よしなしことを、日々徒然に……
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 2012年12月04日の読書
2012年12月04日(Tue) 
本日の初読図書:
4488413145もろこし桃花幻 (創元推理文庫)
秋梨 惟喬
東京創元社 2012-03-10

by G-Tools
元代末期。力を失っていく王朝に見切りをつけた文士 陶華は、科挙の受験を取りやめて、故郷の成都へ戻るべく旅をしていた。しかし巷には食い詰めた流賊が満ちあふれており、世間知らずの陶華の旅はなかなかはかどらない。路銀は残り少なくなってきたし、いつの間にか付き人ともはぐれてしまった。
そんな彼がたどり着いたのは、城塞都市渓陵城の近くにある小さな農村、桃渓村だった。渓陵城は現在、三万を越す流賊に包囲されており、籠城戦のただ中にある。顔軍師の活躍により半年の長きにわたって防衛が続けられ、攻める流賊はじょじょに余裕をなくしつつあった。そんな状況で、飢えた流賊に略奪されることを恐れたのか、桃渓村には食料どころか人っ子一人残ってはいなかった。
しかたなく空き家で手持ちの食料と共に夜露をしのごうとした陶華だったが、煮炊きの煙と明かりに誘われたようで、次々と人が現れる。愛らしい女道士 杏霙に、二人連れの老行者 施檜と孫吉。賊に襲われていたところを行者たちが助けたという、近在の村の女の子 小蘭。さらにはその生き残りと思しき賊達に追われながら、商人 柴七郎と医者 呂九叔と用心棒 林丙の三人まで転がり込んでくる。
異様なほど腕の立つ行者達と女道士によって、賊達はあっという間に倒されたが、まだその仲間が追ってくるかもしれない。そこで一同は場所を移すべく近くの川にあった小船に乗り、流れを遡っていった。するとその先にあったのは、さながら陶淵明の書く『桃花源記』を思わせる、美しくのどかな桃源郷のごとき村。
なんでも桃渓村の人々が、有事の際に避難するためひそかに作っていたというその場所は、岩山に穿たれた洞窟を唯一の出入口とし、周囲を高い岸壁に囲まれた隠れ里であった。
他の場所に繋がる道もないので、一同はしばしその村で身を隠し、賊をやりすごすことに決める。
しかし翌朝、彼らの世話係となっていた青年が、殺され首を切断されているのが発見された。平和な村に部外者が現れた途端、発生した残虐な殺人事件。村人達が浮き足立ち、一同が互いに疑心暗鬼になるなか、今度は立て続けに、女子供も含めた十五人もの人間が殺されているのが見つかって ――

中国武侠ミステリー。シリーズ三作目は嵐の山荘的な長編作品です。
まあ長編とは言っても 260 ページほどなので、中編と称しても良いかもしれませんが。
これまでのお話だと、長めだった二本は「おもしろいけれど途中ちょっとだれる」という印象があったんですが、今回はかなりサクサクと読み終わっちゃいました。
登場人物が多く、しかもそのほとんどが素性を隠しているので混乱するかと思ったら、そのあたりも意外と判りやすく。
ふふふ、それにしても「誰が犯人なのか」「誰が銀牌を持っているのか」というポイントが、誰であってもおかしくないというか、誰であってもストーリー的においしいと思える展開で、読んでいていろいろ想像を巡らせてみるのが楽しかったです。
既に三度目の登場となる顔軍師と爺が現役時代なのだから、銀牌侠はやっぱりあの人だろうかと思いつつ、いやしかしそれじゃあストレートすぎるか。あの子が犯人だとおもしろいけれど、前回も子供がキーだったからそれはないだろうか、などなど。
それにしても今回の一番びっくりは、やはりなんと言っても大行者でしたね!
なんかいろいろ思わせぶりだけど、中国文学詳しくないからきっと知らない人だろうと思っていたら、よもやまさかのあの人とはvv 戒刀っていったい誰の形見だったんだろう……?? やっぱりこれは、水滸伝ちゃんと読み返さなきゃ駄目かなあ。個人的に梁山泊が朝廷に帰順した後は、展開が悲しくて読むの辛いんですが……
それはさておき。
最終的には、弟子がまだまだ未熟なのが微笑ましかったですね。
ちょっとデウス・エクス・マキナ的な感じで、お師匠さんの一人勝ちっぽいところでしたけど、これはこれで「後に銀牌侠となる人物にも、未熟な時代があった」という感じでおもしろかったかと。
陶華さんのその後もなかなか意外で。卵が先か鷄が先か、考え出すとこれまた楽しかったりvv

ああそれにしても、今回も後書きで興味深げな記述が……前の巻で触れられていた「幻陽と小八の十五年後」も気になるというのに、「あの人の子供時代(あるいは老後)」とか「スピンオフキャラクターを主人公に」とか「意外な時代、意外な場所で展開」なんて、そんなこと書かれたら待ちきれないじゃないですか〜〜〜《o(><)o》
……って、続き、図書館に入るよ、ね……?(心配)

追記:
戒刀二刀流は、検索してみた感じ武松さんっぽい。しかしやっぱり原典を読み返した方が良いのか。いっそ北方謙三版を読んでみるというのも手だけれど、それぞれの死に様とかが、ずいぶん改変されてるらしいしなあ(悩)
No.4373 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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