よしなしことを、日々徒然に……
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 2011年09月23日の読書
2011年09月23日(Fri) 
本日の初読図書:
4150116393ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)
ウェン スペンサー エナミカツミ
早川書房 2007-10-24

by G-Tools
男性が人口の5%未満しか産まれない世界。
クイーンズランドは当然、女王が治める女性主体の国だった。女性が働き、女性が武器を取り、そして多くの姉妹で夫を共有する。男子は家族の世話をしながら家の奥で守られて過ごし、年頃になると姉妹達の夫を得るべく交換婚に出されるか、金と引き替えに売られていく。そう、この世界では男子は家族の共有財産であり、権利などというものは存在しないのだった。
地方の地主ウィスラー家の長男、ジェリンはもうすぐ成人の16歳を迎える。彼にはなんと三人(!)もの弟が存在するが、二十八人いる姉妹達のためにもできるだけ良い条件の夫と交換されるか、売られるべき立場にある。それは誰にとっても当然のことだったが、現在婿入り先の最有力候補である隣の地主は、とても良い相手とは言えなかった。恐れ悩むジェリンに長姉エルデストは、「うちには他にも男子がいるのだから、最初の求婚を無理に受けることはない」となぐさめてくれるが、それでも不安は消えない。
そんなある日のこと、母や姉たちの留守中に近くの川で若い兵士(女)が襲われているのを、妹の一人が発見した。かろうじて賊どもを追い払った妹だったが、まだ幼く非力なため、大人の身体を運ぶことができない。その時家にいるただひとりの大人だったジェリンは、勇気を鼓して危険ななか馬を駆り、兵士を家へと運んで手当てしてやった。
やがて意識を取り戻した兵士は、なんと王女のひとりオディーリア。王家が発注していた武器を奪った賊を追っているうち、返り討ちにあい、危うく命を落としかけたのだという。彼女を迎えに来た王家の長姉エルデストレン王女は、心優しく知的でしかも美しいジェリンに心惹かれる。しかし地主とはいえ農家と王家とでは、とても結婚などできるわけがない。
だが……ウィスラー家には秘密があった。かつて祖母の代に現王家の密偵として働いていた彼女達は、王家が二つに割れた内戦の際、敗者となった側から秘密裏に王子を略奪し、夫としていたのだ。つまりジェリンにはわずかとはいえ王族の血が流れているのである。
それを知ったレンは現大母女王に、彼に求婚したい旨を乞うた。女王は夫を共有することになる妹達のうち、現在成人している五人全員が賛成するならば許そうと答える。そうして彼らの人となりを見きわめるため、ジェリンとその姉達を夏の社交シーズンの間、王女を助けた礼を名目として王宮に招待することにした。
良い条件の夫(ジェリンの売り先)を見つける素晴らしい場に巡り会えたと、姉達は喜びながらも慎重に招待を受けた。そうして迎えられた貴族の間で、やはりジェリンの美貌や優雅な立ち振る舞いは熱い注目を浴びる。
だがやがて、彼らは王宮転覆を狙う巨大な陰謀へと巻き込まれてゆき……

昨夜遅くに読了。これも三日ぐらいかかりましたが、かなり面白かったです。
それにしても、はたしてこれもハーレムものと言って良いものか(笑)
世界観は、西部劇と産業革命の頃を足して二で割ったような感じかな? 「南北戦争時代の少し前」というレビューもありました。
三十二人の姉妹兄弟に四人も男性が含まれているということで、種馬として最高の血筋だと賞賛される世界。裕福な家では複数の夫を買うことも可能だけれど、基本的には十〜三十人ぐらいの異母姉妹たちで一人の夫を共有し、産まれた子供達はすべて一家の「きょうだい」として育てられる。つまり一夫多妻が当たり前。
しかし男性の地位はけして高くなく、一般家庭では普通文字も読めません。ろくな教育も与えられぬまま、ただ「従順であれ」としつけられ、家事をするのがその役目。それどころか『ひとさらい』に逢わぬよう、つねに姉妹達に守られて、家からほとんど出ることすらできない生活を義務づけられています。
ジェリンはそんな中では異色の存在。元密偵の祖母と、元王族の祖父を持つ彼は、『男だてら』に読み書きも武器の取り扱いも教えられ、乗馬や鍵開けまでこなします。もちろん男性の勤めである家事や礼儀作法もしっかりと仕込まれており、女性達に誘いを受けると頬を染める奥ゆかしさ。男性にしてはひどく知性的で思慮深く、幼い子供たちを優しくかつしっかりと面倒見る姿に、王女たちは皆あっという間に陥落してゆきます。
ちなみに本人は己の美貌に自覚がない、ちょっと天然気味な部分も楽しいところ。なにしろ自分以外の男性を目にすることすら稀な世界ですからして。

そう、この世界構築の妙が素晴らしいのです。出てくる女性達の、なんと『男らしい』こと。ウィスラー家のエルデストは、思慮深く責任感が強くて家族を愛し、ここぞと言う場面では武器を手に凛々しく戦う格好良さ。レン王女と副官のレイヴンは、軍を指揮して賊を相手に大砲ぷっぱなすし、行方不明だった王女ハリーは大胆にも敵方に潜り込んで潜入捜査しているしvv
それに比べて男達は『たおやか』で、常に搾取される側。中には売淫宿クリブに売られ、夫を買えない女達に一夜の種馬として酷使される哀れな存在もいます。レイプという言葉が適用されるのも、男性の側。
読んでいてときどき頭がこんがらがってきます。特に一夫多妻なのに女性側に優先権がある相続・姻戚関係など、なにがなんだか訳ワカメ(苦笑)
でもそれがたまらん面白いのです。

ちなみに難点は、キャラクターの外見描写が少ないあたりでしょうか。服装の説明もいまひとつ判りにくいです。 ジェリンが着ている外出着は、はたしてズボンなのかスカートなのか??
特に表紙絵はどれが誰だか、なかなか判らなくって参りました。手前の女の子と左の緑の服の女性なんて、かなり最後の方まで「誰これ?」みたいな感じでしたよ。右側に書かれている主役(男)も、途中までその姉(コレル)だと思って読んでいたり。 っていうか、あちこちの感想読むとあの二人、髪染めたハリーと同じくエルディじゃないのか!? まさかコレルとブラッシュ!?!? だったら確かにキャラのチョイス間違ってる……

ストーリーそのものはなんというかお約束的な感じですが、文章も翻訳物にしては読みやすいし、設定やキャラ造形が魅力的なので、これはかなりオススメします。
図書館とかにあったら、是非、手に取ってみてはいかがでしょうか。
No.3384 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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