よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年02月08日の読書
2014年02月08日(Sat) 
本日の初読図書:
4062635909震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社 1997-09-12

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時は享和二年の夏。岡っ引き六蔵の妹で、一膳飯屋「姉妹屋」の看板娘である十六才の少女お初は、南町奉行所の奉行 根岸九郎左衛門鎮衛に呼び出された。気さくなこの御前は世の中の不思議な話を聞き集めては、「耳袋」という書物に書き留めることを楽しみとしている。そしてお初は幼い頃から何故か、人の目には見えぬものを見、聞こえぬ声を聞く不思議な力を持っていたため、御前に気に入られ珍談奇談を集める手伝いをしているのであった。その日もいつものように、深川で起きたという死人憑きの話をしたのだが、その後、御前はお初に一人の人物を引き合わせた。古沢右京之介という与力見習い。お初と同年代の細い身体に腰の大小が重そうに見える、なんとも頼りなげな若侍である。御前はお初に、しばらく彼を預かって町方の探索を共にやって欲しいと告げた。詳しい説明はなかったが、どうも右京之介は奉行所内でも軽んじられているらしく、お初や六蔵と行動することで、もう少し見聞を広めることを期待されているようだった。困惑しつつも右京之介を連れ帰る事になったお初は、その道中でまたも余人の目には映らぬものを幻視する。それは油問屋丸屋の油樽の中に、幼い子供の死骸が沈んでいる光景であった。話を聞いた兄の六蔵はさっそく子供を殺した下手人を捜しにかかる。やがて浮かび上がってきたのは、深川で起きた死人憑きの噂の張本人、一度死んで生き返ったという吉次という男だった。しかし死人憑きについて聞き集めていたお初と右京之介の前で、吉次は突如狂暴化して暴れ出し、取り押さえられたときには、死後何日も経っていると思われる死体になっていた。ひどい目にあったお初に気晴らしをさせようと考えたのか、御前は彼女を着飾らせとある武家屋敷へと連れてゆく。その屋敷の庭は、百年前かの赤穂浪士の主君であった浅野内匠頭が切腹した場であり、その目印として置かれた庭石が、最近になって夜ごと鳴動するという怪異が起きているというのだった。事実、お初と御前の目の前で、確かに岩はぎしぎしと音を立てて震える。そしてお初は岩の傍らに立つ、侍の姿を幻視した。その侍は「りえどの……」と呟いて消える。その名は吉次が死体に戻る前に呼んだものと同じだった。やがて再び子供が殺される事件が起こる。謎を追うお初達は、次第に一連の事件が百年前に起きた赤穂浪士の討ち入りと、深く関わっていることを確信するようになって……

単行本「かまいたち」に2作ほど収録されていた霊験お初の、正式シリーズ第一作です。っていうか、現在のところ二作目までしか出てないようですが。
設定は少々変えられていまして、まず最大の改変は「直兄さんがいない」に尽きるでしょう。
うん……あの人がいると、便利すぎてあっと言う間に話が終わっちゃうし、せっかくの良い男枠は、どうせなら将来恋愛方向にも発展させられそうな相手の方が良いと理解はできるんですが。そんな訳で新しい相方として、算学好きの見習い与力にして眼鏡の優男、古沢右京之介さんのご登場です。
腕っ節はからっきし。ひょろりと頼りなくって穏和かつ気弱な右京之介さんですが、さすがの記憶力と分析力でお初を見事にサポートしてくれます。超常的な能力で手掛かりを得るのがお初なら、それを元に論理を展開させるのが右京之介さん。どんな些細な言葉尻も逃しません。そして荒事関係は、もっぱら六蔵兄さんと下っ引き達が担当。
あとお初の家庭環境にも大きな変化があります。なんとお初ちゃん、捨て子で六蔵兄さんと血の繋がりがないのですよ。だから年もずいぶん離れている、と。 ……あれ、じゃあ直兄さんも恋愛枠として残しとけたんじゃ……
六蔵兄さんが昔はかなりやんちゃをやらかしていて、パイロット版のように頭の固い四角四面ではないところも地味に変化が大きいですね。お初の異能が大人になってからではなく、子供の頃からちょいちょい現れているため、いきなり変なことを言い出しても受け入れるのが早いですし。
お奉行様とお初達の馴れ初めも異なっていますね。お初が何度か六蔵の捕り物に口を挟んだことで、不審に思ったお奉行様がお初を直々に召しだした結果、すっかり彼女を気に入って、自分が好きな怪奇話を集めるのを手伝わせているといういきさつになっています。
うーん……直兄ファンとしてはちょっと残念、かも(苦笑)

でもって、今回のメインテーマは「忠臣蔵」。
……実は私、忠臣蔵をちゃんと見たことがありません。小説でもマンガでもドラマでも。ドキュメンタリー番組すらほとんど見ていないので、正直ちゃんとしたお話をほとんど知らなかったりします。
それというのも、「忠臣蔵」というものの存在を知る前の子供の頃から、母に「あれは忠義の話なんかじゃない。どこにも再仕官できなかった要領の悪い能なしの残り物家臣が、食い詰めたあげくまわりからそうせざるをえないように追い込まれて、格好を整えるためにやった茶番劇。吉良こそ良い迷惑だ」と言い聞かされて育ちまして。おかげで今さら純粋な目で見て、素直に喝采することなんてできなくなっちゃったんですよ(しょぼん)
そう言ううがった目で見る裏の解釈は、せめてスタンダードな認識を知ってから聞かせて欲しかったッス……>母

まあそんな印象を根底に持っている私からすると、今回のこのお話は、「赤穂浪士討ち入りの裏側を斬新な解釈で!」という衝撃を感じられなかったのがいささか残念でした。
そして幕府や侍の意地といった理不尽によって泥を被る弱者がいるという流れは、同じく宮部さんの作品「幻色江戸ごよみ」の「紅の玉」を思い出させられましたね……己に何の咎もない死人(子供含む)がたくさん出て、世間の歪みに翻弄される人々も多数登場する今回のお話は、読後感が苦く。
救いは右京之介さんの葛藤に解決がついて、将来が明るく開けそうな点ですかね。次の巻で彼がどのように活躍してくれるかに期待したいです。
No.5565 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
paoまま  2014/02/10/14:40:53 [HOME]
まこっちゃーん♪
お初っちゃんの「震える岩」のご紹介有難うございます。
実はまこっちゃんが書いて下さるのを楽しみに待っておりました。

ふんふん
 ウンウン
そうそう
 あははー
はいはい

いつもながら見事な書きっぷり
「まこっちゃんお上手じゃわ〜」
あらすじ紹介は本作を読んでいる人も読んでナイ人も、思わず引き込まれてしまうではありませぬか。
最後の >するようになって…… までガンガン引っ張られ、
「あああ〜そこでとめるのぅ」、もうちょっともうちょっと書いてヨーん、になってしまいました。
まこっちゃんらしい小気味良い文章ですね。
ワンダホーじゃわ。

忠臣蔵については、
「アハお母上、そんな事を子どもにゆうていたのじゃな」
私は正統派(?)忠臣蔵を見て育ち、大人になってから
「松の廊下で刃傷に及んだ時、浅野内匠頭さんはちょっと心を病んどっちゃった」
とか、当時の政治状況など、諸説を色々知ってきたクチなので、忠臣蔵の話はソレはそれでかなり盛り上がるし楽しめます。

ああー今回の記事は実に楽しかった。
一杯書いて下さってホントに有難うございました。

 
No.5573
 
神崎真  2014/02/10/18:52:25
宮部さんの江戸モノの中でも、屈指の有名どころですもんね、震える岩って。
私も読むのが楽しみでございました♪
しかし今回はあら筋まとめがけっこう骨でした。なにしろあちこちで事件が起こりまくり、それらが互いに複雑に絡み合っているから、もう ><
とにかくタイトルの「震える岩」登場と、メイン要素の「赤穂浪士」まではたどり着かなければ……とがんばってみたら、こんな長文になってしまいました(苦笑)

> もうちょっともうちょっと書いてヨーん
これ以上書くと、さすがにネタバレがvv
っていうか、この段階ですでに本の半分ぐらいまで到達しちゃってるんですが。
とにかく情報が多すぎて、これだけの要素がどうやって最後に収束していくのやらと、読んでいて心配になっちゃうぐらいでした。

> お母上、そんな事を子どもにゆうていたのじゃな
もうねえ、うちの母はとにかくひねくれているというか、疑り深いというか。自分は騙されないぞー騙されないぞーーというスタンスを崩さない人でして。
あの人にかかると新選組や水滸伝は「人殺ししかできないテロリスト集団が、上にいいように使われたあげく用無しになったら見捨てられただけ」となりますし、たいていのバラエティ番組は「こんなのみんな、事前に打合せた演出に決まってるでしょ」となります。もちろん、ぐるナイのごちバトなんて、「本当に本人がお金払ってる訳ないでしょ、あんなの信じてるなんて馬鹿みたい」です。
……自分がそう思ってるのは本人の自由ですけど、それを家族や、まだ状況判断の出来ない子供に押し付けるのはほんとにやめてほしいでーすーー(−ー;)
 
No.5578

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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