2012年09月29日の読書
2012年09月29日(Sat)
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本日の初読図書: 何の前触れも何の必然性もなく、ただただ偶然に異世界へととばされてしまった、普通の高校生 渡瀬幸助。しかし彼は天文学的な偶然の積み重ねにより、一国を恐怖で支配していた強大な黒竜を倒すこととなった。それによって『竜殺し』の称号を得た幸助は、称号のもたらす恩恵と竜の力を吸収したことによって、人間としてはありえないほどの能力を手に入れてしまう。体力腕力の増大はもちろんのこと、記憶力や知能までもアップしており、学べば学ぶだけ驚異的な勢いで成長してゆけるのだ。さらには魔法までも使えるようになっている。 竜の生け贄にされる寸前(結果的に)助けられた貴族の娘ホルンは、竜の死が周知されるまで実家に戻ることもできず、幸助とともに人里離れた森に住む知人の魔女、エリスの元へと身を寄せることにした。 幸助はそこで自分の身に起きたことを説明され、元の世界に戻るのが難しいことも教えられる。また『竜殺し』という強大すぎる称号と能力を不用意に知られることは、力を求める貴族や国などから良いように利用される恐れがあるので、当分は控えた方が良いと諭された。 ともあれこうなっては、なんとかこの世界で堅実に生きていくしかない。そのための常識や技術は、ホルンの命を救った礼にとエリス達が教えてくれることになった。エリスの弟で優秀な冒険者であるボルドスも力を貸して、幸助はメキメキと力をつけてゆく。 やがてエリスは最終訓練として、幸助に荷物とまとまった金額を渡して告げた。これから近在の街ベラッセンへゆき、一ヶ月でいま渡した金と同じ額を稼いでみせろ。それができればこの先どこででも生きていけるはずだ、と。 そうして幸助はベラッセンに行くこととなった。そこで冒険者ギルドに加入した彼は、主に雑事系と呼ばれる、取るに足らないような下らない依頼を積極的に受けてゆく。そう、彼はここに至ってもまだ、自分が得た強い力にほとんど自覚がなかったのだ。 あくまで一般的日本人としての感覚を持っている幸助は、たとえ魔物でも殺すのに罪悪感が湧くし、危険な冒険よりも平和な雑用の方がありがたいと思っている。 しかしそんな彼にも、様々な試練が襲いかかってきて ――
ええ、買っちゃいましたよ! 買ったさ、それも新刊で(半ヤケ) オンライン小説投稿サイト「小説家になろう」で人気が出て、書籍化された作品です。 連載のかなり初期から追いかけていたお気に入りの話なので、お布施の意味も込めて購入しました。いやイラストと加筆修正の文字にも大いに心惹かれたんですけどね。 改めて最初の方を読むと、異世界に転移したての幸助のまだ初々しい駆け出しぶりが、なんだかとっても懐かしくかつ微笑ましかったですvv 内容的にはほぼWEB版と同じでしたが、キャラの外見描写とか心情とか行動の背景などけっこう細かいところに加筆があって、WEB版をお読みの方でも楽しめる1冊ではないかと思いました。 特にWEB版ではちょっと唐突感があった『歪み』についても最初の方からさりげなく触れられているし、ホルンの幸助に対する感情にも一応フォローが入ってます。 あと今後に繋がりそうな、新たな伏線っぽいエピソードもいくつか追加されていたので、2巻目以降もなかなか楽しみですね。
ただ、いくつか気になった点はありました。 主にあげてみると、だいたい三点でしょうか。
1.幸助があまりにも元の世界への未練を見せなさすぎる。 2.挿し絵と本文の食い違い。 3.貨幣価値が途中で変動している。
1は……オンライン小説のトリップものではけっこうありがちなのですが、主役の転移前の生活について、ほとんど触れられていないし、本人もまったく思い出にふけろうとかしていません。米と味噌が食べたいなどといったことは口にするものの、たとえば両親に心配かけてるだろうな、友人達はどうしているだろうとか、全然考えもしてないんですよ。そもそも両親が健在なのかどうか、それすらも不明です。 WEB版に比べると転移時の状況に多少の書き足しはありましたが、それでもいざお金を払った商業出版物として読んでみると、まだまだ描写が浅いように思えます。その点について今後加筆されるかどうかが、注目のしどころではないでしょうか。
そして2については、多少のイメージの違いは別にうるさく言うつもりもありません。読む人それぞれに、思い描いていたいろんなイメージがあるのでしょうし、絵柄もけっこう素敵な人が描いてらっしゃいますし。 ただカラー口絵の、黒竜を倒した幸助が気絶して倒れているシーン。これだけはいただけません。『肩の粉砕、右腕の複雑骨折と裂傷、胸部骨折、全身の骨にひび、全身打撲で致命傷』という大怪我を負っているはずの幸助が、このイラストではただ昼寝してるようにしか見えません。せめて血と汚れぐらいは描くべきだったでしょう。本文でも乾いた血の跡にパニック起こすシーンがありますし。イラストで流血がNGだったのなら、無理にこのシーンを口絵にする必要はなかったと思います。この場面をライトな絵にしてしまうことで、話全体の重みがいささか軽くなってしまったように感じられました。
最後の3については、単純な計算&校正ミスでしょうけれど。 この話はもともと貨幣価値が入り組んでいるので、最初に換算表をつけてほしいぐらいなのです。そのうえで自分でメモ書きながら読んでいたら、『四人家族の一月の生活費が銀貨20枚』だったはずなのに『銀貨30枚で一般家庭が三ヶ月暮らしていける』になっていたり、『銅貨1枚20ルト』のはずが『200ルトの依頼をこなして銅貨五枚もらう』となっていたりと、微妙に食い違いが。 細かいところではあるのですが、そう言うところのつじつまがあっていてこそ、話に深みが出てくると思うので、非常に残念でした。 ぶっちゃけた話、カラーイラストあんなにつけなくてもいいから、むしろ貨幣の換算表と、あと主要都市入り世界地図を書いてほしかったです。今後の話運びのためにも。 ああ、それにウィアーレにオッドアイ属性つけるぐらいなら、彼女こそカラーで出すべきだったんじゃないでしょうか。宿屋の娘シディよりさ(苦笑) まあウィアーレは2巻目以降、いくらでもカラーにするチャンスはあるんでしょうけどね。
と、そんな感じで文句はつけてみましたが、それなりに悪くはなかったと思います。 んーー、WEB版の思い入れをなしに手に取ったなら、平均の★三つくらいをつけてたかな。とりあえず続刊に期待と言ったところです。
追記: 自分が判りやすいように、適当に作ってみました。 あくまで概算&適当です。
・貨幣換算表
閃貨1枚 | 金貨10枚 | 12万ルト | 600万円 | 金貨1枚 | 銀貨30枚 | 1万2千ルト | 60万円 | 銀貨1枚 | 銅貨20枚 | 400ルト | 2万円 | 銅貨1枚 | 石貨20枚 | 20ルト | 1000円 | 石貨1枚 | | 1ルト | 50円 | 銀貨20枚が四人家族の平均月収ということで、40万円で換算してます。 閃貨1枚でおよそ1年3ヶ月の収入とのこと。
・地図
……都市の位置とか、フィーリングで適当に描いてます(汗) そして拾い落としもきっとあります。 あくまで参考程度ってことで。
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No.4189
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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