はらはら ふわり
風に乗って、花弁がおどる。
ふわり ひらひら
ひらり ふわり
空を見上げれば、うっすらとした雲がほのかにたなびく、花曇り。
そこに枝を広げた木を飾る花々は、薄紅というよりも、むしろただただ白く。よく目を凝らせばその中の、花弁の中心だけが時おりほのかに色づいていて。
冬の間は乾いた枯枝のような、そのほかの季節は緑葉のしげる、何の変哲もないただの木が。
この春だけは、見事に姿を装う、その不思議さは ――
さやさや さやさや
寒さではなく、心地よいさわやかさを感じさせる風が、枝を揺らし、花を散らす。
ふりそそぐ白い欠片が、地面に、肩に触れてはまた舞い、戯れるようにおどる。
首の後ろで束ねた長い髪も、風にそよぎ、花びらをまとわせて共に揺れた。
「おーい、なにやってる。始めるぞ!」
離れた場所から、呼び掛けてくる声。
ひときわ見事な花の下、広げたシートの上にはとりどりの料理と酒、肴。
そしてこちらを向いて笑う、たくさんの笑顔。
ふりそそぐ光は柔らかく、あたたかい。
風は優しく頬をなでる。
うららかな日。
おだやかな、春の日 ――
―― すみません、オチはないです。休日に見に行った桜があんまりきれいだったもので。
Copyright (C) 2007 Makoto.Kanzaki, All rights reserved.