1.向日葵。 ただまっすぐに光を仰いで。
 花から連想5のお題より】
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
 
神崎 真


 かの王太子のことを思うにつけ、フェシリアはいつもどこか複雑な思いを抱かざるを得ない。
 この妖獣が数多く跋扈する国において、欠くべからざる王家の血筋。
 本来であれば、自分と同じ公爵家の跡取りであったはずの彼は、否応ならぬ事情により、いまや唯一の王位継承権保持者として、王太子という地位にある。
 彼がけしてその立場を望んでいた訳ではないことも、もともと受け継ぐはずであった領地を今も深く愛していることも、彼女は良く知っていた。
 それは、彼女の内にも同じように存在する感情であったから。
 未来の王妃として、かの方の傍らに立ちたいだなどと、彼女はけして望んではいなかった。
 自分には愛する公爵領とそこに住まう民達があり、それらを手放してまでそんな地位を得たいと、そう望むようなことはなかったからだ。
 それはまるで、合わせ鏡のような。
 男と女。二大公爵家の、かつての次期継承者と、現在のそれ。
 わずかな時間言葉を交わしただけで、すぐに判った。
 かの方と自分は、ひどく良く似ていて、それでいてまったく違う場所に立つ存在なのだと。


 けして望みはせぬままに、けれど国民くにたみのためを思い、王太子の座についた青年と。
 けして周囲から望まれなどしていないのに、自らの意志でコーナ家次期継承者エル・ディ=コーナとしてあろうとする自分と。


 どこか似ていながらも、決定的に非なる、その存在。
 かの方の心の内には、野望と呼ぶべきものなど欠片もなく。ただただ純粋に至高なる玉座をまっすぐに見上げ、いずれは己がそこに座すのだと、慢心することなく静かに覚悟を定めている。


 そんな、高潔な主君を持てたことを誇らしくも思い、そして同時に眩しくも思う。
 己の卑賤さを、その輝きが浮き彫りにしてしまうのではないかと、そんなふうにも感じられて。


 故に彼女は、誰よりもかの存在を尊敬し、同時に妬ましくも感じている。
 やがてはこの国の誰よりも尊き存在となる、セイヴァン国王の後継者。
 陽光の輝きを放つ髪と緑葉の瞳を持つ、かの王太子殿下を。


 向日葵ひまわり ―― それは輝ける太陽をふり仰ぐ現し身。花言葉は「光輝」、「崇拝」。




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