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今年のお正月特番で放送された、ドラマ「桜ほうさら」。原作をようやく読めたので、さっそく積録から引っ張り出してきました。
■正月時代劇「桜ほうさら」|NHKオンライン http://www.nhk.or.jp/drama/housara/
主役の笙之介さんは玉木宏。印象的には悪くありませんが、ちょっと歳を取り過ぎかなあと思いました。 あとたった二ヶ月で、月代があんなに伸びるのはさすがに無理があるんじゃないかとか(笑) 村田屋治兵衛が六角精児だったのは、意外といい感じ。東谷さまが北大路欣也なのは、もう流石の貫禄ですね。 まあ、全体的に年齢高めだったことを除けば、キャスティングに大きな不満はありませんでした。衣装や小物、画面処理などもこれといって違和感はなく。和香ちゃんの「それ御高祖頭巾ちゃう」以外は、むしろ長屋のこっ汚さが想像以上だったり、桜が実に美しかったりと、期待を上まわる出来だったかと。 ただ問題は、肝心のストーリーというか。 私はかなり早いうちに「これは二次創作。あくまで原作とは別物」と割りきって楽しく視聴しましたが、母などは「ここはこうじゃない、ここも違う。これじゃ台無しじゃない」とか文句つけまくって、途中離脱しちゃいました。
なんというかそれぞれの場面、台詞や行動はそこそこ忠実に取り上げているのに、エピソードの順番が入れ替えられていることで、それぞれの心の動きや裏に隠された陰謀などが、全然違った流れになっています。 特に東谷様なんて、あれはあれで渋格良いけど、原作の根本を成していた『情』ってもんが、綺麗さっぱりなくなってたもんなあ……
おまけにあれだけのページ数を1時間半に収めるため、笙之介が奔走させられる日常の事件サイドをばっさり全部カット。謎の代書屋を追う流れと、和香さんとの交流だけが残されて、そこに何故か早々に登場してしまった押込御免郎さんとの友情が入ってきたりとかして(苦笑) あれじゃあなんで長屋の人達や村田屋さんが、あんなに笙之介さんに親身になってくれるのかが、今ひとつ謎になっちゃうんじゃないかなあ、と。 村田家さんなんて暗い過去もなく普通に良い人になっちゃってたし、長屋の人達は十把一絡げだし。
しかし原作を忘れ、ひとつの独立したお話として見た場合、これはこれでアリだったと思います。 兄 勝之介のキャラクターは薄くなってしまったというか、叱責されて泣いてあっさりフェードアウトかよとも思いましたが、代わりに御免郎さんの方がしっかり描写されていました。おそらくは辛い過去を持ち、ひねたところもあったけれど、それでもそんな彼が笙之介と出会い、彼に作品を手直しされることで激高しつつも感じ入るものを持った。そうしてそれ故に笙之介を罵倒し、死んだ宗右衛門を侮辱し、それでも重要な手がかりを残して ―― 最期まで、笙之介が書き改めた物語を懐の中に持ち歩き続けた。 そしてそんな彼との間に通じるものが確かにあったからこそ、笙之介は東谷様から提示された仕官の道を蹴り、自ら江戸の町で暮らしてゆくことを選ぶ。 東谷様は江戸留守居役として、お家のため時にその手を汚す。それは紛れもなく彼なりの正義。 そして笙之介は笙之介なりの正義を貫くべく、自身の意志で道を選択する。 周囲から守られ、いわば流され、与えられた環境の中でそれなりの幸せを見つけた原作の笙之介とは、また違った方向での格好良さがありました。 ……ちゃんと、自分の力で事件の解決に貢献してましたしね(苦笑)
判りやすい格好良さ、男の友情や恋模様、前向きに生きる爽快なラストを楽しみたいのであればドラマ版を。 人の心の複雑さや、単純には割り切れないあれこれ。様々な人々と交流していく中での人情話や、のったりした読後感を楽しみたいのであれば原作版を。
そんなふうに楽しみ分ければ良いのかなあと思いました。
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No.6374
(映像)
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この記事へのコメント
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paoまま
2014/11/19/12:03:24 [HOME]
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見てないヨ〜 放送があった事すら、まこっちゃんが記事に書いて下さって初めて知ったくらいザンス。
そちらには広島では視聴出来ない局の放送であったんじゃないのっ?って恨みを言いそうになりましたが。 NHKですか・・・ そりゃあ気付かなかった私が悪うございました。
1月1日だったのね〜 あうう・・・元旦は田舎の嫁には忙しい一日なんよね〜(涙)
玉木宏氏で年がいっているとは、主人公の年はかなり若いのかっ? いつものことながらまこっちゃんの解説が上手いので見たくてうずうずしてきましたが、原作を読んでいない身としては、まずは小説からでしょうか。
>これは二次創作。あくまで原作とは別物 と割り切って見たまこっちゃんと、あの母上のやり取りが面白いですね。 母君は突っ込みを入れるタイプなのですね(笑)
なんか想像出来てニコニコしてしまいましたデスじゃ。
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No.6376
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神崎真
2014/11/19/22:53:04
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ああ、ままさん見損なっておられましたか。 後から放送に気が付いてしょぼんとなることって多いですよね。私も十年以上前にNHKで「茂七の事件簿 ふしぎ草紙」ってのやってたと、ついこの間知って歯噛みしております。 第三シリーズまであって、全25話ですよ? 茂七親分を主役に原作が『本所深川ふしぎ草紙』、『かまいたち』、『幻色江戸ごよみ』、『初ものがたり』、『堪忍箱』ですよ!? 見たかった〜〜《o(><)o》
「桜ほうさら」の主人公は21歳。ぴっちぴっちの若侍です。 玉木宏も年取ってるとは言いませんが、それでももう三十半ばですからねえ。若さゆえの眩しさがあふれる笙之介さんには、ちょっと(苦笑)
> 母君は突っ込みを入れるタイプ や〜、そりゃあもう、うるさいですよ? やれ「この人じゃあ素軽くて」とか「こんな年寄りじゃあ」とか「あの人の**なところが台無し!」とか、どんな原作付きドラマでも文句のつけまくり。 こっちは楽しんでるんだから、気に入らないならよそ行ってくれよ。静かにしてて下さい、といつも思ってます。 おかげでどれだけの番組を、穿った目で見るように洗脳されてしまったことか……(遠い目)
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No.6378
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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