よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年08月02日の読書
2014年08月02日(Sat) 
本日の初読図書:
4796688218玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社 2012-02-10

by G-Tools
東京へ出張した田口先生が、深夜に公園で死体を発見。別れたばかりだった白鳥を追いかけて訴えたところ、彼はなぜかいきなり死体の足を持たせ、表通りまで運んでから110番通報した。彼がわざわざそんなことをした理由は……「東京都二十三区内外殺人事件」
売れないお笑い芸人を集めた正月用の特番撮影現場で、人が殺された。ブロックを積んで作られた仮設迷路の中で死んでいたのは、唯一売れっ子だった芸人上がりの司会者。彼は多くの人間から恨まれており、少なくとも現場には動機のある人間として、付きまとわれていた女性ディレクター、元相方のAD、同じく元相方で芸人にしがみついている男の三人が居合せた。その誰にもアリバイはなく、設置されたカメラにも怪しい人物は写っていない。果たして彼はどうやって殺されたのか。デジタル・ハウンドドッグこと加納達也が、犯人を追い詰めるために利用したのは……「青空迷宮」
桜宮科学捜査研究所の設立に伴い、DNA鑑定データーベース・プロジェクトことDDPが立ち上げられた。データーベースの根幹となるサンプルを、医療現場から提供してもらうという画期的なシステムである。その案件第一号として逮捕されたのは、通り魔として面識のない女性を殺したとされる、フリーターのゲーマー馬場だった。半年近くも雪の中に埋まっていた女性の死体に被害者以外の血液が大量に附着しており、そのDNA型がDDPに記録されていた彼のものと一致したのだ。現在の検査方法でDNAの型が重なる確率は四兆七千億分の一。地球の人口は七十億人だから、まず間違いはないという。しかしどこか引っかかりを覚えた加納が捜査を開始してみると、馬場は殺された女性の夫が務めている会社と東城医大が共同研究している、治験の被験者になっていて……「四兆七千億分の一の憂鬱」
桜宮市でヤクザが立て続けに自殺する事件が起こっていた。みな同じ竜宮組系列の幹部クラスで、遺書を残して焼身自殺をしている。遺体は黒焦げで、人物同定はデンタルチェック、すなわち歯の治療記録の照合で行われていた。しかし桜宮でのデンタルチェックは、手書きのチャートと目視のみで行われる簡単なものだ。そして竜宮組は現在非常に羽振りがよく、幹部が自殺する理由など考えられない。そこで加納は、近々オープンするAiセンターのセンター長 田口に連絡を取り、焼死体を画像診断にかけるよう依頼した。その結果は……「エナメルの証言」

チーム・バチスタシリーズのスピンオフと題されていますが、キャラクターも時系列も完全に一致しているので、せいぜい「外伝」とでも称したほうがいいのではないでしょうか。
体裁としては、玉村警部補が桜宮市で加納警視正の携わった事件を取りまとめるため、高確率で巻き込まれていた田口先生の元へと協力要請にやってきて、愚痴外来で珈琲飲みつつ過去の事件について改めて振り返っていく形です。
「〜二十三区内外〜」は、「イノセント・ゲリラ〜」の中で触れられている、田口先生が偶然死体を見付けた事件。文庫版ではちゃんと本編に組み込まれているらしいですね。
……しかし前の晩にこんな事件に遭っているのに、何事もなかったかのように会議に参加していた田口先生がよっぽど大物なのか、それとも単に医者として死体に慣れているだけなのか……(汗)
なおこの作品はミステリものとしての要素は薄く、謎解きなんかもほとんどなし。いつものように白鳥さんが現在の死亡時診断について問題提起するお話でした。
「青空迷宮」は田口先生も医療現場も関わっていません。作中時系列は「イノセント・ゲリラ〜」まっただ中の2007年11月(※バチスタ・スキャンダルが2005年)。これが一番、短編ミステリっぽかったかな?
加納さんが犯人につきつけた証拠が「んな御都合主義な」と思ったら、あっさりハッタリで苦笑いしたりとか。
「四兆七千億〜」も、比較的ミステリ色が強かったです。時系列は「アリアドネの弾丸」直前らしく、これと次の話は、ちょっと読む順番を間違えたかなあという気もしたりとか。まあ致命的なネタバレはなかったですけどね。
検査方法が正確になればなるほど、扱う人間はそれに頼り切りになってはいけないという話でした。
あと玉村警部補が、ひそかにネトゲにハマっていることが判明したりとか(笑)
忙しい刑事の仕事と、他人と時間を合わせる必要があるネトゲって、両立できるものなんだろうか……?
「エナメル〜」は、一風変わったお話でした。物語のほとんどは「非合法行為を合理化し社会適応する団体」に雇われている死体の歯医者ネクロデンティスト栗田さんの語りで進みます。こういうのをコロンボ式というんでしょうか?
死体の歯を『治療』して、別人のカルテと同じものに仕上げてしまう栗田さんと、その師匠の高岡さん。異なった主義と技術を持つ二人のやりとりと、その結果出来上がる『別人の死体』の完成度の差。そしてそれを見破ろうとする加納さんや東城医大サイドの描写が、交互に出てきます。
栗田さん独特の人生観というか淡々とした語り口調に、気がつくと引きこまれている感じでした。
こちらは「アリアドネ〜」も通りすぎて、「ケルベロスの肖像」にまでかかっているらしいです。

……今回一番のネタバレは、「イノセント・ゲリラ〜」で警察庁に帰った加納さんが、また桜宮市に戻ってくることだったなあ……
あと田口先生がAiセンター長になることも、まだ本編では出てきてなかったんじゃなかったっけ?
まあそっちは、ネットやムック本で既に知っちゃってたからいいんですけどね(苦笑)
そして田口先生がなにか思わせぶりに、「残されたものが頑張らなくては」とか言ってるんですが……「アリアドネ〜」では誰かなんかヤバイことになっちゃう、とかあるのか……?
No.6096 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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