2013年05月29日の読書
2013年05月29日(Wed)
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本日の初読図書: 平成の世に住む、ごく普通のサラリーマンだった一人の男。 彼はある朝、目が覚めると粗末な藁葺き屋根の家にいた。どうやら戦国時代の農民の少年として、生まれ変わったらしい。なんで?? と混乱し、パニックにも陥ったが、現実は受け入れるしかなかった。一年ほどのんびり家族と畑を耕して暮らし、このまま一生を終わるのも良いかもしれない……などと思っていた。 が、母親の洩らした言葉により、その人生は一変する。 「わしの弟は武士なんぞになりおってな」 戦国の世では、才覚さえあれば誰でも武士になることができる。とはいえしょせん貧しい農民上がり。せいぜい足軽が良いところだろう。 「木下藤吉郎とか名乗っとったわ」 木下藤吉郎と言えば、のちに天下統一を果たした豊臣秀吉だ。 ってことは俺、天下人の甥!? 栄華を極めた、贅沢な暮らしができること決定じゃないか!! 歓喜しつつ、記憶の中の史実を確認する。 えーと、秀吉の姉の息子っていうと……豊臣秀次か。一度は秀吉の後継者候補として関白の座に着くけれど、実の息子 秀頼が生まれたら、疎まれて切腹させられる人だな……って、え? このまま行ったら、俺、切腹?? いやだ! 切腹はイヤだ! 歴史小説を学生時代から読みあさり、ゲーム『信○の野望』は全作やり込んだ歴史オタクだった彼は、その一念で文字通り必死に足掻き始める。 持つ武器はただひとつ。これから起こるはずの『史実』を知っていること。 そうして秀次は、全力で己の切腹フラグをたたき折るべく、戦乱の世を駆け抜けてゆく ――
昨夜日付が変わってから読了。 Arcadia 時代から愛読してました。某一部で有名なオンライン小説が、ついに紙書籍になったぜ! 筋はおおむね変わらないけれど、文章はかなり書き足され……というかほとんど別物? 描写も濃くなっていて、WEB版を読んでいた人にもお得感があるんじゃないでしょうか。
ちなみに私の場合、WEB版を最初に読んだ頃には、「小田原ってどこだっけ?」「大阪の陣って何? 聞いたことないよ??」レベルの人間だったので、ただ普通につらつらと「ふ〜ん」「へ〜」と思いながら読んでいただけでした。そもそも豊臣秀次という存在自体、この作品で初めて知ったぐらいですし。 今はそれより少ーーしは知識的にマシになり、特に今回は以前「影武者徳川家康」を読むときに用意した、旧国名地図を横に置いて読み進めたので、だいぶ理解度が違ったと思います。 「のぼうの城」で忍城について知ったのも、第二ヒロイン甲斐姫や、後半の重要キャラ石田三成を楽しむにあたって、大きかったかと。
ただ文章的には……正直に言うと、紙書籍としてはどうかな、とも思いました。 特に視点が非常にとっちらかっている点とか、加筆修正したせいなのか描写や時系列が混乱気味とか、誤字脱字変換ミスなどがかなり残っているとか、いらんところに改行入ってて読みにくいとか。 いかにもオンライン小説あがりらしく、校正が行き届いていません。 2ch的表現は削られていたり、歴史的な解説もある程度は書き加えられていたりと、だいぶ一般向けに手直しされてはいましたが、それでもまだ読む人を選ぶ文体だと感じました<そもそもが掲示板投稿のネタ小説だしな……
っていうか、いきなり「小牧・長久手の戦い」とか「石垣山城」とか書かれても、歴史素人には史実がどうだったのか判らんよ!
まして転生トリップチートというジャンルに馴染みのない人間には、「目が覚めたらいきなり戦国時代でした」「現実として受け入れざるを得なかった」の一行で生まれ変わりを説明されて、過去を一度も懐かしまない。家族や友人などを全く思い出さない。かつての名前も出てこないとかいうのは、不自然極まりないかと。あと戦場で血や死体の描写がほぼないあたりも、命の軽さを感じさせて気になるところ。 それに転生者である秀次の脳内文章だけでなく、地の文でも普通に横文字が出てくると、戦国時代の雰囲気を殺いだりとかさ……
でも、まあ、全部ひっくるめても面白いからよし!(どーん)
もっとも……新刊買いした最大の理由、イラストは個人的にかなりしょぼんでした。 前半の挿し絵は完全にギャグ調だし、比較的真面目になる後半もなんというか……女性キャラだけ半端に線が奇麗というのも、普段萌え系描いてる人なんだろうなあと思われてもにょる…… なにより最大の見せ場(ドシリアスシーン)である大阪の陣で、いきなり本文と食い違ってるあたり、絵を見た瞬間、現実に引き戻されちゃって(しくしくしく)<なんで秀次が鎧着てるんだよ!!
……って、あー、文句ばかりつけちゃいましたが。 うん、ちゃんとおもしろかったんですよ? 特にすがすがしいほどにアクティブに未来歴史(彼にとっては現代)を変えていき、それが納得できる歴史IFなところとか、赤石路代さんの「 AMAKUSA1637 」と通ずる本当にたまらん面白いお話なのです。
ああ、そうだ。すごく良くできた大幅加筆修正入り自費出版同人誌を買ったと思うと、満足できるかもしれません。いろんな意味で。 300ページ超でイラストつきの同人誌なら、送料込1200円は安い。イラストがアレなのも、中身のレイアウト構成が素人臭いのも、それですべてが許せる。
ちなみに書籍化されたのは本編だけで、外伝・番外編は含まれていません。 加筆修正前のWEB版及び外伝・番外編は↓こちらで読めます。
■SS投稿掲示板 http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=original&all=4384&n=0
個人的には、こちらにある後日談的 二次創作×二本もオススメ。
■腕白関白二次創作「遠き時代の果て」 : 草葉の陰的な何処か http://noppara.exblog.jp/9879372/
■腕白関白二次創作「遠き時代の果て・蛇足」 : 草葉の陰的な何処か http://noppara.exblog.jp/9939716/
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No.4812
(読書)
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この記事へのコメント
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paoまま
2013/05/30/11:00:08 [HOME]
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まこっちゃーん、チワっす。 戦国時代が舞台の小説は面白いっすよーん。 わたくち大好きザンス。
だがもうすでに終わっている時代なんで、大どころの話しは書きつくされている感ありなんですよね。
この小説についてはまこっちゃんのきびちいムチが入ってますね。 信長、秀吉がらみのものなら、ちょっと読んでみたいですぅ。
まずはWEB版からいってみよっかなー
あ、今日「県庁おもてなし課」を購入予定でーす。
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No.4813
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神崎真
2013/05/30/18:11:15
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こんばんはー、ままさん。 そうですよねえ。歴史物は、どうあがいても結末は変わらないので、あとはそれぞれの心情をどう書くか、ぐらいでどうしてもバリエーションが少なくなってしまいますよね。
その点、このお話は「もしあの人がこんな行動をとっていたら」「もしあの戦いで勝っていたら」という、IFルートを語るシュミレーション小説なのですよ。 最後にもたらされる未来の姿と来たら、それはもうすがすがしいぐらいに、史実とは別物。 ほんっとうに、面白いお話なんです!!(握り拳)
それだけに……それだけに、この仕上がりは実にもったいなくて(><) 書籍化されるというお話が出てから、実に一年待ちました。イラストはどうなるだろう。加筆修正はどうなるだろうと、首を長くしながらドキドキワクワクしていました。 それなのに、ああそれなのに(しくしくしく) このお話は、もっと素晴らしい本にできたはずなんですよ! それだけのパワーがあるんです! もっとちゃんとした校正さん編集さん、そしてイラストレーターさんがついておられたらと、心から残念でなりませんです。
> まずはWEB版からいってみよっかなー
んー、オススメしたいところではありますが、微妙な点もあります。 ままさん、いわゆる「2ちゃんねる」とか読まれる方ですか? このお話は、主役が「2ちゃんねらー」と呼ばれるネットオタクの気がある人なので、文章にもネット特有のスラングとか言いまわし、お約束が氾濫しています。馴染みがないと、ちょっと判りにくいかもしれません。
「県庁おもてなし課」は、文句なくおもしろいです(^ー^) ……ちょっと言葉がきつすぎて、読んでいて心が折れそうになるときもありますけどね……
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No.4814
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paoまま
2013/05/31/09:25:33 [HOME]
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まこっちゃん再びカキコ失礼。
ううう〜〜 つ・辛いですぅ、Web版に慣れていないせいか、読み進むのがヤケに辛いです。 まこっちゃんのお書きになったモノは読んでもさほど違和感は感じませんが、(説明すべきところは説明有)今回のコレは読むのが・・・
なんちゅうか文章の向こうにいるWeb版素人の人はあまり考慮してないんだねぇ、って感じかな。
ズコズコ突き放した感じで話が展開しております。 行間でおばちゃんの思考を遊ばせてくれません。
「おめーら最後まで付いて来いよっ!」 ってな感じの、ラップのコンサートに行ったみたいですにゃ。
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No.4815
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神崎真
2013/05/31/21:38:28
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おお、ままさん挑戦されましたか。 ……やっぱり、慣れていない方には馴染みにくい文章だったみたいですね(苦笑)
なんというか、最近のWEB(オンライン)小説と呼ばれる中には「転生モノ」「憑依モノ」「現代知識で内政」というジャンルが、既にお約束として確立されているのです。中世ヨーロッパっぽい異世界とかあるいは過去の時代とかに、何故かいきなり生まれ変わったり、あるいはそこにいた人物に魂だけが乗り移ってしまい、そこで現代の知識を活用して成り上がっていくというパターンのジャンルです。
この「腕白関白」は、そういったお話をたくさん読んで、読み慣れて、もういい加減食傷したという人が、その中でもちょっと毛色が違ったものとして楽しむタイプの話なんですよね。そう、まさにズバリ玄人向け。なので細かいところは『もうみんな読み飽きてんだろ?』として説明されないのです。
さらに言いまわしとかも、匿名掲示板などに出入りする人達が使っているものがそのまま使われているので、慣れてない人は雰囲気を掴むのも難しいかと……
書籍の方は、それでもだいぶそのあたり、一般向けに手直しされているのですが……そうすると今度は、WEB版に慣れていた人達には、「手を入れたせいでテンポが悪くなった」との評価もあり、なかなか痛し痒しと言うところ。
いやあ、モノを書くって難しいものですねえ。
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No.4816
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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