2011年12月17日の読書
2011年12月17日(Sat)
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本日の初読図書: 時は明治も半ば。 編集長と二人きりの小規模出版社に務める雑誌記者 里見高広は、帝都随一と名高い絵描き有村礼と親交を持っていた。天才肌にありがちな気難しさを持つ礼は、仕事を選ぶし謝礼も高額を要求するのが常だったが、高広の出版社にだけは安価で快く挿し絵を描いてくれる。 何故なら彼は、英国の雑誌ストランド・マガジンに連載されているかの有名な探偵小説の熱狂的なファンで、英文のそれを高広が訳してくれるのを、非常に楽しみとしているのである。 そしてたまたま高広がとある事件の解決に一役買ってから、「君がホームズで僕がワトソンだ」と称しては、様々な事件の謎解きをねだるようになった。 行方不明になった中学生の捜索、宝石店での真珠盗難事件の真相、売られる直前に観覧車上から忽然と姿を消した見せ物小屋の人魚の行方に、怪盗ロータスから金満家に送られた絵画盗難予告の真実。そして水練場に行われる執拗な嫌がらせの理由 ―― 挿し絵を描いてもらえれば、それだけで雑誌の売り上げが数倍に伸びるという売れっ子画家を相手に、一介の記者が逆らえようはずもなく。 心優しく情に篤い一般人である高広は、天才肌のエキセントリックなワトソンと共に、様々な事件へと首を突っ込むことになるのだった。
常識人で腰の低いホームズと変人で高飛車なワトソンという、一般的なパターンとは逆を行くキャラ造形のミステリー。短編五作を収録。 これがなかなかおもしろくて。高広さんは厳密に一般人というには、家庭環境も武道の腕も脳味噌のまわり方も、いささかスペック高めですが、それでもその人柄はいたって普通の好青年です。一方礼さんは「有村礼が描く美人画に似ている」と言えば御婦人方への最高級の賛辞になるという天才画家なうえ、女性と見まごう絶世の美貌の持ち主。その才能と己の容姿をきっちり自覚し、自信は満々。口は悪く仕事は選ぶし、気に入らない人間は一顧だにしないというエキセントリックぶり。 でもって話の語り手はお約束通り常識人の高広さんの方なのに、最終的に謎を解くのもやっぱり高広さん。それでも最後までネタバレさせず、ちゃんと爽快感を感じさせてくれて、なおかつ礼さんもけして添え物ではなくちゃんと活躍している。ううむ、見事としか言いようがありません。 起きる事件も殺人などの陰惨なものはなく、せいぜい偽札作りとか誘拐とか窃盗、ちょっとした詐欺などで、結末も穏やかでほっとできるものが多く、安心して読み進めることができました。 美しいものに対する描写やスタンスも、なんとなく独特で心にしみたり。 あとゲストキャラなどもなかなか魅力的でした。続きの話で再登場もするし、とても丁寧に世界が構築されていると思いました。 ……ただ収録順が執筆順ではないためか、あるいは単に私が読み落としただけなのか。時々「あれ、こんな情報提示されてたっけ?」とか「各話の時系列がいったりきたりしてないか?」と思うような部分もあったりするような。 そのあたり、もう一度じっくり読み返してみたいと思います。 二巻と三巻には別キャラ視点の話などもあるそうなので、そちらも楽しみですvv
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No.3524
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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