よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年02月04日の読書
2014年02月04日(Tue) 
本日の初読図書:
4048913778路地裏のあやかしたち―綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)
行田 尚希
アスキーメディアワークス 2013-02-23

by G-Tools
綾櫛(あやくし)横町の奥には大妖怪が住んでいて、幽霊や妖怪に関わる悩み事を解決してくれる。そんな噂を耳にした高校生 高幡洸之介は、駄目で元々と思いつつ丑三つ時に細い路地へと足を踏み入れた。
そこで目にしたのは、ひとりでに祭囃子を演奏する楽器と、言葉をしゃべり酒を酌み交わして宴会する動物達の姿という、摩訶不思議な光景で。そんな路地の奥にあった建物には、加納表具店という看板が掛かっていた。
表具店とは、掛け軸や屏風の表装を仕立てる店のことだ。そこの主だと現れたのは、美しい着物姿の女性。環(たまき)と名乗った。
なんでも表具師の仕事には表と裏の二つがあるのだという。表は普通の表装だが、裏の仕事はいっぷう変わっている。様々な思念を宿しすぎた絵は、世に言う心霊現象のようなものを起こすことがあるのだが、その思念を表具を使って封じ込める。あるいは正しい道筋に戻すのだと彼女は告げた。そして環は伝説とも呼ばれる名表具師として、業界では名を馳せているらしい。
洸之介の悩み事とは、まさしく絵に関わることだった。彼は三ヶ月ほど前に日本画家だった父親を病で亡くした。その父が残した数点の絵が、夜になると動き出すのである。真っ暗な部屋で動き回る絵は気味悪く、ここしばらくというもの、残された母子は満足に眠ることもできずにいたのだった。
環から絵に宿る念の話を聞いた洸之介は、父親はそんなにも生に執着し、無念を残して死んでいったのかと暗澹たる思いを感じた。しかし環は鮮やかな手腕で父の残してくれた、優しくも不器用なその真意を明らかにしてくれる。
そうして彼女はこう提案した。
自分に弟子入りし、その手で父親の残した絵の表具を仕立ててみないかと。
そうして洸之介は、加納表具店へと出入りすることになった。
ところがその店に集まる存在は、天狗の王子にイケメンの化け狸、ギャル系女子高生の猫又や雪女といった、人間世界に馴染みすぎるほどに馴染んだ人ならぬモノたちばかり。
洸之介はそんな彼らと共に、様々な絵にまつわる様々な物語と関わりを持ってゆく ――

「人間の話」「天狗の話」「狸の話」「猫又の話」「狐の話」の五話に別れた短編集の形を取りつつ、全体を通してひとつのお話になっています。
基本的には、何らかの思いが宿ったせいで不可思議な現象を起こす絵が存在し、それを掛け軸や屏風という形に表具したり、あるいは壊れた部分を直すことで、その思いを昇華させてやるというのが、大まかな流れです。あまりおどろおどろしい雰囲気はなく、むしろほのぼのとした読後感の温かい感じのストーリー。
それぞれのお話には、それぞれのキャラ達の過去や思い入れを絡めてあったりもして二度美味しいです。
最初は主役の洸之介の物語で始まり、最終話はキーキャラとなる環さんで締める。中の三話は脇キャラ達がメインとなりますが、彼らもみな個性的で、読んでいて楽しいったら。
個人的には「結婚詐欺もできない駄目狸」こと、残念なイケメン樹(いつき)さんが大好きです。人を騙すのが得意な化け狸たちは、現代の世ではもっぱら詐欺師として生計を立てている。特にどんな美形に化けるのもお手の物なので、結婚詐欺は基本中の基本。できて当たり前というその設定がまず面白い。しかし樹は甘いマスクのハンサムなのに、人が良すぎてなかなか相手を騙しきれない。この女性にだって生活がある、お金だって無限ではないと思うと、どうにも「借金があって」とか「事業を興したいけれど資金が足りなくて……」といった決定的な言葉を口にできないのですよ。そうこうしているうちに、女性達の方から「あなたとつき合えて楽しかったわ。良い思い出をありがとう」って振られてしまうというvv
でも母性本能をくすぐるせいか、「これで美味しいものでも食べなさい」みたいにお小遣いを渡される上、最後は「夢のような時を過ごさせてくれたお礼よ」っていろいろもらっちゃうらしく、ある意味ではこの上なく良心的なジゴロとして大成功しているのではないかと(笑)
あとはカリスマ美容師として名を売っている、河童のジョージさんもイカスとか思う私は、やっぱり面食いなのか……

ともあれ今回は、一冊で綺麗にまとまっているけれど、全体的に各キャラクター達の背景紹介という感じでさらりと終わっていたのが少々物足りなかったかな。語り手が男子高校生ということで、文章がいかにも「ライト」だったのも★ひとつ減。
洸之介の柔軟さというか、人外のモノを受け入れる器の大きさとかもまだまだ片鱗しか見えていないので、これは続編を楽しみにしたいところです。
どうやら環さん達は、洸之介が年を取ってもちゃんと縁を切らずに付き合いを続けていってくれるようなので、そのあたりは安心して読めるところかと。
No.5556 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
paoまま  2014/02/06/17:25:24 [HOME]
>やっぱり面食いなのか
 きゃは、まこっちゃんは面食いザンスか?
活字の世界や映像の世界では、そりゃあ美形がおよろしいコトよ〜
美形万歳です。

駄目狸ちゃん良さげですね。
こんなイツキちゃんに化かされてみたいもんだわ。

浮世はさー、嘘と知っても流されたい事もあるのヨ〜(涙)

 
No.5558
 
神崎真  2014/02/06/22:49:40
マンガや活字の世界では、やっぱり美形のお兄さんに心惹かれますvv
渋格好いいオジサマも素敵ですけど(笑)
ちなみに現実世界で顔と名前が一致する芸能人は、何故か美形よりもひと癖ある人たちのほうが多いあたり……< SMAP で最初に覚えたのは草薙くんだった

> 嘘と知っても流されたい事もあるのヨ〜
たとえ虚構と知っていても、マンガや小説やテレビドラマに没頭するのも、たぶん同じことなんでしょうねえ。
御都合主義でも何でも、お話の世界でぐらい幸せになりたいのです〜〜><
 
No.5559

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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