2013年05月31日の読書
2013年05月31日(Fri)
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本日の初読図書: 江戸は深川にある出雲屋は、古道具屋兼損料屋、今で言うリサイクル・レンタルショップである。その店には様々な道具が、売られたり貸し出されるため、並べられている。 その中には、普通とはちょっと異なる道具も数多く存在していた。 古い道具の中には、大切にされて齡百年を越すと、付喪神という妖(あやかし)と化すものがある。人ならぬ存在となった付喪神は、しゃべることもできれば、影の中へ入ることもできる。手足を生やして、自由に動き回ることだってできるのだ。 出雲屋には、そんな付喪神達がたくさんいた。そして出雲屋の息子 十夜と、その幼なじみである市助、こゆりは、付喪神達としゃべったり遊んだりするのが大好きだ。最初は彼らを無視しようとしていた付喪神達も、力加減を知らぬ子供の猛攻にさらされるうち、すっかり相手をするようになっている。 今日も新しく、双六の付喪神が店へやってきたと、十夜達は親に隠れて夜中にこっそり箱を開けに来た。ところが新入り付喪神の「そう六」は、いきなり彼らへと勝負を挑んでくる。自分が勝ったなら、ひとつ言うことを聞いてもらう。さもなければ双六の中に閉じこめて、出られなくしてしまうぞ、と。 しかしいざ勝負を始める段になって、予想外の出来事が起こる。羽子板を持った見知らぬ妖が現れて、そう六の邪魔を始めたのだ。 少女の姿をした二人の妖は、なにやらそう六に敵意を抱いているらしい。子供達と出雲屋の付喪神達は、一時休戦して、そう六を助けてやろうとする。 やがてそれは、伊勢屋という大店の跡目騒動へと関わっていくことになり ―― 元気で正義感に溢れたまっすぐな子供達と、甘い物好きでいばりんぼうの付喪神達が次々と巻き込まれる、花のお江戸のハートフル・ミステリー。
タイトルが似てるなあ、でも同じようなタイトルのエッセイ集もあるし別物だろうと思っていたら、やっぱり「つくもがみ貸します」の続編でした。 ……しゃばけシリーズと言い、どれがどのシリーズのくくりで、どういう順番で刊行されたのか、もう少し判りやすくしようよ>畠中さんと出版社さん
そんなわけで「〜貸します」から、作中ではたっぷり十年が過ぎ、出雲屋の息子が十一歳になっております。 ……実は前作については、最後にくっついた主役カップルの取り合わせぐらいしか覚えていないので、「子供達が生れる前からつきあいのある」「親戚以上の間柄」な「すおう屋」と「鶴屋」との関係がいまひとつよく判らないのですが。もう一度借りてきて、読み直さないとかなあ。
ただ前作では、もう少し人間と付喪神の間に距離があったと思います。付喪神は、あえて「人とは直接話さない」というMYルールを作っており、人間側も「付喪神の会話を、横から漏れ聞くだけ」というスタンスを保っていました。お互いにお互いの存在を認識し、利用しあいながらも、直接的な交流は持たない。その微妙な距離感が、しゃばけシリーズとはまた異なった、一種独特な雰囲気を出していたと思うのです。 しかし今作では、十夜達の子供であるがゆえのストレートな言動に、そんな悠長なことなど言っておられなくなり、普通に十夜達 ―― ひいてはその親達ともコミュニケーションを取るようになっています。これはこれで面白いんですが、いささかしゃばけシリーズに引きずられているっぽくて微妙かなあ。 付喪神達がやたらお菓子を食べたがるのも、以下同文。
お話の構成としては、五つある短編の冒頭で、それぞれの付喪神が読者へ対して語りかけるところから始まっています。お話はそれぞれに独立していますが、全部通してひとつのストーリーを作り上げているのもいつもの通り。 最終話のラスト、赤子のエピソードでは、私もしっかり騙されました。くそう、やられた(笑)
空白の十年余の間には、ずいぶん辛いことも多々あった模様。それでも強く前を向いていく親を見て、子供達も成長していく。良いお話ですなあ。 主役が子供なので、ちょっと児童文学っぽい感じもします。
……それにしても、大久屋さん……あなたそんなに騙されやすくて、よくもまあお江戸で屈指という大身代を築き上げられましたねえ(苦笑)
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No.4817
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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