41.最後の言葉 【89文字】
「ここに一筆書いておいてくれないか」
「なにをだ」
「自分が死んだら、その弔いは友人香月明に任せると」
「……葬式ぐらい家族に出させろ」
「ケチくさいこと言うな」
「そういう問題じゃない」
++かくれおに
42.選択 【100文字】
「ひどく危険な任務になる。もうひとつの方がきみには向いているだろうに」
「大丈夫です。やらせて下さい」
「……判った。ジェフ=A、きみに任せよう」
―― あの日この道を選んだ理由なんて、もう思い出せもしない。
++キラー・ビィ
43.信じさせて 【96文字】
彼らを出会わせたことが、間違いではなかったのだと。
その生が、それでも幸せにあるのだと、そう信じていたい。
それなのに……
「美紗子さん?」
眼鏡越しの濃灰の瞳を、どうしても見返すことができなかった。
++特殊処理実働課
44.遠い背中 【100文字】
「ちょっくら行ってくらあ」
そう言って船を下りた義父を見送ったあの時、その背を奇妙に遠いものと感じたのは、一種の予感ででもあったのか。
後に訪れたものを知っているが故の、感傷にすぎないかもしれないけれど。
++月の刃 海に風
45.追い風を待つ 【96文字】
船倉の荷の、納期にはまだまだ余裕がある。
食料も足りているし、飲料水は昨夜の雨で補充ができた。
と、なれば。
「釣りでもするか」
「
手札やろうぜ」
「酒だ酒!」
たまにはのんびりするのも良いかもしれない。
++月の刃 海に風
46.紙飛行機 【100文字】
紙飛行機の翼は動くことなく、推進力も持ってはいない。
それでもそれは、風に乗って高く遠くへと飛ぶことができる。
「そういうことでしょ?」
「ああ」
二人の視線の向く先では、黒髪の店主が異形達へと微笑んでいた。
++骨董品店 日月堂
47.永遠 【77文字】
たとえその翌日には失われてしまうものでも、死ぬその日まで貫き通すことができたなら、当人にとってそれは永遠に他ならない。
……ならば自分は『それ』を目指そう。
++楽園の守護者
48.光あれ 【100文字】
闇の中、道を失い立ち尽くす。
行く手は文目もわかぬ、ただ暗黒。
せめて道を照らす光でもあれば、と ――
「って、懐中電灯ぐらい用意しとけば」
「今どき停電なんてすると誰が思うか」
今年の台風には根性があるらしい。
++かくれおに
49.お別れだ 【99文字】
死神の名を持つ相棒が、最後のひとりに銃を突きつけた。
「
お別れだ」
傍らから宣告してやれば、男の顔は面白いほどに醜く歪む。
「き、貴様ら、こんな真似を……」
銃声は一発。
遺言など、聞いてやる義理はなかった。
++キラー・ビィ
50.物語の終わり 【100文字】
そうして王子様もお姫様も生涯幸せに暮らしましたとさ。
「一生かよ。嘘くせえ」
「確かにあり得ぬ話ではあるの」
それは子供むけのお伽話にしか存在せぬはずの、幸せな結末。
けれど。
「殿下なら、どうかの?」
「……」
++楽園の守護者
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