よしなしことを、日々徒然に……
※ 2018年以降の記事は、別ブログの方へUPしています ※
新しいブログへは こちら からどうぞ。



 2014年05月18日の読書
2014年05月18日(Sun) 
本日の初読図書:
「斑の蛇(近代デジタルライブラリー)」高等探偵協會
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904817

DLしたきり放置していたのを、久しぶりに2日ほどかけて読了。
ナポレオンの胸像が乃木大將の像になっていた「肖像の秘密」の続編で、タイトルを見てお判りの通り「まだらの紐」が原作となっています。
探偵王 緒方緒太郎 理學士と日獨戦争帰りの元軍醫 和田義雄さんのコンビは、比較的原作に近い空気を持っているかと。
舞台は日本で、地名も人名も日本風になっているのは、この時代の翻案のお約束★
たとえば、

依頼人のヘレン・ストーナー → 須藤蓮子
義理の父親のロイロット博士 → 高見澤信武
イングランドのサリー州の西の境 → 武藏相模の神奈川縣の都築郡
オパールのティアラに関するファーントッシュ夫人 → 『猫目石の指環』事件の春山の奧さん

他にもインドは南洋、ベンガル砲兵隊は臺灣(たいわん)の守備隊、千ポンドが一萬圓、クロッカスは躑躅(つつじ)といった具合。
まだらの紐というタイトルの元となった「班点のついたハンカチーフ」に至っては「豆絞りの手拭」ですよ(笑)

内容を読んでいてちょっと違和感を覚えたのは、二人の部屋へ押しかけてきたロイロット博士改め高見澤信武が帰った後で、緒方さんが「彼奴が僕等を探偵と間違えるのは實に失敬極まる次第だ」と言っている場面がありまして。……あんたら探偵じゃねえのかよ。緒方さんのことを、さんざん「探偵王」って表現してるじゃん、と思ったのですが。
これはどうやら原文の official detective を、そのまま「探偵」と翻訳しているからみたいですね。
以前にも書きましたが、どうも英語原文では、 official detective は公的な立場にある警察官のことを指しているようです。そしてホームズさんは consulting detective すなわち顧問探偵コンサルティング・ディテクティブだと。
ちなみに私立探偵や興信所の職員は、 private detective 。
ううむ、同じ「ディテクティブ」でもややこしい(−ー;)

あと残念だったのは、夜が更けるのを待っている間、珍しくホームズさんがデレている会話。

「今夜君を連れていったものかどうか、実はちょっとためらっているんだ。危険なことがわかりきっているんでね」
「役に立たないのかい」
「君がいてくれれば大助かりなんだが」
「それならもちろん行くよ」
「ありがたいね」  ※鈴木幸夫 翻訳

これが無いんですよ! っていうか、なんかホームズさんの台詞がよく判らないんです。
誤訳でしょうか??

緒「和田君。實は今夜君を連れ出すことには僕は躊躇するね。確かに意外な危險物があるんだから。」
和「僕が加勢するから可いぢやないか。」
緒「所で一人でも二人でも同じ理由なんだが。」
和「それぢや唯、御供するだけさ。」

和田さんの台詞はまだしも多少近いものがありますが、それでも微妙なニュアンスがコレジャナイ感でいっぱいです。一人でも二人でも同じって、それじゃあ来ても来なくても同じってことじゃん!?
あああ、原作では数少ないホームズさんの優しい言葉が……(しくしくしく)

それに緒方さんが、場合によっては敵の方が返り討ちに合うかもとか事前に言っちゃってしまっているあたり、最後に犯人が因果応報的な末路を遂げる衝撃が薄れる感じがするかなあと。っていうかこれじゃあ緒方さん、最終結果が未必の故意じゃなくて完全な故意になってるよ……最後に何が起きたのかの説明を聞いてる和田さんも、いくらなんでも察しが悪すぎるし……むむむ(−ー;)
なまじ他の部分が原作に忠実なだけに、細かい所が眼についてしまいます。

ラストもホームズさんの一言でさくっと終わっていた原典と違って、2ページほど和田さんの語りが入っています。これを冗長と取るか否か。
原作を知らずにこの話を単体で読むぶんには、これはこれでおもしろいと思います。まだ全集とかが発行されていなくて、初期に翻訳されて続きが出せるかどうかも判らなかった頃の作品だと考えると、これはむしろ読者に対する親切に部類されるのかなあとも思わなくもなく。
それにどうやらこの探偵王緒方のシリーズは、ホームズさん以外の作品も原作にして、緒方さんと和田さんのコンビで解いていく、複数の原作が入り混じったもののようで。実際この本の後半に入っている作品は、明らかにホームズものではありませんし。そういう事情があるから、ラストに書き足しが増えているのかもですね。

しかし複数の原作をひとつのお話にまとめて翻訳してしまうとは、まだ著作権の概念が怪しかった時代とはいえ、大胆なことをしていたんだなあ……

あれ、よく考えたらこの話、タイトルと表紙で思い切りネタバレしてる??(´・ω・`)
No.5837 (読書)

 この記事へのコメントは以下のフォームからどうぞ
Name
E-Mail
URL
感想
2560文字まで

Pass

 
 この記事のトラックバックURL
http://plant.mints.ne.jp/sfs6_diary/sfs6_diary_tb.cgi/201405185837


No. PASS

<< 2014年05月 >>
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

サーチ :



 with Ajax Amazon

 最新の記事
 2014年05月18日の読書

 リンク
 神崎へメール
 私立杜守図書館
 蔵書リスト

 

   

 ブログ内記事検索:
 
 AND OR  


Back to Home...

[管理用] [TOP]
shiromuku(fs6)DIARY version 2.41