よしなしことを、日々徒然に……
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 2013年05月06日の読書
2013年05月06日(Mon) 
本日の初読図書:
4087713687鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─
朱川 湊人
集英社 2010-08-26

by G-Tools
老境に至り昔のことを思い返すと、あの頃はまさに白金プラチナの季節であった。青春のひととき、若さのもたらす熱情の日々 ――
人生の終着駅も見え隠れするようになったいまこのとき、若い頃の思い出を、共に過ごした友たちと経験したことどもを、拙い筆で書き留めておくのも一興だろう。
時代は、大正三年の初めにさかのぼる。
絵描きを目指していた若かりし私 ―― 槇島巧次郎は、不思議な雰囲気を持つ男 穂村枝雪華ほむらえせっかと知り合った。同じ絵描きだという彼は、私よりもずっと見事な技術を持っており、これが才能の違いなのかとまざまざと見せつけられたものだった。
しかし彼を語るにおいて重要なのは、その絵の才能ばかりではない。彼の周囲にはいつも、不可思議な出来事が渦巻いていたのである。
雪華は墓場に漂う死霊を、見事なデッサンを描いてみせることで成仏させた。そして幽霊の出る部屋に引っ越した私へは、鏡にその姿を描くという浄霊方法を教えてくれた。
彼が住む下宿 蟋蟀こおろぎ館では、様々な怪異が当たり前のように起きていたし、この世に未練を残し、まるで生きている人間と変わらないように見える死者 ―― みれいじゃ ―― と関わることもあった。
彼がつけてくれた私の号、風波ふうわは、今でも使い続けている大切な贈り物である。
これは老いらくの感傷センチメントかもしれない。それでもそんな惰弱さをこの年まで持ち続けてこれたことを、あるいは彼も褒めてくれるかもしれない。
今は思い出の中にしか存在しないあの男には、そんな部分があったものだ ――

ラジオドラマで(以下略)
ううむ……ドラマを聴いた時もちょっと思ったのですが、なんとなく尻切れトンボ感というか。え? ここで終わり?? という印象がありました。「リプレイ」のように、原作はもう少し後があるかと思ったら、見事に同じ終わりかた。
続きは……出ないだろうとは思う最後なんですが、いろいろと謎のまま終わっていることが多いので出るのかもしれないし……刊行月日と考え合わせても、微妙な所っぽいですなあ。

謎部分については、ラジオドラマの方が、まだそのあたりに多少のフォローがあったほどでした。
……っていうかラジオドラマでは三郎こそが蒐集家コレクタアなのではないかと語られていましたけれど……小説の方を深読みすると、もしかしてもしかすると『彼』でもありうるんじゃない、かな? とか思わなくもなく。
いやその前段階で、やっぱり『彼』も「みれいじゃ」なんでしょうか。いろいろと思わせぶりな記述はあるものの、そのあたりは投げっぱなしです。最終話で三郎がなんであの劇場にいたのかも小説では語られていないし、お欣ちゃんの右目の謎も解かれないまま。 結局、大正三年の十年ぐらい後に来たという「東京のすべてが失われる日」というのは、関東大震災のことなんでしょうか?
そういえば巧次郎=風波さんが画家として大成できたのかどうかも、明らかにはされてませんね。風波という号を老境に至るまで使い続けたという一文をもって、絵描きになれたのだと解釈するべきか、それとも素人の手すさびという形で描き続けただけなのか。
いろいろなことが、読者の解釈にゆだねられたままとなっております。

まあ、これはこれで、何度も読み返したりしつつ、様々な方向から解釈して楽しめる作品と言えるのかもしれません。

ところどころ当時の有名人がちらっと登場していたり、地の文は普通なのに会話文のイントネーションが昔っぽいのが、雰囲気が感じられて面白かったです。
No.4762 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
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