よしなしことを、日々徒然に……
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 2013年06月14日の読書
2013年06月14日(Fri) 
本日の初読図書:
4488401015孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
江戸川 乱歩
東京創元社 1987-06

by G-Tools
慎ましい暮らしの中でも、結婚を前提に交際していた木崎初代と蓑浦金之助。しかし彼らの間を裂くように現れた求婚者は、蓑浦の学生時代からの友人、諸戸道雄だった。諸戸は女性を愛せない性癖の持ち主で、他ならぬ蓑浦に対し道ならぬ愛情を抱いているというのに、金や地位を持ち出して初代の母へと結婚させるよう迫ってきたのである。
そんな諸戸へ不信感を抱いた蓑浦だったが、そうこうするうちに初代が殺害されてしまう。しかもそれは密室での殺人だった。現場から消えていたのは、彼女が肌身離さず持ち歩いていた手提げ袋と、チョコレートの罐。
もしや自分の結婚を阻みたいがために初代へと求婚し、それが叶わなかったから殺害に及んだのではないか。そう考えて諸戸へ疑いを向けた蓑浦は、知人の探偵 深山木へと調査を依頼する。
しかしその深山木もまた、何かを掴んだと思われた途端に殺されてしまう。今度は衆人観衆のただ中での犯行だった。
一見不可能とも思われる、二つの殺人。困惑した蓑浦は、ついに直接諸戸へと疑惑をぶつけた。諸戸はその疑いをきっぱりと否定し、そうして自分もこの事件に興味があるからと、蓑浦と共に探偵することを提案してくれる。
そうして二つの事件のトリックこそ解いたものの、犯人と動機は謎のまま。さらに深山木が遺した帳面には、どことも知れぬ蔵に監禁されている、哀れな癒合双体 ―― シャム双生児 ―― による奇怪な手記が綴られていた。そしてその手記を読んだ諸戸は、明らかになんらかの強いショックを受けたようで……
やがて諸戸は蓑浦を、彼の生れ故郷である和歌山の孤島へと誘う。そここそは哀れな双生児が監禁されている場所で……言語に絶する非人道的な行いが渦巻いている、まさに地獄の鬼が住まう島だったのだ ――

だいたい予測がつくでしょうが、「ビブリア古書堂〜」がきっかけで(以下略)
ずっと昔に別の版で一度読んだことがあるので、再読に入れるべきかとも思いましたけど、一応は初読カテゴリに。ちなみにその時は、杉浦志保さんの「 ISAGI-KOJIMA 」が手に取るきっかけでした。うん、一つの本が次の本への道を繋ぐって、良くありますよね?

それはさておき。

さすがは乱歩の中でも傑作と言われるだけあって、十年以上前に一度読んだだけなのに、印象的なシーンは見事に脳裏に焼き付いていました。それはもっぱら後半の、怪奇部分が多かったのですが。……正直前半のミステリー部分は、きれいに忘れているあたり、私の嗜好が顕著に現れてるんですが(苦笑)
っていうか、今こうしてじっくり読んでみて、乱歩と横溝正史の間に親交があったこととかも知ってみると、「八つ墓村」との類似を感じずにはいられませんなあ<MYベスト金田一トップ3に入る作品
詳しくはネタバレになりますが、鍾乳洞での宝探しはむろんのこと、不具と思われた少女の再生&主役とのロマンスとか、極悪人の父親を持つ青年の苦悩と、実は血の繋がりがなかったと判明した解放感とか。
主役こと簑浦さんの、ちゃっかり都合の良い思考や甘えん坊なところは、いま読むとこれはこれで、ちゃんと自覚した上での(半ば計算された)行動なんだから、まあ良いんじゃないの? ぐらいに思えます。 ……こいつ絶対末っ子だ(笑)
しかし諸戸さんは不憫だ……不憫すぎる……
何もかも報われないまま、尽くして尽くして尽くしきって……そして最後は……と思うと、もう(TT)
それでも父親との複雑すぎる関係を清算できたことが、諸戸さんには救いだったのでしょうか。いや、彼にとっては、あれだけの艱難辛苦を乗り越えて、それでも友情を失わずにいてくれた蓑浦くんの存在だけで救われていたのか。
ラストの二行が、切ない余韻を残します。

ミステリーで始まったのに冒険怪奇で終わってるとか、事件関係者である初代さんと諸戸さんと主役と深山木さんが事前にみんな知り合ってるって偶然が重なりすぎとか、医学的にはやっぱりそれ無理だろうとか、いろいろツッコミどころはありますが、やっぱりこの作品は名作だと思います。

……こうなると「パノラマ島奇談」も読んでみなくちゃかしら?

なお、この創元推理文庫版だと、発表当時についていたという挿し絵が、全点収録されています。ちょっと癖が強く、本文との齟齬もまま見られるので賛否両論かもしれませんが、乱歩好きな人ならチェックしておくべき一冊かと。

……ああでもこの話は、題材が不具者とか異常性欲とか差別表現とか、いろいろ現在ではいつ発禁になってもおかしくなさそうな代物なので、苦手な人はうっかり手を出さない方が良いかもしれません。乱歩未経験の方は、まず「人間椅子」とかの有名どころの短編から入ってみて、興味が持てたら読むという方向で行った方が良いと思います。
No.4863 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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