2011年10月09日の読書
2011年10月09日(Sun)
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本日の初読図書: 敏腕ビジネスマンの春川司には、弟がいた。二十代も後半にさしかかりながら、劇団運営にうつつを抜かし、まともな定職にもついていない甘えたな青年、巧(たくみ)である。 そんな弟が、ある日泣きついてきた。 「金払わないと訴えられちゃうよ!」 なんでも運営方針の違いから半数以上の団員がごっそりと出ていき、それまで負債を立て替えてくれていた事務方も、辞めるにあたって金を返せと言っているのだという。その額、実に三百万。 司はそもそも弟の演劇を良く思っていない。それは売れない役者のまま、身体を壊して死んでいった父の姿を覚えているからだ。確かにいじめられっ子だった巧が、前を向いて立てるようになったのは演劇のおかげだったし……公演はすべて見て、びっちりアンケートを書いたりもしているが……それとこれとは話が別だ。 演劇など辞めてしまえばいい。劇団などこれを機に潰れてしまえ。夢を諦めるのに必要な条件? それなら全力でやって折れることだ。 そこで司は三百万を用立ててやる代わりに条件を出した。それは二年以内に劇団の収益のみで借金を返済すること。それができないのなら劇団を潰せ、と。 幸いにも劇団には、期待の新星、プロ声優の羽田千歳が加わっていた。そして脚本家の巧を含めて、一癖も二癖もある劇団員九名。 なんだこのどんぶり勘定の収支は。経費は節減。締められるところはとことん締めろ。ただし使うべき所で金は惜しむな。守銭奴けっこう! 金は正義だ!! 運営に鉄血宰相・春川司を加えた劇団シアターフラッグは、怒濤の二年間を新たに走り始める ――
いやあ……有川さんにこの手のノリと勢いと夢と情熱の話を書かせたら、ほんとに素晴らしいですね。 今回は「演劇さえやれていれば幸せ」、「好きなことをやる為なら赤字もしかたない」というぬるい意識の貧乏劇団員達に、「プロとして金をもらうなら商売だ。収益を上げろ」と現実を突きつけた主宰者兄が、ばっさばっさと鉈をふるってゆきます。 この兄の素晴らしいところは、なんだかんだ言いながら、結局は弟を応援しているところ。二年間猶予をやると決めたなら、その間は全力でバックアップすると宣言し、実際フェアな位置に立ってものすごい勢いであれやらこれやらこなしまくるのです。そこには隠しようのない『愛』があります。いや腐った目線ではなくて。 劇団の人間模様もなかなかおもしろいですね。いろんな意味(恋愛やら演技力やら運営方針やら)での嫉妬や葛藤も絡みつつ、それでもみんなが気持ちよく一致団結して、ひとつの舞台を作っていく爽やかさ。 ちょっと人間関係放りっぱなしかなと思ったら、続編があるそうなのでこれは予約しておかなければ……
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No.3416
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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