<<Back  List  Next>>
 楽園の守護者  第十六話
 ― 受け継ぎしは ―  第二章
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
 
神崎 真


 その部屋は、蜂の羽音を思わせる、低いうなりに満たされていた。
 はるかな、見上げたところでどれほどの距離があるかも判らない高さから、白い光が降り注ぎ、死角のない明るさで室内を照らし出している。
 広大な空間を取り囲むのは、これまで目にしてきた他の場所と同様の、殺風景な金属板。磨き上げられた鏡のように、エドウィネルの姿を映す黒い床は、はたしてなにで作られているのか、乗馬靴の踵に固い音を響かせる。
 城の大広間よりもなお広いその空間の一番奥には、例によってモザイクのはめ込まれた台座が、幾つも林立していた。
 低いものはエドウィネルの膝丈ほど、高いものは身長の数倍もの高さがあるだろうか。
 そして。

「…………」

 台座に囲まれたその中央を、エドウィネルは無言で見上げる。
 凍りついたように戸口で立ち止まっていた騎士団長が、あえぎに喉を鳴らすのが聞こえた。
「セ……セフィア……」
 紡がれる言葉はひどく掠れ、その単語を知っている者でなければ聞き取ることさえ難しかっただろう。
 そこに存在したのは、枝を広げる見事な大樹だった。
 土もなければ水も風もなく、あたりを照らし出すのは熱を持たない冷たい光のみ。そんな、生命の息吹など感じられない閉ざされた空間で。
 見上げるほどに丈高く、視界に収まり切らぬほどの枝を広げたそれは、しかし目を奪われるほどに美しかった。
 葉のひとつも存在せぬ枝々は、ともすれば死んだ枯木こぼくを思わせる風情だ。だが、それは明らかに生命の気配を身にまとっている。なめらかなその樹皮は、ほのかな光すら帯びた白銀色で。
 銀で作られた、巨大な樹の彫刻 ―― 言葉で説明すれば、そうなるだろう。
 だがそれは、けして人の手で刻まれた模造品レプリカなどではなかった。
 その枝の一本一本にまで命を、力を宿らせた、白銀の樹木。
 それは疑う余地もなく、破邪騎士団セフィアールの、そしてセイヴァン王家の紋章に描かれた、大樹の姿に他ならない。


 ―― ああ、そうだ。


 広がる枝を見上げていたエドウィネルは、そこここに実るやはり銀一色のの実を認め、思った。
 祖父は少なくとも、何度かはこの部屋に足を踏み入れたことがあるはずだった。その木の実を、破邪騎士が叙任の眠りにつく際、与えられる『それ』を ―― その手にとる為に。
 上を向いていた視線を落とし、エドウィネルは大樹の根本へと目を向ける。そこには比較的小振りな台座がいくつか固まっていた。硬い床に足音を響かせながら、エドウィネルはそちらへと歩みよってゆく。
 そうして腰丈ほどのひとつの前に立ち、見下ろした。
 その台座には、黒硝子の板がはめ込まれていた。エドウィネルの視線を受けると、表面がほのかな光を放ち始める。エドウィネルの額で額環の宝珠が呼応するようにきらめいた。
 やがて、細い線と点が黒硝子の表面に浮かび上がる。
 見慣れない ―― しかし別の意味では見覚えのあるそれは、この大陸全土を描き出す簡素な地図を描き出していた。白い線で構成された地形の中に、いくつもの赤い光点が散らばっている。なかでも大陸南東部、まさに国家セイヴァンが存在するあたりに、その赤光は集中して存在していた。さらにそのうちの二つ、星の海ティア・ラザとパルディウム湾に重なるそれが、ひときわ大きく、そしてせわしなく明滅している。
 エドウィネルは右手を挙げると、しばしためらうように硝子の上でさまよわせた。が、やがて意を決したように、パルディウム湾にある光点へとその指を触れさせる。
 そして ――


 石段に靴が触れるかすかな音を耳にして、フォルティスははっと面を上げた。
 国王の寝室で隠し通路の入り口を守っていた彼は、人の気配を感じ取り、息を呑んで暗い通路の奥へと神経を集中させる。
 待ち望んでいた足音は、しかし何故かひどくゆっくりしたものであった。ひどく不規則で、しかも途中で幾度も立ち止まっているようだ。
 眉をひそめた彼は、息を殺し、さらに強く意識を集中させる。
 と、あえぐような呼吸がその耳に届いた。目をみはったフォルティスは、思わず数歩入り口へと駆け寄る。
「……殿下ッ?」
 国王が眠っているその寝所で、大きな声を出すことはできない。
 ささやくような、しかし精一杯強い口調で声をかけた。その胸中では内部をのぞき込むべきか否か、激しい葛藤が生じている。
 この通路へと入ることが許されているのは、騎士団長と王位継承者のみである。忠実な臣下であるフォルティスが、勝手に足を踏み入れることなどできるはずもなかった。が、しかし彼は同時に、セイヴァン王家よりもエドウィネル個人に対し忠誠を誓っている身である。エドウィネルの身になにか起きたかもしれない状況を、看過していることもまたできる相談ではなかった。
 一瞬の逡巡を救ったのは、通路の中から聞こえてきた切れ切れの呼びかけだった。
「だ、誰か……手を、貸してくれぬ、か……?」
 助けを求める掠れたその声に、フォルティスは今の今まで感じていた迷いもすべて忘れ、通路へとためらいなく半身を入れた。
「殿下!?」
 暗い階段を見下ろせば、そこには明かりひとつ見て取ることができない。素早く寝室にとって返し、手近な角灯を取り上げる。目を丸くしている侍医には目もくれず、フォルティスは再び通路へと飛び込んでいった。明かりを掲げ、声の聞こえてきた方を眺めやる。そして次の瞬間には石段を駆け下りていった。
 闇に沈んだ中を手探りのように登ってきていた騎士団長は、その背にぐったりと力の抜けた身体を背負っていた。肩口に伏せられたその金髪を見るまでもなく、それはエドウィネル以外の何者でもありえず。
 まろぶように駆け寄ったフォルティスは、何をもさておいて主人の様子を確認した。充分とは言えない角灯の光で素早く全身を照らし、どこにも傷らしいものがないことを確かめると、伏せた面へと光を向ける。
 きつく目を閉じ眉を寄せたその顔には、びっしりと汗が浮かんでいた。頬に手を当てれば驚くほどに熱いが、顔色は薄暗い中でもはっきりと判るほどに悪い。息も荒く、呼びかけても全く反応がない。完全に意識を失った状態だ。
「いったい何が……」
 問いかけるフォルティスに、騎士団長はすぐには答えを返せなかった。エドウィネルに劣らぬほど乱れた呼吸を、懸命に整えようとしている。この通路がどれほどの長さを持っているか判らないが、大柄な部類に入るエドウィネルを背負って登るのは、老齢な騎士団長にとってかなりの重労働だったことだろう。
 それに気づいたフォルティスは、角灯を石段へと置いた。そして脱力したエドウィネルの身体を代わって受け取る。
 どうにか寝室へと運びあげると、侍医が駆け寄ってきた。脈をはかろうと手を取り、その熱さに顔色を変える。
「……王位継承の際、新王が体調を崩されるのは良くあることだ。だが……」
 騎士団長の言葉に侍医がかぶりを振った。
「確かに、発熱や目眩といった症状を見せると記録には残されております。ですが、これほどのものでは……」
 前回の王位継承はもう五十年も昔のこと。当然ながら、この侍医が当時のことを直接見知っているわけではなかった。先代どころか先々代ですらない以前の侍医が書き残したものと、さらにそれ以前の記録のみが頼りな状態である。それによれば確かに王位継承にあたり、新たな国王は多かれ少なかれ体調の異常を訴えるとのことであった。その症状はおおむね発熱や目眩、頭痛といったものだが、根本的な治療法はなく、鎮痛剤や解熱薬などで症状を抑えつつ数週間をかけて癒してゆくのだという。
 だが、自身の足で立つこともできぬほどの重態となった例は、侍医の読んだ記録にも騎士団長に語り継がれてきた口伝にも存在していなかった。それははたしてエドウィネルの体質によるものなのか、それとも ――
「とにかく、寝室にお運びしなければ」
 寝椅子に横たえたエドウィネルを侍医に任せ、フォルティスが看病の手配をするべく足早に部屋を出ていった。


*  *  *


 エドウィネル昏倒の知らせは、王宮内でもごく限られた者にしか伝えられることはなかった。
 国王自身がいつ崩御するかも判らぬ現在、その跡を継ぐべき ―― 事実上は既に継承を終えたとはいえ、それはあくまで秘密裏に過ぎず、公式な王位継承はまだ行われていない ―― エドウィネルが意識不明の状態にあることを公表するのは、はばかられる状況であったのだ。故に表向きは公務に忙しく、謁見すらままならぬのであるという形を取らざるをえなかった。
 実際、直接に謁見を求める者の多くは、国王に対する見舞いと次期国王に対する機嫌伺いがほとんどで、それら以外の危急を要する用件については、たいていが書類をもって為されるものであった。故にその秘密は奥向きと重臣のごく一部、侍従の間で充分に保つことができたのである。
 レジナーラ=キエルフもまた、それを知る立場にはなかった。
 王宮内でも奥向きと王位継承にまつわる部分を司る者だけが知るその事実は、王太子の生家たるアルス公爵家の当主にすら、伝えられることはなかったのだ。当然コーナ公爵も例外ではなく、まして一介の臣下に過ぎぬレジィなど、考慮のうちに入れられることすらなかった。
 もしも ―― フォルティスにいま少しの余裕が存在したならば、あるいは事情が変わっていたかもしれない。彼は現在、王太子がコーナ公女と交わしていた密書の存在を知っていた。その内容までは把握しておらずとも、彼らの間で交わされる情報が、公爵領の平穏に密接に関わるものだと察してはいたのだから。
 しかしこのとき、未だ公爵領における妖獣の大量発生は起きておらず、フェシリアとロッドはただ密書による弾劾の結果を待っているにすぎなかった。破邪騎士アーティルトとカルセストは、バージェスの案内のもと、公爵領目指して川を下っている途上にすぎなかった。
 故に繁忙を極めるフォルティスが、レジィに連絡する時間をとることができなかったのも、ことさら責められることではなかっただろう。またレジィが見とがめられる危険を冒してまで、無理に王太子へと接触を図ろうとしなかった、そのことを責める者もいないだろう。


 そして ――


 エドウィネルが床に伏したその日から二日後。
 王宮内の一部では、国王と王太子の欠けた穴を埋めるべく、ひそやかな、しかし激しい混乱に見舞われていた中 ――


 国王カイザールは、眠るように息を引き取った。


 いまだ高熱に意識の混濁するエドウィネルは、それを知ることなく。
 遠き空のもと、公爵領に到着したアーティルトらや、彼らと共に剣を振るうロッドもまたそうと知りはせず。
 ただ侍医と忠実な騎士団長にのみ看取られて、カイザール=アル・ディア=ウィルダリア=フォン・セイヴァンはその生涯を閉じたのである。
 享年七十歳。
 歴代のセイヴァン国王としては異例の長寿を誇り、家臣と国民に愛された名君の最期は、ごく静かな、ひっそりとしたものとなったのだった。


 本来であれば、すぐにでも城下に触れを出し、その死を悼むと同時に新王の誕生を大々的に祝うべきこの時、しかしエドウィネルは民の前に立ち、王位継承を宣言するなど叶わぬ状態にあった。故に国王の崩御もまた、エドウィネルの体調が快復するまではと厳重に秘されたのである。


 ―― 後にこれらのことを知ったエドウィネルは、幾重にも己を責めることとなる。


 自らの力不足で王位継承を満足に行えなかった事実も、それによって国王の死の床に立ち会えなかったことも、そしてその死を秘させなければならなかった己のふがいなさも。
 また、もっと早くにすべてを知っていれば、今この時、『彼』に王都を空けさせずにすんでいたということにも ――


 しかしこの時の彼は、ただ寝台に横たわり、周囲の状況などなにも知ることなく、荒い息を吐いているしかできずにいた。
 それもまた、けして責められうるべきことではなかったのだけれど。
 それでも他でもないエドウィネル自身こそが、この時の己を生涯許すことはなかったのである ――


*  *  *


 コーナ公爵領において、その知らせを最初に受け取ったのは公女フェシリア=ミレニアナであった。
 公爵家では、訓練された鳥を使い、王都からの情報を通常必要な時間の三分の二で入手している。本来であれば船を用い、三日をかけてもたらされるはずだったその情報は、わずか二日で彼女の手へと届いたのだった。

 国王、カイザール=ウィルダリアの崩御。

 実際にはそれは、真の崩御からさらに三日を経た後に発表されたものであったが、この段階での彼女が、そうと知るはずもなく。
 執務室で腹心の文官ただ一人を傍らに書簡を開いた彼女は、しばしなにも口にせぬまま、ただその文面を凝視し続けていた。
 妖獣の襲来に町がさらされてから、すでに七日。
 王都に送った知らせを受けて、つかわされたであろうセフィアール達は、もういつ到着してもおかしくないはずなのに、と。
 破邪騎士三人のうち、すでに二人が倒れた状態で、応援の到着を祈るような気持ちで待ち望んでいた彼女らの元に、届けられたその知らせは。

「 ―――― 」

 白く細いその指が、書簡を握りしめる。震える指の中で、紙が乾いた音をたててひしゃげる
 そのことに気づく様子もなく、フェシリアはきつく唇をかみ締めていた。
 いかに予測されていたそれであったとはいえ、国王崩御ともなれば、王宮内にひどい混乱が生じているだろうことは、想像に難くなかった。ましてこの国においては、国王崩御が同時に王太子の即位をも意味している。
 そのような状態で、いかに有力貴族の領地からの訴えとはいえ、妖獣発生の報せに迅速な対応を望めるかといえば……否、むしろ有力貴族であればこそいっそうに、ある程度は自力での対処が行えると見なされて不思議はない。
 もちろんかの王太子本人であれば、国内からの訴えを無碍むげにするとは思えないが、今の状況で彼がその報せに手ずから目を通せるとは思えないし ―― 仮に目を通すことができたとしても、王位継承者たる彼はもはや自由に動ける身ではなかった。
 加えて言うならば、新国王の即位の儀に、破邪国家セイヴァンを象徴するともいえるセフィアール騎士団の存在は不可欠だろう。そんな彼らが、一連の儀式が終わるまで王都を離れるだろうか。それどころか、現在休暇中という触れ込みになっているアーティルトやカルセスト、エドウィネルの使いとして公爵家に滞在しているロッド=ラグレーら三人もまた、至急戻るよう要請があることすら考えられた。無論、その要請に彼らが従うとも、また物理的に従えるとも、思えはしなかったが ――


「ラスティ=ガーズ」
 主人のただならぬ様子に息を呑んで控えていた侍従は、低い呼びかけに、は、と声を返した。
「破邪騎士殿がたの様子はどうなっている」
「……アーティルト様は、どうにかとこを払われたとのことです。しかし、剣を振るえるようになるには、まだもう数日が必要だとか。ですがロッド様の方は……」
 言葉を切ってかぶりを振ってみせる。
 数日前、度重なる妖獣の襲撃の中でも最大の ―― 巨大な三つ首の大蜥蜴がもたらした被害は、あまりにも大きなそれだった。
 死者五名、重傷者八名、その他命に別状のない軽傷者は数知れず。町の建物や道路施設なども多くが損傷を受けた。
 だが一番の痛手と言えるのは、三名の破邪騎士達のうち二名が戦線を離れる羽目になった事実だ。
 槍とも見まごう巨大な棘状の鱗でその胸を貫かれたアーティルトは、一時命すら危うかったという。
 そしていま一人の騎士、ロッド=ラグレーは。
 表向きは、休むいとまもなく重ねられた破邪に限界を超え、過労に倒れたと、そういうことになっている。事実、一人公爵領に残ってからの彼は、連日兵達の訓練に明け暮れ、またカルセストとアーティルトが駆けつけるまでの数日などは、ほとんど眠ることすらせぬまま妖獣を相手どっていたのだ。疲労の極にあっただろうことは皆が ―― 彼に対し反発を覚えている官僚達でさえもが ―― 理解しており、昏倒の理由を疑うものは誰一人として存在しなかった。
 そこに公にされなかった経緯が存在することを知るものは、残る二人の破邪騎士を除けば、その場に立ちあったバージェスと、その報告を受けたフェシリア、腹心の文官ラスティアールの三名のみである。
 無論のこと、バージェスとラスティアールはその場で二度とその件を口に上らせることのないよう、フェシリアから厳重に言いわたされている。
「医師の話では、呼吸も脈拍も極端に減っているのだとか。体温も低下しており、このまま意識が戻らなければ……」
 言葉を濁す侍従を、フェシリアは睨みつける。鋭い眼差しにラスティアールは口をつぐんだ。が、表情は暗いままだ。
 そもそもロッドはその以前にも、誰にも知られぬまま毒物を摂取している。本来であればフェシリアが口にするはずだったそれは、普通の人間であれば致命傷となるだろう種類と量の劇薬だった。本人は支障ないとうそぶいていたが、あの男が素直に不調をあらわにするとも思えない。
「かの方はセフィアールだ。そう簡単にどうこうなどなるはずがあるまい」
 フェシリアの言葉も、ラスティアールには己に言い聞かせようとしているとしか受け取れなかった。
「フェシリアさま……」
 かぶりを振るラスティアールから視線をはずし、フェシリアは小さく息を吐く。
 そうして低い ―― すぐ傍らに控えた彼ですら、聞き取るのがやっとというほどの低い声で呟いた。
「われらが祖なる建国の王。エルギリウス=アル・ディア=ウィリアム=フォン・セイヴァンは、王家の祖であると同時に、最初の破邪騎士セフィアールでもあったという」
 唐突に告げられた、現在の状況とはまるで関わりないと思われる言葉に、ラスティアールは反応を選びそこねた。
 淡い色の目をしばたたかせる彼に告げるとも、ただひとりごちるともつかぬ口調でフェシリアは続ける。
「当時ただひとり破邪の力を備えていたかの王は、同時に唯一セフィアールの身を癒すすべをも心得ていた、と ―― この意味が判るか?」
「は……」
 それは破邪騎士の傷を癒すことができる、破邪騎士。
 ただ一人の破邪騎士が持っていた、破邪騎士の傷を癒すすべ。
 巷間に流布する、伝説は語る。
 かつて祖なりしかの王、エルギリウス=ウィリアムは、どれほどの手傷をその身に負ったとしても、それらは瞬く間に回復し、けして妖獣に膝を屈することはなかったのだと……
「ロッドどのはこの程度では死なぬ。死ぬはずがない。ただ……時がかかる。それだけのことよ」
 呟くフェシリアの言葉が持つ意味を、この時のラスティアールは理解することができず。
 ただ無言で控えるその前で、フェシリアは無言で固くその拳を握りしめていた。


<<Back  List  Next>>



本を閉じる

Copyright (C) 2009 Makoto.Kanzaki, All rights reserved.