よしなしことを、日々徒然に……
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 2012年12月18日の読書
2012年12月18日(Tue) 
本日の初読図書:
4163817700旅猫リポート
有川 浩
文藝春秋 2012-11-15

by G-Tools
元野良だった雄猫ナナと、飼い主の宮脇悟が共に暮らすようになって、五年が過ぎた現在。
よんどころない事情により、悟はナナを手放さなければならなくなった。ナナは猫としては壮年になっていて、悟は三十を少し越えている。ふたりとも物の道理はわきまえており、人生はままならないものだと理解していた。
ゆえに悟は、ナナを代わりに飼ってくれる人物を求めて旅に出る。
ふたりを最初に結びつけた、銀色のワゴンに乗って。あちらこちらへとハンドルを向けた。
小学生の頃、いっしょにナナと良く似た猫ハチを拾って、結果的に大騒ぎを起こした親友、コースケ。
中学校で同級になり、農業をしている二人暮らしの祖母と共に、家族同様のつきあいをしてくれたヨシミネ。
今は夫婦でペット可のペンションを経営している、高校での友人スギとチカコ。
両親を早くに亡くし、転勤の多い叔母ノリコと全国を転々としていた悟にとって、みな懐かしく大切な友人達だった。
彼らの元を訪れた悟は、ナナとなじめそうか相性を確認しつつ、当時のことを思い出しては話を弾ませる。
その会話を聞き、あるいは初めて目にする様々な景色 ―― 海や富士山、青い苗がそよぐ田園に真っ赤なナナカマドの実などを、ナナはひとつひとつ心に焼きつけてゆく。
銀色のワゴンに乗って、旅を続けるふたりのリポート。
彼らは思い出をひとつひとつ積み重ねながら、次の旅へと向かうのだった ――

猫好きの猫好きによる猫好きのための物語と言わせていただきましょう。有川さんはきっと猫が好きだ。寝ている布団の上を歩いていく足の感触とか、猫のいる家で寝たことのない人間には、思い浮かべられないはずだ!<友人ちに泊まったときに堪能した
もうね、猫好き必見。……ただし読む際には、ハンカチかティッシュの準備をお忘れなく。
私はもう終わりのほう1/3ぐらいから、ずっとグズグズ鼻を鳴らしっぱなしでした(涙)

一読すると、サトルはあまりにも良い人過ぎるように思われます。
辛い過去をものともせず、前を向いてどこまでもまっすぐ、文句のひとつも口にすることなく生きている。こんなやつ絶対いないと、そう思うかもしれません。
けれど彼だって当然、心の内には絶対に、あらゆることがうず巻いていたはずなんです。
修学旅行での脱走未遂、ススキ野での涙、そしてハチとナナへのこだわりとも言える深い愛情。それらが充分に察しさせてくれます。けれど、それでもなお、彼は彼であり続けた。それこそがサトルのすごさを表していると思うのです。
……なんとなくね、『よんどころない事情』っていうのは、かなり早いうちからうすうす察しがついていたんですよ。それでも、決定的な記述が出るまでは信じたくなかった……サトルとナナの絆、そしてナナの選択が、もう切なくて切なくて。

サトルと暮らせなくなったって、僕は何にも失ってない。ナナって名前と、サトルと暮らした五年を得ただけだ。

旅に出る前のナナの独白が、すごく心に染みました。
ああ、なんて強くて前向きな言葉なんでしょう。

出てくる人たちは、みんな良い人でした。心の中に様々な屈託やエゴを抱え、時に迷い苦しみながら、それ故にこそ強く優しくあれる人達。
ほんの2ページぐらいしか登場しない、名もなき師長さんすらもが、本当に素敵だった……<野暮なことは言いっこなしなんだYO!

そして最後。
不思議なほど心が温かく、満たされた気持ちで本を閉じられました。
サトルとナナの繋いだ人々の縁(えにし)が、これから新たな未来を紡いでゆく。それがとても優しく感じられます。
ミケを一人前に鍛えあげたナナは、再びサトルと旅に出るのでしょう。まだ見ぬ美しいものを、ふたりでその目に映すために。
―― その日にはきっと、彼らは黄色と紫の花々に囲まれて、空に大きな虹がかかっているのだと。私はそう信じてやみません。
No.4408 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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