++文章修行家さんに40の短文描写お題++

三つ目に挑戦、【文章修行家さんに40の短文描写お題】です。更新記録には載せず、随時UPしてゆく予定です。 ※2006/06/02 完走しました。
なお、こちらのお題には「65文字以内(2、3文字超は可)で情景をあらわす」という制限がついています。

お題は 文章修行家さんに40の短文描写お題 様よりお借りしました。


 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
 名前:神崎真(かんざきまこと)
 サイト名:私立杜守図書館(しりつもりのもりとしょかん)
 一言:いつも文章が長くなってしまいがちなので、修行がてら頑張ります。

目   次
 01. 告白
 02. 
 03. 卒業
 04. 
 05. 学ぶ
 06. 電車
 07. ペット
 08. 
 09. おとな
 10. 食事
 11. 
 12. 
 13. 女と女
 14. 手紙
 15. 信仰
 16. 遊び
 17. 初体験
 18. 仕事
 19. 化粧
 20. 怒り
 21. 神秘
 22. 
 23. 彼と彼女
 24. 悲しみ
 25. 
 26. 
 27. 芝居
 28. 
 29. 感謝
 30. イベント
 31. やわらかさ
 32. 痛み
 33. 好き
 34. 今昔(いまむかし)
 35. 渇き
 36. 浪漫
 37. 季節
 38. 別れ
 39. 
 40. 贈り物





 01. 告白  【66文字】

 きみに言えない言葉がある。
 その言葉を告げたなら、きみは喜ぶだろうか、悲しむだろうか。
 いっそ憎んでくれたらと、願う僕はずるいだろうか。


 02. 嘘  【65文字】

 カップから立ちのぼる湯気越しに、ルージュを塗った唇が動いた。
「信じてくれる?」
 その赤がとても綺麗だから、僕は今日も嘘を受け容れる。


 03. 卒業  【64文字】

「もう会えないね」
 式を終えた後、彼女は寂しげに呟いた。
「これからどうするの」「とりあえず、明日は犬の散歩かな」
 君の家の前にまで。


 04. 旅  【66文字】

 目を閉じて鉛筆の先を地図へと下ろした。触れた先がどこであれ、必ず行くのがゲームの掟だ。
 君と一緒にいけるなら、どこでも良かったけれど。


 05. 学ぶ  【62文字】

 学校で教わった英語も世界史も因数分解も、社会に出て役には立たなかった。
 一番役に立ったのは、課題をこなそうとする、その意志力。


 06. 電車  【66文字】

 三分間の停車時間。隣のホームで反対向きの電車が動いた。その一瞬に感じる不思議な浮遊感。魂を引き寄せられるような、その感覚が心地良い。


 07. ペット  【59文字】

 飼うなら小鳥が良いと母は言い、犬に限ると父が怒鳴る。姉は肩をすくめて苦笑い。
 僕の車では彼女にもらった仔猫が待っていた。


 08. 癖  【65文字】

 まっすぐな長い髪を、指の先へと巻きつける。
 何度も何度も、繰り返し引っぱって。
 それでも癖ひとつつかない髪の君が、たったひとつ持つ癖。


 09. おとな  【65文字】

 大人になればなんでもできると思っていたのに、大人になったら子供が羨ましいと思うようになった。
 何故だろう。こんなにずるくなったのは。


 10. 食事  【65文字】

 朝起きて、テーブルの上に食事を並べる。味噌汁に白米、焼き魚に漬け物。目玉焼きの横には番茶の湯呑み。
 きみがいなくてもお腹は空くんだ。


 11. 本  【57文字】

 ぱらり。
 ページをめくる、乾いた音。上下する瞳が、並ぶ文字を追いかける。
 今の彼は、時間も場所も超越した旅に出ていた。


 12. 夢  【61文字】

 あなたの夢はなんですか。
 大人は子供に問うけれど。
 夢ばかり見ているなと、大人は大人をそう嗤う。
 夢を現実にできなかった大人は。


 13. 女と女  【60文字】

 真っ赤な唇が、綺麗な笑みを形作った。
 鏡の向こうで微笑む女。
 鏡のこちらで微笑む私。
 今日こそはあの人に、是と言わせてみせる。


 14. 手紙  【62文字】

 真っ白な便箋を前にどれだけ時間を過ごしただろう。
 書きかけては破り、ペンを動かそうとしてはためらい。
 切手は今日も引き出しの中。


 15. 信仰  【50文字】

 世の中に神も仏もあるものかと、彼は笑ってうそぶいた。
 そんな彼は神も仏もいないという信仰を持っている。


 16. 遊び   【66文字】

 泣き腫らした目を上げると、黄昏の光の中、子供達が走りまわっていた。影を踏んだら仲間になれるなら、いくらでもこの影を差し出したかった。


 17. 初体験  【64文字】

 逆光でピンぼけで、なにが映っているのかも判らない写真を、誰もが失笑した。
 はじめて撮ったその写真を胸に、私はモデルを怒鳴りつける。


 18. 仕事  【66文字】

 もらった資料が間違っていて、一から入力をやり直し。
 夕食は、手伝ってくれた彼女と二人。
 人目を忍ばずすむのなら、たまにはミスも悪くない。


 19. 化粧  【52文字】

 コンパクトを取り出して、化粧ののりを確認した。
 ファンデーションに口紅にマスカラ。
 戦闘準備は今日も完璧だ。


 20. 怒り  【55文字】

 机の天板をこつこつと叩く指先。
 吐き出される紫煙。
 眼鏡越しに見える、眉の間に刻まれた皺。
 爆発するまで、あと三秒。


 21. 神秘  【65文字】

 透明な水の面を、すべるように波紋が広がってゆく。
 息さえ潜めるように、消えゆくまで眺めていた。
 どうしてこんなにも美しく思うのだろう。


 22. 噂  【63文字】

 雑音と変わらないそれらを、聞く価値はないと切り捨てていた。
 耳をふさぐのではなく取捨選択するべきだったと、気づいた時はもう遅い。


 23. 彼と彼女  【65文字】

 公園のベンチで老人が二人。
 一人は老爺、一人は老婆。
 なにを話すでもなく並んで腰掛けている。
 二人の間には、重ねられている皺の寄った掌。


 24. 悲しみ  【65文字】

 恥も外聞もなく泣きじゃくる子供を、母親はたしなめもせずただ眺めている。
 知っているのかもしれない。
 悲しみは泣くことで洗い流せるのを。


 25. 生   【61文字】

 みずみずしい苺が載ったショートケーキ。
 香りの良い温かい紅茶。
 こってりと甘いクリームにスコーン。

 ……生きてるって素晴らしい。


 26. 死   【65文字】

 壁にかかる逆さ吊りのバラ。色褪せた花びらからは埃の臭いしかしない。
 思い出のよすがに、形だけ整えられた残骸。
 意味などなにもないのに。


 27. 芝居   【65文字】

 セットもなく台本もなく、毎日を泣き、笑い、怒り、喜んだ。
 心とは裏腹なそれらの芝居も、一生続ければ真実になるだろう。
 あの人のために。


 28. 体   【61文字】

 ゴミの間から、壊れたマネキンが見えていた。
 手も足も折れたそれがどんなポーズをしていたのか、胴体だけだからこそ想像が広がる。


 29. 感謝   【65文字】

 手紙の封を切ると出てきたのは一枚のカード。
 真っ白な中にただ一行、ぽつりとだけ記された言葉。
 何万言を弄すより、その一言が告げるもの。


 30. イベント   【58文字】

 舞台裏を人々が行き交い、重なり合ったざわめきは、確たる形を為さぬまま潮騒のように場を満たす。
 幕が上がるまであと三分。


 31. やわらかさ   【65文字】

 日向で干されたお布団は、ほっこりふかふかふくらんで、優しく身体を受け止める。
 けれどそれより心地よい、僕を起こそうとする君が呼ぶ声。


 32. 痛み   【63文字】

 うずく奥歯に舌で触れるように、固まりかけたかさぶたをはがしてしまうように、確かめたくなるものがある。
 たとえ痛むと判っていても。


 33. 好き   【65文字】

 タンポポの指輪に頬へのキス。子供の寄せる好意はいつも一種類だ。
 寄り添い笑う幼子おさなご達を眺めつつ私は式場へと向かう。
 幼馴染みを祝福しに。


 34. 今昔(いまむかし)  【61文字】

 お爺さんは竹を切り、
 お婆さんは桃を拾う。
 さて、では僕は。
 うつむく彼女を未来の子ごと、どうやって抱きしめればいいのだろうか。


 35. 渇き  【66文字】

 求めても求めても得られないものがこの世にはある。
 渇望するこの心を、まるで嘲笑うかのように。
 
 「トイレ使って紙足しとかないのは誰だ!?」


 36. 浪漫   【60文字】

 腹の足しにもなりゃしない
 そう言って背を向け立ち去るあなたこそ、誰より夢見ているのだと。
 口にはしない私が一番のリアリスト。


 37. 季節  【55文字】

 季節は何度でも巡り来るけれど、それはけして同じものではない。
 そう気づかせてくれたのは、きみのいなくなった窓辺。


 38. 別れ  【65文字】

 混み合う駅で名残を惜しむ、良く似た親子。
 息子は風邪を引くなと言い、母は食べ物に気をつけろと言い聞かせる。
 
 ただの修学旅行なんだけど。


 39. 欲  【62文字】

 あれが欲しいと泣き叫ぶ、甲高い子供の声。
 いつもなら顔をしかめるそれを、今日は見習いたいと切に思う。
 あなたの笑顔が欲しいから。


 40. 贈り物  【65文字】

 とりどりの商品を前に贈り物を選ぶ。
 幾つも手に取りまた戻し、似合う物はと迷い続ける。
 何より楽しいその時間こそ、貴方が私にくれたもの。



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