よしなしことを、日々徒然に……
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 2012年12月21日の読書
2012年12月21日(Fri) 
本日の初読図書:
4042969011アルテミス・ファウル―妖精の身代金 (角川文庫)
オーエン コルファー Eoin Colfer
角川書店 2007-07

by G-Tools
ファウル家は、数百年にわたって続く伝説的な犯罪一家だった。ゆすり、密輸に強盗といった悪事で財を成し、現在では合法的な経済活動を行うまでになっている。もちろん露見しないと判っていれば、今でもすぐさま犯罪に手を染める、そんな家風だ。
そんなファウル家が家運を傾けたのは、当主アルテミス・ファウル1世が事業に失敗し、沈没する船と共に行方不明になったからだった。ファウル家はそれでもまだ充分に裕福だったが、それでも伝説の犯罪一家という立場からは転落した。1世の妻は精神を病み、暗く閉ざした一室に閉じ籠もっては奇矯な振る舞いを繰り返す。
そこで息子である若干十二歳の少年アルテミス・ファウル2世は、失われた地位を取り戻し、家運を挽回するべく自分独自のやり方で活動を始めた。
手始めに計画したのは、営利誘拐だ。狙う相手は妖精である。
妖精は人間と同じように貴金属が好きで、たんまりと黄金を隠し持っている。それを奪い取ろうというのだ。
まずは人間社会の下町で落ちぶれている、はぐれ妖精スプライトを探し出し、酒を餌に彼らのバイブル『妖精の書』を入手。その翻訳に成功したアルテミスは、妖精の習性を割り出し、彼らが現れるだろう場所へと待ち伏せをかけた。
一方 ―― 妖精達は、様々な魔法と科学技術を駆使して、地球中心近くの地下世界で生活していた。小エルフのホリー・ショートは、そんな地下世界にある地底警察の一員である。その中でもエリートたる偵察隊で、初の女性隊員として試験採用されたのだ。厳しい上司のもと、周囲に舐められながら懸命に働いていた彼女だったが、忙しさに紛れ魔法力の回復を怠り、あわや大失敗をおかしそうになる。なんとか仕事は達成したものの、上司には怒鳴られ、すぐさま魔力回復の儀式を行えと送り出された。
満月の夜、アイルランドの曲がった川のたもとにある、カシの古木の下。
儀式に必要なその場所では、アルテミスとその部下が、虎視眈々と妖精の訪れを待ち構えていた。
アルテミスはまんまとホリーを捕らえ、彼女を取り戻そうとする地底警察に要求を叩きつける。
ここに天才的な少年犯罪者と、ハイテクを操る妖精達との戦いが幕を開けた ――

ハリポタブームに乗って出版されたという、異世界クロスオーバーな児童文学のひとつ。
映画化の話も出てるそうですが、聞いたことあったっけ……?
主役がダークヒーローというあたりが意表をついています。なにしろいきなり、世界を股にかけた営利誘拐を企んでますからね。
十二歳の頭脳担当、カリスマ的魅力を持つ少年犯罪者&特殊訓練を受けたマッチョな従者兼用心棒兼調理人バトラーというのは、非常においしいとりあわせです。……っていうか、バトラーの妹いらん(苦笑) 妹よ、お前は本当にこの兄と同じ訓練学校出てるのか。そもそもあんたはいったい『誰』とペアを組んでるの。

話の構成としては、誘拐したアルテミス側と、誘拐された妖精側の視点が半々ぐらいになっていて、当初予想していた以上に妖精側へ感情移入できます。
レプラコン改め地底警察偵察隊LEPレコンの面々、特に司令官のルートが格好いいったら!
最初は頭の固い女性蔑視で嫌味なオヤジと見せかけて、実は部下思いかつ臨機応変を効かせられる敏腕上司だなんて、イカスじゃないですかvv
妖精達が、魔法よりも科学っぽいものを駆使しているのもおもしろいです。
うん、予想の斜め上を行ってくれて、これはこれで楽しめました。エピローグを読んでみるだに、この妖精達とはこの先も関わっていくのかな?
『今後はもうちょっとまともな合法的な事業』をするというのも興味が湧きます。個人的に良い子ちゃんよりも違法よりも、違法と合法の境目を綱渡りしつつ、ギリギリ合法のラインを保つタイプが好きなので。

ちょっと難をあげるなら……児童文学にそこまで求めるのはどうかと思いつつ、いまひとつ掘り下げが甘いというか。頭脳を駆使した裏の読み合いを繰り広げているわりに、いまひとつその前提というか、『言葉の抑止力』がどこまで働くのかとかがよく判りませんでした。そもそも一晩を乗り切られたのはあれだけど、次の晩に再度妖精達が襲来するのは駄目なの?? とか。
それにバトラーが助かったのって、あくまで偶然とホリーの職業意識に基づいた、アルテミス側にとっては想定外の事態よね、とか……

あと本筋には関係ないんですが、原子力とか捕鯨船とかアルテミスの母の扱いとか、微妙なところで微妙にモニョった……子供向け児童文学で日本の捕鯨船の扱いがアレってのが、欧米での認識を現してるのかなあと(−ー;) 別に油だけじゃないよ? 肉も皮もおいしくいただいてるし、骨だって髭だってしっかり有効利用してるんだ。……って言うと、むこうはまた『鯨を食べるだなんて野蛮な!』とか非難するんだろうなあ(ため息)

そうそう、全部のページに装飾のように妖精文字(推定)が書かれていると思ったら、これちゃんと解読できるらしいです。面倒だからやらないけど(笑)
……検索したら、誰かがどこかで対応表UPしててくれないかな?

追記:
『エルフ』の『女性』の『斥候』って、もしかしてガールスカウト!? ということに、読了してあちこちの感想を検索していて初めて気がつきました。
しまった……ッ、もう一回そのイメージで読み返さないと!
No.4415 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
iwamoto  2012/12/23/14:04:53 [HOME]
アルテミス、というと女性の名と考えています。 英語名ではダイアナですし。
グレコ・ローマン神話での女神ですよね。
このお話では男性なのですか。
 
No.4416
 
神崎真  2012/12/23/18:35:05
そのへんは訳者の後書きでも触れられています。
いわく『 Artemis はギリシャ神話の女神の名(ローマ神話ではダイアナ)ですが、作者によれば、インターネットでギリシャの少年の名前の中から見つけた(要約)』とのこと。
作者さんはアイルランド人だそうで。私なんかも海外風の名前を使うときは良く『各国人名辞典』みたいなサイトを利用するので、そんな感じでつけられたのでしょう。
日本でも、男性で『和実(かずみ)』とか『真央(まお)』とかあるわけですし、多少女性的でも、それはそれでありなのかも?
ちなみに名字の Fowl は、 foul (卑劣な、きたない)という言葉に引っかけてあるのだとか。
そう言ったあたりは原文を読み込める知識があってこそ、楽しめる部分なんでしょうね。

……昔の翻訳だったら、名前ごと日本語に訳されていたかも?
例: Strider → 馳夫(指輪物語)  Pushmi-Pullyu(Push me - Pull you) → オシツオサレツ(ドリトル先生)

ところでグレコ・ローマン神話って発音、初めて聞きました。検索するとレスリング用語とか出てきますけど、『ギリシャ・ローマの』の古い言い方なんでしょうか?
 
No.4417

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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