく知らずに読み始め、途中で「え? もしかして実在の人なの??」とネットで調べ、びっくりしました。
80年を超える生涯の内、前半生を男性として、後半生を女性として生きたって……そんなことが可能だったのか、当時のヨーロッパは(汗)

ともあれ。
表紙絵とあらすじ紹介やライトな文章から、純粋でちょっと不幸体質な青年の、爽やかかつコメディタッチな成長物語かと思っていたら、後半どんどん雰囲気が怪しくなってゆき、ラストはまさかの主役悪堕ち(汗)  ←ネタバレにつき要反転。

いやうん…… Wikipedia とかで調べてみると、どうやらデオンという人物は、けっこう性格が悪かったというのが通説らしく。それを踏まえるとこの終わり方は、むしろ納得がいくんですよ。若く素直で純粋だった若者が、いかにして後世に伝えられるような人物像になっていたのかを語ったお話として、これはありだと思います。
しかし予備知識なしに読んだ身としては、ちょっと裏切られた感が半端なかったッスね……(遠い目)

そもそも当時のヨーロッパ(特にフランス)関連の世界情勢や人物が、あんまり説明なしにガンガン出てくるので、気軽に手にとったのに、読んでいて脳内がぐーるぐーる( @ _ @ )
ほんの端役かと思っていたキャラまで、実はルイ15世を暗殺しそこねて処刑された人物だったとか、判るかーーーーっっ(ノ`□´)ノ 彡┻━┻。・;゜・。+ 

面白かった点としては、フランスをメイン舞台としているためか、イタリア訛りが関西弁で表現されています(笑)
文章も現代に立って書かれているため、当時はなかった技術や物品が例えとして使われており、かなり読みやすいです。
そしてデオンの老若男女を魅了する、無敵の美しさvv

先日ドラマ「雪之丞変化」で美輪さんの性別を超えた美しさを堪能したこともあり、デオンのそれもなんだか共通するものを感じました。
「女装の凄腕騎士(スパイ)」なんてキーワードに心惹かれる方は、とりあえず「シュヴァリエ・デオン」「ジャック・カサノヴァ」「サンジェルマン伯爵」「ダヴィンチの洗礼者ヨハネ」「フランツ・アントン・メスメル」「ポンパドゥール夫人」「ルイ15世」「カリオストロ伯爵」あたりについて検索してから、手にとってみられることをおすすめします。
No.6446 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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